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第二章
密約
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ドクドクと、自分の心臓の音が響く。頭に血が上って、クラクラする。
父は、「弟のビリーが男児を産めなくとも」わたしに代襲相続させることを条件に、陛下からの出征要請を受諾し、アルバート殿下の護衛兼目付役を引き受けた。
いろんな疑問が一気にわたしの頭の中をめぐる。
ビリーが子供を産めなくとも、とはどういう意味なのか。そして何より――。
なぜ、父の命懸けの請願が反故にされ、わたしの代襲相続は却下されたのか。
凍り付いたわたしの手の甲に、アルバート殿下の大きな手が重ねられ、ギュッと握る。そのぬくもりで、わたしはようやく、息をするのを思い出し、大きく息を吸った。
「疑問が、いくつかある」
殿下が口にすれば、マールバラ公爵が即座に言った。
「息子が云々に関しては、わしは知らぬ。身体が弱く、実際、マックスの戦死の直後に死んだとは聞いている。マックスが娘の代襲相続の確約を求めた、何か理由があったに違いないが、わしは知らない」
「では、そこまでして願ったマックスの請願が反故にされ、エルシーの代襲相続が却下された理由については、小父様はご存知なのですよね?」
低く、鋭い声で詰め寄る殿下に、マールバラ公爵は肩を竦めた。
「理由は、アルバートも察しているんじゃないか?」
ぎょっとしてわたしが殿下を見るが、殿下はまっすぐ閣下を見つめて、わたしの方には目を向けなかった。
「……マックスは、戦地からもう一つ、陛下に請願をした。それも認められたはずなのに、それをもなかったことにされた。三年前、王宮でいったい何があったのです。俺はそれが知りたい」
「三年前、シャルローでアルバートの部隊が潰滅したという報せが入って、王宮は恐慌に陥った。むろん、わしも呼び出されて、万一に備えて協議した。陛下の憔悴ぶりは、見ているこちらが辛くなるほどだったよ。……わしも、その前年に長男を亡くしているから、気持ちは痛いほどわかった」
マールバラ公爵はパイプをふかして、少しだけ遠い目をした。――公爵の嫡男は四年前、東部戦線で戦死されている。あの頃は本当に、王族だろうが何だろうが容赦がなく……いやむしろ、王族を敢えて狙っているのではないかとさえ、噂されていた。
「翌日には状況がわかってきて、グリージャの中立破棄と宣戦布告と間を置かず、アルバートのいたシャルロー村が襲撃されたとわかった。そこで問題となるのは――」
「誰かが、俺の居場所を敵にリークした。つまり――」
「それ以上は口にするな。たとえ聞く者がおらずとも、語ることは許されぬ」
「だが! あの時死んだ、俺の直属の部下は百九十人! 村人だって四十人以上、犠牲になった! 本来は秘匿されているはずの、俺の居場所が敵に筒抜けだった! 思い当たるフシは――」
「だからそれ以上、言うな。ごく内々ながら、すでに処罰は下っている。今、問題とすべきはそこじゃなかろう。――王宮は、事態の収拾に追いまくられた。グリージャの中立破棄と西部戦線の大打撃に対応しながら、王位継承者である、アルバートの行方を必死に捜索させた。……アルバートの無事が確認され、シャルロー村や周辺の被害が明らかになったのは、数日後だ」
マールバラ公爵が宥めるように言い、殿下が荒い息を吐きながら閣下を睨みつけている。
「マックス・アシュバートンは俺を庇って死んだ! 文字通り俺の盾になって! 何発も、銃弾が……!」
「リジー……!」
両手で顔を覆った殿下に、わたしは縋りつく。
「もうやめて……! お父様は……きっと自分から――」
「エルシー……」
殿下がわたしを胸に抱き込んで、耳元で囁く。
「すまない、エルシー……俺が……」
「マックス・アシュバートンが戦地から陛下に願い出たことに関して、わしはアルバートからの手紙で知らされるまで、聞いていなかった。だが、わしにはだいたいの事情が飲み込めた。いくつかの偶然と悪意が重なったとしか、言いようがない」
