53 / 191
8、神器の在処
〈港〉と別邸
しおりを挟む
結局、馬車の中では身体を離してはもらえなかった。膝の上に抱きかかえられてプラチナブロンドを撫でられ、長い指で絡めとられて口づけられたりしながら、揺れる馬車の上で過ごした。やがて馬車のスピードが落ちた。
「市街に入ったな」
壊れた鎧戸はすでに取り払い、窓は全開になっている。恭親王に言われてアデライードが窓の外を見ると、両側に商店が居並ぶ大きな通りを走っていた。十年前、〈港〉からこの道を逆に通って北上したことを思い出した。
「しばらくは無理だが、機会があれば街に出よう。十年、修道院に閉じ込められていたのだろう。神殿の祭りの時にはこの道にも屋台が出ると聞いた」
アデライードのこめかみに唇を近づけるようにして、恭親王が低い声で言った。こめかみから流れ込む〈王気〉が、アデライードの身体の中を巡る。何の脈絡もなく、自分の魔力が上手く流れているのは、彼に触れられ、彼の〈王気〉と混じりあっているせいだろうかと気づく。どういうことなのだろうと、じっと恭親王を見つめると、視線に気づいた恭親王が少しだけ目元を和らげた。
「ここが広場で、あちらの建物が小神殿……神殿娼婦のいるところだ。まあ、女には興味の湧かない場所だろうが」
恭親王が指を差しながら説明する。神殿は白一色の建物、商店は様々な小窓に花が飾られ、看板が掲げられてとりどりに美しい。
「この大通りのどんづまりが〈港〉。別邸は、少し外れた運河の畔にある」
大通りを進んでいた馬車が曲がり、少し細い道に入る。正面に大きな門が見えてきた。衛兵が二人、前に立っている。
「あれが総督府の別邸だ。結婚式まであそこで過ごしてもらう。侍女が二人。仕事には慣れてないが、信用は置ける」
衛兵が馬車を認めて門を開け、敬礼する前を通り過ぎて敷地内に入った。馬車の背後で門が閉まる音を聞きながら、馬車はそのまま庭を進んで、車寄せまできてようやく止まった。
馭者台から降りた侍従武官のゾラが、扉を開けて顔を出し、咳払いして言った。
「ついたっすよ、殿下」
恭親王はアデライードの膝の裏に腕を通して軽々と抱き上げると、そのまま馬車を下りた。アデライードは反射的に恭親王の首に両腕を回し、腕に抱かれたまま、建物の中に脚を踏み入れた。
別邸は、東方風の四合院形式の建築で、アデライードは珍しさに目を瞠る。ゾラがアデライードの小さなカバンを持って、後ろについてきたが、アデライードはそのカバンを目にした時、ふいにエイダのことを思い出した。あの人をこんなにも簡単に追い払ってしまったけれど、大丈夫なのだろうか? アデライードの胸の中は不安ではち切れそうになる。
建物に入ったところで、もう一人の侍従らしき若い男が、慌てて走り寄ってくる。
「殿下!馬車がひどい有様ですけど!何があったんですか?」
「襲撃された。月神殿では毒殺されかかるし、最悪だ」
「帰り道なんてさ、結構な人数に襲われてよ、もう、ムカツクっての。馬がやられた奴等を置いてきたから、スグに応援に行ってやんないと。敵の死体の処理とか、これから大変だぜ」
ゾラが肩を竦めて付け足す。
「ではそちらの方は処理しておきます」
「太陽宮のジュルチ僧正が僧兵を応援に寄越してくれるらしいから、彼らがもう、現場に着いているかもしれない。協力して事に当たってくれ」
トルフィンに言い置き、恭親王はアデライードを中庭に面する明るい部屋まで運び、ソファにそっと下ろした。建物は東方風だが、室内のしつらいは西方風である。部屋ではリリアとアンジェリカが姫君の到着を待っていた。
「殿下……それが、例のお姫様?」
「そうだ。暗殺されかかって昼食を食べ損ねて腹ペコだ。簡単なもので構わないから準備してくれないか」
「その前にその……お召し物が汚れていらっしゃいます。殿下も……まずはお着換えになったらいかがです?」
