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番外編 東西文化の違いについて
つまり殿下が悪い
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「……それについては、殿下の為に申し上げますけれど、皇族がたの特殊な体質が関係しておりますので、けして風呂でするのが特別にお好きなわけではないと思います」
マーヤが控えめに恭親王を擁護した。
「殿下は龍種でいらせられるので、わたくしども平民がそれに触れると大変なことになるので、それを防ぐために、ご自身で姫様を洗って差し上げているのだと思います。わたしは以前、殿下の侍女を務めておりましたが、殿下の寝室に入るのは厳禁でございました。寝室やお風呂の世話は、全て宦官か、獣人の侍女がすることになっているでしょう?」
マーヤの言葉に、アンジェリカもリリアも吃驚する。
「ええっ!あの、蛇ちゃんたちってそんな役割りがあるの?ただの変態趣味だとばかり思っていたわ!」
無知な平民の例にもれず、アンジェリカも蛇女を側に置いている恭親王を、変態趣味だと眉を顰めていたのだった。
「……でも、身体を洗うだけならわたし一人でも十分なのに、絶対に一緒に入るって言い張るの。恥ずかしいし、二回に一回はいやらしいことをなさるから、嫌だって申し上げているのに……」
紅茶に砂糖を入れてスプーンで混ぜながら、アデライードが俯きがちに言う。
「要は、殿下の我慢が足りないということですね。やはりそれは、姫様の口からはっきりと申し上げて改善をお願いするべきです。他の者が言っても聞いては下さらないでしょう」
アリナの言葉に、マーヤが恭親王を庇うように言う。
「愛されていらっしゃるのですよ、姫様。ほんと、羨ましいぐらいの溺愛ぶりでございますわね」
「そうそう、美男美女でいらっしゃるし」
「お二人の絵姿が、すごい人気ですよ。太陽の龍騎士と月の精靈ディアーヌの生まれ変わりだって」
ミアとアウローラにも口々に褒められて、アデライードは恥ずかしそうに頬を染めた。
「そうなの?恥ずかしいわ……」
恥じらうアデライードの初々しい姿を見ながら、しかしミハルは一人、迫りくる新婚初夜の不安に一層怯える羽目になった。
(だ、大丈夫よ……トルフィン兄様はそんな絶倫じゃないわ。文官だし、細身だし……って、殿下も細いわよね。いわゆる細マッチョってやつ?でも、トルフィン兄様も結構遊んでたって言うし……どうしよう、不安でたまらないわ……)
一方アンジェリカは――。
(やっぱり何のかんの言いながら、ようするに殿下は絶倫鬼畜なんじゃないの!帰ってきたら絶対!絶対!姫様守るんだから!あんの変態エロ皇子の手練手管から姫様を守るには、あたししかいないんだから!)
アンジェリカが密かに決意を新たしたその二日後、天敵がさらにパワーアップしたことを知らない恭親王は、長いアデライード不足にフラフラになりながら聖地から帰還した。
月の障りのお籠りが終わったアデライードを早速貪ろうとする恭親王と、それを防ごうとするアンジェリカによる攻防――この後果てしなく続くハブとマングースのような宿命の戦いは、今、始まったばかりである。
マーヤが控えめに恭親王を擁護した。
「殿下は龍種でいらせられるので、わたくしども平民がそれに触れると大変なことになるので、それを防ぐために、ご自身で姫様を洗って差し上げているのだと思います。わたしは以前、殿下の侍女を務めておりましたが、殿下の寝室に入るのは厳禁でございました。寝室やお風呂の世話は、全て宦官か、獣人の侍女がすることになっているでしょう?」
マーヤの言葉に、アンジェリカもリリアも吃驚する。
「ええっ!あの、蛇ちゃんたちってそんな役割りがあるの?ただの変態趣味だとばかり思っていたわ!」
無知な平民の例にもれず、アンジェリカも蛇女を側に置いている恭親王を、変態趣味だと眉を顰めていたのだった。
「……でも、身体を洗うだけならわたし一人でも十分なのに、絶対に一緒に入るって言い張るの。恥ずかしいし、二回に一回はいやらしいことをなさるから、嫌だって申し上げているのに……」
紅茶に砂糖を入れてスプーンで混ぜながら、アデライードが俯きがちに言う。
「要は、殿下の我慢が足りないということですね。やはりそれは、姫様の口からはっきりと申し上げて改善をお願いするべきです。他の者が言っても聞いては下さらないでしょう」
アリナの言葉に、マーヤが恭親王を庇うように言う。
「愛されていらっしゃるのですよ、姫様。ほんと、羨ましいぐらいの溺愛ぶりでございますわね」
「そうそう、美男美女でいらっしゃるし」
「お二人の絵姿が、すごい人気ですよ。太陽の龍騎士と月の精靈ディアーヌの生まれ変わりだって」
ミアとアウローラにも口々に褒められて、アデライードは恥ずかしそうに頬を染めた。
「そうなの?恥ずかしいわ……」
恥じらうアデライードの初々しい姿を見ながら、しかしミハルは一人、迫りくる新婚初夜の不安に一層怯える羽目になった。
(だ、大丈夫よ……トルフィン兄様はそんな絶倫じゃないわ。文官だし、細身だし……って、殿下も細いわよね。いわゆる細マッチョってやつ?でも、トルフィン兄様も結構遊んでたって言うし……どうしよう、不安でたまらないわ……)
一方アンジェリカは――。
(やっぱり何のかんの言いながら、ようするに殿下は絶倫鬼畜なんじゃないの!帰ってきたら絶対!絶対!姫様守るんだから!あんの変態エロ皇子の手練手管から姫様を守るには、あたししかいないんだから!)
アンジェリカが密かに決意を新たしたその二日後、天敵がさらにパワーアップしたことを知らない恭親王は、長いアデライード不足にフラフラになりながら聖地から帰還した。
月の障りのお籠りが終わったアデライードを早速貪ろうとする恭親王と、それを防ごうとするアンジェリカによる攻防――この後果てしなく続くハブとマングースのような宿命の戦いは、今、始まったばかりである。
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お返事ありがとうございます^^
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ありがとうございます!
リプライ見れました!大丈夫です!またよろしくお願いします!