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5、女王家の神器
王女の誘拐
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しばらくの間彫像のように固まっていた恭親王は、数分の後には普段の表情に戻っていた。だがその鉄面皮はほんのわずかながら、常とは異なる雰囲気を湛えていた。メイローズは、主の周囲を揺らめく〈王気〉に注目する。
金色の〈王気〉はわずかに赤味を帯び、光の龍がせわしなく周囲を飛び回っている。
〈王気〉には持ち主の感情が素直に表れてしまう。表情や態度、声は誤魔化せても、〈王気〉は制御することができない。否、表面的に感情を制御すればするほど、押し込められた感情が〈王気〉となって溢れ出る。先ほど、氷の彫像のように凍てついていた時ですら、主の〈王気〉は金色の焔のように暴れ回っていた。今、自分を取り戻して平静を装ってはいるが、内面はひどく動揺しているらしい。
だが、主は心を読まれることを嫌う。感情が、自身では視認できない〈王気〉に現れていると、知らされるのを嫌う。メイローズは、主の動揺を読み取ったことを隠し、静かに話しかけた。
「葡萄酒が零れてしまいました。長靴の方は拭いましたが、脚衣はいかがですか?着替えを準備いたしましょうか」
「いや、いい。手が滑ったが、量は入っていなかったから、服の方は大丈夫だ。絨毯を汚してしまったな」
恭親王は落としたゴブレットを拾い上げ、それに自分で葡萄酒を注ぐと、今度は一気に飲み干した。男らしい喉ぼとけがごくんと動く。手の甲で口元を拭うと、肘掛椅子の背もたれに背中を預け、深く腰掛けて天井を仰いだ。
「見てもらいたいものとは……?」
「ああ。その前に、もう一度確認しておきたい……十年前の、アデライード姫の誘拐の顛末について」
恭親王がそう言うと、メイローズははっとして主のひざ元を離れ、後ろに下がってソファに座り直した。そして懐から使い込んだ帳面を出すと、長い指でそれを捲った。
「私も関係者より聞き取りをしておりますので、わかることでありましたら」
「手回しがいいな」
「重要な問題でございますからね」
メイローズが黄金の髪を揺らして微笑む。
「何からお話しいたしましょうか」
「まず……アデライード姫の誘拐はいつで、姫や馬車が発見された状況について」
メイローズは帳面の書付を辿って、読み上げた。
「ええと……十年前の十二月の初めになりますね。姫君は十二月の二日に〈港〉に到着し、そこで〈光の花〉修道院からの迎えの馬車に乗ります。王都からは乳母と侍女一人が着き従い、〈港〉までは護衛の騎士二人が付いていましたが、行先が男子禁制の修道院ですので、護衛たちはここで引き返しました」
肘掛椅子に頬杖をつき、長い脚を組んだ恭親王が眉を顰める。
「護衛も無しとは、危機意識の低いことだな」
「聖地の中で狙われることなど、ほとんどございませんからね。天のおひざ元で、わずか六歳の幼女を襲うような罰当たりなどいないと、皆が考えても不思議ではありません。……世話係としてエイダ修道女が同道し、馬車は太陰宮の月神殿に向かいます。ゆっくり走ってもその日の夜には到着するはずが、いっこうに到着しないため、〈光の花〉修道院が捜索を訴え出たのが翌三日の早朝です」
〈港〉周辺の繁華街を除けば、聖地の中で犯罪などほとんど発生しない。〈港〉を越えて太陰宮や太陽宮まで至ろうという者は、信心深い巡礼者や、信仰に生きることを決意した者ばかり。〈港〉以外では貨幣は通用しない――聖職者は貨幣に触れることが禁じられている――ので、大金を持ち込む者もいないから、盗賊も出ない。イフリート公爵が、よもや聖地で凶行に及ぶとは思わなかったのであろう。
「通報を受けた女戦士と僧兵たちは、総督府派遣の警備兵も協力の上、街道沿いを中心に広く捜索し、翌四日の昼過ぎに、太陽宮との境域に近い荒地の崖の下で、〈光の花〉修道院の馬車を発見しました。馬二頭と、馬車の中から乳母と侍女の遺体が見つかっていますが、馭者の姿はありませんでした」
さらにメイローズは自身の書いたメモを読み上げる。
「同じ日の夕刻、森の中を彷徨っていたエイダ修道女を発見。姫君と馬車とはぐれて、半狂乱になって歩き回っていた模様。エイダ修道女の話では――」