アンジェリカに指摘されて自分の身体を見下ろし、恭親王はかなりの返り血を浴びていることに気づく。黒い服なので目立たないが、飛び散った血が金釦にこびりつき、固まっていた。アデライードの方は、恭親王の服についた血が移ったらしく、白い長衣のところどころに擦れたように血がついていた。
「そうだな、まずは着替えてくる。姫の衣裳はもう、セルフィーノが届けてくれたのだよな?」
「はい。もう、全て梱包も解いて、いつでも着られるように準備してあります」
リリアも頷くので、恭親王はアデライードを二人に任せて自身も着替えに行った。
血で汚れた正装を脱ぎ、顔と髪を簡単に洗って血の汚れを落とし、白いシャツに黒い脚衣、縹色の袖なしの上着をひっかけ、黒い帯と剣帯を着ける。大事な小箱を懐に入れ、黒い長靴を履こうとして、さすがに暑いのに疲れて、普段履きの木の下駄を素足につっかけて部屋を出る。
さっきの部屋に戻ると、アデライードはまだ着替えから戻っていなかった。恭親王は無人の部屋から中庭に出て甲高い指笛を鳴らす。ばさっと羽音がして、黒い綺麗な鷹が恭親王の伸ばした腕に舞い降りた。
恭親王がエールライヒを腕に止まらせて室内に入り、窓辺に置いた止まり木に止まらせ、餌箱から肉を出して手ずから食べさせてやると、黒い鷹は嬉しそうに二度、三度と羽ばたいた。
奥の扉が開いてアンジェリカの先導でアデライードが部屋に入ってくる。新しく用意した水色の地に葡萄唐草文様の裾模様を染めた更紗の長衣に着替え、腰は赤い組み紐で留めている。髪は顔の横の毛を編み込んで後ろにまとめており、先ほどより軽やかな印象だ。恭親王は、これも悪くない、と思う。
アデライードは恭親王に気づくと、彼が餌をやっている黒い鷹を見て、目を輝かせる。アデライードが食い入るように鷹を見つめているのに気づいた恭親王は、口元に笑みを浮かべた。
「鷹を見るのは初めて?」
こっくり、と大きく頷くアデライードに、恭親王は少し目を眇め、笑う。
「餌をやってみるか?」
アデライードの顔がぱっと明るくなり、こくこくと嬉しそうに頷くので、手招きして窓際の止まり木の側に呼んだ。餌箱から肉を取り出し、アデライードに渡す。
「嘴の前に差し出してやればいい。……大丈夫、訓練してあるから、あなたの指を傷つけるようなことはない」
言われるままにアデライードが肉を右手の人差し指にひっかけ、鷹の目の前に差し出す。鷹が少し首を傾げるようにして黒い瞳でアデライードを見、覗き込むようにして餌に顔を近づけるのに、恭親王が横から言った。
「エールライヒ、よく匂いを憶えておいてくれ。この人は私の妻になる人だ。……手紙のやり取りをしてもらうかも知れないからな」
エールライヒは器用に嘴で肉を抓むと、瞬く間に口に入れてしまう。二度、三度と餌を運んで、アデライードは嬉しそうに目を輝かせて餌をやると、その黒く艶やかな羽を撫でてみたくなった。
じっと無言で恭親王を眺め、次に鷹を見る。何か言いたげなのに恭親王が気づいて目を眇める。
「どうしたいのだ?……要望は口で言わねばわからぬぞ」
そう言われて、アデライードが困ったように下を向いた。恭親王がその視線を追いかけるように顔を覗き込み、聞いた。
「どうした?エールライヒはもう腹はいっぱいだ。……もしかして、触りたいのか?」
ぱっと顔を輝かせてこくこく頷くアデライードに、恭親王は苦笑いする。
「はい、だ。触りたいのか?」
アデライードにとって声を出すことは大概に勇気のいることだ。それをわかっていて、男は意地悪を言う。
「口で言わねば、永遠に言葉をしゃべれなくなるぞ。……ほら、触りたいのか?」
「……は……い……」
掠れた、蚊の鳴くような声だが、恭親王は満足したように微笑むと、まず自分が手本を示すようにエールライヒの羽を撫でた。
「羽の方向に添って、優しく撫でてくれ」
アデライードが恐る恐る白い手を差し出し、黒光りする羽にそっと触れた。優しく撫でるのに、エールライヒが気持ちよさそうに目を細める。
「エールライヒ、アデライード姫だ。よろしくな」
「……よろ……ひく……」
まだうまく舌の回らないアデライードの言葉に、恭親王が優しく目元を緩ませ、彼女のこめかみに軽い口づけを落とした。
