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二竅
4、皇子グイン
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父親からの呼び出しがかかった時、グイン皇子は自室の豪華な寝台の上で側室候補の秀女を組み敷いて行為の真っ最中であった。
薄い紗幕一枚を距てるだけで、悩まし気な嬌声をあげる秀女の上で腰を振りながら、顔だけ振り返って迎えにきた宦官に言いつける。
「ちょっと待ってろ、今取り込み中だ」
十三歳になったばかりのグインだが、早熟な彼は十歳を機に閨房の学に入って閨女の手ほどきを受け、十二歳の頃からは秀女と呼ばれる、全国から集められた魔力耐性のある――龍種の精に耐えられる――宮女を幾人もその閨に侍らせている。秀女は十五歳で入宮し、だいたい五年前後、二十歳すぎまで勤めると、後宮の紹介で高級官僚の後妻や側室として嫁いで行く。入宮に際する支度金や、御褥下がりをする際の恩給がそこそこ高額なため、経済的に豊かでない弱小領地を抱える男爵子爵等の令嬢がその募集に応じることがほとんどで、皇子専用の娼婦と揶揄される一因となっている。龍種の強い精を持つために、娼館通いを禁じられている皇子たちの性欲処理を、一手に引き受けているからだ。
宦官が控える中で全く気にすることなく女の中にその精を出し切ると、ぐったりした女をそのまま捨て置いて、すっきりした表情で寝台から出て来たグインは、膝をついて待っていた宦官にまず水を持ってくるように言いつける。宦官が差し出す水をぐいっと飲み干してから、湯呑を渡して尋ねる。
「で、いったい何の用だよ、親父のヤツ」
「とにかく至急のお呼びです。お急ぎください」
神経質で些か偏執狂的なところのある皇太子は、最近体調を崩していた。そんな父親と、豪放磊落でものにこだわらないグインは全く水と油であった。
(辛気臭ぇから会いたくねぇんだよなー)
会えば会ったで、衣類の着方から髪型の乱れまで、あれこれとチクチク言われるので、面倒くさそうに衣服を改め、鏡を覗いてちょちょっと髪を直すと、宦官の後について父親の居間に向かう。
グインが悠然と居間に現れるのを、父親の皇太子は蒸留酒を舐め、向日葵の種を食い散らかしながらイライラと待っていた。卓上に向日葵の皮が山になっている。
「遅いぞ。……いったい何をしていた!」
「えー、ちょっとばかし秀女と運動を?」
両手を上に向け、肩を竦めるようにすると、父親のイライラはさらに上昇し、不快そうに眉を顰める。
「こんな時間から、いい加減にしろ」
(あーもう、うっせーなー。何だよ、自分だって昼間っから酒飲んでんじゃねーかよ)
心の中で悪態をつきながら、グインは示された椅子に腰かける。
「で? わざわざ何なの? 親子の交流しようって雰囲気でもないけど」
グインは十三歳ながら、すでに身長は五・六プル(一プル=三十センチメートル。約百七十センチ)ほどあり、体格もよくて威圧感すらある。皇太子は痩せて骨ばった身体を起こし、皇太子は神経質そうな眉をぐっと寄せ、グインを睨みつけた。
「小侯院に、ユエリンが現れたというのは、本当か?」
「ユエリン?……ああ、来たよ。それが何か?」
「どうしてすぐ報告しない?」
「何で? ユエリンとか、親父にはどうでもいいじゃん」
「その汚い言葉遣いを何とかしろ」
「あーうっせー」
グインは面倒くさそうに顔を歪めると、卓上にあった蒸留酒を薦められもしないうちに勝手にグラスに注ぎ、飲み始めた。
「……勧められる前に人の酒を飲むのは感心せぬ……」
