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序章 初恋の面影
蜜月の底*
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紗幕に囲まれた薄暗い寝台の上、アデライードは天蓋の天井付近で、金銀の光の龍が絡まり合うのを見ていた。
男は、体重をかけぬよう、右肘を彼女の顔の脇に突き、左手で彼女の右の膝裏を掴んで脚を拡げ、狭い媚肉を割って熱く滾った屹立をゆっくりと突き立ててくる。
男の肩越しに、金色の龍が銀の龍に絡みつき、ぎりぎりとうねるようにその身体を締め上げている。銀の龍が長い尾をしならせ、身を捩るようにしてそれに耐える。ちょうど、アデライードが切り裂くように侵入してくる、男の熱くて硬い剛直の圧迫感に耐えるのと同様に――。
さっきまで散々、男の指と舌でぐずぐずに蕩かされていた場所だというのに、アデライードは自身を貫く熱い楔の存在を感じて眉を顰める。ぎゅっと目を瞑り、はくはくと息を吐いて圧迫感に耐えていると、男が耳元で囁く。
「まだ、痛むか?……すまない、すこし、我慢して……」
男の熱い息が耳朶にかかり、くすぐったさにアデライードは身体をびくりと震わせてしまう。繋がった場所からお互いの〈王気〉が身体に流れ込み、溶けあい、その快楽で頭の芯がぼうっとなる。
霊峰プルミンテルンの真下、〈玄牝〉と呼ばれる不思議な場所で、初めてこの男を受け入れたのは、わずか半月ほど前のこと。それ以来、月の障りの数日を除いて、男は夜ごと彼女を求めてきた。彼女の華奢な身体はまだ交接に慣れない。初めての時の、身体が引き裂かれると思うほどの激痛はないが、今も微かに引き攣れるような感覚がある。それでも、この後にもたらされる狂気のような快楽を、アデライードは知ってしまった。愛する人と一つになる歓びを知ってしまったアデライードは、もはやそれを知る以前の、無垢な彼女には戻れない。彼に求められれば、拒むことはできなかった。
あの初めての夜、苔の褥の上で男の愛撫に幾度も蕩かされたアデライードは、男のなすがままに蹂躙されながら、ただ、〈玄牝〉の天井を覆う満天の星のような光苔と、〈王気〉の龍が金銀の光の粉をまき散らしながら絡み合うさまを見上げていた。
今も、男の肩に両手で取りすがって、豪華な寝台の天蓋を見上げていると、銀色の龍が徐々にその形態を失い、輝く光の帯のように融けて、くねくねと螺旋状に動き始めるのが視えて、アデライードは自分が快楽への階梯を上り始めたことを知る。
「はっ……んんっ……」
我知らず漏れでる喘ぎ声の淫靡さに、思わずアデライードは右手の甲で自らの口を塞ぐ。男の思惑通りに感じて、乱れて、喘いでしまうのが恥ずかしくてたまらない。
アデライードの中が男を包み込み、内部の襞の一つ一つから互いの〈王気〉が交わされ、循環する。男がゆっくりと、労わるような抽挿を開始する。アデライードの顔を上から覗き込み、口元の右手を左手で掴んで指を絡めるようにして、枕の横の寝台に縫い付ける。
「声を……堪えなくていい……」
「はあっ……だって……あっ……んんっ……」
じわじわとせり上がってくる快感に、アデライードの喘ぎ声は激しく、甘くなる。羞恥に首を振って男の視線から逃れようとするが、もう一つの大きな手がアデライードの頬に触れて、じっと正面から見つめられる。男の黒髪が額に落ちかかり、形のよい唇は半ば開いている。男の息も、荒い。普段はどこか醒めた、冷たい雰囲気のする切れ長の黒い瞳が、欲情に煌めいて壮絶な色気を発散する。
「あっ……あああっ」
最奥をずんと突かれて、アデライードがすさまじい快感に思わず悲鳴を上げる。瞳は涙で潤み、眉は快感に顰められて、唇からは絶え間なく喘ぎ声が漏れてしまう。
「奥……気持ちいいか?」
「やっ……そこっ……あああっ……あっ……だめっ……」
自分はきっと、快楽に蕩けた淫らな顔をしているだろうと思うと、アデライードは羞恥と微かな屈辱でたまらなくなって、いやいやするように首を振る。
(恥ずかしい……こんな……)
肩越しの自分の〈王気〉は、もうすっかり銀色の帯になり、ただなすすべもなく金色の龍に巻き付くだけだ。