「それはさっき聞いた。嘘くさいから二度はいい。姫君はどこで発見された?」
「はい、四日の夜、太陰宮の方に辺境の尼僧院より迷子の少女が発熱して熱が下がらないと応援の要請があり、その尼僧院がエイダ発見の森に近く、さらに年齢も一致するとのことで、太陰宮から医師同道の上、確認に出向きました。そして五日の午後、〈星の雫〉尼僧院にて、迷子の少女に治療を施しますが、意識がないために確認には至らず、だが着ている物や髪の色などから、ほぼ間違いないとエイダを呼び寄せ、果たして姫君と確認された……」
メイローズがちらりと恭親王を見ると、微かに眉を寄せ、長い睫毛を伏せるようにして話に聞き入っている。物静かな様子とは裏腹に金色の光の龍がひっきりなしに周囲を飛び回り、メイローズを威嚇するように無言で吠えている。
「……翌六日の朝に、治療の甲斐あってようやく意識を取り戻すも、声を失っていた……」
「その、尼僧院に連れて来た者がいるだろう。それはどうなった?」
ピリピリした声で恭親王に指摘され、はっとしてメイローズがメモを繰る。
「はい。ええと、〈星の雫〉尼僧院というのは老女ばかりの貧乏尼僧院でして、近隣の……と言いましても徒歩で二刻離れた太陽宮の外れの僧院から、手伝いの見習い僧侶を頼んでおりました。それで、姫君を森で見つけて、背中に負ぶって連れてきたのがそこの見習い僧侶だったそうですが……それが……尼僧たちも熱を出した少女の世話でてんやわんやな状態だったそうで、しかもその迷子が西の王女だったことが発覚して、尼僧たちは恐慌状態になって、ろくな聴取も行えなかったそうなのです。結局その僧侶の名前がはっきりしません。後に近隣の僧院にも問い合わせたのですが、該当する者がいないと言われたそうです……」
ふーっと恭親王の口から吐息が漏れた。
「それで?」
「あ、はい。結局、姫君は見つかったものの、姫君の口がきけないため、何が起きたのかはわからないまま、姫君は修道院に戻されました。しかし、その後、神器が紛失していることに気づき、馬車の中や乳母、侍女の遺体の服、馬車周辺等をしらみつぶしに捜索したが神器は見つからず、馭者が奪って逃げたのではないかと……」
「どんなものか明らかになっていないのに、どうやって探す?」
恭親王のもっとな問いに、メイローズが頷いた。
「何でも、絶対にそれが神器であることがわかるのだと……」
「そんな馬鹿な」
「はあ。私もそう思いますが」
長く伏せていた目を開き、恭親王が軽く目を眇める。どこか、遠いところを見るような眼差しで、確かめるように聞いた。
「最後に一つだけ……姫君の、髪と、瞳の色は?」
メイローズは、ぱちぱちと瞬きして、しばし答えに窮した。今更、そんなことを聞くか?
「あの……姫君の髪と瞳の色については、釣書に明記してジュルチ僧正からすでにお渡ししているはずですが」
「え……?」
ぽかん、と恭親王がメイローズを見る。
「釣書?そんなもの、もらったっけ?」
「縁談なんですから、釣書ぐらいありますよ。肖像画もつければよろしかったんでしょうが、〈聖婚〉ではしきたりとして肖像画のやり取りはしないそうなので……」
恭親王が組んでいた脚をほどき、居住まいを正してぼりぼりと黒い髪を掻いた。
「……なんか、もらったような気がしてきた……でも……よく読まずに捨てた……」
「……わが主よ……いくらなんでも最低です」
「忙しかったんだ! 怒涛の三日間だったんだぞ!釣書なんて読んでられるか!」
逆切れする恭親王に呆れながら、メイローズは仕方なく、アデライード姫の容貌を説明した。
「西の女王家では代々、翡翠色の瞳と白金色の髪が受け継がれておりますそうで、姫君も見事に輝く白金色の御髪に、翡翠色の瞳をなさっておいででした。言っておきますけど、すごい美少女です! 修道院で質素にお暮らしで、香水臭くもありません! 以前、ちゃらちゃら着飾って、香水臭いのは嫌いだとか、仰っていましたが、姫君は絶対、そんなことありませんから! 口もきけないんです! お願いですから大切にしてあげてくださいよ!……姫君のあの、あの素晴らしい銀の〈王気〉と、わが主の美しい金の〈王気〉が調和したら、いったいどんな美しいことになるか! もう! 今からもう!楽しみで楽しみで!」
途中から熱を帯びて力説するメイローズにかなり引きながら、恭親王は自分の予想が当たったことを知り、つい無意識に懐手して隠しに入れた小箱を握りしめていた。
