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6、下町の母子
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探偵社からの報せに、しかし、ローズマリー・オルコットのことなど綺麗さっぱり忘れていた僕は、思い出すのにかなりの時間がかかった。
ローズマリー・オルコットは生きていた。さらに彼女の息子も。
ようやく動き出した脳で、僕は考える。
ローズマリーとその息子は生きている。
だが、リントン伯爵に報告する前に、確かめなければならない。
彼女の息子は、デニスの子なのか。
デニスの遺言はローズマリー・オルコットを見つけ、彼女に贖罪することだ。だから、息子がデニスの子かどうかは、本来はどうでもいい。だが、デニスが死んでリントン伯爵家の継承が宙に浮いた現在、ローズマリーの息子がデニスの血を引いているのかどうかは、極めて重要な問題となる。
ローズマリーがリントン伯爵家を追い出された時、オルコット男爵の話では、間違いなく妊娠していたという。だが、今、彼女が暮らしている息子が、その時の子かどうか。
例えば、流産の後に別の男の子どもを妊娠する可能性も、ないではない。
出産時期、髪や目の色、容姿。――さらには現在、どんな状態で暮らしているのか。
確かめなければならないことは、たくさんあった。
僕は探偵に引き続きの調査を命ずるとともに、自分でローズマリーに会いに行こうと決めた。
彼女は王都の下町に、六歳になる息子と二人で住み、縫物や刺繍の内職で生計を立てている、と。
僕は探偵社からの報告を辻馬車の中で読みながら、指を折って年齢を数える。
ローズマリーがリントン伯爵家を追い出されたのが、大陸暦一八八九年の十一月で、翌年、一八九〇年の五月に息子を出産――時期的にはデニスの子で矛盾はないようだ。
しかし、アーリングベリの街から王都にやってきて、どこで子を産んだのか。
僕は馬車の窓からゴミゴミした下町の風景を覗いて、思案に耽る。
「旦那、着きましたぜ」
辻馬車の御者に声をかけられ、僕は余分のチップを払って馬車を降りた。下町特有のドブの臭いがして、僕は慌ててハンカチで鼻を押える。
戦場よりはマシだが、不潔でいやなところだ。街角にたむろする浮浪者、乞食、スリやかっぱらい。獲物を狙う抜け目のない子供たち。トップハットにフロックコート姿の僕は、嫌でも目立ってしまう。
「ローズマリー? ……ああ、ローズのことかい? えらい別嬪で、息子と二人で住んでる」
街角の雑貨屋の女将《おかみ》に尋ねれば、女将は店の窓から顔を出し、路地を駆けてくる子供たちの一団に声をかけた。
「ルーカス!」
と、六、七歳ばかりの子供がひょいと足を止め、店先を覗き込む。
「なに? マリサおばさん!」
「ルーカス、この貴族の旦那が、あんたの母さんに用があるってよ。見覚えあるかい?」
「かあさまに? 知らないなあ。……あ、初めまして、僕、ルーカス・オルコットです!」
バサリとハンチング帽を脱いで、キラキラ輝く金髪がピョコリと下げられる。くりっとした青い目に整った容姿。息が止まるほど、デニスにそっくりだった。
「……ああ、僕はイライアス・ハミルトン。知り合いに頼まれて、君のお母さんを探していたんだ」
「かあさまを?」
「怪しいものではないよ。君のお母さんのお兄さんにも会ってきた」
「かあさまの、お兄さん?」
好奇心で顔を赤くしたルーカス少年に引っ張られるようにして、僕は路地裏の二階にある、小さな家に連れていかれた。
「かあさま、貴族のお客さんだよ! かあさまのお兄さんにも会ったことがあるって!」
「ルーカス、貴族のお客さんなんて、いったい――」
玄関を開けたらすぐに居間と台所、奥にはたぶん小さな寝室のある狭い家――だが、内部は小ぎれいに掃除され、不潔な感じはしなかった。テーブルの上には刺繍の枠と裁縫箱が広げられ、内職仕事の途中であったらしい。立ち上がって出てきた女を見て、僕は内心、ひどく心を揺さぶられていた。
そう、彼女は非常に美しい女性だった。
栗色の髪を結って、薄く化粧した整った顔だちは、零れ落ちそうに大きな紫色の瞳が印象的だった。衣類は紺色地に小花柄の綿のドレスで、手編みのショールを肩にかけている。体つきは華奢なのに、凹凸ははっきりして男心をそそる。――そうだ、オルコット男爵も言っていた。妹はとても目を惹く美少女だった、と。
