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第三章
法務局
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「馬鹿な――そんなものが残って……」
「静粛に!」
立ち上がったレコンフィールド公爵の言葉を、首相バーソロミュー・ウォルシンガム卿が鋭く咎める。
首相は大きく息を吸うと、議長に手を挙げて要求した。
「その、書類を見せてもらいたい」
「少し待たれよ。現在の質問者はオーソン・スタイルズ卿。彼に優先権がある」
官僚がスタイルズ卿のもとに書類ばさみを運び、スタイルズ卿が受け取る。じっくり、丁寧に書類を改め、言った。
「署名、印章……それから、勅書の書かれた紙の透かしも間違いない。本物です」
「私にも見せたまえ!」
「首相には必要ないと思うが。これが本物の勅書であって、内容もさきほど、アルバート殿下が読み上げた通りだ。気になるなら、もう一度私が音読しようか?」
スタイルズ卿が意地悪そうに言う。
「見せたまえ!」
ますます激昂する首相に、マールバラ公爵も言う。
「おちつけ、ウォルシンガム。何をそんなに慌てている。――まるで、地獄で幽霊にあったような顔色だぞ? そんなに、この勅書が出てきたことに驚くのか? やはり、この勅書の存在をもともと知っていたのかね?」
「な――」
首相がぐっと両手を握り締め、そして引き攣った表情で座りなおす。
わたしはただ、その様子を黙って見ていた。――生前、父のもとに届けられた国王陛下の勅書。父がずっと胸ポケットに入れていたもの――。
殿下はわたしをちらりと見て、微かに微笑んでから、スタイルズ卿に向き直る。
「シャルローの戦いの前、俺はマックスから子供たちの写真を見せてもらい、その時に、彼の娘の――エルシーと結婚したいと言った。俺はステファニーとの婚約は白紙に戻っていたし、王位につくつもりもなかった。マックスはエルシーの同意が得られればと、求婚を認めてくれた。マックスはその後、父上に定期連絡をするついでに、それについても許可を求め、送られてきたのが、その勅書だ」
「……マックス・アシュバートン卿が、そんなにも急いで許可を求めた理由は?」
スタイルズ卿の問いに、殿下が答える。
「マックス・アシュバートンの息子、ウィリアムには子を生す能力がないと診断されていた。もしマックスが生きて戦地から戻っても、その後、ウィリアムに子が生まれなければ、直系は絶えてしまう。マックスはリンドホルムの城を守るために、どうしても直系の娘に継承させたかった。出征前には請願書を提出したけれど、それでは不安だったのだと思う。何分、ウィリアムはまだ若いから。第三王子である俺とエルスペスを結婚させれば、リンドホルムは王家の保護下に入る。父上にとっても、悪い話ではない」
殿下は周囲を見回してさらに続ける。
「ところが、王都に戻ってみれば、エルシーの代襲相続は却下され、彼女は王都で働いていた。レディ・ウルスラが相続を拒否したのかとも思ったが、エルシーによればそうではないと言う。さらに、帰国後すぐにステファニーとの婚約を打診された。俺はまず、父上の考えていることを知りたかったのだが――」
突如、首相が手を挙げて発言を求める。議長が了承すれば、立ち上がり言った。
「レディ・エルスペスとの婚姻を認めた勅書は、マックス・アシュバートンが死ぬ前、三年以上前に発せられたもの。レコンフィールド公爵令嬢との婚姻を認める勅書は、昨年の六月。新たな勅書の発行により、古い勅書は無効となるはずだ!」
だが、殿下は首を振った。
「どちらの勅書にも、『婚姻する両者の同意が得られた場合には』の、但し書きが入っている。おそらく父上は、結婚する当事者の同意をもってようやく、勅書の効力が発するように、但し書きを加えたのだ。三年前の勅書では、エルシーの同意が得られるかわからず、また六月の勅書では俺の気持ちを確かめる時間がなかった。俺は帰国してすぐに、ステファニー嬢との結婚の意志がないと、はっきり表明し、また三年前の勅書に関しては、ビルツホルンに向かう途中で求婚に承諾の返事をもらっている。勅書の発行の前後ではなく、両者の同意が確実に得られている方に効力があると、考えるべきだ」
