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5、女王家の神器
無理なお願い
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聖地でよく使われる常套句に、恭親王が古い記憶を呼び覚まされていた時、メイローズが咳払いして、話を戻した。
「実は、事態がやや緊迫しておりまして、少し無理なお願いをすることになるのですが……」
「無理だな。諦めろ」
すげなく断る恭親王に、メイローズが慌てる。
「まだ何も言っていないうちから、諦めないでください」
「お前が無理だと言うんだから、無理なんだろう。無理な願いなど、聞き入れられぬ」
「せめて話を聞いてください」
「しょうがないな。本当に無理なら断るぞ」
メイローズは溜息をついて話はじめる。この主には変なところで人の揚げ足を取る悪い癖がある。
「姫君の命が狙われております。……すでに何度も刺客が入り込んでおり、幸いにも事なきを得ておりますが、今の〈禁苑〉の警備体制では、お命をお守りするのが難しい情勢です」
メイローズの紺碧の瞳には怒りと焦燥が滲む。恭親王が双眸に鋭い光を湛え、尋ねる。
「ここにきて刺客の活動が顕著になったというのか?」
「はい。以前はお身の回りの物が探られるとか、毒が仕込まれるという形だったのですが、ここ十日ですでに二度、直接的な攻撃が加えられておりまして……」
「イフリート公爵か」
恭親王の問いに、メイローズが顎を引いた。
「おそらくは。……此度の〈聖婚〉の件が引き金になったようなのです」
「なるほど……公爵の手のものは相当近くに入り込んでいるのだな」
恭親王が皇帝から〈聖婚〉の命を受けてから今日まで、十日ほどしか経過していない。結婚相手である自分がようやく昨日、対岸のソリスティアに着いたばかりというのに、その間にすでに二度も刺客の襲撃を受けているのである。太陰宮自身が刺客を飼っているとしか思えない情報の速さだ。
「周囲の者には気をつけているのですが、どうやらイフリートの〈黒影〉が動いているようなのです」
「イフリートの〈黒影〉……」
恭親王が呟いた。イフリート公爵家は代々〈黒影〉と呼ばれる特殊な技能を持つ集団を抱え、隠密活動を司る一族だ。イフリート公爵に絶対的な忠誠を誓うプロの暗殺集団であり、〈禁苑〉の女戦士や僧兵では対応できない。
「隠密を二人ほど貸そう。……今日これからでも、姫君の周囲を密かに守らせる」
恭親王はパチンと指を鳴らす。
「そこにいるのだろう?――カイト?」
「――は。」
恭親王の背後でふわりと影が揺れ、黒ずくめの男が膝をついていた。恭親王もまた、表面には出ない隠密仕事をする暗部を抱えている。目には目を、隠密には隠密を。男子禁制の修道院だろうが、潜入に問題はない。
「聞いた通りだ。すぐに聖地に赴き、アデライード姫の身辺を警護するように」
「承知いたしました」
男はひそやかに言うと、そのまま掻き消すように姿を消した。
「ありがとうございます」
メイローズが謝辞を述べるのに、恭親王は苦笑する。
「何、所詮は借り物の隠密だ。デュクトの子供たちが成人するまでの仮の主だからな。せいぜい利用させてもらうさ。ただ、アデライード姫周辺の間者の洗い出しには、人手が足りないな。まずは姫の安全を優先させよう」
もともと、カイトら暗部は、恭親王の死んだ正傅デュクトの配下であった。デュクトが戦闘に命を落とし、その子がまだ幼いことから、暗部を恭親王が仮に預かっているに過ぎない。
「では、デュクト殿のお子が成人なすった暁には、お召し抱えになられるのですね」