子供を産み、二十歳を越えた今となっても、十分に若く、そして初々しい雰囲気さえ漂わせている。
だが、物腰は落ちついていて、見知らぬ男に警戒しつつも、怯むようすは見せなかった。
「……どなた?」
「失礼――ミズ・ローズマリー・オルコットですか? 僕はイライアス・ハミルトンと申します」
女は駆け込んできたルーカスを抱きしめ、不審げに僕を見上げる。息子を守ろうとする姿勢も、しっかりと怯えずに僕を射抜く視線も、何もかもが僕の胸をざわめかせる。僕の中を流れる血が泡立ち、ざっと頭に血が上った。
――僕は、この女が欲しい。
言葉にするとそんな思いだったが、もちろん、その瞬間にはそこまで意識していない。だが、ありていに言えば、僕はこの時、ローズマリーに一目ぼれしたのだ。
女性がいささか苦手だったこの、僕が――
僕はトップハットを持ち上げ、挨拶した。
「僕はリントン伯爵の頼みで、こちらに来ました。あなたに大切なお話が――」
「帰って! 帰ってください!」
即座に、ドアから押し出されそうな勢いで拒絶される。――相当、リントン伯爵家を恨んでいるらしい。だが、ここまで来てあっさり引き下がるわけにはいかない。
「大事なお話なんです」
「今さらなんだって言うの! 帰って! 貴族なんて大嫌い!」
「かあさま?」
怒りをあらわにする母に、ルーカスが戸惑い、彼女の勢いがやや削がれる。僕はその瞬間を逃さなかった。
「息子さんの前ではお話ししにくい。僕はリントン伯爵というか、デニスからの伝言を預かっているんです。その子のことが大切なら、僕を追い返すべきでない」
女はしばらく躊躇していたが、屈んで息子に言う。
「しばらく、外で遊んでいらっしゃい? ね?」
少年は僕と母親とを見比べ、母に小声で言う。
「でも……」
「……ルーカス、いい子だから」
僕は去ろうとする少年に、ポケットから銀貨を出して握らせる。
「下の雑貨屋の女将さんの店で、好きなものを買ってお食べ。ここまで連れてきてくれたお駄賃だよ」
「ありがとう、おじさん!」
銀貨を握り締めて跳ぶように駆けていく後ろ姿を見送り、女は渋々という風に、僕を中に導き入れる。
「……今さら、いったい何なんです?」
「デニスが死にました。この度の戦争で。僕は軍医で、彼を看取ったのです」
「……デニス様が、死んだ?」
ローズマリー・オルコットは生きていた。さらに彼女の息子も。
ようやく動き出した脳で、僕は考える。
ローズマリーとその息子は生きている。
だが、リントン伯爵に報告する前に、確かめなければならない。
彼女の息子は、デニスの子なのか。
デニスの遺言はローズマリー・オルコットを見つけ、彼女に贖罪することだ。だから、息子がデニスの子かどうかは、本来はどうでもいい。だが、デニスが死んでリントン伯爵家の継承が宙に浮いた現在、ローズマリーの息子がデニスの血を引いているのかどうかは、極めて重要な問題となる。
ローズマリーがリントン伯爵家を追い出された時、オルコット男爵の話では、間違いなく妊娠していたという。だが、今、彼女が暮らしている息子が、その時の子かどうか。
例えば、流産の後に別の男の子どもを妊娠する可能性も、ないではない。
出産時期、髪や目の色、容姿。――さらには現在、どんな状態で暮らしているのか。
確かめなければならないことは、たくさんあった。
僕は探偵に引き続きの調査を命ずるとともに、自分でローズマリーに会いに行こうと決めた。
彼女は王都の下町に、六歳になる息子と二人で住み、縫物や刺繍の内職で生計を立てている、と。
僕は探偵社からの報告を辻馬車の中で読みながら、指を折って年齢を数える。
ローズマリーがリントン伯爵家を追い出されたのが、大陸暦一八八九年の十一月で、翌年、一八九〇年の五月に息子を出産――時期的にはデニスの子で矛盾はないようだ。
しかし、アーリングベリの街から王都にやってきて、どこで子を産んだのか。
僕は馬車の窓からゴミゴミした下町の風景を覗いて、思案に耽る。
「旦那、着きましたぜ」
辻馬車の御者に声をかけられ、僕は余分のチップを払って馬車を降りた。下町特有のドブの臭いがして、僕は慌ててハンカチで鼻を押える。
戦場よりはマシだが、不潔でいやなところだ。街角にたむろする浮浪者、乞食、スリやかっぱらい。獲物を狙う抜け目のない子供たち。トップハットにフロックコート姿の僕は、嫌でも目立ってしまう。