(だが……名前が違う……)
しばしの逡巡の後に、恭親王は懐から小さな箱を取り出し、ことん、とテーブルの上に置いた。
金色の〈王気〉はわずかに赤味を帯び、光の龍がせわしなく周囲を飛び回っている。
〈王気〉には持ち主の感情が素直に表れてしまう。表情や態度、声は誤魔化せても、〈王気〉は制御することができない。否、表面的に感情を制御すればするほど、押し込められた感情が〈王気〉となって溢れ出る。先ほど、氷の彫像のように凍てついていた時ですら、主の〈王気〉は金色の焔のように暴れ回っていた。今、自分を取り戻して平静を装ってはいるが、内面はひどく動揺しているらしい。
だが、主は心を読まれることを嫌う。感情が、自身では視認できない〈王気〉に現れていると、知らされるのを嫌う。メイローズは、主の動揺を読み取ったことを隠し、静かに話しかけた。
「葡萄酒が零れてしまいました。長靴の方は拭いましたが、脚衣はいかがですか?着替えを準備いたしましょうか」
「いや、いい。手が滑ったが、量は入っていなかったから、服の方は大丈夫だ。絨毯を汚してしまったな」
恭親王は落としたゴブレットを拾い上げ、それに自分で葡萄酒を注ぐと、今度は一気に飲み干した。男らしい喉ぼとけがごくんと動く。手の甲で口元を拭うと、肘掛椅子の背もたれに背中を預け、深く腰掛けて天井を仰いだ。
「見てもらいたいものとは……?」
「ああ。その前に、もう一度確認しておきたい……十年前の、アデライード姫の誘拐の顛末について」
恭親王がそう言うと、メイローズははっとして主のひざ元を離れ、後ろに下がってソファに座り直した。そして懐から使い込んだ帳面を出すと、長い指でそれを捲った。
「私も関係者より聞き取りをしておりますので、わかることでありましたら」
「手回しがいいな」
「重要な問題でございますからね」
メイローズが黄金の髪を揺らして微笑む。
「何からお話しいたしましょうか」
「まず……アデライード姫の誘拐はいつで、姫や馬車が発見された状況について」
メイローズは帳面の書付を辿って、読み上げた。
「ええと……十年前の十二月の初めになりますね。姫君は十二月の二日に〈港〉に到着し、そこで〈光の花〉修道院からの迎えの馬車に乗ります。王都からは乳母と侍女一人が着き従い、〈港〉までは護衛の騎士二人が付いていましたが、行先が男子禁制の修道院ですので、護衛たちはここで引き返しました」
肘掛椅子に頬杖をつき、長い脚を組んだ恭親王が眉を顰める。
「護衛も無しとは、危機意識の低いことだな」
「聖地の中で狙われることなど、ほとんどございませんからね。天のおひざ元で、わずか六歳の幼女を襲うような罰当たりなどいないと、皆が考えても不思議ではありません。……世話係としてエイダ修道女が同道し、馬車は太陰宮の月神殿に向かいます。ゆっくり走ってもその日の夜には到着するはずが、いっこうに到着しないため、〈光の花〉修道院が捜索を訴え出たのが翌三日の早朝です」
〈港〉周辺の繁華街を除けば、聖地の中で犯罪などほとんど発生しない。〈港〉を越えて太陰宮や太陽宮まで至ろうという者は、信心深い巡礼者や、信仰に生きることを決意した者ばかり。〈港〉以外では貨幣は通用しない――聖職者は貨幣に触れることが禁じられている――ので、大金を持ち込む者もいないから、盗賊も出ない。イフリート公爵が、よもや聖地で凶行に及ぶとは思わなかったのであろう。
「通報を受けた女戦士と僧兵たちは、総督府派遣の警備兵も協力の上、街道沿いを中心に広く捜索し、翌四日の昼過ぎに、太陽宮との境域に近い荒地の崖の下で、〈光の花〉修道院の馬車を発見しました。馬二頭と、馬車の中から乳母と侍女の遺体が見つかっていますが、馭者の姿はありませんでした」
さらにメイローズは自身の書いたメモを読み上げる。
「同じ日の夕刻、森の中を彷徨っていたエイダ修道女を発見。姫君と馬車とはぐれて、半狂乱になって歩き回っていた模様。エイダ修道女の話では――」
「それはさっき聞いた。嘘くさいから二度はいい。姫君はどこで発見された?」
「はい、四日の夜、太陰宮の方に辺境の尼僧院より迷子の少女が発熱して熱が下がらないと応援の要請があり、その尼僧院がエイダ発見の森に近く、さらに年齢も一致するとのことで、太陰宮から医師同道の上、確認に出向きました。そして五日の午後、〈星の雫〉尼僧院にて、迷子の少女に治療を施しますが、意識がないために確認には至らず、だが着ている物や髪の色などから、ほぼ間違いないとエイダを呼び寄せ、果たして姫君と確認された……」