「何だよケチくせぇなー、そんなんだから、廃太子だの何だの言われんだぜ?」
「……! 誰に聞いた!」
「皆言ってるぜ? ユエリンが復活した以上、皇上のお心は決まっているって。ちなみに正傅のデュクトは、蟄居は解かれたけれど、ユエリンの本復を天と陰陽に感謝するために、始祖龍皇帝様の廟に奉仕に行ってるらしいぜ」
グインが長い脚を組んで、十三歳とは思えない堂々とした振る舞いで強い酒を平然と呷る姿を、皇太子は忌々しそうに睨みつける。両手は肘掛を握りしめ、わずかに肩が震えている。
「誰に聞いた」
「ユエリン本人に」
「喋ったのか?!」
身を乗り出すように皇太子が言うのを、唾が飛んだのか鬱陶しそうに眉を顰めて顔を拭って、グインは言った。
「そりゃ、喋るさ」
「お前とユエリンは犬猿の仲だと思っていた」
「落馬する前のユエリンはイヤーなヤツだったから、必要以上に口はきかなかったが、馬から落ちた時に憑き物でも落ちたんかな、全然いい奴になって戻ってきたらか、普通に喋ってる」
「何だと……?」
そこでグインは、ユエリンが落馬して三か月昏睡状態だったこと、昏睡から醒めたはいいが、それ以前の記憶が全くないこと、とりあえず侍従は総入れ替えになるらしいことを話した。
「もともと綺麗な顔してただろう。それでも傲慢で陰険な性格が顔に出てたんだけど、今は全くそんなこともなくて、ただただ綺麗だな。あれだけ蔑んでいたアイリン皇子とも、ちゃんと『兄上』なんて呼んで、穏やかにやってる。性格が良くなっただけでなく、急に真面目に勉強にも取り組んでいて、とくに数学がすげえの。ものすごーく難しい問題も、スラスラ解いちまう。最初は何か企んでんのかって気味が悪かったけど、そうでもないみたいだしな。以前なら、こんな奴が皇帝になるくらいなら、親父の方がマシだなって思ったけど、今はあいつが皇帝で全然いいかも」
皇太子は震える手で卓上の蒸留酒をグラスに注ぐと、ぐぐっと飲み干し、はあっと息を吐く。その様子に、グインは密かに心配になる。
(これさ……酒精中毒じゃね?)
「グイン、わかっているのか? ユエリンが皇帝なったら、お前は皇帝になれぬのだぞ?」
「そりゃそうだろう。でも俺、別に皇帝になんかなりたくないし」
「なにぃ?」
息子の発言に、皇太子はこけた頬を歪めて、グインを睨みつけるが、グインは意にも介さない。
「親父はなんで皇帝になりたいのさ。普通に親王でも十分面白可笑しく暮らせるのに。皇帝になったって、面倒くさいだけじゃん?」
「なっ……」
十五歳で皇太子に立てられて以来、皇帝にならない人生など想像したこともなかった皇太子は絶句する。皇帝にならない人生――それは負け犬と同じだ。
母皇后と賢親王エリンの母皇貴妃には確執があり、自分よりも優秀で父親に愛される弟が憎かった。政治的思惑からとはいえ、母が皇后になり、自分が皇太子に冊立されたことで、彼は勝ったと思ったのだ。それなのに――。
聞こえてくるのは賢親王として枢機に参画し、父親の信頼厚き弟の噂ばかり。挽回しようにも、皇太子は言われた仕事をこなすばかりの日々で、枢機に関わる機会もなかった。むしろ東宮に押し込められ、父親から監視を受けるような日々。いつ、廃太子されるかと、疑心暗鬼に落ち込むばかり。
さらに、自分と言う皇太子がありながら、ブライエ家から納后儀礼まで行って新たに皇后を迎え、生まれたユエリン。何かの折りに見かけた、見惚れるほど美しい幼い異母弟を、愛し気に見つめる父の眼差し。次の皇帝はあれだと、皆が言っているように聞こえた。
皇太子は唇を噛む。
