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5,裏切り
シウリンの激怒
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「本気で、ミカエラ様とシウリンを結婚させるつもりなんですか?」
「重臣たちはもう、結婚式へと動いている。シウリンの体調が戻り次第、式を挙げるつもりでいる」
戻ってきたユーリと廊下で行き会ったシュテファンは、近くの空き部屋に入って、シウリンの食事の到着を待った。
「いくら何でも急すぎます。あそこまで拒絶しているのを無理強いすれば、あるいは――」
考えられないことではあるが、発作的に自殺でもしかねないと、ユーリは心配する。もともと、ユーリは酒に薬を入れてシウリンを酔い潰すのに反対であった。
「俺たちは、シウリンに命を救われた。彼に遇わなければ、確実に死んでいたんです」
その、恩を仇で返すに等しい行為に、ユーリはさすがに胸が痛んでいた。
「……命まではと思うが、俺も、あそこまで激烈に拒絶するとは思わなかった」
もともと、発案したのは老臣の一人であるが、了承して策を練ったのはシュテファンだ。
「別に、処女を奪うわけでもなく、ただ結婚に対して逃げ道を塞ぐだけのつもりだったのだがな」
シウリンは世慣れぬ風ではあったが、どこか、男同士の勘のようなものが、この男は相当に女性経験を積んでいると告げていた。
井戸端で裸になって水浴びをし、濡れた髪を掻き上げる仕草。服を身に着ける時の何とも言えないしどけない様子。全てが、自分が異性に愛されるのを知っている男のものだった。何人もの女に、寝台で歓喜の声を上げさせてきたに違いない。だから、事が成って抜き差しならなくなれば、彼もガルシア家の事情を汲んで、ミカエラとの結婚を承諾するのではないかと、シュテファンは思っていた。
「――中身は十二歳なんです。俺も憶えがあります。一番、潔癖な時期ですよね。……命を助けたはずの俺たちに裏切られたことも、ショックだったのかもしれません……」
大人の分別と経験を持つ彼であれば、不快に思いながらも、男の責任として結婚を了承しただろうが、――いやそもそも、こんなにあっさりと、罠にかかりはしなかっただろう――十二歳のシウリンの潔癖さの前には、ガルシア領の窮状など、何の意味ももたない。
「とにかく、今はシウリンも頭に血がのぼっているが……。結婚式までに、何とか説得を続けるしかない。あの、子獅子はどうした?」
「レオンが、こちらに連れて向かっています」
ちょうど、子獅子を抱いたレオンが廊下を速足でやって来るのが見えて、二人は顔を見合わせる。
「ユーリ、腹を括れ。シウリンを説得する以外に、わがガルシア領が生き残る道はないのだ」
「隊長……」
二人の姿に気づいて小走りになるレオンが扉の前まで来るのを待って、二人はシウリンの部屋の扉を開けた。
「シウリン、気分はどう?」
ジブリールを抱いたレオンが恐る恐る声をかける。シウリンはレオンの腕の中のジブリールを見て、上掛けを跳ね上げて起き上がり、ジブリールに手を伸ばす。ジブリールの方も、シウリンの姿を見て、レオンの腕の中で身を捩って暴れ始めた。
「ジブリール! ごめん、元気だった?」
飛びつくようにシウリンに駆け寄るジブリールを抱き寄せ、シウリンが言う。
「よかった、君を恋しがって、ご飯を食べなくなっちゃって……どうしようかと思ってたんだよ」
レオンの言葉にぎろりとレオンと、その背後に立つ、ユーリをシュテファンを睨みつける。
「ジブリール、すまなかったね。寂しい思いをさせて」
ジブリールの白い毛並みに頬ずりして、シウリンが言う。
「なんか、熱が下がらないって聞いたけど。疲れが溜まってたんだね?」
レオンが心配そうに言うが、シウリンは眉を顰める。
「違うよ。おかしな薬入りの酒を飲まされたせいだよ」
「薬?」
「そこの人たちにさ。命を助けてもらったお礼だって呼ばれて、のこのこついていったら、このザマさ。もう、胃の中がひっくり返るくらい、吐いたよ。最低だよ」
何も知らないレオンは、困惑したようにユーリとシュテファンを見る。二人も気まずそうだが、しかし反論はしなかった。
そうこうするうちに、侍女が粥の乗った脚付きの盆を運んできて、寝台に乗せて下がる。シウリンはそれを胡散臭げに見下ろして、言った。
「下げてよ。こんな城の食べ物、二度と食べたくない」
「シウリン、それにはもう、何も入れていない!」
「信用できない。出てけって言ったはずだよ? 顔も見たくないし、出て行ってよ」
