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第二章
愛だけでは
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わたしは殿下を好きなのか。
ズバリ聞かれて、わたしは答えられずに俯く。
ずっと、考えないようにしていた。いやむしろ、好きになってはいけないと、思ってきた。
殿下がわたしを抱いたのは、わたしが処女で金に困っていて、都合がいいから。
いずれ、レコンフィールド公爵令嬢か、あるいは別の、とにかく殿下の身分に相応しいご令嬢と婚約されるまでの、つなぎの女だと。……いずれ捨てられる女が、本気になっても辛いだけだと。
なのに、殿下はわたしと結婚したいと言いはり、そして、彼はかつて、リンドホルム城にいたリジーだと知った。
ずっと、わたしのことが好きだったと。
殿下には何度も、愛を告げられているのに、わたしは一度も答えを返したことがない。
いつもいつも、「おばあ様のお許しが」「おばあ様に相談しないと」。
だって――何かを自分で決めたことなんてない。司令部で働くと決めた時くらいだ。あの時もおばあ様は大反対なさったけれど、本当にお金がなくて、「背に腹は代えらえません」とジョンソンとメアリーまでもが説得して、ようやく認めてくださった。でもおばあ様が反対なさるんだから、女のくせに働くなんて、本当は好ましくないんだろうと、わたしだってどこかで思っていた。結局、その仕事のせいで殿下に会って、こんなことに――。
「ミス・アシュバートン? どうかなさったの?」
ミセス・リーガルに心配そうに問いかけられ、わたしはハッとして顔を上げる。
「いえ、何でもありません。その……」
「エミリー、あなたが不躾なことを聞くからよ」
「何よ、アナベル、あなただって知りたいって言ってたじゃない」
お互いに言い争う老姉妹の様子からして、どうやら、二人の間ではわたしと殿下の関係をあれこれ詮索していたらしい。
「その……殿下からは何度か、その……結婚したいとは言われているのですけれど、わたしのようなものが、軽々しくお返事していいかどうか、その――」
「そりゃあ、気後れして当然よ。その辺の普通の男にプロポーズされても迷うものよ。まして、ねぇ?」
ミセス・アナベルが姉に向かって同意を求め、ミス・アランも頷く。
「ええ、そうよ。当たり前よ。王子の上に、他の女と婚約してるんですからね。でも、そちらの方はどうするつもりでいらっしゃるの?」
ミス・アランは穏やかな口調でぐいぐいと詰めてくる。
「え、その……結婚したいのは、わたしだとの一点張りで……」
「あら、それは――」
「あらまあ――」
老姉妹は顔を見合わせる。
「それはダメね。具体的な道筋を示してもらわないと」
「ええ、そうよ。愛だけでなんとかなるんだったら、この世に悲恋はないわ」
ミセス・リーガルが首を振る。
「殿下は意外と、詰めが甘いようね。脇が甘いって言うのかしら」
「あっさり議会を通されてしまうしねぇ……」
ミス・アランもうんうんと頷いて、わたしに言った。
「愛は大切よ? 愛がなければ、すべてが虚しいわ。でもね、愛だけではダメなのよ」
「まあ、お金も大切よね。でも、愛は必要よ。そして何より自分よ」
ミセス・リーガルが改めて言う。
「頼りない男とやっていけるかどうか、やっぱりあなたの気持ち次第よ。愛していれば我慢できるし、愛がなければ我慢できない。結局はそこに帰るのよ」
わたしは殿下を愛しているのか、それとも――。
わたしが答えに逡巡しているうちに、特別車両からロベルトさんと外交部の二人が戻ってきて、ロベルトさんが言う。
「エルスペス嬢、殿下がお呼びだよ? タイプして欲しい書類があるってさ。それから手紙の口述筆記」
「は、はい、わかりました。今すぐに」
わたしが老姉妹に断りを言って立ち上がると、二人も立ちあがってわたしを優しく抱きしめてくれた。
「あなたは悪くないわ、ミス・アシュバートン。選択に自信を持ってね」
ミス・アランが言い、ミセス・リーガルは、
「しいて言えば、あなたが魅力的過ぎるのがいけないのね。大丈夫よ、きっと幸せになれるわ」
