上 下
36 / 106
ルイーズ

滾る身体*

しおりを挟む
「あっ……ああ?」
「ダメって言うからやめたけど……いけなかった? ルイーズ」

 男がニヤニヤと意地悪な笑顔でわたしを見下ろし、わたしは絶望的な気持ちになる。
 頂点に至る寸前で快楽の梯を外され、わたしのお腹の奥が切なさでぐずぐずと疼く。

「やっ……ううっ……あああ?」

 そして前触れもなく、彼はまた動き始め、そして突然、動きを止める。
 何度も、何度も、イきそうになると彼は動きを止めて、わたしをニヤニヤと見下ろしている。

「可愛いね、ルイーズ。どうして欲しいの?」
「あっ……ああっ……」
「イきたい? ルイーズ……名前を呼んだら、イかせてあげる」
「ああっいやっ……あああっもう……」

 絶頂の手前で焦らされて。男はわたしを甚振って、弄んでいるだけ。ああなのに――
 体は疼いて疼いて、もう狂いそう。いいえ、もう、狂ってしまいたい。お願い――

「ルイーズ、愛してる、だから名を呼んで。今、君を抱いている男の名を……ルイーズ……」

 あなたなんて、大嫌い――そう言い返したいのに、わたしの唇から出るのは、意味をなさない喜悦の声と、はしたなく喘ぐ息遣い。もう全身が熱くて灼けて、頭から溶けていく――

「ルイーズ……ほら、君の中はイきたいって、さっきからぐずぐずだよ」
「あっ……ああっ、もうっ……おね、おねが……ジーン、ジーンもうっ……」

 ついに陥落して彼の名を読んだわたしを見下ろし、男は満足げに微笑む。憎らしいのに美しくて、陶然と見惚れてしまう。

「ルイーズ、やっと言えたね。……ルイーズ、ルイーズ、すぐに、イかせてあげる」
 
 男はわたしの膝裏を掴み、抽挿を深くする。ずりゅ、ずりゅ、といやらしい音を立てて肉楔をねじ込み、肌のぶつかる音が響く。最奥に届く刺激にわたしが悲鳴をあげた。憎い男に快楽を注ぎ込まれ、わたしの喜悦の声が止まらない。心は感じたくないと思うのに、身体は絶頂を待ち焦がれている。

「う、うあっ……ああっ、ああっ、い、いいっ……ああっ……」
「ああ、そっか、君はまだ中だけじゃイけなかったね……ここをこんなに腫らして、ホラ、好きなだけイくといい」

 男は結合部のすぐ上の、紅く膨れた秘芽を指でピンと弾いて、それからグリグリと押さえた。
 瞬間、強烈な快感の波が押し寄せ、すべてが真っ白に塗りつぶされる。

「あっあああああっ、あぁあ―――――っ」

 両胸を突き出すようにして痙攣するわたしの身体に男は圧し掛かり、乳首をじゅっと吸い上げる。絶頂しているのに、追い打ちの快感を与えられ、わたしは理性も恥じらいも何もかも融け墜ちて、あられもない絶叫をあげ、快楽に震える。

「……ああっ……ああ―――っア――――――ッ」
「ああ、ルイーズ、すごい締まる、悦い、悦い……くうっ……」

 男は背中に両腕を回してぐっと力強く抱きしめ、唇を唇で塞ぐ。口の中に熱い舌が侵入し、まさぐられ、唾液を吸い上げられる。体が折れるのではと思うほどの抱擁に、内部で男の楔がさらに大きく膨張する。脳が沸騰しそうな快感なのに、唇を塞がれ、悲鳴すら封じられる。

「んん――――!」

 びくびくと全身を痙攣させるわたしの中で、男の熱い楔がついにはじけて、熱い飛沫がわたしの中にぶちまけられる。

「あああっ……ルイーズ、ルイーズ……」
 
 欲望をわたしの中に放って、男は満足そうに荒い息を吐きながら、わたしの顔じゅうにキスをする。

「好きだ、ルイーズ……君だけだ……」

 ぐったりと力を抜いたわたしの汗ばんだ全身にキスを落とし、やがて、わたしの中に入ったままだった、彼の雄が再び漲ってくる。

「あ……やあ、もう……」
「ルイーズ……愛してる……」

 何度、愛を囁かれても、わたしの心には響かない。この男に虐げられた記憶が、わたしの心に根を張って、信じるなと告げる。この男が忘れ去った記憶が――

 なのに身体はあっさりとこの男の手管に堕ちて、夜毎の快楽に飼い慣らされていく。男の掌に触れられると肌は快楽の期待に震え、口づけられれば彼の舌を受け入れ、奥深い場所は蜜を湛えてしまう。

「ああ、ルイーズすごい……君は本当に最高の女だよ……」

 何を今さら――わたしの冷えた心と裏腹に、熱く蕩けた身体を、男は再び貪り始める。

 ――夜通し続くその行為に、わたしの理性も矜持も粉々に砕かれ、わたしは快楽の淵に溺れていく――
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

【完結】それぞれの贖罪

夢見 歩
恋愛
タグにネタバレがありますが、 作品への先入観を無くすために あらすじは書きません。 頭を空っぽにしてから 読んで頂けると嬉しいです。

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨ 〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷

処理中です...