「偶然と……悪意?」
殿下が顔を上げ、ギロリと閣下を睨みつける。
「しかし、なぜ、あんなことがまかり通っている。仮にも勅命で出征し、王子を庇って戦死した将校の、代襲相続の申請が却下されるなんて! 王家への忠誠に関わる大問題だ!」
「さよう。大問題であるがゆえに、これを正すのは非常な勇気と慎重さが必要だ。王家の不義理と横暴を、暴き出す可能性があるからな」
「だからと言って、間違いのまま押し通そうとするなんて!」
激昂した殿下に、公爵閣下が諦めたように首を振る。
「シャルローを含め、周辺地域で死傷した我が軍の将兵は二万人だ。この遺族や傷病兵の家族に真実が知られ、彼らの怒りの声が世論に火をつけたら、それこそ革命が起こるぞ?」
「王家はそれだけのことをした。潰れて当然だ!」
殿下と閣下の会話は肝心のことをぼかしていて、わたしには意味がわからない。シャルロー村の例の事件と、父の戦死が、いったい何に繋がっているというのか。
「すべてを白日の下に曝すことはできない。秘密の保持を確約するならば、マックス・アシュバートンへの罪滅ぼしに、アルバートに協力してもいい」
閣下の言葉に、殿下は挑むように言った。
「……じゃあ、俺が継承権を放棄して、エルシーと結婚するのを――」
「継承権の放棄はしないでもらいたい。少なくとも今はまだ。――王太子に王子が生まれるまでは、せめて」
「だが、王子のままではエルシーとの結婚を許してもらえない。だったら俺は――」
執着を示すように、わたしを抱き締める殿下に、閣下は呆れたように溜息をつく。
「アルバートとレコンフィールド公爵令嬢との婚約が議会に掛けられた時、わしは王都を離れていて議決に関わることがでいなかった。アルバートに次ぐ王位継承権を持ち、王家に最も近い親族である、このわしが。マールバラ公爵であり、貴族院議員の一人として、異を唱えることは許されよう。その上で、そのお嬢さんがリンドホルム伯爵の娘で、マックス・アシュバートンがアルバートの命を救ったことは事実。王子のたっての希望もあり、かつて部下だったリンドホルム伯爵の令嬢を、わしが後見して王子妃に推薦する。レコンフィールド公爵も、力ずくで潰すことはできまい。……もちろん、絶対に押し通すとまでは、約束できないが」
閣下の言葉に、わたしはポカンとして二人を見比べる。
――つまり、マールバラ公爵がわたしたちの結婚を後押ししてくれる、と?
マールバラ公爵は国王陛下の従兄にして、殿下に次ぐ、第四位の継承権をお持ちの、つまり大貴族だ。
「本気ならありがたいことです。でも、オズワルド小父様は自身が即位したいと思わないのですか? 筋金入りの王統派だと伺っていますよ?」
殿下の問いに、閣下は苦笑した。
「筋金入りだからこそ、自身が即位したいとは思わんな。王位ってのは横から崇め奉るのが一番だ。――長男が生きていれば、あれに王位をと思ったかもしれんが、次男にはそんな気概もない。わしはアレに期待はしておらんでな」
それから閣下はわたしに向かって言った。
「ステファニー嬢とアルバート王子は相思相愛、という噂だけが独り歩きしておったから、しばし風当たりは強いだろう。田舎育ちの伯爵令嬢で、しかも代襲相続も認められず、領地も追い出されたあんたと、王都で王子妃候補として遇されてきた公爵令嬢では、はっきり言えば分が悪い。さきほどの大使の令嬢のような、ステファニー嬢の取り巻きも多い。あんたは意外と気も強いようだが、それでも、逆風に煽られて心が折れるような目にも遭うだろう。王太子に男児さえ生まれれば、状況は好転するはずだが。――王妃になる可能性がゼロでない以上、逆風に耐えてもらわねばならん」
「……わたしは、できれば王妃になんて、なりたくないのですが――」
できうるならばストラスシャーのあの城に戻りたい。ちらりと殿下を横目で見れば、殿下が慌てて言う。
「俺だって別に王になりたくはない。エルシーが絶対に嫌だと言うなら――」