「市街に入ったな」
壊れた鎧戸はすでに取り払い、窓は全開になっている。恭親王に言われてアデライードが窓の外を見ると、両側に商店が居並ぶ大きな通りを走っていた。十年前、〈港〉からこの道を逆に通って北上したことを思い出した。
「しばらくは無理だが、機会があれば街に出よう。十年、修道院に閉じ込められていたのだろう。神殿の祭りの時にはこの道にも屋台が出ると聞いた」
アデライードのこめかみに唇を近づけるようにして、恭親王が低い声で言った。こめかみから流れ込む〈王気〉が、アデライードの身体の中を巡る。何の脈絡もなく、自分の魔力が上手く流れているのは、彼に触れられ、彼の〈王気〉と混じりあっているせいだろうかと気づく。どういうことなのだろうと、じっと恭親王を見つめると、視線に気づいた恭親王が少しだけ目元を和らげた。
「ここが広場で、あちらの建物が小神殿……神殿娼婦のいるところだ。まあ、女には興味の湧かない場所だろうが」
恭親王が指を差しながら説明する。神殿は白一色の建物、商店は様々な小窓に花が飾られ、看板が掲げられてとりどりに美しい。
「この大通りのどんづまりが〈港〉。別邸は、少し外れた運河の畔にある」
大通りを進んでいた馬車が曲がり、少し細い道に入る。正面に大きな門が見えてきた。衛兵が二人、前に立っている。
「あれが総督府の別邸だ。結婚式まであそこで過ごしてもらう。侍女が二人。仕事には慣れてないが、信用は置ける」
衛兵が馬車を認めて門を開け、敬礼する前を通り過ぎて敷地内に入った。馬車の背後で門が閉まる音を聞きながら、馬車はそのまま庭を進んで、車寄せまできてようやく止まった。
馭者台から降りた侍従武官のゾラが、扉を開けて顔を出し、咳払いして言った。
「ついたっすよ、殿下」
恭親王はアデライードの膝の裏に腕を通して軽々と抱き上げると、そのまま馬車を下りた。アデライードは反射的に恭親王の首に両腕を回し、腕に抱かれたまま、建物の中に脚を踏み入れた。
別邸は、東方風の四合院形式の建築で、アデライードは珍しさに目を瞠る。ゾラがアデライードの小さなカバンを持って、後ろについてきたが、アデライードはそのカバンを目にした時、ふいにエイダのことを思い出した。あの人をこんなにも簡単に追い払ってしまったけれど、大丈夫なのだろうか? アデライードの胸の中は不安ではち切れそうになる。
建物に入ったところで、もう一人の侍従らしき若い男が、慌てて走り寄ってくる。
「殿下!馬車がひどい有様ですけど!何があったんですか?」
「襲撃された。月神殿では毒殺されかかるし、最悪だ」
「帰り道なんてさ、結構な人数に襲われてよ、もう、ムカツクっての。馬がやられた奴等を置いてきたから、スグに応援に行ってやんないと。敵の死体の処理とか、これから大変だぜ」
ゾラが肩を竦めて付け足す。
「ではそちらの方は処理しておきます」
「太陽宮のジュルチ僧正が僧兵を応援に寄越してくれるらしいから、彼らがもう、現場に着いているかもしれない。協力して事に当たってくれ」
トルフィンに言い置き、恭親王はアデライードを中庭に面する明るい部屋まで運び、ソファにそっと下ろした。建物は東方風だが、室内のしつらいは西方風である。部屋ではリリアとアンジェリカが姫君の到着を待っていた。
「殿下……それが、例のお姫様?」
「そうだ。暗殺されかかって昼食を食べ損ねて腹ペコだ。簡単なもので構わないから準備してくれないか」
「その前にその……お召し物が汚れていらっしゃいます。殿下も……まずはお着換えになったらいかがです?」
アンジェリカに指摘されて自分の身体を見下ろし、恭親王はかなりの返り血を浴びていることに気づく。黒い服なので目立たないが、飛び散った血が金釦にこびりつき、固まっていた。アデライードの方は、恭親王の服についた血が移ったらしく、白い長衣のところどころに擦れたように血がついていた。
「そうだな、まずは着替えてくる。姫の衣裳はもう、セルフィーノが届けてくれたのだよな?」