「ローズマリー? ……ああ、ローズのことかい? えらい別嬪で、息子と二人で住んでる」
街角の雑貨屋の女将《おかみ》に尋ねれば、女将は店の窓から顔を出し、路地を駆けてくる子供たちの一団に声をかけた。
「ルーカス!」
と、六、七歳ばかりの子供がひょいと足を止め、店先を覗き込む。
「なに? マリサおばさん!」
「ルーカス、この貴族の旦那が、あんたの母さんに用があるってよ。見覚えあるかい?」
「かあさまに? 知らないなあ。……あ、初めまして、僕、ルーカス・オルコットです!」
バサリとハンチング帽を脱いで、キラキラ輝く金髪がピョコリと下げられる。くりっとした青い目に整った容姿。息が止まるほど、デニスにそっくりだった。
「……ああ、僕はイライアス・ハミルトン。知り合いに頼まれて、君のお母さんを探していたんだ」
「かあさまを?」
「怪しいものではないよ。君のお母さんのお兄さんにも会ってきた」
「かあさまの、お兄さん?」
好奇心で顔を赤くしたルーカス少年に引っ張られるようにして、僕は路地裏の二階にある、小さな家に連れていかれた。
「かあさま、貴族のお客さんだよ! かあさまのお兄さんにも会ったことがあるって!」
「ルーカス、貴族のお客さんなんて、いったい――」
玄関を開けたらすぐに居間と台所、奥にはたぶん小さな寝室のある狭い家――だが、内部は小ぎれいに掃除され、不潔な感じはしなかった。テーブルの上には刺繍の枠と裁縫箱が広げられ、内職仕事の途中であったらしい。立ち上がって出てきた女を見て、僕は内心、ひどく心を揺さぶられていた。
そう、彼女は非常に美しい女性だった。
栗色の髪を結って、薄く化粧した整った顔だちは、零れ落ちそうに大きな紫色の瞳が印象的だった。衣類は紺色地に小花柄の綿のドレスで、手編みのショールを肩にかけている。体つきは華奢なのに、凹凸ははっきりして男心をそそる。――そうだ、オルコット男爵も言っていた。妹はとても目を惹く美少女だった、と。
子供を産み、二十歳を越えた今となっても、十分に若く、そして初々しい雰囲気さえ漂わせている。
だが、物腰は落ちついていて、見知らぬ男に警戒しつつも、怯むようすは見せなかった。
「……どなた?」
「失礼――ミズ・ローズマリー・オルコットですか? 僕はイライアス・ハミルトンと申します」
女は駆け込んできたルーカスを抱きしめ、不審げに僕を見上げる。息子を守ろうとする姿勢も、しっかりと怯えずに僕を射抜く視線も、何もかもが僕の胸をざわめかせる。僕の中を流れる血が泡立ち、ざっと頭に血が上った。
――僕は、この女が欲しい。
言葉にするとそんな思いだったが、もちろん、その瞬間にはそこまで意識していない。だが、ありていに言えば、僕はこの時、ローズマリーに一目ぼれしたのだ。
女性がいささか苦手だったこの、僕が――
僕はトップハットを持ち上げ、挨拶した。
「僕はリントン伯爵の頼みで、こちらに来ました。あなたに大切なお話が――」
「帰って! 帰ってください!」
即座に、ドアから押し出されそうな勢いで拒絶される。――相当、リントン伯爵家を恨んでいるらしい。だが、ここまで来てあっさり引き下がるわけにはいかない。
「大事なお話なんです」
「今さらなんだって言うの! 帰って! 貴族なんて大嫌い!」
「かあさま?」
怒りをあらわにする母に、ルーカスが戸惑い、彼女の勢いがやや削がれる。僕はその瞬間を逃さなかった。
「息子さんの前ではお話ししにくい。僕はリントン伯爵というか、デニスからの伝言を預かっているんです。その子のことが大切なら、僕を追い返すべきでない」
女はしばらく躊躇していたが、屈んで息子に言う。
「しばらく、外で遊んでいらっしゃい? ね?」
少年は僕と母親とを見比べ、母に小声で言う。
「でも……」
「……ルーカス、いい子だから」
僕は去ろうとする少年に、ポケットから銀貨を出して握らせる。
「下の雑貨屋の女将さんの店で、好きなものを買ってお食べ。ここまで連れてきてくれたお駄賃だよ」
「ありがとう、おじさん!」
銀貨を握り締めて跳ぶように駆けていく後ろ姿を見送り、女は渋々という風に、僕を中に導き入れる。
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