同じ皇后家とはいえ、マナシル家の娘たちは醜くはないものの、容姿は平凡であった。ブライエ家の娘たちが代々、大輪の牡丹か早咲きの薔薇かと言われるほどの美しさを誇るのに比べ、居並べば地味な印象は免れない。必然的に髪飾りや化粧に凝って美しさを底上げしようと努力を重ねるのだが、そのごてごてした人工的に造った美は、逆にシンプルに清楚にと控えめに身を飾ったブライエ家の娘の、素のままの美しさの引き立て役にしかならなかった。
皇太子とて、新たにブライエ家より迎えた新妃の美貌に一瞬で心を奪われたほどだ。この娘以上だと言う、新皇后の美貌は如何ほどであろうか。
母親の美しさは、そのまま息子に受け継がれる。
ブライエ家の娘を母に持つ賢親王も、ユエリン皇子も、そして自身の息子グインも、何より父今上帝も、いずれも頬の高い細面に凛々しい眉、切れ長の黒い瞳と相通ずる美しい容貌を持っている。
それに引き換え自分は――。
色白と言えば聞こえはいいが、青白い不健康な顔色。身長も低くはないが、すらりと高いという感じはしない。もともと痩せていた身体は、最近、食欲がなく、どんどん肉が削げ落ちている。小さな酷薄そうな丸い目に、陰険そうな鷲鼻、少し出っ歯気味の口元を嫌い、口髭を生やしているけれど、正直似合っているとは自分自身にも思えなかった。二つ年下の賢親王が、なおも精悍で男らしい美貌を保っているのを見るたびに、嫉妬と羨望で心が騒ぐ。父の皇帝と賢親王、そしてユエリン皇子は同じくブライエ家の母を持ち、互いによく似た美貌を伝え、それ故に父に愛されているのだ――。
母が違う故に父の美貌を受け継がなかったため、自分は愛されていないのだと、幼いころから信じて疑わなかった皇太子は、最近ではやはりブライエ家の美貌を受けつく我が子グインすら、疎ましく感じ初めている。
憎い――。
賢親王が、ユエリンが――そして、自分を愛さない、父皇帝が――。
そのどす黒い憎しみの感情が、負のエネルギーが、自身の精神と肉体を静かに損ないつつあることを、皇太子は気づいていなかった。
薄い紗幕一枚を距てるだけで、悩まし気な嬌声をあげる秀女の上で腰を振りながら、顔だけ振り返って迎えにきた宦官に言いつける。
「ちょっと待ってろ、今取り込み中だ」
十三歳になったばかりのグインだが、早熟な彼は十歳を機に閨房の学に入って閨女の手ほどきを受け、十二歳の頃からは秀女と呼ばれる、全国から集められた魔力耐性のある――龍種の精に耐えられる――宮女を幾人もその閨に侍らせている。秀女は十五歳で入宮し、だいたい五年前後、二十歳すぎまで勤めると、後宮の紹介で高級官僚の後妻や側室として嫁いで行く。入宮に際する支度金や、御褥下がりをする際の恩給がそこそこ高額なため、経済的に豊かでない弱小領地を抱える男爵子爵等の令嬢がその募集に応じることがほとんどで、皇子専用の娼婦と揶揄される一因となっている。龍種の強い精を持つために、娼館通いを禁じられている皇子たちの性欲処理を、一手に引き受けているからだ。
宦官が控える中で全く気にすることなく女の中にその精を出し切ると、ぐったりした女をそのまま捨て置いて、すっきりした表情で寝台から出て来たグインは、膝をついて待っていた宦官にまず水を持ってくるように言いつける。宦官が差し出す水をぐいっと飲み干してから、湯呑を渡して尋ねる。
「で、いったい何の用だよ、親父のヤツ」
「とにかく至急のお呼びです。お急ぎください」
神経質で些か偏執狂的なところのある皇太子は、最近体調を崩していた。そんな父親と、豪放磊落でものにこだわらないグインは全く水と油であった。
(辛気臭ぇから会いたくねぇんだよなー)
