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ユージーン

身体から堕としたい*

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 僕がやめるつもりはないと知って、涙に潤んだアメジストの瞳が、呆然と僕を見上げる。

「そんな……ひど……」
「僕がひどい男なのは、もうわかってるだろう? 君のことを嫌っていたひどい男が、君のことを好きになっただけの話。要するに僕は徹頭徹尾ひどい奴だから。諦めて」
 
 僕はそう言うと、なじませるように小刻みに体を揺すってから、ルイーズの両腕をそれぞれ掴み、体の脇に固定した。

「うう……」

 ルイーズの隘路をみっちりと僕が満たして、わずかな隙間もない。ほんの少し身じろぎしただけで、彼女は反応して身を捩り、内部のうねりが僕に快感をもたらす。僕は、苦し気に眉を顰めるルイーズの額に口づけて、耳元で宣言する。

「動くよ。昨夜みたいに手加減はしない。……ルイーズ、愛してる」

 僕はルイーズの中から抜け落ちる直前まで自身を引き抜き、一気に最奥まで突き上げた。

「ひああっ……ああっ、だめっ……」

 僕の楔に深々と貫かれて、ルイーズが悲鳴をあげ、衝撃に身を捩る。肌と肌のぶつかる音が響き、ベッドが軋む。続けて最奥を突きあげれば、ルイーズの肉壁が僕の陰茎を擦りたて、僕の背筋を快感が走り抜ける。

「はあっ……ルイーズ、い……君の中はすごく悦い……」
「あっ、うっ……はあっ、やっ、やめっ……ああっだめっだめっ……」

 規則正しい抽挿のリズムに合わせるように、ルイーズの唇から嬌声が漏れる。内部はぎちぎちに僕を締め上げ、必死に何かから逃れるように首を振っている。ルイーズの身体が感じているのは間違いない。

 僕はルイーズの胸に自分の胸をくっつけ、彼女の背中に両腕を回し、ぐっと密着する。僕の胸でルイーズの柔らかな胸が潰される感触が気持ちいい。

「あっ……ああっ……あっ……んんっ……だめぇっ……」
「ルイーズ、気持ちいいんだ、僕も気持ちいい……」
「はっ……ううっ……ちがっ……んんっ……」

 僕はルイーズの唇を唇で塞いで、舌をねじ込んでこね回す。唇と結合部分の、二か所でいやらしい水音を響かせ、ベッドの軋む音が響く。

「んん、んんん、んん―――」

 口を塞がれたルイーズが、歓喜の声も上げられずに悶える様子は、僕をさらに煽った。僕もまた快感を堪えきれず、ルイーズの唇を離し、咽頭《のどぼとけ》をさらして天蓋を仰ぐ。腰を振るたびに、僕の黒髪が飛び散り、汗が額から鼻筋を通って流れ落ちる。熱く絡みつく襞を振り切るように、僕は律動を繰り返し、彼女の最奥を幾度も突き上げる。交接に慣れず、感覚も磨かれていないけれど、それでもルイーズの内部は突くほどの僕を締め付け、蠢いて僕の官能を刺激してくる。――相性がいい。この女は、僕のために作られた女だ。

 五年も処女のまま捨て置いて、今さら調子のいいことをと、僕ですら思うが、もう今となっては手放すことなど考えられない。

「くっ……ああ、ルイーズ……」
「んあっ……ああっ、ああああっ……ああっ……はあっやっ……ああっ」

 唇を解放されたルイーズは、もう喜悦の声を抑えられなくて、ただ必死にシーツを掴んで快楽に耐えている。慣れないルイーズは、まだ、中でイけないのだと僕は気づき、ルイーズの耳元で囁きながら、結合部のすぐ上の花芽に触れた。

「ああ、まだ一人じゃイけないんだ。ここもいじってあげる……気持ちいい? ルイーズ」
「あああっ……そこっだめぇええ!」
「君のだめは、いいって意味だな。……ホラ、イけばいい……」
「ああっ……あああああっ」

 僕に陰核をこねられて、ルイーズが白い喉をさらし、仰け反るように絶頂する。その締め付けに抗って僕は奥歯を噛みしめて射精感を堪える。この快感をもっと長く味わいたかったし、ルイーズの乱れる姿をもっともっと見たかった。僕はルイーズが絶頂を過ぎて弛緩した瞬間を狙い、さらに激しく腰を動かした。

「ああ、だめぇっ……あっ、ああっ……いま、やめっ……」
「くっ……すごい締まる……ああもう、めちゃくちゃ感じてる、すごい、中どろどろだよ、ルイーズ……」
「あっ……ああっ、おねが、ゆる、ゆるしてっ……ああっ」
「いい、いいよ、ルイーズ、もっともっと気持ちよくしてあげる」

 僕はルイーズの片脚を持ち上げて肩に担いで、さらに腰を深く推し進める。
 ばちゅん、と肌のぶつかる音と水音が響き、僕の肉茎でかきだされた愛液が飛び散り、シーツに滴る。

「やあっあああああっ!」
 
 衝撃にルイーズが白い身体を逸らし、豊かな乳房が震える。ちょうど九十度に開かれた白い両脚は、どちらもつま先までピンと伸ばされ、立て続けの絶頂の期待に震えている。

「いやらしいね、ルイーズ、まだまだ何度でもイけそうだ。ホラ!」
「あああっ……ああ――――――――――――っ」

 もう一度激しく最奥にねじ込めば、ルイーズはあっけなく全身を硬直させてイった。僕は快感に震えるルイーズの両胸をわしづかみにして、硬く尖った頂点を摘まみ、クリクリと弄ぶ。その刺激に内部がさらに僕を締め付け、僕の限界を煽ってきた。

「ああっすごい、ルイーズ……全部、絞りとられそう……くっ……ううっ……」
「ああっああっあっ、あっ、やああっ」

 僕は完全に蕩け切ったルイーズの顔を見下ろしながら、なおもルイーズの中を穿ち続け、とうとう限界に達して果てた。

「ああ、ルイーズ、ルイーズ、出る、出る……あああっ」
「ああっああっ……」

 ドクドクとルイーズの内部に精を注ぎ込んで、僕はこの上ない充足を感じる。

 この女は僕の妻、僕のものだ。――僕は、ルイーズを愛している。
 愛する女を抱いて、命の滴を注ぎ、やがてそれが実を結ぶ日を夢見る。夫婦の間で許された、神の恩寵そのものだと。

 ――もしかしたら、僕は今まで、好きな女を抱いたことはないのかもしれない。

 何も憶えていない失われた記憶の中、しかし僕は、何かに苛立ち、焦り、そして怯えていた。
 おそらくその記憶が、黒い悪夢となって、毎夜僕を襲う。

 ルイーズといれば、ルイーズを抱きしめれば、その悪夢から僕は逃れられる気がする。

 今さら身勝手だと罵られても、もう、僕にはルイーズだけ――




 僕はその夜、ルイーズが半ば意識を飛ばすまで責め続け、彼女の中で幾度も果てた。
 ルイーズを身体から堕として、僕から逃れられなくするために――
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