【R18】お飾り皇后のやり直し初夜【完結】

無憂

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三十一、愛欲深淵*

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「詩阿は俺を愛していない」

 陛下に断言されて、わたしは息を飲んだ。
 そんなことはない、と必死に言い募ろうとしたが、舌が震えて上手く喋れない。

 だって愛してしまったら、陛下が心変わりしたらどうなるの?
 もしかしたら、他の、もっと美しい人が現れて、陛下の心を奪ってしまうかもしれない。そうして、わたしではかく、その人の元に足繁く通うようになったら。それを目の当たりにして、心が保つと思えない。

 だってわたしは皇后だから――

 陛下がわたしを抱きしめて、耳元で囁く。

「信じて、愛してくれ。俺にはただ、詩阿一人だ。俺の命が続く限り、愛するのは詩阿だけだと誓う」

 もし、この人が皇帝でなかったら、こんな風に言われたらきっと嬉しくて、わたしは疑うこともなくその言葉を信じたに違いない。

 わたしは――


 


 帳の中で、陛下がわたしの胸に顔を埋め、深いため息を吐く。

「柔らかい……ここにこうしていると、一番、心が安らぐ……」

 片方の手がやわやわと乳房を揉みしだき、指先で尖りを摘まみあげてクリクリと弄る。背筋を甘い疼きが走って、堪えきれずに、喘ぎ声を零してしまう。

「ふっ……ああっ……」

 陛下がもう一つ先端を口に含み、吸い上げ、舌で転がすように弄ぶ。陛下が胸の愛撫にかける情熱は異常で、もうずっと長いこと続いている。

「んっ……ああっ、あっ……くっ……んっ……」

 強く吸い上げられ、舌先で潰すように舐め転がされ、時に甘噛みされて、そのたびにわたしはビクビクと身体を震わせ、甘い声を上げてしまう。

「……胸だけでけそうだな」
「そん、なの……あっ……」

 陛下の手がわたしの下肢に伸びる。太ももを大きな掌で撫で上げ、すっかり濡れそぼった秘所に到り、花びらに触れる。
 くちゅ……と淫らな水音がして、わたしは羞恥でギュッと目をつぶった。
 
「もう、ぐずぐずだ……ずっと触れてほしかったのか?」
「ち、ちがっ……ああっ」

 陛下の指がわたしのなかに突き立てられる。ずぼずぼと水音をたてながら出し入れされ、わたしは無意識にその指を締めあげてしまったらしい。陛下の端麗なお顔に苦笑が浮かぶ。

「詩阿……こんなに待ち遠しそうに締め付けて……俺の指を食いちぎりそうだ」
「お、お許しを……ああっ、あっ、あっ……それっだめっ……」

 指はすぐに二本に増やされて、内部の敏感な場所をひっかかれ、わたしは腰が溶けそうな快感に思わず悲鳴を上げた。

「あっ……あーーーーっ」

 帳台のなかに水音が響く。陛下の指が内部を探りながら、花びらのすぐ上にある、敏感な芽をぐりぐりと親指で刺激した。わたしの中で膨れ上がった快感が、弾けそうになる。なのに。

 陛下の指がそこから離れ、わたしは快楽の頂点に到る梯子を外されてしまう。

「あ……? へい、か……?」
「閨では名を呼べと申したはず。……詩阿?」
「あ……申し訳、……ああっ……」

 いったん、中断された愛撫がまた始まる。蜜をまぶすように敏感な尖りを幾度も撫でられ、再び頂点が見えそうになると、陛下は手を止めてしまわれる。

 陛下が、真上から覗き込んで言った。

きたいか? 詩阿」
「はっ……はあっ、はあっ……」

 わたしは、反射的に首を振った。すると陛下は不満そうに眉尻を下げる。

「そうか……強情だな」

 陛下はわたしの脚を大きく開かせると、その付け根に顔を埋める。熱い舌に快楽の源泉のような秘芽を舐め上げられて、わたしの脳裏に白い光が走る。
 
「ああっ、あっ……あっ……」

 ぴちゃ、ぴちゃと獣が水を飲むような音がわたしの耳を犯し、羞恥心と快感で頭を沸騰しそうになる。ああっ、だめ、きちゃう、我慢できな――
 
 なのに、やっぱり頂点の一歩手前で陛下は愛撫を中断し、わたしを上から覗き込んだ。

「あ……?」
「そろそろ、達きたいか?」
「あ……」

 陛下の、熱く硬い昂りがわたしの脚の間に宛がわれ、ゆるゆると焦らすように擦り付けられる。

「そろそろ、これが欲しくないか? 詩阿……」
「あ……」

 わたしは首を振った。そんなの、わたしの口から言えることではない。なのに、陛下はわたしを煽るように、耳元に口を寄せ、囁く。

「詩阿……俺を欲しがれ」
「あ……だって……」

 熱い息が耳朶にかかり、それだけで脳が灼けて溶けてしまいそう。
 ぐちゅぐちゅと秘所が擦られていやらしい音を立てる。お腹の奥が切なくきゅうきゅう締まって、早く空虚を埋めて欲しいと思う。
 欲しい、奥まで……いつものように、早く――
 