「アルバート! 継承権の放棄は無しだ!それが守ってもらえないならば、後押しはできない」
殿下が眉間に皺を寄せて考え込む。公爵の後押しを得て、正式にわたしと結婚する道を探るか、あるいはすべて捨てて逃げるか、考えているのだろう。
「リジー、駆け落ちなんてしたら、どれだけの人に迷惑をかけるか。きちんと手続きを踏む努力をしてください。それがわたしの結婚の条件です」
「……わかった。兄上のところに、一日も早く男児が生まれるのを祈ろう」
「ええ、聖ゲオルグ大聖堂にも連れて行ってくださるのでしょう?」
わたしが殿下に少しばかり甘えれば、殿下が眉尻を下げて頷く。その様子を見ていた閣下が、呆れたように大きく溜息をついた。
「まったく、若い者は周囲の気も知らないで。……明日の夜会は二人で出るのだな?」
「パートナーが必要ならば、エルシー以外にはありえません」
殿下がわたしの手をギュッと握る。
「アルティニアの皇太子夫妻に、息子たちも出席する予定だ。デビューもしていないお嬢さんには、なかなか厳しいと思うが。……せいぜい、側を離れんように」
「もちろんです。……赤い紐で小指同士を結びつけて行こうか、エルシー?」
「バカ、やめて、恥ずかしい……」
耳元で馬鹿なことを囁かれ、思わず詰れば、向かい側では閣下がクックックと身体を震わせて笑っていた。
「それだけイチャついていれば、レコンフィールド公爵令嬢との不仲を聞いて、アルバート王子の婚約者に娘を押し込もうとする、アルティニア貴族どもも諦めるだろう」
閣下の言葉にわたしは目を瞠る。
「まあ! そんな方がいらっしゃるのですか?」
「ランデルの第三王子の妃の椅子を狙う令嬢は、この大陸にも多い。あんたも気を引き締めて望むんだな」
閣下の忠告を最後に、わたしたちは二人でその場を辞した。
父は、「弟のビリーが男児を産めなくとも」わたしに代襲相続させることを条件に、陛下からの出征要請を受諾し、アルバート殿下の護衛兼目付役を引き受けた。
いろんな疑問が一気にわたしの頭の中をめぐる。
ビリーが子供を産めなくとも、とはどういう意味なのか。そして何より――。
なぜ、父の命懸けの請願が反故にされ、わたしの代襲相続は却下されたのか。
凍り付いたわたしの手の甲に、アルバート殿下の大きな手が重ねられ、ギュッと握る。そのぬくもりで、わたしはようやく、息をするのを思い出し、大きく息を吸った。
「疑問が、いくつかある」
殿下が口にすれば、マールバラ公爵が即座に言った。
「息子が云々に関しては、わしは知らぬ。身体が弱く、実際、マックスの戦死の直後に死んだとは聞いている。マックスが娘の代襲相続の確約を求めた、何か理由があったに違いないが、わしは知らない」
「では、そこまでして願ったマックスの請願が反故にされ、エルシーの代襲相続が却下された理由については、小父様はご存知なのですよね?」
低く、鋭い声で詰め寄る殿下に、マールバラ公爵は肩を竦めた。
「理由は、アルバートも察しているんじゃないか?」
ぎょっとしてわたしが殿下を見るが、殿下はまっすぐ閣下を見つめて、わたしの方には目を向けなかった。
「……マックスは、戦地からもう一つ、陛下に請願をした。それも認められたはずなのに、それをもなかったことにされた。三年前、王宮でいったい何があったのです。俺はそれが知りたい」
「三年前、シャルローでアルバートの部隊が潰滅したという報せが入って、王宮は恐慌に陥った。むろん、わしも呼び出されて、万一に備えて協議した。陛下の憔悴ぶりは、見ているこちらが辛くなるほどだったよ。……わしも、その前年に長男を亡くしているから、気持ちは痛いほどわかった」
マールバラ公爵はパイプをふかして、少しだけ遠い目をした。――公爵の嫡男は四年前、東部戦線で戦死されている。あの頃は本当に、王族だろうが何だろうが容赦がなく……いやむしろ、王族を敢えて狙っているのではないかとさえ、噂されていた。