まっすぐに見つめられ、わたしは思い出す。
何度も、結婚を申し込まれ、でもすぐには返事ができなかった。王都でも、リンドホルムの薔薇園でも、そしてあの――山奥の小さな駅で。
「エルシーは、俺との結婚を了承しただろう?」
「……ええ。求婚をお受けしました」
わたしが頷けば、マールバラ公爵が合点したように言った。
「――なるほど、ビルツホルンで、レディ・エルスペスを婚約者として連れまわしたのは、その書類があっての上のことか」
マールバラ公爵の問いかけに、殿下は頷く。
「俺はこの、マックスの血染めの勅書があれば、エルシーとは問題なく結婚できると考えていたが、王都の状況はまるで違っていた。だから俺は、どの段階で、勅書の存在を公にすべきか悩んだ。勅書には必ず写しがあるはずなのに、王宮の文書庫のどこにも、この勅書の対となる副本が見つからない。間違いなく、誰かがこの書類を隠蔽するか破棄するかしている。俺とエルシーの婚姻を望まない者が、政権の中枢に存在する。そんな状態で、この勅書の存在を明らかにすれば握り潰されると考えた。ビルツホルンで俺とエルシーの関係が問題視されれば、勅書を隠蔽した存在の手の届かない場所で、勅書を開示できると考えたが、ビルツホルンではエルシーの同伴は問題にされなかった」
「当たり前だ。わしが押さえ込んだからな。そんなどう転ぶかわからん爆弾を、外交の場面で出されても困る」
マールバラ公爵は言い、もう一つ尋ねる。
「先日の、王宮舞踏会で出さなかった理由は――」
「あの場で父上が、口頭で許可を出してくれたからだ。父上が渋ったら、これを持ち出す予定だった」
殿下は言い、議長に要求した。
「一人証人を呼んでいる。許可を願いたい」
議長が返事をする前に、首相が口を挟む。
「あなたは証人だ。証人が証人を呼ぶなど前例がない。それに、あなたがたの結婚の承認には関係が――」
「婚姻許可の勅書に絡む証人だ。無関係なわけがない」
殿下の言葉に、議長が了承した。
「証人を認めよう」
入ってきたのは四十前後の神経質そうな男性だった。かっちり固めた髪型、整えられた口髭、冷たい雰囲気のする灰色の瞳。どこかで見たことのあるような――。
男性は指定された場所に立つと、名乗った。
「エイブラハム・リーガル。法務省の役人で、三年前まで法務局相続課におりました。現在は司法部の資料調査室に異動しております」
「わざわざすまない。貴公は三年前、顧問弁護士のジェファーソン氏を通して、リンドホルム伯爵の代襲相続の申請窓口となった」
「はい。間違いありません」
リーガル氏は頷き、認めた。
「リンドホルム伯領の手続きについては、憶えているか?」
「ええ、よく覚えています。非常に理不尽な案件でしたから。通常、戦死による代襲相続の申請は、却下されることはまず、ありません。法務局に届く戦死公報のうち、爵位貴族はごく一部ですから。マクシミリアン・アシュバートン卿はシャルローで戦死した百九十人のうち、唯一の有爵者でした。戦死が確認できれば、申請者であるご令嬢の書類を審査し、他に直系男子の不在が裏付けられましたので、問題なく通ると思ったのですが――」
「却下された?」
「はい。――たしかに、シャルローからの報告書は混乱しておりましが、戦死であることは間違いない。なのに、当時の状況を示す書類が不足している、という上からの付箋がついていました。私自身、納得できないと思いながら、弁護士にその旨を伝え、陸軍局に書類を貰いに行くように言いました。顧問弁護士は足が悪いようで、それも気の毒と思ったので、よく覚えています。数日後に彼が陸軍局からの書類を持って再度申請に来ました。シャルローの戦死者の書類が揃わないのは当然なのです。激戦だったのですから。例えば海軍で戦艦が沈没した場合の死亡例では、細かい記載は要求されない。要するに、ただの難癖です。ですから、二度目の申請が却下された時、私は上役に抗議しましたが――」