「詩阿は、俺のものだろう? 詩阿……体だけでも、もう、俺に堕ちてしまえ」

 ねっとりと耳を食まれ、熱い舌に耳孔を舐られて、わたしの理性が溶け堕ち、わたしはとうとう陥落した。

「あ……ああっ……弘毅、さまッ……早くっ……おね、おねがいっ……」
「どうして欲しい? 詩阿、もっとちゃんと強請ねだれ」
「あっ……あふっ……なかに、くださいっ、弘毅さまの、熱いのッ……はやくっ」
「詩阿……全部、そなたのものだッ……俺の、すべて……」

 陛下の熱杭がわたしの中に打ち込まれる。ずぶずぶと泥濘に飲み込まれるように、ゆっくりわたしの中を侵食し、欠けたところが満たされていく。

「ああっ……あっ……あーーーーっ」

 陛下の逞しい肩に縋りつき、わたしは身体を弓なりに反らして、快感を享受する。ああ、このまま溶けてしまうほど気持ちがよくて――

 最奥まで貫かれて、焦らされ続けたわたしは一気に達してしまった。
 
「あっ……あああっ……ああーーーーーーっ」
  
 待ち望んでいた長い絶頂。わたしはただただ陛下に縋りつき、全身を震わせる。視界が白く焼き切れ、何も考えられなくなる。

「くッ……詩阿……うううっ……すごいっ……くぅっ……」

 陛下が端麗な顔を歪め、奥歯を噛みしめるようにして、天を仰ぐ。男らしい首筋で、喉ぼとけがゴクリと動いた。

「はっ……ああっ……あっ……」

 ようやく絶頂から降りて、わたしは身体を弛緩させる。その瞬間を狙ったように、陛下がぐいっと腰を突き上げ、わたしの一番奥深い場所をグリグリと抉ってきた。

「ひあっ……あーーーーっ、だめぇっ……あっ……ああっ……」
「詩阿ッ……俺の、これが好きか? 詩阿?」
「ああっ、だめっ、あっ、あっ、ああっ……」

 激しく腰を突き上げられ、頭の方にずり上がっていきそうになるのを、陛下が両手でわたしの腰をぐっと掴んで、ガツガツと奥を抉る。陛下の先端が最奥を叩くたびに、脳に閃光が走って、わたしは顔を振り、身を捩って快楽に耐える。唇から零れる嬌声はとどめようもなく、水音に肌がぶつかる音と寝台の軋む音が混じり、わたしの快楽をさらに煽る。
   
「あっ……ぁあーーーーっ」

 瞬く間にもう一度頂点に押し上げられ、浮遊感とともに、わたしは陛下を締め付ける。
   
「ああ、詩阿……俺のものだッ……まだまだ……俺無しでいられない身体にしてやる……」
 
 陛下はわたしの片足を肩にかつぐようしして、抽挿の角度を変え、さらに結合を深める。
 
「ああっ……」

 陛下がわたしの中を出入りするたびに、溢れる愛液が掻きだされて、わたしの太ももを濡らし、敷布に溢れて染みを作る。最奥まで満たされて、わたしは陛下の注ぎ込む快楽の毒に蝕まれて、その沼に囚われ、溺れて、ただ藁をも掴むように陛下に縋りつくしかできない。

「すごいな……詩阿……気持ちいいか?」
「ああっ、はっ、はいっ……きもち、いい、ああっあーーーーっ」

 もう、何度目の絶頂かもわからない波に攫われ、わたしの意識が途切れかけた時、陛下もついに決壊して、わたしの中に熱い精を吐きだした。

 陛下の尊い子種がわたしの中を充たしていく。熱い……

「詩阿……愛している……」

 陛下はそう、囁くとわたしの唇を塞ぎ、両腕でギュッとわたしを抱きしめる。まだ繋がったまま、わたしも陛下の背中に両腕でしがみついた。

「んん……」

 愛されている……? 信じても、いいの……?

 わたしも、この人を愛しても――
 たとえ、この愛が今だけだとしても――
 
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