そのやり取りから、酒に薬を盛ったのは本当らしいとレオンも察して、蒼白になる。
シウリンの盆の片隅には、ジブリール用の肉も載っていたので、シウリンはまず、ジブリールにそれを食べさせてやる。フンフンと匂いを嗅いで、ジブリールはその肉を食べ始める。
「エールライヒはどうしてるの?」
シウリンの問いに、レオンが、昼間は外で自分で餌をとり、夜はシウリンの部屋で寝ていたと言う。レオンが窓を開け、シウリンが甲高い指笛を鳴らすと、しばらくして、青い空に黒い点が現れて、みるみる近づいてくる。バサリ、と彼の黒い鷹は、過たずに主人のいる窓を探し当て、彼が伸ばした腕にに止まる。
「苦労かけたね、エールライヒ」
シウリンが黒い羽根を撫でてやると、エールライヒも甘えたようにピイと鳴いた。
食事をしようとしないシウリンに、ユーリが再度言う。
「シウリン、信じられないかもしれないが、本当に、その粥はただの粥だ。俺が毒見をしてもいい。だから食べてくれないか。食べなければ、治るものも治らない」
だがシウリンは氷のように冷たい眼差しで、ユーリとシュテファンをじっと見ている。そこにはもう、「信用」とか「信頼」というものが、欠片もなかった。
その冷たい雰囲気にレオンも言う。
「シウリン、どういうことか、俺わかんないけど、俺も毒見するから、お願いだから、食べてよ、ね?」
シウリンはそれでもまだ、敵意の籠った眼差しで、疑わし気にユーリたちを睨んでいたが、だが、仕方なく匙をとって牛乳で煮た粥を掬い匂いを嗅ぐ。少しだけ口に含み、吟味するように舌でしばらく転がしてから、不愉快そうにゆっくりと食べ始めた。
食事を始めたシウリンにほっとしたレオンが、気まずい雰囲気を何とかしようと、シウリンに尋ねた。
「ミカエラ様と結婚するんだってね?」
「しないよ」
一言のもとに退けられ、レオンが目を瞠る。
「でも……その、明後日にも結婚式だって……」
「レオン、その話は――」
ガシャン、とシウリンが匙を投げ捨て、ギラギラした瞳でユーリとシュテファンを睨みつける。
「僕は結婚しないと言ってる!」
「そうはいかないんだ、シウリン。お前はミカエラ様と寝て、純潔を奪ったのだから――」
「僕を罠にかけ、酒に薬を入れて! そんな卑怯なやり方で!」
「卑怯だろうが何だろうが、寝た以上は男なら責任を取れ!」
「嫌だ――! あんたたちのやってることは、美人局と同じだ!」
「それ以上ミカエラ様を愚弄するのであれば――」
シュテファンがさすがに怒りを露わにするが、シウリンも負けなかった。
「ミカエラを愚弄しているのは、あんたたちじゃないか! 彼女を追い込んで、こんなことをさせた。口では姫様なんて言いながら、ただの子供を産む道具か何かだと思ってる!……本当に、彼女のことを大事に思うなら、こんな卑怯なやり口で、彼女自身に身体を張らせるなんて、させなかっただろうに! こんな家来のいる領地なんて、僕なら御免だね!」
そう、指摘されてしまえば、確かにその通りであった。
どこかに、ミカエラを単なる血筋だけの存在と、軽んずる部分がなかったか――。
シュテファンは大きく息を吸い込んで、だがシウリンに宣言する。
「シウリン、我らガルシア領の者にも、二千年守り続けてきた矜持があるのだ。ガルシア家の当主を戴き、辺境を魔物より守る。――そのためには、何者をも顧みないつもりだ。ガルシア家に必要なのは、おぬしのような強い魔力を持つ跡取りなのだ。おぬしを逃せば、もう、二度と得られぬとまで、我々は思い詰めておる。ガルシア領民十万人の命のためにも、どうか頼む」
だがシウリンはそれには何も答えず、不信感に満ち満ちた視線で彼らを睨みつけるだけだった。
精神的ショックとそれまでの疲労とで、シウリンの体力はギリギリであった。もともと、精神的なプレッシャーが胃に来やすいタイプの上に、怪しい薬を飲み慣れぬ強い酒に入れられたせいで、シウリンの胃は空っぽ、牛乳粥も半分しか食べられなかった。何か胃薬のようなものが添えてあったが、今さらそんなものを飲む気もせず、シウリンはシュテファンらを拒むように寝台に横たわり、上掛けを頭から被る。その枕許にジブリールが丸くなり、エールライヒは少し開いた窓枠に止まっている。
「三日後に、披露の宴を開く予定にしている。それまでに、身体を労わってくれ」
もう決まったことで、変更はないとシュテファンが言い、ユーリとレオンを促して部屋を出て行く。最後にレオンが小さな声で、言った。