殿下が、リーガル氏に尋ねる。
「上役――当時の法務局の長官は?」
リーガル氏が、周囲を見回し、ある一点に目を止め、それから殿下を見た。
「そこにおられる、レコンフィールド公爵です」
ざわっと議場がざわめき、名指しされた公爵が肘掛を両手で握り締める。
「抗議して、どうなったのです?」
「まず、こんな田舎の伯爵家の相続に、わざわざ難癖をつける理由などない、と言われました。そして書類の不備は認められないという一点張りで。シャルローの状況を考慮すれば、不可解なことです。私は内閣官房にも意見を上げました」
リーガル氏が言う。
「はじめ、内閣官房の窓口では好意的に扱われましたが、すぐに却下されました。その時、耳打ちされたのです。この件は関わるなと」
リーガル氏の発言に、ざわざわとさざめきが起こる。
「その役人は私に言いました。この件は、首相も承知の上で潰している。これ以上は無理だと」
首相が立ちあがりかけ、それからもう一度座る。
「私は渋々引き下がりましたが、その後、法務局から司法部の資料調査室に異動になりました。アシュバートン、という家名はずっと記憶に残っていました。それで――」
リーガル氏は革の書類ばさみを持参していて、それを開いて見せた。
「資料調査室ってのは要するに、古い文書を保管している部屋で、一般には窓際ポストなんですが、私は数百年前の司法資料なんかを研究しておりますので、実は天職のような職場なんですよ。で、先日も、五百年前の、建国前後とある事件に関わる文書を調査しておりましてね。そこで、この書類を発見したのです。二通も。」
リーガル氏が示す書類を見て、殿下が目を見開く。
「これは――」
殿下はそれをすばやくマールバラ公爵に渡し、マールバラ公爵も確認すると、それを議長に渡した。
「議長、そこの、血染めの勅書の片割れだ」
「静粛に!」
立ち上がったレコンフィールド公爵の言葉を、首相バーソロミュー・ウォルシンガム卿が鋭く咎める。
首相は大きく息を吸うと、議長に手を挙げて要求した。
「その、書類を見せてもらいたい」
「少し待たれよ。現在の質問者はオーソン・スタイルズ卿。彼に優先権がある」
官僚がスタイルズ卿のもとに書類ばさみを運び、スタイルズ卿が受け取る。じっくり、丁寧に書類を改め、言った。
「署名、印章……それから、勅書の書かれた紙の透かしも間違いない。本物です」
「私にも見せたまえ!」
「首相には必要ないと思うが。これが本物の勅書であって、内容もさきほど、アルバート殿下が読み上げた通りだ。気になるなら、もう一度私が音読しようか?」
スタイルズ卿が意地悪そうに言う。
「見せたまえ!」
ますます激昂する首相に、マールバラ公爵も言う。
「おちつけ、ウォルシンガム。何をそんなに慌てている。――まるで、地獄で幽霊にあったような顔色だぞ? そんなに、この勅書が出てきたことに驚くのか? やはり、この勅書の存在をもともと知っていたのかね?」
「な――」
首相がぐっと両手を握り締め、そして引き攣った表情で座りなおす。
わたしはただ、その様子を黙って見ていた。――生前、父のもとに届けられた国王陛下の勅書。父がずっと胸ポケットに入れていたもの――。
殿下はわたしをちらりと見て、微かに微笑んでから、スタイルズ卿に向き直る。
「シャルローの戦いの前、俺はマックスから子供たちの写真を見せてもらい、その時に、彼の娘の――エルシーと結婚したいと言った。俺はステファニーとの婚約は白紙に戻っていたし、王位につくつもりもなかった。マックスはエルシーの同意が得られればと、求婚を認めてくれた。マックスはその後、父上に定期連絡をするついでに、それについても許可を求め、送られてきたのが、その勅書だ」