「もう私は帝位のレースから脱落したから、ソアレス家の嫡流が仕えてくれるとは思えぬがな」
恭親王の正傅デュクトは、代々皇太子の養育を担当するソアレス家という東の貴種の中でも格の高い家の嫡流だった。ソアレス家は帝位を嗣ぐ皇子を護るために、代々独自に暗部を擁してきたのである。〈聖婚〉の皇子としてソリスティア総督になった恭親王が、帝位を継ぐ可能性はすでにない以上、ソアレス家の嫡流であるデュクトの子が恭親王付きになることは、おそらくないだろう。
「デュクトの息子はまだ十を過ぎるかどうかの年齢のはずだ。あいつが成人して、返してくれと言うまでは使い倒してやるさ」
恭親王は形のよい唇の口角をわずかに上に向けた。メイローズは主の処置に感謝しながら、更なる要求をした。
「暗部が守るといっても太陰宮の修道院の警備では心もとないのです。なるべく早く正式なご婚約式を行い、婚約後は姫君を総督府別邸でお匿いいただきたい」
ソリスティア総督府は、聖地内に総督府の出先機関を持っている。運営も警備も総督府の手で行い、一種の治外法権である。聖地の守護者であるソリスティア総督府だからこその、特権であった。その別邸で姫君の安全を確保したい、それがメイローズの〈無理なお願い〉だった。
「そんなのはたいしたことではないが……婚約後なら私の自由にしても別に構わないだろう?なんなら総督府に連れてきても……」
「いいわけないでしょう」
メイローズがぴしゃりと言い放つ。
「陰陽宮にて〈鏡の誓い〉の儀の後、〈初契りの儀〉をお済ませいただくまでは、不埒なことは慎んでいただかねばなりません」
つまり、目の前に餌をぶら下げられて、恭親王に蛇の生殺し状態で耐えろという、〈無理なお願い〉なのだ。
「わが主が意外とこらえ性がないことは、十分承知の上で、強いてお願いしているのです」
「ずいぶん、堅苦しいのだな。……どうせ結婚するんだし、純潔を守らなくても別に困らないだろう?」
メイローズが断固首を振る。
「陰陽宮での〈初契りの儀〉の後、敷布を婚姻の証として回収し、陰陽宮にて保管いたします。そこに姫君の純潔の証がないと、みっともないことになります」
「そんなものを大事に保管するな。宦官どもめ、やっぱり変態だな」
恭親王が露骨に気味悪そうな顔でメイローズを見ているというのに、メイローズはしゃあしゃあとしたものだ。
「ちなみに〈初契りの儀〉には立会人が同席いたしますので、そのおつもりで」
ぶほっと恭親王が葡萄酒を吹きだす横で、トルフィンが「公開初夜……」と呟いた。
げほげほと葡萄酒に咽せる恭親王が、苦しさに涙目になってメイローズを睨むが、メイローズは涼しげに受け流している。見かねたトルフィンが水を差しだし、背中をさする。
ようやく呼吸が落ち着いて、恭親王が聞いた。
「それで、姫君との婚約式はいつにするのだ?」
「では明日にでも太陰宮にお運びいただき……」
「「「明日!!!」」」
済ました顔で言うメイローズに、恭親王だけでなく、トルフィンと、普段は無口なフリをしているゾラまでが素っ頓狂な声を上げた。恭親王はしばし茫然とメイローズを見つめた上で、背後の侍従たちに言った。
「メイローズの言う無理なお願いが、無理じゃないはずはなかったな。どう思う?無理だろう、そんなの」
「メイローズ……陰陽宮に入ってますます性格が悪くなったんじゃないか?」
トルフィンの言葉に、ゾラも大きく頷く。
「現実問題として、明日は無理っすよ。姫君を別邸に迎えるのであれば、側付きの者の手配も必要になるっしょ。準備に三日は欲しいっすね」
恭親王が苦虫を噛み潰したような顔で腕を組んで思案していると、メイローズは言う。
「姫君の身の回りのことはすべてエイダ修道女がしておりまして、新たに抱えいれる必要はございませんよ」