会えば会ったで、衣類の着方から髪型の乱れまで、あれこれとチクチク言われるので、面倒くさそうに衣服を改め、鏡を覗いてちょちょっと髪を直すと、宦官の後について父親の居間に向かう。
グインが悠然と居間に現れるのを、父親の皇太子は蒸留酒を舐め、向日葵の種を食い散らかしながらイライラと待っていた。卓上に向日葵の皮が山になっている。
「遅いぞ。……いったい何をしていた!」
「えー、ちょっとばかし秀女と運動を?」
両手を上に向け、肩を竦めるようにすると、父親のイライラはさらに上昇し、不快そうに眉を顰める。
「こんな時間から、いい加減にしろ」
(あーもう、うっせーなー。何だよ、自分だって昼間っから酒飲んでんじゃねーかよ)
心の中で悪態をつきながら、グインは示された椅子に腰かける。
「で? わざわざ何なの? 親子の交流しようって雰囲気でもないけど」
グインは十三歳ながら、すでに身長は五・六プル(一プル=三十センチメートル。約百七十センチ)ほどあり、体格もよくて威圧感すらある。皇太子は痩せて骨ばった身体を起こし、皇太子は神経質そうな眉をぐっと寄せ、グインを睨みつけた。
「小侯院に、ユエリンが現れたというのは、本当か?」
「ユエリン?……ああ、来たよ。それが何か?」
「どうしてすぐ報告しない?」
「何で? ユエリンとか、親父にはどうでもいいじゃん」
「その汚い言葉遣いを何とかしろ」
「あーうっせー」
グインは面倒くさそうに顔を歪めると、卓上にあった蒸留酒を薦められもしないうちに勝手にグラスに注ぎ、飲み始めた。
「……勧められる前に人の酒を飲むのは感心せぬ……」
「何だよケチくせぇなー、そんなんだから、廃太子だの何だの言われんだぜ?」
「……! 誰に聞いた!」
「皆言ってるぜ? ユエリンが復活した以上、皇上のお心は決まっているって。ちなみに正傅のデュクトは、蟄居は解かれたけれど、ユエリンの本復を天と陰陽に感謝するために、始祖龍皇帝様の廟に奉仕に行ってるらしいぜ」
グインが長い脚を組んで、十三歳とは思えない堂々とした振る舞いで強い酒を平然と呷る姿を、皇太子は忌々しそうに睨みつける。両手は肘掛を握りしめ、わずかに肩が震えている。
「誰に聞いた」
「ユエリン本人に」
「喋ったのか?!」
身を乗り出すように皇太子が言うのを、唾が飛んだのか鬱陶しそうに眉を顰めて顔を拭って、グインは言った。
「そりゃ、喋るさ」
「お前とユエリンは犬猿の仲だと思っていた」
「落馬する前のユエリンはイヤーなヤツだったから、必要以上に口はきかなかったが、馬から落ちた時に憑き物でも落ちたんかな、全然いい奴になって戻ってきたらか、普通に喋ってる」
「何だと……?」
そこでグインは、ユエリンが落馬して三か月昏睡状態だったこと、昏睡から醒めたはいいが、それ以前の記憶が全くないこと、とりあえず侍従は総入れ替えになるらしいことを話した。
「もともと綺麗な顔してただろう。それでも傲慢で陰険な性格が顔に出てたんだけど、今は全くそんなこともなくて、ただただ綺麗だな。あれだけ蔑んでいたアイリン皇子とも、ちゃんと『兄上』なんて呼んで、穏やかにやってる。性格が良くなっただけでなく、急に真面目に勉強にも取り組んでいて、とくに数学がすげえの。ものすごーく難しい問題も、スラスラ解いちまう。最初は何か企んでんのかって気味が悪かったけど、そうでもないみたいだしな。以前なら、こんな奴が皇帝になるくらいなら、親父の方がマシだなって思ったけど、今はあいつが皇帝で全然いいかも」
皇太子は震える手で卓上の蒸留酒をグラスに注ぐと、ぐぐっと飲み干し、はあっと息を吐く。その様子に、グインは密かに心配になる。
(これさ……酒精中毒じゃね?)