「だめじゃない……もっと、感じろ……愛してる……声が恥ずかしいなら、塞いでやる」
そう言うと、男は抜き差しを繰り返しながら顔をアデライードに寄せて、唇を奪った。男の舌が口腔内を蹂躙し、いやらしい水音を立てる。
「んっ、んふっ……んんんっ……んんんっ」
口を塞がれても、鼻に抜けるような甘い声は抑えることができない。
大きく頑丈な寝台が、男の激しい動きにギシギシと軋む音を立てる。肌と肌がぶつかる音、繋がりあった場所から漏れる淫靡な水音。それら全ての音がアデライードの羞恥と快楽を煽る。
「ああ……アデライード、そんなに、締めるな……くっ……」
「ん――っんあああっ……ああっ、あっあっあ―――――――っ」
快楽にうねるアデライードの内部の締め付けに耐えられなくなった男が唇を離し、咽喉ほとけを反らして荒い息を吐く。解放されたアデライードの唇は、もはやはとめどもなく、意味もないよがり声を発しているばかりで、アデライードはただその身の内に荒れ狂う快楽に身悶える。
快感に美貌を歪ませながら、男が抜き差しを繰り返す。抽挿は次第に荒々しさを増し、アデライードの中を抉るように、男の欲を全て叩きつけるように、狂おしく求めるように昂っていく。
アデライードが白い身体を仰け反らせて達し、絹を引き裂くような悲鳴を上げる。銀の龍が光の粉をまき散らし、弾けて霧散する。アデライードが細い喉をさらし、顔を仰け反らせると、白金色の髪がふぁさふぁさと揺れる。男の鼻腔を甘い薔薇の香りがくすぐり、男の脳髄を犯す。
「くっ……ああっ……すごい……アデラ、イード……ううっくうっ」
快楽の沼地に引きずり込まれそうになりながら、男はそれをギリギリで堪えて、敢えて奥の感じるところに突き立て、グリグリと刺激する。アデライードはさらに悲鳴をあげ、のたうち回った。
「ああ―――っ……だ、だめぇ、あ―――――っ」
アデライードの翡翠色の瞳は涙で潤んで、目じりから涙がこぼれる。
「ああっあああっ……ああああっ」
快楽の底の、さらに底――。一気に突き落とされて、アデライードは真っ白な空間に放り出されるような浮遊感に意識が遠のく。真っ逆さまに深層意識の深い谷間に墜ちていきながら、アデライードはその奥底で、〈真実〉を見た。
男は、体重をかけぬよう、右肘を彼女の顔の脇に突き、左手で彼女の右の膝裏を掴んで脚を拡げ、狭い媚肉を割って熱く滾った屹立をゆっくりと突き立ててくる。
男の肩越しに、金色の龍が銀の龍に絡みつき、ぎりぎりとうねるようにその身体を締め上げている。銀の龍が長い尾をしならせ、身を捩るようにしてそれに耐える。ちょうど、アデライードが切り裂くように侵入してくる、男の熱くて硬い剛直の圧迫感に耐えるのと同様に――。
さっきまで散々、男の指と舌でぐずぐずに蕩かされていた場所だというのに、アデライードは自身を貫く熱い楔の存在を感じて眉を顰める。ぎゅっと目を瞑り、はくはくと息を吐いて圧迫感に耐えていると、男が耳元で囁く。
「まだ、痛むか?……すまない、すこし、我慢して……」
男の熱い息が耳朶にかかり、くすぐったさにアデライードは身体をびくりと震わせてしまう。繋がった場所からお互いの〈王気〉が身体に流れ込み、溶けあい、その快楽で頭の芯がぼうっとなる。
霊峰プルミンテルンの真下、〈玄牝〉と呼ばれる不思議な場所で、初めてこの男を受け入れたのは、わずか半月ほど前のこと。それ以来、月の障りの数日を除いて、男は夜ごと彼女を求めてきた。彼女の華奢な身体はまだ交接に慣れない。初めての時の、身体が引き裂かれると思うほどの激痛はないが、今も微かに引き攣れるような感覚がある。それでも、この後にもたらされる狂気のような快楽を、アデライードは知ってしまった。愛する人と一つになる歓びを知ってしまったアデライードは、もはやそれを知る以前の、無垢な彼女には戻れない。彼に求められれば、拒むことはできなかった。
あの初めての夜、苔の褥の上で男の愛撫に幾度も蕩かされたアデライードは、男のなすがままに蹂躙されながら、ただ、〈玄牝〉の天井を覆う満天の星のような光苔と、〈王気〉の龍が金銀の光の粉をまき散らしながら絡み合うさまを見上げていた。
今も、男の肩に両手で取りすがって、豪華な寝台の天蓋を見上げていると、銀色の龍が徐々にその形態を失い、輝く光の帯のように融けて、くねくねと螺旋状に動き始めるのが視えて、アデライードは自分が快楽への階梯を上り始めたことを知る。
「はっ……んんっ……」
我知らず漏れでる喘ぎ声の淫靡さに、思わずアデライードは右手の甲で自らの口を塞ぐ。男の思惑通りに感じて、乱れて、喘いでしまうのが恥ずかしくてたまらない。
アデライードの中が男を包み込み、内部の襞の一つ一つから互いの〈王気〉が交わされ、循環する。男がゆっくりと、労わるような抽挿を開始する。アデライードの顔を上から覗き込み、口元の右手を左手で掴んで指を絡めるようにして、枕の横の寝台に縫い付ける。
「声を……堪えなくていい……」
「はあっ……だって……あっ……んんっ……」
じわじわとせり上がってくる快感に、アデライードの喘ぎ声は激しく、甘くなる。羞恥に首を振って男の視線から逃れようとするが、もう一つの大きな手がアデライードの頬に触れて、じっと正面から見つめられる。男の黒髪が額に落ちかかり、形のよい唇は半ば開いている。男の息も、荒い。普段はどこか醒めた、冷たい雰囲気のする切れ長の黒い瞳が、欲情に煌めいて壮絶な色気を発散する。
「あっ……あああっ」
最奥をずんと突かれて、アデライードがすさまじい快感に思わず悲鳴を上げる。瞳は涙で潤み、眉は快感に顰められて、唇からは絶え間なく喘ぎ声が漏れてしまう。
「奥……気持ちいいか?」
「やっ……そこっ……あああっ……あっ……だめっ……」
自分はきっと、快楽に蕩けた淫らな顔をしているだろうと思うと、アデライードは羞恥と微かな屈辱でたまらなくなって、いやいやするように首を振る。
(恥ずかしい……こんな……)
肩越しの自分の〈王気〉は、もうすっかり銀色の帯になり、ただなすすべもなく金色の龍に巻き付くだけだ。
「だめじゃない……もっと、感じろ……愛してる……声が恥ずかしいなら、塞いでやる」
そう言うと、男は抜き差しを繰り返しながら顔をアデライードに寄せて、唇を奪った。男の舌が口腔内を蹂躙し、いやらしい水音を立てる。
「んっ、んふっ……んんんっ……んんんっ」
口を塞がれても、鼻に抜けるような甘い声は抑えることができない。
大きく頑丈な寝台が、男の激しい動きにギシギシと軋む音を立てる。肌と肌がぶつかる音、繋がりあった場所から漏れる淫靡な水音。それら全ての音がアデライードの羞恥と快楽を煽る。
「ああ……アデライード、そんなに、締めるな……くっ……」
「ん――っんあああっ……ああっ、あっあっあ―――――――っ」
快楽にうねるアデライードの内部の締め付けに耐えられなくなった男が唇を離し、咽喉ほとけを反らして荒い息を吐く。解放されたアデライードの唇は、もはやはとめどもなく、意味もないよがり声を発しているばかりで、アデライードはただその身の内に荒れ狂う快楽に身悶える。
快感に美貌を歪ませながら、男が抜き差しを繰り返す。抽挿は次第に荒々しさを増し、アデライードの中を抉るように、男の欲を全て叩きつけるように、狂おしく求めるように昂っていく。
アデライードが白い身体を仰け反らせて達し、絹を引き裂くような悲鳴を上げる。銀の龍が光の粉をまき散らし、弾けて霧散する。アデライードが細い喉をさらし、顔を仰け反らせると、白金色の髪がふぁさふぁさと揺れる。男の鼻腔を甘い薔薇の香りがくすぐり、男の脳髄を犯す。
「くっ……ああっ……すごい……アデラ、イード……ううっくうっ」
快楽の沼地に引きずり込まれそうになりながら、男はそれをギリギリで堪えて、敢えて奥の感じるところに突き立て、グリグリと刺激する。アデライードはさらに悲鳴をあげ、のたうち回った。
「ああ―――っ……だ、だめぇ、あ―――――っ」
アデライードの翡翠色の瞳は涙で潤んで、目じりから涙がこぼれる。
「ああっあああっ……ああああっ」
快楽の底の、さらに底――。一気に突き落とされて、アデライードは真っ白な空間に放り出されるような浮遊感に意識が遠のく。真っ逆さまに深層意識の深い谷間に墜ちていきながら、アデライードはその奥底で、〈真実〉を見た。
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