「……ごめんね、シウリン。でも、ミカエラ様は君が好きなんだと思うの。だから……できれば愛してあげて」
シウリンは、だがそれにも答えなかった。
「重臣たちはもう、結婚式へと動いている。シウリンの体調が戻り次第、式を挙げるつもりでいる」
戻ってきたユーリと廊下で行き会ったシュテファンは、近くの空き部屋に入って、シウリンの食事の到着を待った。
「いくら何でも急すぎます。あそこまで拒絶しているのを無理強いすれば、あるいは――」
考えられないことではあるが、発作的に自殺でもしかねないと、ユーリは心配する。もともと、ユーリは酒に薬を入れてシウリンを酔い潰すのに反対であった。
「俺たちは、シウリンに命を救われた。彼に遇わなければ、確実に死んでいたんです」
その、恩を仇で返すに等しい行為に、ユーリはさすがに胸が痛んでいた。
「……命まではと思うが、俺も、あそこまで激烈に拒絶するとは思わなかった」
もともと、発案したのは老臣の一人であるが、了承して策を練ったのはシュテファンだ。
「別に、処女を奪うわけでもなく、ただ結婚に対して逃げ道を塞ぐだけのつもりだったのだがな」
シウリンは世慣れぬ風ではあったが、どこか、男同士の勘のようなものが、この男は相当に女性経験を積んでいると告げていた。
井戸端で裸になって水浴びをし、濡れた髪を掻き上げる仕草。服を身に着ける時の何とも言えないしどけない様子。全てが、自分が異性に愛されるのを知っている男のものだった。何人もの女に、寝台で歓喜の声を上げさせてきたに違いない。だから、事が成って抜き差しならなくなれば、彼もガルシア家の事情を汲んで、ミカエラとの結婚を承諾するのではないかと、シュテファンは思っていた。
「――中身は十二歳なんです。俺も憶えがあります。一番、潔癖な時期ですよね。……命を助けたはずの俺たちに裏切られたことも、ショックだったのかもしれません……」
大人の分別と経験を持つ彼であれば、不快に思いながらも、男の責任として結婚を了承しただろうが、――いやそもそも、こんなにあっさりと、罠にかかりはしなかっただろう――十二歳のシウリンの潔癖さの前には、ガルシア領の窮状など、何の意味ももたない。
「とにかく、今はシウリンも頭に血がのぼっているが……。結婚式までに、何とか説得を続けるしかない。あの、子獅子はどうした?」
「レオンが、こちらに連れて向かっています」
ちょうど、子獅子を抱いたレオンが廊下を速足でやって来るのが見えて、二人は顔を見合わせる。
「ユーリ、腹を括れ。シウリンを説得する以外に、わがガルシア領が生き残る道はないのだ」
「隊長……」
二人の姿に気づいて小走りになるレオンが扉の前まで来るのを待って、二人はシウリンの部屋の扉を開けた。
「シウリン、気分はどう?」
ジブリールを抱いたレオンが恐る恐る声をかける。シウリンはレオンの腕の中のジブリールを見て、上掛けを跳ね上げて起き上がり、ジブリールに手を伸ばす。ジブリールの方も、シウリンの姿を見て、レオンの腕の中で身を捩って暴れ始めた。
「ジブリール! ごめん、元気だった?」
飛びつくようにシウリンに駆け寄るジブリールを抱き寄せ、シウリンが言う。
「よかった、君を恋しがって、ご飯を食べなくなっちゃって……どうしようかと思ってたんだよ」
レオンの言葉にぎろりとレオンと、その背後に立つ、ユーリをシュテファンを睨みつける。
「ジブリール、すまなかったね。寂しい思いをさせて」
ジブリールの白い毛並みに頬ずりして、シウリンが言う。
「なんか、熱が下がらないって聞いたけど。疲れが溜まってたんだね?」
レオンが心配そうに言うが、シウリンは眉を顰める。
「違うよ。おかしな薬入りの酒を飲まされたせいだよ」
「薬?」
「そこの人たちにさ。命を助けてもらったお礼だって呼ばれて、のこのこついていったら、このザマさ。もう、胃の中がひっくり返るくらい、吐いたよ。最低だよ」
何も知らないレオンは、困惑したようにユーリとシュテファンを見る。二人も気まずそうだが、しかし反論はしなかった。
そうこうするうちに、侍女が粥の乗った脚付きの盆を運んできて、寝台に乗せて下がる。シウリンはそれを胡散臭げに見下ろして、言った。
「下げてよ。こんな城の食べ物、二度と食べたくない」
「シウリン、それにはもう、何も入れていない!」
「信用できない。出てけって言ったはずだよ? 顔も見たくないし、出て行ってよ」
そのやり取りから、酒に薬を盛ったのは本当らしいとレオンも察して、蒼白になる。
シウリンの盆の片隅には、ジブリール用の肉も載っていたので、シウリンはまず、ジブリールにそれを食べさせてやる。フンフンと匂いを嗅いで、ジブリールはその肉を食べ始める。