しかし、恭親王はきっぱりと首を振った。
「いや、全てこちらで準備する。太陰宮の者は誰も総督別邸に入れるな」
「実は、事態がやや緊迫しておりまして、少し無理なお願いをすることになるのですが……」
「無理だな。諦めろ」
すげなく断る恭親王に、メイローズが慌てる。
「まだ何も言っていないうちから、諦めないでください」
「お前が無理だと言うんだから、無理なんだろう。無理な願いなど、聞き入れられぬ」
「せめて話を聞いてください」
「しょうがないな。本当に無理なら断るぞ」
メイローズは溜息をついて話はじめる。この主には変なところで人の揚げ足を取る悪い癖がある。
「姫君の命が狙われております。……すでに何度も刺客が入り込んでおり、幸いにも事なきを得ておりますが、今の〈禁苑〉の警備体制では、お命をお守りするのが難しい情勢です」
メイローズの紺碧の瞳には怒りと焦燥が滲む。恭親王が双眸に鋭い光を湛え、尋ねる。
「ここにきて刺客の活動が顕著になったというのか?」
「はい。以前はお身の回りの物が探られるとか、毒が仕込まれるという形だったのですが、ここ十日ですでに二度、直接的な攻撃が加えられておりまして……」
「イフリート公爵か」
恭親王の問いに、メイローズが顎を引いた。
「おそらくは。……此度の〈聖婚〉の件が引き金になったようなのです」
「なるほど……公爵の手のものは相当近くに入り込んでいるのだな」
恭親王が皇帝から〈聖婚〉の命を受けてから今日まで、十日ほどしか経過していない。結婚相手である自分がようやく昨日、対岸のソリスティアに着いたばかりというのに、その間にすでに二度も刺客の襲撃を受けているのである。太陰宮自身が刺客を飼っているとしか思えない情報の速さだ。
「周囲の者には気をつけているのですが、どうやらイフリートの〈黒影〉が動いているようなのです」
「イフリートの〈黒影〉……」
恭親王が呟いた。イフリート公爵家は代々〈黒影〉と呼ばれる特殊な技能を持つ集団を抱え、隠密活動を司る一族だ。イフリート公爵に絶対的な忠誠を誓うプロの暗殺集団であり、〈禁苑〉の女戦士や僧兵では対応できない。
「隠密を二人ほど貸そう。……今日これからでも、姫君の周囲を密かに守らせる」
恭親王はパチンと指を鳴らす。
「そこにいるのだろう?――カイト?」
「――は。」
恭親王の背後でふわりと影が揺れ、黒ずくめの男が膝をついていた。恭親王もまた、表面には出ない隠密仕事をする暗部を抱えている。目には目を、隠密には隠密を。男子禁制の修道院だろうが、潜入に問題はない。
「聞いた通りだ。すぐに聖地に赴き、アデライード姫の身辺を警護するように」
「承知いたしました」
男はひそやかに言うと、そのまま掻き消すように姿を消した。
「ありがとうございます」
メイローズが謝辞を述べるのに、恭親王は苦笑する。
「何、所詮は借り物の隠密だ。デュクトの子供たちが成人するまでの仮の主だからな。せいぜい利用させてもらうさ。ただ、アデライード姫周辺の間者の洗い出しには、人手が足りないな。まずは姫の安全を優先させよう」
もともと、カイトら暗部は、恭親王の死んだ正傅デュクトの配下であった。デュクトが戦闘に命を落とし、その子がまだ幼いことから、暗部を恭親王が仮に預かっているに過ぎない。
「では、デュクト殿のお子が成人なすった暁には、お召し抱えになられるのですね」
「もう私は帝位のレースから脱落したから、ソアレス家の嫡流が仕えてくれるとは思えぬがな」
恭親王の正傅デュクトは、代々皇太子の養育を担当するソアレス家という東の貴種の中でも格の高い家の嫡流だった。ソアレス家は帝位を嗣ぐ皇子を護るために、代々独自に暗部を擁してきたのである。〈聖婚〉の皇子としてソリスティア総督になった恭親王が、帝位を継ぐ可能性はすでにない以上、ソアレス家の嫡流であるデュクトの子が恭親王付きになることは、おそらくないだろう。
