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ルイーズ
ゆっくり愛して*
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予定よりも早くにバークリー邸に帰りついたわたしたちは、堅苦しい正装を脱ぎ捨てるために、それぞれの部屋に入る。メイドのジュリーが準備万端で待っていて、ごってりと重い夜会用のドレスを脱ぐ。下着の上にサテンの化粧着を羽織って、生花や真珠のピンで飾り立てた髪を丁寧に解き、ブラッシングして三つ編みにした。化粧を落とし、薔薇の精製水をつけ、ジュリーが淹れてくれたハーブティーを飲む。
――疲れたわ。
体は重いのに、気持ちは妙に興奮して、体がまだ火照っている。
きっと、帰りの馬車の中の口づけのせいだ。
と、コネクティング・ドアがノックされ、夫が部屋に入ってきた。
すでに正装は脱いでタイも外し、シャツにトラウザーズ、そして紺色の縞模様の、東洋風ガウンを羽織っている。
忠実なメイドのジュリーが、わたしを庇うように立ち塞がるが、夫は手を振って下がるように言う。
「後は僕がする」
「ダメです!」
「いいから!」
ジュリーはそれ以上抵抗できず、しぶしぶ、脱いだドレスやペチコートを抱えて退室する。
「まだ着替え途中なのに……」
「我慢できなかった」
夫は鏡の前に座るわたしを立ち上がらせキスをする。肩から化粧着を滑り落とし、首筋や下着から露わになった鎖骨にキスを落とし、コルセットの紐を解く。わたしの向きを変え、ドレッサーのテーブルに両手ををつかせ、耳たぶや首筋にキスをしながらコルセットを緩めていく。
目の前には金の縁取りのある楕円形の鏡。片目の男に背後から抱きしめられ、キスをされる自分の姿が映って、わたしは思わず目を背けた。
「ねえ、こんなところで……やめて……」
「嫌だ……愛してる」
コルセットの紐を全て緩め、そのままずるりと落とす。薄い下着の下から素肌が透けて恥ずかしくてたまらない。下着の紐も解き、ボタンを外して脱がされて、二つの白い胸が露わになる。
「や……やめて!」
思わず両手で胸を覆い、鏡越しに夫を睨みつければ、鏡の中の夫が片方の眉を顰めた。いつもとは反対側の目がつぶれて、火傷の痕がある。
「……この傷、怖い?」
「いいえ?」
夫は背後から手を伸ばして、鏡に映る自分の顔の、崩れた半面を指で辿る。
「でも、醜い……こんな男、美しい君にはふさわしくないかも」
「……砦を守った英雄なのでしょう? 名誉の負傷ですわ」
「何も憶えていないから、なんとも……」
夫は強引にわたしの身体の向きを変え、唇を奪った。そうしてドロワーズの腰紐を解き、乱暴に引き下ろす。
「んんっ……」
夫が舌を絡め、長い指を秘所に割り入れて、それぞれ掻き回す。湧き上がる快感に腰が揺れ、二か所で水音が起きて、ゾクゾクした感覚で両脚の力が抜けて、わたしは夫に取りすがり、紺色のガウンを握り締める。
「……こんなところでは、いや……」
「ああ、ベッドに……」
夫はランプを吹き消すとわたしを抱き上げてベッドに運び、そのまま圧し掛かってくる。足首に引っかかっていたドロワースはいつしかなくなって、身に着けているのは薄い絹のストッキングと膝上で留めるガーターだけ。唇、首筋、鎖骨、胸……と彼の唇が這いまわり、時に強く吸い上げて痕を残していく。両胸に顔を埋め、二つの山を揉み込んで形を変えながら、念入りに。頂点の尖りを親指で刺激し、もう一つを咥えて吸い上げられ、わたしは思わずのけ反って悶えた。
「ああっ……」
ちゅ、ちゅ、と肌のあちこちに口づけが落とされ、彼の大きな掌が肌を這いまわる。
「ルイーズ……好きだ……」
「ん……はっ……ああっ……」
夫の頭が徐々に下へを下がっていき、臍に舌が触れる。わたしは身を捩り、抵抗して彼の黒い頭を押しやった。
「やだ、恥ずかしい、だめ……」
「なぜ、いつもしてる……」
「だって……」
わたしは夫の前にすべてをさらけ出しているのに、夫はまだガウンも、シャツもトラウザーズも着たままだ。
「わたしだけこんなの、恥ずかしい……」
夫は片方しかない金色の瞳を見開き、笑った。
「じゃあ、僕も脱ぐよ。……待ってて」
手早くガウンを脱ぎ捨て、吊りベルトを外してトラウザーズを脱ぎ、シャツのボタンをもどかし気に外していく。その様子を下から見上げていると、彼と目が合った。
「男が脱ぐ姿、興奮する?」
「バカ!」
クスクスと笑いながらすべて脱ぎ終えると、彼はわたしの片方の足首を掴んで持ち上げ、膝の上のガーターベルトを解く。するすると片方のストッキングを脱がし、わたしの素足を露出させ、微笑んで言った。