「エールライヒはどうしてるの?」
シウリンの問いに、レオンが、昼間は外で自分で餌をとり、夜はシウリンの部屋で寝ていたと言う。レオンが窓を開け、シウリンが甲高い指笛を鳴らすと、しばらくして、青い空に黒い点が現れて、みるみる近づいてくる。バサリ、と彼の黒い鷹は、過たずに主人のいる窓を探し当て、彼が伸ばした腕にに止まる。
「苦労かけたね、エールライヒ」
シウリンが黒い羽根を撫でてやると、エールライヒも甘えたようにピイと鳴いた。
食事をしようとしないシウリンに、ユーリが再度言う。
「シウリン、信じられないかもしれないが、本当に、その粥はただの粥だ。俺が毒見をしてもいい。だから食べてくれないか。食べなければ、治るものも治らない」
だがシウリンは氷のように冷たい眼差しで、ユーリとシュテファンをじっと見ている。そこにはもう、「信用」とか「信頼」というものが、欠片もなかった。
その冷たい雰囲気にレオンも言う。
「シウリン、どういうことか、俺わかんないけど、俺も毒見するから、お願いだから、食べてよ、ね?」
シウリンはそれでもまだ、敵意の籠った眼差しで、疑わし気にユーリたちを睨んでいたが、だが、仕方なく匙をとって牛乳で煮た粥を掬い匂いを嗅ぐ。少しだけ口に含み、吟味するように舌でしばらく転がしてから、不愉快そうにゆっくりと食べ始めた。
食事を始めたシウリンにほっとしたレオンが、気まずい雰囲気を何とかしようと、シウリンに尋ねた。
「ミカエラ様と結婚するんだってね?」
「しないよ」
一言のもとに退けられ、レオンが目を瞠る。
「でも……その、明後日にも結婚式だって……」
「レオン、その話は――」
ガシャン、とシウリンが匙を投げ捨て、ギラギラした瞳でユーリとシュテファンを睨みつける。
「僕は結婚しないと言ってる!」
「そうはいかないんだ、シウリン。お前はミカエラ様と寝て、純潔を奪ったのだから――」
「僕を罠にかけ、酒に薬を入れて! そんな卑怯なやり方で!」
「卑怯だろうが何だろうが、寝た以上は男なら責任を取れ!」
「嫌だ――! あんたたちのやってることは、美人局と同じだ!」
「それ以上ミカエラ様を愚弄するのであれば――」
シュテファンがさすがに怒りを露わにするが、シウリンも負けなかった。
「ミカエラを愚弄しているのは、あんたたちじゃないか! 彼女を追い込んで、こんなことをさせた。口では姫様なんて言いながら、ただの子供を産む道具か何かだと思ってる!……本当に、彼女のことを大事に思うなら、こんな卑怯なやり口で、彼女自身に身体を張らせるなんて、させなかっただろうに! こんな家来のいる領地なんて、僕なら御免だね!」
そう、指摘されてしまえば、確かにその通りであった。
どこかに、ミカエラを単なる血筋だけの存在と、軽んずる部分がなかったか――。
シュテファンは大きく息を吸い込んで、だがシウリンに宣言する。
「シウリン、我らガルシア領の者にも、二千年守り続けてきた矜持があるのだ。ガルシア家の当主を戴き、辺境を魔物より守る。――そのためには、何者をも顧みないつもりだ。ガルシア家に必要なのは、おぬしのような強い魔力を持つ跡取りなのだ。おぬしを逃せば、もう、二度と得られぬとまで、我々は思い詰めておる。ガルシア領民十万人の命のためにも、どうか頼む」
だがシウリンはそれには何も答えず、不信感に満ち満ちた視線で彼らを睨みつけるだけだった。
精神的ショックとそれまでの疲労とで、シウリンの体力はギリギリであった。もともと、精神的なプレッシャーが胃に来やすいタイプの上に、怪しい薬を飲み慣れぬ強い酒に入れられたせいで、シウリンの胃は空っぽ、牛乳粥も半分しか食べられなかった。何か胃薬のようなものが添えてあったが、今さらそんなものを飲む気もせず、シウリンはシュテファンらを拒むように寝台に横たわり、上掛けを頭から被る。その枕許にジブリールが丸くなり、エールライヒは少し開いた窓枠に止まっている。
「三日後に、披露の宴を開く予定にしている。それまでに、身体を労わってくれ」
もう決まったことで、変更はないとシュテファンが言い、ユーリとレオンを促して部屋を出て行く。最後にレオンが小さな声で、言った。
「……ごめんね、シウリン。でも、ミカエラ様は君が好きなんだと思うの。だから……できれば愛してあげて」
シウリンは、だがそれにも答えなかった。
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