と言って、わたしの頬に軽くキスをしてくれた。祖母に抱きしめられたのなんて、弟が死んだ時以来で、わたしは昔のことを思い出し、目の奥が熱くなるけれど、それを堪えて微笑んで礼を言った。
「ありがとうございます。また、夜にでも――」
「ええ、もちろん」
ジョナサン・カーティス大尉とともに、特別車両に戻ると、殿下は車窓に凭れるようにして、シュルフト語の辞書を片手に、書類を読んでいた。
流れていく晩秋の田園を背景に、殿下は上着は脱ぎ、糊のきいた白いドレスシャツの上に背中側が黒く、前面が薄いグレイのウエストコートを着て、濃いグレイのトラウザーズを穿いた長い脚を組んでいる。その姿は、見慣れたわたしでもドキッとするほど格好がいい。
殿下は入ってきたわたしに気づくと、持っていた辞書を小テーブルに置き、隣に席に座るように手招きした。
「ああ、エルシーはこちらに……ジョナサンは下がって、ジェラルドとロベルトから、さっきの話を聞いておいてくれ。些か厄介な件が持ち上がっている」
「それは……ハーケン二等書記官が言っていた、グリージャの件ですか?」
「そうだ。俺は関わるつもりは全くないし、ハーケンにもそう、言った。だが、向こうの出方が読めない。気をつけておいてくれ」
「承知しました。詳しくはまた、後ほど」
ジョナサン・カーティス大尉が一礼して下がると、殿下が言う。
「お節介なばあさん二人組に捕まっていたらしいな」
「ご親切な方がたですわ。人生に有益なアドヴァイスを……」
殿下は、隣に座ったわたしの顔をじっと見つめる。
「どうせ余計なことを吹き込まれたんだろ? 俺みたいな男はやめておけ、とか」
「……具体的なプランのない男はやめておけとは言われました」
殿下が凛々しい眉根を寄せ、言い訳がましくまくしたてる。
「プランはあった。二人で国外に逃げる。ハンプトンの港から新大陸行きの客船のチケットも押えたんだ。……でも、マクガーニにしこたま叱られ、代わりにビルツホルン行きを押し付けられた」
「……新大陸に駆け落ちなんてしたら、わたしは王子を誑かした稀代の悪女って言われ続けるでしょうね」
新大陸に逃げればいいってものじゃない。その後どうするつもりだったのか。わたしが溜息をつけば、殿下も肩を竦める。
「俺だって、女に入れあげて国を捨てた馬鹿王子って言われ続けるだろうけど、俺は評判よりもエルシーの方が大事だったから……」
「ご自分の評判は殿下の勝手ですけど、わたしの評判も少しくらい気にしてください」
殿下は両掌を上に向け、おおげさに困惑を表現する。
「本当は、お前の爵位を取り戻して、その上で父上の許しを得るつもりだった。それで、ビリーの死の不審さに気づいて……調査に手間取ってる隙に、まさか議会に手を回されるなんて、想像もしてなかった。新聞の件は、俺の不注意だ。俺は新聞社みたいなものに注意を向けなさ過ぎた。ロベルトとも相談して、新聞社を一つ買おうかとも考えているけど、俺が社主ってのもあからさまな気がするから、少し迷ってる。投資先としては利益はイマイチだし、手を広げ過ぎはよくないとも思って。……全部、後手後手に回っているのは、認める」
「殿下のせいだけではないから、そのことはもう……。それはともかく、タイプする書類はどれです?」
無駄話を切り上げ、事務モードに入ろうとわたしが話を変えれば、殿下は腕を伸ばしてわたしを抱き寄せる。
「二人っきりの時はリジーと呼んでくれ」
「でも、これはお仕事ですから。ケジメはつけたいの」
殿下は、息を呑んで、恐る恐るわたしの顔を覗き込むようにして、言った。
「……つまり……食事や、その、ベッドの上はもう、業務じゃないと……」
わたしは目を伏せ、顔を逸らして小さな声で言った。
「……愛して、くださっているのでしょう? わたしを……」
「もちろんだ! 最初から俺は――ただその、余計なことを言ったせいで、お前にいらぬ誤解をさせてしまった。……本当にずっと、昔から愛しているのは、エルシーだけだったのに……」
殿下が感極まったようにわたしを抱き締めて、顔中にキスの雨を降らせるのを、わたしは身を捩って避ける。
「朝っぱらからやめてください。仕事があるのでしょう? 指示していただければ、タイプでも口述筆記でもしますから――」