「……マックス・アシュバートン卿が、そんなにも急いで許可を求めた理由は?」
スタイルズ卿の問いに、殿下が答える。
「マックス・アシュバートンの息子、ウィリアムには子を生す能力がないと診断されていた。もしマックスが生きて戦地から戻っても、その後、ウィリアムに子が生まれなければ、直系は絶えてしまう。マックスはリンドホルムの城を守るために、どうしても直系の娘に継承させたかった。出征前には請願書を提出したけれど、それでは不安だったのだと思う。何分、ウィリアムはまだ若いから。第三王子である俺とエルスペスを結婚させれば、リンドホルムは王家の保護下に入る。父上にとっても、悪い話ではない」
殿下は周囲を見回してさらに続ける。
「ところが、王都に戻ってみれば、エルシーの代襲相続は却下され、彼女は王都で働いていた。レディ・ウルスラが相続を拒否したのかとも思ったが、エルシーによればそうではないと言う。さらに、帰国後すぐにステファニーとの婚約を打診された。俺はまず、父上の考えていることを知りたかったのだが――」
突如、首相が手を挙げて発言を求める。議長が了承すれば、立ち上がり言った。
「レディ・エルスペスとの婚姻を認めた勅書は、マックス・アシュバートンが死ぬ前、三年以上前に発せられたもの。レコンフィールド公爵令嬢との婚姻を認める勅書は、昨年の六月。新たな勅書の発行により、古い勅書は無効となるはずだ!」
だが、殿下は首を振った。
「どちらの勅書にも、『婚姻する両者の同意が得られた場合には』の、但し書きが入っている。おそらく父上は、結婚する当事者の同意をもってようやく、勅書の効力が発するように、但し書きを加えたのだ。三年前の勅書では、エルシーの同意が得られるかわからず、また六月の勅書では俺の気持ちを確かめる時間がなかった。俺は帰国してすぐに、ステファニー嬢との結婚の意志がないと、はっきり表明し、また三年前の勅書に関しては、ビルツホルンに向かう途中で求婚に承諾の返事をもらっている。勅書の発行の前後ではなく、両者の同意が確実に得られている方に効力があると、考えるべきだ」
まっすぐに見つめられ、わたしは思い出す。
何度も、結婚を申し込まれ、でもすぐには返事ができなかった。王都でも、リンドホルムの薔薇園でも、そしてあの――山奥の小さな駅で。
「エルシーは、俺との結婚を了承しただろう?」
「……ええ。求婚をお受けしました」
わたしが頷けば、マールバラ公爵が合点したように言った。
「――なるほど、ビルツホルンで、レディ・エルスペスを婚約者として連れまわしたのは、その書類があっての上のことか」
マールバラ公爵の問いかけに、殿下は頷く。
「俺はこの、マックスの血染めの勅書があれば、エルシーとは問題なく結婚できると考えていたが、王都の状況はまるで違っていた。だから俺は、どの段階で、勅書の存在を公にすべきか悩んだ。勅書には必ず写しがあるはずなのに、王宮の文書庫のどこにも、この勅書の対となる副本が見つからない。間違いなく、誰かがこの書類を隠蔽するか破棄するかしている。俺とエルシーの婚姻を望まない者が、政権の中枢に存在する。そんな状態で、この勅書の存在を明らかにすれば握り潰されると考えた。ビルツホルンで俺とエルシーの関係が問題視されれば、勅書を隠蔽した存在の手の届かない場所で、勅書を開示できると考えたが、ビルツホルンではエルシーの同伴は問題にされなかった」
「当たり前だ。わしが押さえ込んだからな。そんなどう転ぶかわからん爆弾を、外交の場面で出されても困る」
マールバラ公爵は言い、もう一つ尋ねる。
「先日の、王宮舞踏会で出さなかった理由は――」
「あの場で父上が、口頭で許可を出してくれたからだ。父上が渋ったら、これを持ち出す予定だった」
殿下は言い、議長に要求した。
「一人証人を呼んでいる。許可を願いたい」
議長が返事をする前に、首相が口を挟む。
「あなたは証人だ。証人が証人を呼ぶなど前例がない。それに、あなたがたの結婚の承認には関係が――」