「ルイーズ、今夜はやけに素直だね?」
「な!……全力で抵抗して欲しいなら、いくらでも……」
「今夜はゆっくりしてあげる。体の隅々まで、僕が触れてない場所が無いってくらい、全部愛してあげる」
――疲れたわ。
体は重いのに、気持ちは妙に興奮して、体がまだ火照っている。
きっと、帰りの馬車の中の口づけのせいだ。
と、コネクティング・ドアがノックされ、夫が部屋に入ってきた。
すでに正装は脱いでタイも外し、シャツにトラウザーズ、そして紺色の縞模様の、東洋風ガウンを羽織っている。
忠実なメイドのジュリーが、わたしを庇うように立ち塞がるが、夫は手を振って下がるように言う。
「後は僕がする」
「ダメです!」
「いいから!」
ジュリーはそれ以上抵抗できず、しぶしぶ、脱いだドレスやペチコートを抱えて退室する。
「まだ着替え途中なのに……」
「我慢できなかった」
夫は鏡の前に座るわたしを立ち上がらせキスをする。肩から化粧着を滑り落とし、首筋や下着から露わになった鎖骨にキスを落とし、コルセットの紐を解く。わたしの向きを変え、ドレッサーのテーブルに両手ををつかせ、耳たぶや首筋にキスをしながらコルセットを緩めていく。
目の前には金の縁取りのある楕円形の鏡。片目の男に背後から抱きしめられ、キスをされる自分の姿が映って、わたしは思わず目を背けた。
「ねえ、こんなところで……やめて……」
「嫌だ……愛してる」
コルセットの紐を全て緩め、そのままずるりと落とす。薄い下着の下から素肌が透けて恥ずかしくてたまらない。下着の紐も解き、ボタンを外して脱がされて、二つの白い胸が露わになる。
「や……やめて!」
思わず両手で胸を覆い、鏡越しに夫を睨みつければ、鏡の中の夫が片方の眉を顰めた。いつもとは反対側の目がつぶれて、火傷の痕がある。
「……この傷、怖い?」
「いいえ?」
夫は背後から手を伸ばして、鏡に映る自分の顔の、崩れた半面を指で辿る。
「でも、醜い……こんな男、美しい君にはふさわしくないかも」
「……砦を守った英雄なのでしょう? 名誉の負傷ですわ」
「何も憶えていないから、なんとも……」
夫は強引にわたしの身体の向きを変え、唇を奪った。そうしてドロワーズの腰紐を解き、乱暴に引き下ろす。
「んんっ……」
夫が舌を絡め、長い指を秘所に割り入れて、それぞれ掻き回す。湧き上がる快感に腰が揺れ、二か所で水音が起きて、ゾクゾクした感覚で両脚の力が抜けて、わたしは夫に取りすがり、紺色のガウンを握り締める。
「……こんなところでは、いや……」
「ああ、ベッドに……」
夫はランプを吹き消すとわたしを抱き上げてベッドに運び、そのまま圧し掛かってくる。足首に引っかかっていたドロワースはいつしかなくなって、身に着けているのは薄い絹のストッキングと膝上で留めるガーターだけ。唇、首筋、鎖骨、胸……と彼の唇が這いまわり、時に強く吸い上げて痕を残していく。両胸に顔を埋め、二つの山を揉み込んで形を変えながら、念入りに。頂点の尖りを親指で刺激し、もう一つを咥えて吸い上げられ、わたしは思わずのけ反って悶えた。
「ああっ……」
ちゅ、ちゅ、と肌のあちこちに口づけが落とされ、彼の大きな掌が肌を這いまわる。
「ルイーズ……好きだ……」
「ん……はっ……ああっ……」
夫の頭が徐々に下へを下がっていき、臍に舌が触れる。わたしは身を捩り、抵抗して彼の黒い頭を押しやった。
「やだ、恥ずかしい、だめ……」
「なぜ、いつもしてる……」
「だって……」
わたしは夫の前にすべてをさらけ出しているのに、夫はまだガウンも、シャツもトラウザーズも着たままだ。
「わたしだけこんなの、恥ずかしい……」
夫は片方しかない金色の瞳を見開き、笑った。
「じゃあ、僕も脱ぐよ。……待ってて」
手早くガウンを脱ぎ捨て、吊りベルトを外してトラウザーズを脱ぎ、シャツのボタンをもどかし気に外していく。その様子を下から見上げていると、彼と目が合った。
「男が脱ぐ姿、興奮する?」
「バカ!」
クスクスと笑いながらすべて脱ぎ終えると、彼はわたしの片方の足首を掴んで持ち上げ、膝の上のガーターベルトを解く。するすると片方のストッキングを脱がし、わたしの素足を露出させ、微笑んで言った。
「ルイーズ、今夜はやけに素直だね?」
「な!……全力で抵抗して欲しいなら、いくらでも……」
「今夜はゆっくりしてあげる。体の隅々まで、僕が触れてない場所が無いってくらい、全部愛してあげる」
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