「今はキスがしたい」
「リジーって呼ぶのやめますよ?」
わたしが少しばかり凄んでみせれば、殿下は慌てて両手を引っ込めてわたしを解放した。
「すまない。タイプして欲しい書類はこれだが、別に急がない。ビルツホルンに着くまでは、差し当たって特にすることはないんだ。現在、すでに海軍の協議の結果によっては、こちらの要求も変わってくるかもしれないし」
殿下は少し躊躇うように、視線を車窓に移し、それから意を決したようにわたしを見た。
「それより、外野から余計なことを言われる前に、俺の口からきちんと説明しておいた方がいいと思って呼んだんだ。……さっきの、ジョナサンに言ったグリージャの厄介事について――」
「わたしが聞いてもいいことなのですか?」
国の機密に関わることなら、特には聞きたくはないのだけれど。
殿下が形のよい眉を顰めて、わたしをじっと見つめた。
「お前とも関係ないわけじゃないから。……外交部の若い方、ハーケン二等書記官と言うんだが、あいつには注意しろ」
「ええ?……あの、若い方がどうかなさったの?」
「あいつは外交部でもグリージャ寄りの派閥らしい。あろうことか、俺とグリージャの王女との結婚を画策している一派の野郎だった。……レコンフィールド公爵が議会を抱き込んでまで、強引にステファニーと婚約させた理由が、やっとわかったよ」
ズバリ聞かれて、わたしは答えられずに俯く。
ずっと、考えないようにしていた。いやむしろ、好きになってはいけないと、思ってきた。
殿下がわたしを抱いたのは、わたしが処女で金に困っていて、都合がいいから。
いずれ、レコンフィールド公爵令嬢か、あるいは別の、とにかく殿下の身分に相応しいご令嬢と婚約されるまでの、つなぎの女だと。……いずれ捨てられる女が、本気になっても辛いだけだと。
なのに、殿下はわたしと結婚したいと言いはり、そして、彼はかつて、リンドホルム城にいたリジーだと知った。
ずっと、わたしのことが好きだったと。
殿下には何度も、愛を告げられているのに、わたしは一度も答えを返したことがない。
いつもいつも、「おばあ様のお許しが」「おばあ様に相談しないと」。
だって――何かを自分で決めたことなんてない。司令部で働くと決めた時くらいだ。あの時もおばあ様は大反対なさったけれど、本当にお金がなくて、「背に腹は代えらえません」とジョンソンとメアリーまでもが説得して、ようやく認めてくださった。でもおばあ様が反対なさるんだから、女のくせに働くなんて、本当は好ましくないんだろうと、わたしだってどこかで思っていた。結局、その仕事のせいで殿下に会って、こんなことに――。
「ミス・アシュバートン? どうかなさったの?」
ミセス・リーガルに心配そうに問いかけられ、わたしはハッとして顔を上げる。
「いえ、何でもありません。その……」
「エミリー、あなたが不躾なことを聞くからよ」
「何よ、アナベル、あなただって知りたいって言ってたじゃない」
お互いに言い争う老姉妹の様子からして、どうやら、二人の間ではわたしと殿下の関係をあれこれ詮索していたらしい。
「その……殿下からは何度か、その……結婚したいとは言われているのですけれど、わたしのようなものが、軽々しくお返事していいかどうか、その――」
「そりゃあ、気後れして当然よ。その辺の普通の男にプロポーズされても迷うものよ。まして、ねぇ?」
ミセス・アナベルが姉に向かって同意を求め、ミス・アランも頷く。
「ええ、そうよ。当たり前よ。王子の上に、他の女と婚約してるんですからね。でも、そちらの方はどうするつもりでいらっしゃるの?」
ミス・アランは穏やかな口調でぐいぐいと詰めてくる。
「え、その……結婚したいのは、わたしだとの一点張りで……」
「あら、それは――」
「あらまあ――」
老姉妹は顔を見合わせる。
「それはダメね。具体的な道筋を示してもらわないと」
「ええ、そうよ。愛だけでなんとかなるんだったら、この世に悲恋はないわ」
ミセス・リーガルが首を振る。
「殿下は意外と、詰めが甘いようね。脇が甘いって言うのかしら」
「あっさり議会を通されてしまうしねぇ……」
ミス・アランもうんうんと頷いて、わたしに言った。