メイローズがちらりと恭親王を見ると、微かに眉を寄せ、長い睫毛を伏せるようにして話に聞き入っている。物静かな様子とは裏腹に金色の光の龍がひっきりなしに周囲を飛び回り、メイローズを威嚇するように無言で吠えている。
「……翌六日の朝に、治療の甲斐あってようやく意識を取り戻すも、声を失っていた……」
「その、尼僧院に連れて来た者がいるだろう。それはどうなった?」
ピリピリした声で恭親王に指摘され、はっとしてメイローズがメモを繰る。
「はい。ええと、〈星の雫〉尼僧院というのは老女ばかりの貧乏尼僧院でして、近隣の……と言いましても徒歩で二刻離れた太陽宮の外れの僧院から、手伝いの見習い僧侶を頼んでおりました。それで、姫君を森で見つけて、背中に負ぶって連れてきたのがそこの見習い僧侶だったそうですが……それが……尼僧たちも熱を出した少女の世話でてんやわんやな状態だったそうで、しかもその迷子が西の王女だったことが発覚して、尼僧たちは恐慌状態になって、ろくな聴取も行えなかったそうなのです。結局その僧侶の名前がはっきりしません。後に近隣の僧院にも問い合わせたのですが、該当する者がいないと言われたそうです……」
ふーっと恭親王の口から吐息が漏れた。
「それで?」
「あ、はい。結局、姫君は見つかったものの、姫君の口がきけないため、何が起きたのかはわからないまま、姫君は修道院に戻されました。しかし、その後、神器が紛失していることに気づき、馬車の中や乳母、侍女の遺体の服、馬車周辺等をしらみつぶしに捜索したが神器は見つからず、馭者が奪って逃げたのではないかと……」
「どんなものか明らかになっていないのに、どうやって探す?」
恭親王のもっとな問いに、メイローズが頷いた。
「何でも、絶対にそれが神器であることがわかるのだと……」
「そんな馬鹿な」
「はあ。私もそう思いますが」
長く伏せていた目を開き、恭親王が軽く目を眇める。どこか、遠いところを見るような眼差しで、確かめるように聞いた。
「最後に一つだけ……姫君の、髪と、瞳の色は?」
メイローズは、ぱちぱちと瞬きして、しばし答えに窮した。今更、そんなことを聞くか?
「あの……姫君の髪と瞳の色については、釣書に明記してジュルチ僧正からすでにお渡ししているはずですが」
「え……?」
ぽかん、と恭親王がメイローズを見る。
「釣書?そんなもの、もらったっけ?」
「縁談なんですから、釣書ぐらいありますよ。肖像画もつければよろしかったんでしょうが、〈聖婚〉ではしきたりとして肖像画のやり取りはしないそうなので……」
恭親王が組んでいた脚をほどき、居住まいを正してぼりぼりと黒い髪を掻いた。
「……なんか、もらったような気がしてきた……でも……よく読まずに捨てた……」
「……わが主よ……いくらなんでも最低です」
「忙しかったんだ! 怒涛の三日間だったんだぞ!釣書なんて読んでられるか!」
逆切れする恭親王に呆れながら、メイローズは仕方なく、アデライード姫の容貌を説明した。
「西の女王家では代々、翡翠色の瞳と白金色の髪が受け継がれておりますそうで、姫君も見事に輝く白金色の御髪に、翡翠色の瞳をなさっておいででした。言っておきますけど、すごい美少女です! 修道院で質素にお暮らしで、香水臭くもありません! 以前、ちゃらちゃら着飾って、香水臭いのは嫌いだとか、仰っていましたが、姫君は絶対、そんなことありませんから! 口もきけないんです! お願いですから大切にしてあげてくださいよ!……姫君のあの、あの素晴らしい銀の〈王気〉と、わが主の美しい金の〈王気〉が調和したら、いったいどんな美しいことになるか! もう! 今からもう!楽しみで楽しみで!」
途中から熱を帯びて力説するメイローズにかなり引きながら、恭親王は自分の予想が当たったことを知り、つい無意識に懐手して隠しに入れた小箱を握りしめていた。
(だが……名前が違う……)
しばしの逡巡の後に、恭親王は懐から小さな箱を取り出し、ことん、とテーブルの上に置いた。
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