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13、認証式
戦闘開始
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洞窟に突っ込んできたのは〈不完全〉だったと思われる者のうち、四体。うち、最初に防御魔法陣に激突した一体は弾き飛ばされたが、次の者は衝撃で弱った箇所を正確に狙って魔法陣をこじ開けた。
マニ僧都の魔法陣が玻璃の破片のように砕け、光を弾いてそのまま消滅する。だがそれを読んでいたシウリンは、即座に聖剣を振って陽の〈気〉をまき散らす。その風圧で、魔法陣を割った黒いローブの男は吹き飛ばされ、次に飛び込んできた者もまた、一旦、湖の上に退避を余儀なくされる。最後の一体が辛うじて堪えて、洞窟の端に脚をかけたが、そこを狙いすまして、シウリンが真っすぐ、剣から光の波動を放つ。
聖剣の先端に発した光の帯が黒いローブの男の心臓をぶち抜き、男はジュワっと金色の〈王気〉に溶かされて、まるで熱で蒸発するかのように消えた。
すぐさまマニ僧都がもう一度、防御の魔法陣を張る。今度はもう少し威力を高め、厚みを増した。……維持するには魔力を費やすが、持ちこたえられなければ意味がない。
アデライードは相変わらず周囲には目もくれず、結界の修復に没頭している。東南の塔は修復が終わり、無傷だった東北の塔とともに、頂点まで網の目のように光が取り巻いている。
(――次は西北の塔……)
アデライードの額には玉の汗が浮かぶ。周りの喧騒は耳に入らない。何かが視界でチカチカ光っているが、今は気にしている場合でもなかった。
アデライードはふと、まだ膨らんでもいない自分の腹に触れる。
残る二つの塔を修復したら、魔力を使い過ぎてしまうかもしれない。でも、結界はどうしても今、修復しなければならないのだ。
(――お願い、頑張って……)
アデライードは西北の塔に意識を集中した。
七体のうちの三体はそのまま上昇を続け、真上から月神殿を狙う。
月神殿の大広間にいた廉郡王は、首筋の警告を感知すると全軍に警戒を呼び掛けた。
「何か来るぞ! よくわかんねぇけど! 上だ!」
ちょうど、周辺を警戒していた見張りが異常に気付き、呼子を鳴らす。斥候が広間に走り込む。
「来ました! 黒いローブの魔術師らしき者が!上から!」
「王城の反対側から、小舟で大勢向かってきます!」
その報告に、廉郡王の唇の端が上を向き、聖別された剣を抜いて構える。
「来た来た来た―――っ! ついにおいでなすったぜ! てめぇらほんとに運がいいぜ! 魔物|殺(や)り放題とか、滅多にねぇ一大チャンスだぜ! いいか、一人残らず討ち漏らすなよ!」
「ちょ、殿下! 落ちついてくださいよ! それじゃあ全員討ち漏らしちゃいますよ!」
隣でやはり剣を抜いたユキエルが、思わず突っ込む。十七歳のユキエルにとって、実質的な初陣になるが、主の冗談に緊張がほぐれたらしい。
「うるせえ! こまけぇこたあいいんだよ! 何でもいいから斬って斬って斬りまくれ、野郎ども!」
「大雑把すぎるー!」
廉郡王の適当過ぎる命令に、だが聖騎士たちはみな慣れたものだ。「応(オウ)!」と怒号を響かせ、聖騎士たちも聖別された剣を抜く。
と、ガッシャ―ンと頭上から破壊音がして、何かが月神殿に侵入したのがわかった。
廉郡王の横にいたジュルチ僧正が天井を見上げ、叫ぶ。
「魔術師が来る!」
マニ僧都の魔法陣が玻璃の破片のように砕け、光を弾いてそのまま消滅する。だがそれを読んでいたシウリンは、即座に聖剣を振って陽の〈気〉をまき散らす。その風圧で、魔法陣を割った黒いローブの男は吹き飛ばされ、次に飛び込んできた者もまた、一旦、湖の上に退避を余儀なくされる。最後の一体が辛うじて堪えて、洞窟の端に脚をかけたが、そこを狙いすまして、シウリンが真っすぐ、剣から光の波動を放つ。
聖剣の先端に発した光の帯が黒いローブの男の心臓をぶち抜き、男はジュワっと金色の〈王気〉に溶かされて、まるで熱で蒸発するかのように消えた。
すぐさまマニ僧都がもう一度、防御の魔法陣を張る。今度はもう少し威力を高め、厚みを増した。……維持するには魔力を費やすが、持ちこたえられなければ意味がない。
アデライードは相変わらず周囲には目もくれず、結界の修復に没頭している。東南の塔は修復が終わり、無傷だった東北の塔とともに、頂点まで網の目のように光が取り巻いている。
(――次は西北の塔……)
アデライードの額には玉の汗が浮かぶ。周りの喧騒は耳に入らない。何かが視界でチカチカ光っているが、今は気にしている場合でもなかった。
アデライードはふと、まだ膨らんでもいない自分の腹に触れる。
残る二つの塔を修復したら、魔力を使い過ぎてしまうかもしれない。でも、結界はどうしても今、修復しなければならないのだ。
(――お願い、頑張って……)
アデライードは西北の塔に意識を集中した。
七体のうちの三体はそのまま上昇を続け、真上から月神殿を狙う。
月神殿の大広間にいた廉郡王は、首筋の警告を感知すると全軍に警戒を呼び掛けた。
「何か来るぞ! よくわかんねぇけど! 上だ!」
ちょうど、周辺を警戒していた見張りが異常に気付き、呼子を鳴らす。斥候が広間に走り込む。
「来ました! 黒いローブの魔術師らしき者が!上から!」
「王城の反対側から、小舟で大勢向かってきます!」
その報告に、廉郡王の唇の端が上を向き、聖別された剣を抜いて構える。
「来た来た来た―――っ! ついにおいでなすったぜ! てめぇらほんとに運がいいぜ! 魔物|殺(や)り放題とか、滅多にねぇ一大チャンスだぜ! いいか、一人残らず討ち漏らすなよ!」
「ちょ、殿下! 落ちついてくださいよ! それじゃあ全員討ち漏らしちゃいますよ!」
隣でやはり剣を抜いたユキエルが、思わず突っ込む。十七歳のユキエルにとって、実質的な初陣になるが、主の冗談に緊張がほぐれたらしい。
「うるせえ! こまけぇこたあいいんだよ! 何でもいいから斬って斬って斬りまくれ、野郎ども!」
「大雑把すぎるー!」
廉郡王の適当過ぎる命令に、だが聖騎士たちはみな慣れたものだ。「応(オウ)!」と怒号を響かせ、聖騎士たちも聖別された剣を抜く。
と、ガッシャ―ンと頭上から破壊音がして、何かが月神殿に侵入したのがわかった。
廉郡王の横にいたジュルチ僧正が天井を見上げ、叫ぶ。
「魔術師が来る!」
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