「はい。もう、全て梱包も解いて、いつでも着られるように準備してあります」
リリアも頷くので、恭親王はアデライードを二人に任せて自身も着替えに行った。
血で汚れた正装を脱ぎ、顔と髪を簡単に洗って血の汚れを落とし、白いシャツに黒い脚衣、縹色の袖なしの上着をひっかけ、黒い帯と剣帯を着ける。大事な小箱を懐に入れ、黒い長靴を履こうとして、さすがに暑いのに疲れて、普段履きの木の下駄を素足につっかけて部屋を出る。
さっきの部屋に戻ると、アデライードはまだ着替えから戻っていなかった。恭親王は無人の部屋から中庭に出て甲高い指笛を鳴らす。ばさっと羽音がして、黒い綺麗な鷹が恭親王の伸ばした腕に舞い降りた。
恭親王がエールライヒを腕に止まらせて室内に入り、窓辺に置いた止まり木に止まらせ、餌箱から肉を出して手ずから食べさせてやると、黒い鷹は嬉しそうに二度、三度と羽ばたいた。
奥の扉が開いてアンジェリカの先導でアデライードが部屋に入ってくる。新しく用意した水色の地に葡萄唐草文様の裾模様を染めた更紗の長衣に着替え、腰は赤い組み紐で留めている。髪は顔の横の毛を編み込んで後ろにまとめており、先ほどより軽やかな印象だ。恭親王は、これも悪くない、と思う。
アデライードは恭親王に気づくと、彼が餌をやっている黒い鷹を見て、目を輝かせる。アデライードが食い入るように鷹を見つめているのに気づいた恭親王は、口元に笑みを浮かべた。
「鷹を見るのは初めて?」
こっくり、と大きく頷くアデライードに、恭親王は少し目を眇め、笑う。
「餌をやってみるか?」
アデライードの顔がぱっと明るくなり、こくこくと嬉しそうに頷くので、手招きして窓際の止まり木の側に呼んだ。餌箱から肉を取り出し、アデライードに渡す。
「嘴の前に差し出してやればいい。……大丈夫、訓練してあるから、あなたの指を傷つけるようなことはない」
言われるままにアデライードが肉を右手の人差し指にひっかけ、鷹の目の前に差し出す。鷹が少し首を傾げるようにして黒い瞳でアデライードを見、覗き込むようにして餌に顔を近づけるのに、恭親王が横から言った。
「エールライヒ、よく匂いを憶えておいてくれ。この人は私の妻になる人だ。……手紙のやり取りをしてもらうかも知れないからな」
エールライヒは器用に嘴で肉を抓むと、瞬く間に口に入れてしまう。二度、三度と餌を運んで、アデライードは嬉しそうに目を輝かせて餌をやると、その黒く艶やかな羽を撫でてみたくなった。
じっと無言で恭親王を眺め、次に鷹を見る。何か言いたげなのに恭親王が気づいて目を眇める。
「どうしたいのだ?……要望は口で言わねばわからぬぞ」
そう言われて、アデライードが困ったように下を向いた。恭親王がその視線を追いかけるように顔を覗き込み、聞いた。
「どうした?エールライヒはもう腹はいっぱいだ。……もしかして、触りたいのか?」
ぱっと顔を輝かせてこくこく頷くアデライードに、恭親王は苦笑いする。
「はい、だ。触りたいのか?」
アデライードにとって声を出すことは大概に勇気のいることだ。それをわかっていて、男は意地悪を言う。
「口で言わねば、永遠に言葉をしゃべれなくなるぞ。……ほら、触りたいのか?」
「……は……い……」
掠れた、蚊の鳴くような声だが、恭親王は満足したように微笑むと、まず自分が手本を示すようにエールライヒの羽を撫でた。
「羽の方向に添って、優しく撫でてくれ」
アデライードが恐る恐る白い手を差し出し、黒光りする羽にそっと触れた。優しく撫でるのに、エールライヒが気持ちよさそうに目を細める。
「エールライヒ、アデライード姫だ。よろしくな」
「……よろ……ひく……」
まだうまく舌の回らないアデライードの言葉に、恭親王が優しく目元を緩ませ、彼女のこめかみに軽い口づけを落とした。
15
お気に入りに追加
491
あなたにおすすめの小説


【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる