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第二章
側にいて*
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ベッドヘッドの電灯が煌々と照らす下で、殿下はわたしの脚を大きく開かせてわたしを貫き、見せつけるように自身の肉楔を出し入れする。ぐちゅぐちゅといやらしい音がして、中を擦られるたびに腰が溶けそうな快感が湧き上がってくる。息が上がり、あられもない声が唇から零れ出て、止めることもできない。
「はっ……ふぅっ……んんっ……はあっ……あっ……ああんっ……ああっ、あっあああっ……」
本当は両手で口を塞ぎたいのに、それができない。――殿下が、わたしに自分で膝の裏を抱えて、自ら脚を開くように命じているからだ。あまりの恥ずかしい格好に涙が出そう。見たくなくて目を瞑ろうとすれば、両胸を弄んでいた殿下が、先端と強く摘んで引っ張った。
「はううっ……やあっ……それ、だめぇ……」
すでに尖って色づいた両胸の先端を、二本の指でそれぞれ摘んで、クリクリと弄られれば、甘い疼きが背筋を伝い、わたしの中がギュッと締まって、快感がさらに強まる。
「くっ……すごい締まり……ホラ、ちゃんと目を開けて見ろ。俺に犯されてすっごい、感じてる姿を。自分で脚を開いて、こどもみたいなつるつるまんこに、俺のちんぽを突っ込まれて、かき回されてぐちゃくちゃに濡らして、感じてる姿をちゃんと見ろ。気持ちいいって、こんなに涎まみれになって喜んでる、すっかり淫乱になった自分の姿を」
殿下はわたしの両胸を好きに弄びながら、時折回すような動きを加えながら、わたしの秘所をずくずくと突き上げている。ぬぷぬぷといやらしい水音とともに、殿下の分身が脚の間を出入りする。それは赤黒く凶悪で、わたしの蜜に塗れて濡れ、電灯の光を反射して淫靡に光っている。
「やめて……下品な、言い方、いや……いじわる、やあっ……ああっ……んんっあっ……」
「ああ、また締まった……お前、下品に罵られると余計に感じるんだろ?」
「ちがっ……そんな……あああっそれっだめっあああっ」
揶揄うように笑いながら、殿下がグリグリとわたしの乳首を摘まんで押し潰すようにする。すっかり敏感になってしまったその場所は、刺激されるだけでたまらない快感を生むのだが、殿下のものを受け入れている状態で愛撫されるといっそう、深い快楽をもたらして、わたしは耐えられずに身を捩り、叫んでいた。
「ああっもうっだめっ……あっあああっ、いっイっちゃう……」
「もうイくのか? 何度目だ。もう少し我慢しろ、こらえ性のない、淫乱娘」
殿下は頂点を弄る手を止めて、乳房全体を揉みこむようにしながら、形のよい唇の端を上げる。そうして抽挿のスピードも少し緩め、ゆるゆると浅い場所を擦るように動きを変えた。――さっきまでの、絶頂直前の切羽詰まった快感が少し遠ざかり、わたしはホッとすると同時に、少し肩透かしを食った気分になる。これが、殿下のいつものやり口だとわかっているのに。
わたしがイきたいと願った時にはそれは与えられず、もうこれ以上は無理とわたしが泣いて懇願するまで焦らされて、その後はもうやめてと言っても終わらない絶頂を注ぎ込まれる。――すべては殿下の為すがままに、わたしの身体は作り変えられて、殿下の思う通りに反応し、快感に狂わされる。もう、この身体はこの人のものなのだと、そのたびに実感させられて、この快楽の檻に囚われて、逃げられないのだと、わたしが諦めてしまうまで――。
無力感に苛まれてふと、殿下から気を逸らしたことに気づいたのか、殿下が言う。
「何を考えている……? 余裕だな」
ハッとして殿下の顔を見上げれば、金色の瞳がギラギラとわたしを見下ろしていた。――危険な、獣の目。
「ちがっ……別に、何も――」
「エルシー……お前は、俺のものだ。何もかも、ぜんぶ……」
殿下は上半身を倒して、わたしの胸に顔を近づけると、白い丘の上で赤く色づいて揺れている乳首を口に含み、ちゅっと吸い上げた。
「あああっ……!」
強い刺激に、背筋を痺れに似た快感が走る。殿下そのまま舌で乳首を転がすようにし、舌先で強く押し潰すように舐め上げた。
「あああっ……ああっ……!」
舐めて、吸われて……軽く甘噛みされ、そのたびに脳天を快感が突き抜ける。天蓋の中に響く嬌声に、殿下の金色の瞳をきらりと光らせ、スポンと吸い上げるようにして唇を離す。
「本当にここが弱いな、エルシーは……でも、こっちを突かれるのも好きだろう? ホラ!」
殿下が身体を起こすとわたしの腰を両手で掴み、ズン、と勢いよく抉って最奥を突いた。そのままグリグリと先端で奥を刺激されて、わたしは胸を突き出すようにして身体を捩る。
「あああっああっ……」
強烈な快感に、脳裏に閃光が走る。身体が絶頂に向かって暴走する、スイッチを入れられたと気づく。でももう、どうにもならない――。
殿下の動きが激しさを増す。今までの緩やかな抽挿が嘘のように、乱暴に腰を打ち付け、ベッドが軋む音をたてる。肌と肌がぶつかる音、堪えることもできないわたしの喘ぎ声、そして殿下の荒い息遣い。
「はっはっはあっ……くっ……エルシー……エルシー……ううっ……悦い、エルシー……」
殿下はわたしの片脚を肩に担ぐようにして、さらに腰を密着させて奥深い場所を抉ってくる。もう、とっくに両脚を広げていることなどできなくなったわたしの両手が、ただ快感に耐えるために、縋る場所を求めてさまよう。
「ああっ、ああっ……それ、だめっ……おく、おくが……ああああっ」
わたしの大きく広げられた両脚が爪先までピンと伸びて硬直する。殿下がわたしの上に圧し掛かるようにして、さらに奥に分け入ってくる。これ以上、されたら――。止めようと縋った両手を、殿下の両手がそれぞれに掴んで、指を絡めて、シーツに縫い留められる。
「エルシー、愛してる……俺の、名を呼べ……」
「あっ……ああっリジー……りじー?……ああっもうっ……」
「愛してる、エルシー……一緒に……」
殿下の唇が下りてきてわたしの唇を塞ぐ。舌が口内に入り込んで蹂躙する。その瞬間にわたしはついに決壊して、快楽の極みに上り詰める。唇を塞がれて、声も上げられない。全身が絶頂に震えて、殿下を締め上げ、殿下の楔がぐっと質量を増すのがわかった。
「くっ……ああっエルシー……出る……」
耐え切れずに殿下が唇を離し、喉ぼとけを曝すように天蓋を仰ぐ。殿下のこめかみから頬へと汗の雫が伝い、顎に蟠って電灯の明かりにきらりと光った。
「あああっ……ううっ………」
獣のような低い咆哮と同時に、殿下の楔が弾け、最奥に熱い飛沫を感じる。灼熱の奔流を浴びて、わたしの内部がもういちど震える。
「ああっ……リジー……熱い……」
「エルシー、愛してる……」
荒い呼吸を吐きながら殿下が二度、三度と緩やかに動いてすべてを出し切り、まだ、中に入った状態でわたしをギュッと抱きしめ、キスをする。わたしは、まだ殿下に中にいて欲しくて、殿下の首筋に縋りつくように抱き着く。
「リジー……赤ちゃん、できたら産んでもいい?」
わたしの問いに、殿下は驚いたように目を瞠り、頷いた。
「あ、ああ、もちろん、……当たり前だ」
「でも……ローズと同じになっちゃうわ……」
正式な婚約も結んでいない状態で妊娠・出産すれば、子は私生児だ。さすがにそんな女を王子妃にはできないだろう。
目を伏せたわたしの瞼に、殿下が口づける。
「俺は父上とは違う。……お前も、俺を愛してくれているんだろう?」
「ええ、愛してます……でも……」
「でも……?」
殿下がわたしを抱き締め、額と額をくっつけて問い返す。
「不安なの……マールバラ公爵が後押しをしてくれるとおっしゃるけど、でも、ステファニー嬢を押しのけるのには、弱いわ。代襲相続は認められていないわけだし……王子の妃なんてやっぱり……」
「エルシー、前に約束したはずだ。俺が王子だという理由で、俺を捨てないで欲しいって。お前を得るためなら、何でもする。継承権も王族の籍もいらない。いつか捨てる覚悟で、俺は金を貯めてきた。お願いだ、エルシー。お前に無理を強いているのは、わかっている、でも愛してるんだ」
殿下に熱っぽく囁かれて、わたしは目を閉じて、もう一度殿下に縋りつく腕に力を籠める。
「わからないの……でも不安で……公爵が王子妃に推薦すると言ってくださって、味方が増えたはずなのに、かえって不安になるなんて……怖い……」
「エルシー……」
「王子の婚約者として扱われて、みんなにジロジロ見られて……リジーがわたしを愛して、そのためなんだってわかっても、怖いの。いけないことをしてる、神様の許さないことをしてるんじゃないかって、怖くて――なのに、リジーから離れたくはないの。ずっと側にいて。前のように、いなくなってしまわないで。たとえ――」
その後の言葉は、口に出せなかった。……あまりに浅ましくて。神様を冒涜しているも同然で。
マールバラ公爵という後ろ盾を得たことで、今まで漠然としていた王子妃という地位が、明確になったせいかもしれない。
これまでは、ただの愛人だった。
どれだけ愛されても、所詮、一時の関係。いつかは捨てられて、わたしたちの道は別れていく。
「結婚」すると殿下は何度も誓うけれど、結婚にもいろいろあって、何となく今のまま、二人で過ごす夢のような未来のことだと思っていた。――殿下と「結婚」する、殿下の「妻」になるとは、どういうことか、わたしはよく、わかっていなかった。愚かだと罵られても、反論もできない。
でもマールバラ公爵が議会に働きかけ、ステファニー嬢と殿下の婚約を解消させ、わたしを「アルバート殿下の妃」に推薦すれば、王室も議会も国も大きく割れるだろう。
――何の落ち度もない公爵令嬢を捨て、命の恩人の娘とはいえ、爵位も継承できなかった元・伯爵の娘を王子妃にする。わたしは当事者として、その、醜聞の渦中に立たされることになるのだ。
「エルシー、俺がお前を手放すわけない。永遠にお前だけだから。エルシー……」
殿下の唇が、わたしの唇を塞ぐ。
離れたくない。離さないで。ずっと側にいて。いなくなってしまわないで。
たとえ――愛人のままでも、ずっと側にいられるのなら――。
「はっ……ふぅっ……んんっ……はあっ……あっ……ああんっ……ああっ、あっあああっ……」
本当は両手で口を塞ぎたいのに、それができない。――殿下が、わたしに自分で膝の裏を抱えて、自ら脚を開くように命じているからだ。あまりの恥ずかしい格好に涙が出そう。見たくなくて目を瞑ろうとすれば、両胸を弄んでいた殿下が、先端と強く摘んで引っ張った。
「はううっ……やあっ……それ、だめぇ……」
すでに尖って色づいた両胸の先端を、二本の指でそれぞれ摘んで、クリクリと弄られれば、甘い疼きが背筋を伝い、わたしの中がギュッと締まって、快感がさらに強まる。
「くっ……すごい締まり……ホラ、ちゃんと目を開けて見ろ。俺に犯されてすっごい、感じてる姿を。自分で脚を開いて、こどもみたいなつるつるまんこに、俺のちんぽを突っ込まれて、かき回されてぐちゃくちゃに濡らして、感じてる姿をちゃんと見ろ。気持ちいいって、こんなに涎まみれになって喜んでる、すっかり淫乱になった自分の姿を」
殿下はわたしの両胸を好きに弄びながら、時折回すような動きを加えながら、わたしの秘所をずくずくと突き上げている。ぬぷぬぷといやらしい水音とともに、殿下の分身が脚の間を出入りする。それは赤黒く凶悪で、わたしの蜜に塗れて濡れ、電灯の光を反射して淫靡に光っている。
「やめて……下品な、言い方、いや……いじわる、やあっ……ああっ……んんっあっ……」
「ああ、また締まった……お前、下品に罵られると余計に感じるんだろ?」
「ちがっ……そんな……あああっそれっだめっあああっ」
揶揄うように笑いながら、殿下がグリグリとわたしの乳首を摘まんで押し潰すようにする。すっかり敏感になってしまったその場所は、刺激されるだけでたまらない快感を生むのだが、殿下のものを受け入れている状態で愛撫されるといっそう、深い快楽をもたらして、わたしは耐えられずに身を捩り、叫んでいた。
「ああっもうっだめっ……あっあああっ、いっイっちゃう……」
「もうイくのか? 何度目だ。もう少し我慢しろ、こらえ性のない、淫乱娘」
殿下は頂点を弄る手を止めて、乳房全体を揉みこむようにしながら、形のよい唇の端を上げる。そうして抽挿のスピードも少し緩め、ゆるゆると浅い場所を擦るように動きを変えた。――さっきまでの、絶頂直前の切羽詰まった快感が少し遠ざかり、わたしはホッとすると同時に、少し肩透かしを食った気分になる。これが、殿下のいつものやり口だとわかっているのに。
わたしがイきたいと願った時にはそれは与えられず、もうこれ以上は無理とわたしが泣いて懇願するまで焦らされて、その後はもうやめてと言っても終わらない絶頂を注ぎ込まれる。――すべては殿下の為すがままに、わたしの身体は作り変えられて、殿下の思う通りに反応し、快感に狂わされる。もう、この身体はこの人のものなのだと、そのたびに実感させられて、この快楽の檻に囚われて、逃げられないのだと、わたしが諦めてしまうまで――。
無力感に苛まれてふと、殿下から気を逸らしたことに気づいたのか、殿下が言う。
「何を考えている……? 余裕だな」
ハッとして殿下の顔を見上げれば、金色の瞳がギラギラとわたしを見下ろしていた。――危険な、獣の目。
「ちがっ……別に、何も――」
「エルシー……お前は、俺のものだ。何もかも、ぜんぶ……」
殿下は上半身を倒して、わたしの胸に顔を近づけると、白い丘の上で赤く色づいて揺れている乳首を口に含み、ちゅっと吸い上げた。
「あああっ……!」
強い刺激に、背筋を痺れに似た快感が走る。殿下そのまま舌で乳首を転がすようにし、舌先で強く押し潰すように舐め上げた。
「あああっ……ああっ……!」
舐めて、吸われて……軽く甘噛みされ、そのたびに脳天を快感が突き抜ける。天蓋の中に響く嬌声に、殿下の金色の瞳をきらりと光らせ、スポンと吸い上げるようにして唇を離す。
「本当にここが弱いな、エルシーは……でも、こっちを突かれるのも好きだろう? ホラ!」
殿下が身体を起こすとわたしの腰を両手で掴み、ズン、と勢いよく抉って最奥を突いた。そのままグリグリと先端で奥を刺激されて、わたしは胸を突き出すようにして身体を捩る。
「あああっああっ……」
強烈な快感に、脳裏に閃光が走る。身体が絶頂に向かって暴走する、スイッチを入れられたと気づく。でももう、どうにもならない――。
殿下の動きが激しさを増す。今までの緩やかな抽挿が嘘のように、乱暴に腰を打ち付け、ベッドが軋む音をたてる。肌と肌がぶつかる音、堪えることもできないわたしの喘ぎ声、そして殿下の荒い息遣い。
「はっはっはあっ……くっ……エルシー……エルシー……ううっ……悦い、エルシー……」
殿下はわたしの片脚を肩に担ぐようにして、さらに腰を密着させて奥深い場所を抉ってくる。もう、とっくに両脚を広げていることなどできなくなったわたしの両手が、ただ快感に耐えるために、縋る場所を求めてさまよう。
「ああっ、ああっ……それ、だめっ……おく、おくが……ああああっ」
わたしの大きく広げられた両脚が爪先までピンと伸びて硬直する。殿下がわたしの上に圧し掛かるようにして、さらに奥に分け入ってくる。これ以上、されたら――。止めようと縋った両手を、殿下の両手がそれぞれに掴んで、指を絡めて、シーツに縫い留められる。
「エルシー、愛してる……俺の、名を呼べ……」
「あっ……ああっリジー……りじー?……ああっもうっ……」
「愛してる、エルシー……一緒に……」
殿下の唇が下りてきてわたしの唇を塞ぐ。舌が口内に入り込んで蹂躙する。その瞬間にわたしはついに決壊して、快楽の極みに上り詰める。唇を塞がれて、声も上げられない。全身が絶頂に震えて、殿下を締め上げ、殿下の楔がぐっと質量を増すのがわかった。
「くっ……ああっエルシー……出る……」
耐え切れずに殿下が唇を離し、喉ぼとけを曝すように天蓋を仰ぐ。殿下のこめかみから頬へと汗の雫が伝い、顎に蟠って電灯の明かりにきらりと光った。
「あああっ……ううっ………」
獣のような低い咆哮と同時に、殿下の楔が弾け、最奥に熱い飛沫を感じる。灼熱の奔流を浴びて、わたしの内部がもういちど震える。
「ああっ……リジー……熱い……」
「エルシー、愛してる……」
荒い呼吸を吐きながら殿下が二度、三度と緩やかに動いてすべてを出し切り、まだ、中に入った状態でわたしをギュッと抱きしめ、キスをする。わたしは、まだ殿下に中にいて欲しくて、殿下の首筋に縋りつくように抱き着く。
「リジー……赤ちゃん、できたら産んでもいい?」
わたしの問いに、殿下は驚いたように目を瞠り、頷いた。
「あ、ああ、もちろん、……当たり前だ」
「でも……ローズと同じになっちゃうわ……」
正式な婚約も結んでいない状態で妊娠・出産すれば、子は私生児だ。さすがにそんな女を王子妃にはできないだろう。
目を伏せたわたしの瞼に、殿下が口づける。
「俺は父上とは違う。……お前も、俺を愛してくれているんだろう?」
「ええ、愛してます……でも……」
「でも……?」
殿下がわたしを抱き締め、額と額をくっつけて問い返す。
「不安なの……マールバラ公爵が後押しをしてくれるとおっしゃるけど、でも、ステファニー嬢を押しのけるのには、弱いわ。代襲相続は認められていないわけだし……王子の妃なんてやっぱり……」
「エルシー、前に約束したはずだ。俺が王子だという理由で、俺を捨てないで欲しいって。お前を得るためなら、何でもする。継承権も王族の籍もいらない。いつか捨てる覚悟で、俺は金を貯めてきた。お願いだ、エルシー。お前に無理を強いているのは、わかっている、でも愛してるんだ」
殿下に熱っぽく囁かれて、わたしは目を閉じて、もう一度殿下に縋りつく腕に力を籠める。
「わからないの……でも不安で……公爵が王子妃に推薦すると言ってくださって、味方が増えたはずなのに、かえって不安になるなんて……怖い……」
「エルシー……」
「王子の婚約者として扱われて、みんなにジロジロ見られて……リジーがわたしを愛して、そのためなんだってわかっても、怖いの。いけないことをしてる、神様の許さないことをしてるんじゃないかって、怖くて――なのに、リジーから離れたくはないの。ずっと側にいて。前のように、いなくなってしまわないで。たとえ――」
その後の言葉は、口に出せなかった。……あまりに浅ましくて。神様を冒涜しているも同然で。
マールバラ公爵という後ろ盾を得たことで、今まで漠然としていた王子妃という地位が、明確になったせいかもしれない。
これまでは、ただの愛人だった。
どれだけ愛されても、所詮、一時の関係。いつかは捨てられて、わたしたちの道は別れていく。
「結婚」すると殿下は何度も誓うけれど、結婚にもいろいろあって、何となく今のまま、二人で過ごす夢のような未来のことだと思っていた。――殿下と「結婚」する、殿下の「妻」になるとは、どういうことか、わたしはよく、わかっていなかった。愚かだと罵られても、反論もできない。
でもマールバラ公爵が議会に働きかけ、ステファニー嬢と殿下の婚約を解消させ、わたしを「アルバート殿下の妃」に推薦すれば、王室も議会も国も大きく割れるだろう。
――何の落ち度もない公爵令嬢を捨て、命の恩人の娘とはいえ、爵位も継承できなかった元・伯爵の娘を王子妃にする。わたしは当事者として、その、醜聞の渦中に立たされることになるのだ。
「エルシー、俺がお前を手放すわけない。永遠にお前だけだから。エルシー……」
殿下の唇が、わたしの唇を塞ぐ。
離れたくない。離さないで。ずっと側にいて。いなくなってしまわないで。
たとえ――愛人のままでも、ずっと側にいられるのなら――。
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