「グイン、わかっているのか? ユエリンが皇帝なったら、お前は皇帝になれぬのだぞ?」
「そりゃそうだろう。でも俺、別に皇帝になんかなりたくないし」
「なにぃ?」
息子の発言に、皇太子はこけた頬を歪めて、グインを睨みつけるが、グインは意にも介さない。
「親父はなんで皇帝になりたいのさ。普通に親王でも十分面白可笑しく暮らせるのに。皇帝になったって、面倒くさいだけじゃん?」
「なっ……」
十五歳で皇太子に立てられて以来、皇帝にならない人生など想像したこともなかった皇太子は絶句する。皇帝にならない人生――それは負け犬と同じだ。
母皇后と賢親王エリンの母皇貴妃には確執があり、自分よりも優秀で父親に愛される弟が憎かった。政治的思惑からとはいえ、母が皇后になり、自分が皇太子に冊立されたことで、彼は勝ったと思ったのだ。それなのに――。
聞こえてくるのは賢親王として枢機に参画し、父親の信頼厚き弟の噂ばかり。挽回しようにも、皇太子は言われた仕事をこなすばかりの日々で、枢機に関わる機会もなかった。むしろ東宮に押し込められ、父親から監視を受けるような日々。いつ、廃太子されるかと、疑心暗鬼に落ち込むばかり。
さらに、自分と言う皇太子がありながら、ブライエ家から納后儀礼まで行って新たに皇后を迎え、生まれたユエリン。何かの折りに見かけた、見惚れるほど美しい幼い異母弟を、愛し気に見つめる父の眼差し。次の皇帝はあれだと、皆が言っているように聞こえた。
皇太子は唇を噛む。
同じ皇后家とはいえ、マナシル家の娘たちは醜くはないものの、容姿は平凡であった。ブライエ家の娘たちが代々、大輪の牡丹か早咲きの薔薇かと言われるほどの美しさを誇るのに比べ、居並べば地味な印象は免れない。必然的に髪飾りや化粧に凝って美しさを底上げしようと努力を重ねるのだが、そのごてごてした人工的に造った美は、逆にシンプルに清楚にと控えめに身を飾ったブライエ家の娘の、素のままの美しさの引き立て役にしかならなかった。
皇太子とて、新たにブライエ家より迎えた新妃の美貌に一瞬で心を奪われたほどだ。この娘以上だと言う、新皇后の美貌は如何ほどであろうか。
母親の美しさは、そのまま息子に受け継がれる。
ブライエ家の娘を母に持つ賢親王も、ユエリン皇子も、そして自身の息子グインも、何より父今上帝も、いずれも頬の高い細面に凛々しい眉、切れ長の黒い瞳と相通ずる美しい容貌を持っている。
それに引き換え自分は――。
色白と言えば聞こえはいいが、青白い不健康な顔色。身長も低くはないが、すらりと高いという感じはしない。もともと痩せていた身体は、最近、食欲がなく、どんどん肉が削げ落ちている。小さな酷薄そうな丸い目に、陰険そうな鷲鼻、少し出っ歯気味の口元を嫌い、口髭を生やしているけれど、正直似合っているとは自分自身にも思えなかった。二つ年下の賢親王が、なおも精悍で男らしい美貌を保っているのを見るたびに、嫉妬と羨望で心が騒ぐ。父の皇帝と賢親王、そしてユエリン皇子は同じくブライエ家の母を持ち、互いによく似た美貌を伝え、それ故に父に愛されているのだ――。
母が違う故に父の美貌を受け継がなかったため、自分は愛されていないのだと、幼いころから信じて疑わなかった皇太子は、最近ではやはりブライエ家の美貌を受けつく我が子グインすら、疎ましく感じ初めている。
憎い――。
賢親王が、ユエリンが――そして、自分を愛さない、父皇帝が――。
そのどす黒い憎しみの感情が、負のエネルギーが、自身の精神と肉体を静かに損ないつつあることを、皇太子は気づいていなかった。
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