「翌日には状況がわかってきて、グリージャの中立破棄と宣戦布告と間を置かず、アルバートのいたシャルロー村が襲撃されたとわかった。そこで問題となるのは――」
「誰かが、俺の居場所を敵にリークした。つまり――」
「それ以上は口にするな。たとえ聞く者がおらずとも、語ることは許されぬ」
「だが! あの時死んだ、俺の直属の部下は百九十人! 村人だって四十人以上、犠牲になった! 本来は秘匿されているはずの、俺の居場所が敵に筒抜けだった! 思い当たるフシは――」
「だからそれ以上、言うな。ごく内々ながら、すでに処罰は下っている。今、問題とすべきはそこじゃなかろう。――王宮は、事態の収拾に追いまくられた。グリージャの中立破棄と西部戦線の大打撃に対応しながら、王位継承者である、アルバートの行方を必死に捜索させた。……アルバートの無事が確認され、シャルロー村や周辺の被害が明らかになったのは、数日後だ」
マールバラ公爵が宥めるように言い、殿下が荒い息を吐きながら閣下を睨みつけている。
「マックス・アシュバートンは俺を庇って死んだ! 文字通り俺の盾になって! 何発も、銃弾が……!」
「リジー……!」
両手で顔を覆った殿下に、わたしは縋りつく。
「もうやめて……! お父様は……きっと自分から――」
「エルシー……」
殿下がわたしを胸に抱き込んで、耳元で囁く。
「すまない、エルシー……俺が……」
「マックス・アシュバートンが戦地から陛下に願い出たことに関して、わしはアルバートからの手紙で知らされるまで、聞いていなかった。だが、わしにはだいたいの事情が飲み込めた。いくつかの偶然と悪意が重なったとしか、言いようがない」
「偶然と……悪意?」
殿下が顔を上げ、ギロリと閣下を睨みつける。
「しかし、なぜ、あんなことがまかり通っている。仮にも勅命で出征し、王子を庇って戦死した将校の、代襲相続の申請が却下されるなんて! 王家への忠誠に関わる大問題だ!」
「さよう。大問題であるがゆえに、これを正すのは非常な勇気と慎重さが必要だ。王家の不義理と横暴を、暴き出す可能性があるからな」
「だからと言って、間違いのまま押し通そうとするなんて!」
激昂した殿下に、公爵閣下が諦めたように首を振る。
「シャルローを含め、周辺地域で死傷した我が軍の将兵は二万人だ。この遺族や傷病兵の家族に真実が知られ、彼らの怒りの声が世論に火をつけたら、それこそ革命が起こるぞ?」
「王家はそれだけのことをした。潰れて当然だ!」
殿下と閣下の会話は肝心のことをぼかしていて、わたしには意味がわからない。シャルロー村の例の事件と、父の戦死が、いったい何に繋がっているというのか。
「すべてを白日の下に曝すことはできない。秘密の保持を確約するならば、マックス・アシュバートンへの罪滅ぼしに、アルバートに協力してもいい」
閣下の言葉に、殿下は挑むように言った。
「……じゃあ、俺が継承権を放棄して、エルシーと結婚するのを――」
「継承権の放棄はしないでもらいたい。少なくとも今はまだ。――王太子に王子が生まれるまでは、せめて」
「だが、王子のままではエルシーとの結婚を許してもらえない。だったら俺は――」
執着を示すように、わたしを抱き締める殿下に、閣下は呆れたように溜息をつく。
「アルバートとレコンフィールド公爵令嬢との婚約が議会に掛けられた時、わしは王都を離れていて議決に関わることがでいなかった。アルバートに次ぐ王位継承権を持ち、王家に最も近い親族である、このわしが。マールバラ公爵であり、貴族院議員の一人として、異を唱えることは許されよう。その上で、そのお嬢さんがリンドホルム伯爵の娘で、マックス・アシュバートンがアルバートの命を救ったことは事実。王子のたっての希望もあり、かつて部下だったリンドホルム伯爵の令嬢を、わしが後見して王子妃に推薦する。レコンフィールド公爵も、力ずくで潰すことはできまい。……もちろん、絶対に押し通すとまでは、約束できないが」
閣下の言葉に、わたしはポカンとして二人を見比べる。
――つまり、マールバラ公爵がわたしたちの結婚を後押ししてくれる、と?