「婚姻許可の勅書に絡む証人だ。無関係なわけがない」
殿下の言葉に、議長が了承した。
「証人を認めよう」
入ってきたのは四十前後の神経質そうな男性だった。かっちり固めた髪型、整えられた口髭、冷たい雰囲気のする灰色の瞳。どこかで見たことのあるような――。
男性は指定された場所に立つと、名乗った。
「エイブラハム・リーガル。法務省の役人で、三年前まで法務局相続課におりました。現在は司法部の資料調査室に異動しております」
「わざわざすまない。貴公は三年前、顧問弁護士のジェファーソン氏を通して、リンドホルム伯爵の代襲相続の申請窓口となった」
「はい。間違いありません」
リーガル氏は頷き、認めた。
「リンドホルム伯領の手続きについては、憶えているか?」
「ええ、よく覚えています。非常に理不尽な案件でしたから。通常、戦死による代襲相続の申請は、却下されることはまず、ありません。法務局に届く戦死公報のうち、爵位貴族はごく一部ですから。マクシミリアン・アシュバートン卿はシャルローで戦死した百九十人のうち、唯一の有爵者でした。戦死が確認できれば、申請者であるご令嬢の書類を審査し、他に直系男子の不在が裏付けられましたので、問題なく通ると思ったのですが――」
「却下された?」
「はい。――たしかに、シャルローからの報告書は混乱しておりましが、戦死であることは間違いない。なのに、当時の状況を示す書類が不足している、という上からの付箋がついていました。私自身、納得できないと思いながら、弁護士にその旨を伝え、陸軍局に書類を貰いに行くように言いました。顧問弁護士は足が悪いようで、それも気の毒と思ったので、よく覚えています。数日後に彼が陸軍局からの書類を持って再度申請に来ました。シャルローの戦死者の書類が揃わないのは当然なのです。激戦だったのですから。例えば海軍で戦艦が沈没した場合の死亡例では、細かい記載は要求されない。要するに、ただの難癖です。ですから、二度目の申請が却下された時、私は上役に抗議しましたが――」
殿下が、リーガル氏に尋ねる。
「上役――当時の法務局の長官は?」
リーガル氏が、周囲を見回し、ある一点に目を止め、それから殿下を見た。
「そこにおられる、レコンフィールド公爵です」
ざわっと議場がざわめき、名指しされた公爵が肘掛を両手で握り締める。
「抗議して、どうなったのです?」
「まず、こんな田舎の伯爵家の相続に、わざわざ難癖をつける理由などない、と言われました。そして書類の不備は認められないという一点張りで。シャルローの状況を考慮すれば、不可解なことです。私は内閣官房にも意見を上げました」
リーガル氏が言う。
「はじめ、内閣官房の窓口では好意的に扱われましたが、すぐに却下されました。その時、耳打ちされたのです。この件は関わるなと」
リーガル氏の発言に、ざわざわとさざめきが起こる。
「その役人は私に言いました。この件は、首相も承知の上で潰している。これ以上は無理だと」
首相が立ちあがりかけ、それからもう一度座る。
「私は渋々引き下がりましたが、その後、法務局から司法部の資料調査室に異動になりました。アシュバートン、という家名はずっと記憶に残っていました。それで――」
リーガル氏は革の書類ばさみを持参していて、それを開いて見せた。
「資料調査室ってのは要するに、古い文書を保管している部屋で、一般には窓際ポストなんですが、私は数百年前の司法資料なんかを研究しておりますので、実は天職のような職場なんですよ。で、先日も、五百年前の、建国前後とある事件に関わる文書を調査しておりましてね。そこで、この書類を発見したのです。二通も。」
リーガル氏が示す書類を見て、殿下が目を見開く。
「これは――」
殿下はそれをすばやくマールバラ公爵に渡し、マールバラ公爵も確認すると、それを議長に渡した。
「議長、そこの、血染めの勅書の片割れだ」
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