「デュクトの息子はまだ十を過ぎるかどうかの年齢のはずだ。あいつが成人して、返してくれと言うまでは使い倒してやるさ」
恭親王は形のよい唇の口角をわずかに上に向けた。メイローズは主の処置に感謝しながら、更なる要求をした。
「暗部が守るといっても太陰宮の修道院の警備では心もとないのです。なるべく早く正式なご婚約式を行い、婚約後は姫君を総督府別邸でお匿いいただきたい」
ソリスティア総督府は、聖地内に総督府の出先機関を持っている。運営も警備も総督府の手で行い、一種の治外法権である。聖地の守護者であるソリスティア総督府だからこその、特権であった。その別邸で姫君の安全を確保したい、それがメイローズの〈無理なお願い〉だった。
「そんなのはたいしたことではないが……婚約後なら私の自由にしても別に構わないだろう?なんなら総督府に連れてきても……」
「いいわけないでしょう」
メイローズがぴしゃりと言い放つ。
「陰陽宮にて〈鏡の誓い〉の儀の後、〈初契りの儀〉をお済ませいただくまでは、不埒なことは慎んでいただかねばなりません」
つまり、目の前に餌をぶら下げられて、恭親王に蛇の生殺し状態で耐えろという、〈無理なお願い〉なのだ。
「わが主が意外とこらえ性がないことは、十分承知の上で、強いてお願いしているのです」
「ずいぶん、堅苦しいのだな。……どうせ結婚するんだし、純潔を守らなくても別に困らないだろう?」
メイローズが断固首を振る。
「陰陽宮での〈初契りの儀〉の後、敷布を婚姻の証として回収し、陰陽宮にて保管いたします。そこに姫君の純潔の証がないと、みっともないことになります」
「そんなものを大事に保管するな。宦官どもめ、やっぱり変態だな」
恭親王が露骨に気味悪そうな顔でメイローズを見ているというのに、メイローズはしゃあしゃあとしたものだ。
「ちなみに〈初契りの儀〉には立会人が同席いたしますので、そのおつもりで」
ぶほっと恭親王が葡萄酒を吹きだす横で、トルフィンが「公開初夜……」と呟いた。
げほげほと葡萄酒に咽せる恭親王が、苦しさに涙目になってメイローズを睨むが、メイローズは涼しげに受け流している。見かねたトルフィンが水を差しだし、背中をさする。
ようやく呼吸が落ち着いて、恭親王が聞いた。
「それで、姫君との婚約式はいつにするのだ?」
「では明日にでも太陰宮にお運びいただき……」
「「「明日!!!」」」
済ました顔で言うメイローズに、恭親王だけでなく、トルフィンと、普段は無口なフリをしているゾラまでが素っ頓狂な声を上げた。恭親王はしばし茫然とメイローズを見つめた上で、背後の侍従たちに言った。
「メイローズの言う無理なお願いが、無理じゃないはずはなかったな。どう思う?無理だろう、そんなの」
「メイローズ……陰陽宮に入ってますます性格が悪くなったんじゃないか?」
トルフィンの言葉に、ゾラも大きく頷く。
「現実問題として、明日は無理っすよ。姫君を別邸に迎えるのであれば、側付きの者の手配も必要になるっしょ。準備に三日は欲しいっすね」
恭親王が苦虫を噛み潰したような顔で腕を組んで思案していると、メイローズは言う。
「姫君の身の回りのことはすべてエイダ修道女がしておりまして、新たに抱えいれる必要はございませんよ」
しかし、恭親王はきっぱりと首を振った。
「いや、全てこちらで準備する。太陰宮の者は誰も総督別邸に入れるな」
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