マールバラ公爵は国王陛下の従兄にして、殿下に次ぐ、第四位の継承権をお持ちの、つまり大貴族だ。
「本気ならありがたいことです。でも、オズワルド小父様は自身が即位したいと思わないのですか? 筋金入りの王統派だと伺っていますよ?」
殿下の問いに、閣下は苦笑した。
「筋金入りだからこそ、自身が即位したいとは思わんな。王位ってのは横から崇め奉るのが一番だ。――長男が生きていれば、あれに王位をと思ったかもしれんが、次男にはそんな気概もない。わしはアレに期待はしておらんでな」
それから閣下はわたしに向かって言った。
「ステファニー嬢とアルバート王子は相思相愛、という噂だけが独り歩きしておったから、しばし風当たりは強いだろう。田舎育ちの伯爵令嬢で、しかも代襲相続も認められず、領地も追い出されたあんたと、王都で王子妃候補として遇されてきた公爵令嬢では、はっきり言えば分が悪い。さきほどの大使の令嬢のような、ステファニー嬢の取り巻きも多い。あんたは意外と気も強いようだが、それでも、逆風に煽られて心が折れるような目にも遭うだろう。王太子に男児さえ生まれれば、状況は好転するはずだが。――王妃になる可能性がゼロでない以上、逆風に耐えてもらわねばならん」
「……わたしは、できれば王妃になんて、なりたくないのですが――」
できうるならばストラスシャーのあの城に戻りたい。ちらりと殿下を横目で見れば、殿下が慌てて言う。
「俺だって別に王になりたくはない。エルシーが絶対に嫌だと言うなら――」
「アルバート! 継承権の放棄は無しだ!それが守ってもらえないならば、後押しはできない」
殿下が眉間に皺を寄せて考え込む。公爵の後押しを得て、正式にわたしと結婚する道を探るか、あるいはすべて捨てて逃げるか、考えているのだろう。
「リジー、駆け落ちなんてしたら、どれだけの人に迷惑をかけるか。きちんと手続きを踏む努力をしてください。それがわたしの結婚の条件です」
「……わかった。兄上のところに、一日も早く男児が生まれるのを祈ろう」
「ええ、聖ゲオルグ大聖堂にも連れて行ってくださるのでしょう?」
わたしが殿下に少しばかり甘えれば、殿下が眉尻を下げて頷く。その様子を見ていた閣下が、呆れたように大きく溜息をついた。
「まったく、若い者は周囲の気も知らないで。……明日の夜会は二人で出るのだな?」
「パートナーが必要ならば、エルシー以外にはありえません」
殿下がわたしの手をギュッと握る。
「アルティニアの皇太子夫妻に、息子たちも出席する予定だ。デビューもしていないお嬢さんには、なかなか厳しいと思うが。……せいぜい、側を離れんように」
「もちろんです。……赤い紐で小指同士を結びつけて行こうか、エルシー?」
「バカ、やめて、恥ずかしい……」
耳元で馬鹿なことを囁かれ、思わず詰れば、向かい側では閣下がクックックと身体を震わせて笑っていた。
「それだけイチャついていれば、レコンフィールド公爵令嬢との不仲を聞いて、アルバート王子の婚約者に娘を押し込もうとする、アルティニア貴族どもも諦めるだろう」
閣下の言葉にわたしは目を瞠る。
「まあ! そんな方がいらっしゃるのですか?」
「ランデルの第三王子の妃の椅子を狙う令嬢は、この大陸にも多い。あんたも気を引き締めて望むんだな」
閣下の忠告を最後に、わたしたちは二人でその場を辞した。
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