「愛は大切よ? 愛がなければ、すべてが虚しいわ。でもね、愛だけではダメなのよ」
「まあ、お金も大切よね。でも、愛は必要よ。そして何より自分よ」
ミセス・リーガルが改めて言う。
「頼りない男とやっていけるかどうか、やっぱりあなたの気持ち次第よ。愛していれば我慢できるし、愛がなければ我慢できない。結局はそこに帰るのよ」
わたしは殿下を愛しているのか、それとも――。
わたしが答えに逡巡しているうちに、特別車両からロベルトさんと外交部の二人が戻ってきて、ロベルトさんが言う。
「エルスペス嬢、殿下がお呼びだよ? タイプして欲しい書類があるってさ。それから手紙の口述筆記」
「は、はい、わかりました。今すぐに」
わたしが老姉妹に断りを言って立ち上がると、二人も立ちあがってわたしを優しく抱きしめてくれた。
「あなたは悪くないわ、ミス・アシュバートン。選択に自信を持ってね」
ミス・アランが言い、ミセス・リーガルは、
「しいて言えば、あなたが魅力的過ぎるのがいけないのね。大丈夫よ、きっと幸せになれるわ」
と言って、わたしの頬に軽くキスをしてくれた。祖母に抱きしめられたのなんて、弟が死んだ時以来で、わたしは昔のことを思い出し、目の奥が熱くなるけれど、それを堪えて微笑んで礼を言った。
「ありがとうございます。また、夜にでも――」
「ええ、もちろん」
ジョナサン・カーティス大尉とともに、特別車両に戻ると、殿下は車窓に凭れるようにして、シュルフト語の辞書を片手に、書類を読んでいた。
流れていく晩秋の田園を背景に、殿下は上着は脱ぎ、糊のきいた白いドレスシャツの上に背中側が黒く、前面が薄いグレイのウエストコートを着て、濃いグレイのトラウザーズを穿いた長い脚を組んでいる。その姿は、見慣れたわたしでもドキッとするほど格好がいい。
殿下は入ってきたわたしに気づくと、持っていた辞書を小テーブルに置き、隣に席に座るように手招きした。
「ああ、エルシーはこちらに……ジョナサンは下がって、ジェラルドとロベルトから、さっきの話を聞いておいてくれ。些か厄介な件が持ち上がっている」
「それは……ハーケン二等書記官が言っていた、グリージャの件ですか?」
「そうだ。俺は関わるつもりは全くないし、ハーケンにもそう、言った。だが、向こうの出方が読めない。気をつけておいてくれ」
「承知しました。詳しくはまた、後ほど」
ジョナサン・カーティス大尉が一礼して下がると、殿下が言う。
「お節介なばあさん二人組に捕まっていたらしいな」
「ご親切な方がたですわ。人生に有益なアドヴァイスを……」
殿下は、隣に座ったわたしの顔をじっと見つめる。
「どうせ余計なことを吹き込まれたんだろ? 俺みたいな男はやめておけ、とか」
「……具体的なプランのない男はやめておけとは言われました」
殿下が凛々しい眉根を寄せ、言い訳がましくまくしたてる。
「プランはあった。二人で国外に逃げる。ハンプトンの港から新大陸行きの客船のチケットも押えたんだ。……でも、マクガーニにしこたま叱られ、代わりにビルツホルン行きを押し付けられた」
「……新大陸に駆け落ちなんてしたら、わたしは王子を誑かした稀代の悪女って言われ続けるでしょうね」
新大陸に逃げればいいってものじゃない。その後どうするつもりだったのか。わたしが溜息をつけば、殿下も肩を竦める。
「俺だって、女に入れあげて国を捨てた馬鹿王子って言われ続けるだろうけど、俺は評判よりもエルシーの方が大事だったから……」
「ご自分の評判は殿下の勝手ですけど、わたしの評判も少しくらい気にしてください」
殿下は両掌を上に向け、おおげさに困惑を表現する。
「本当は、お前の爵位を取り戻して、その上で父上の許しを得るつもりだった。それで、ビリーの死の不審さに気づいて……調査に手間取ってる隙に、まさか議会に手を回されるなんて、想像もしてなかった。新聞の件は、俺の不注意だ。俺は新聞社みたいなものに注意を向けなさ過ぎた。ロベルトとも相談して、新聞社を一つ買おうかとも考えているけど、俺が社主ってのもあからさまな気がするから、少し迷ってる。投資先としては利益はイマイチだし、手を広げ過ぎはよくないとも思って。……全部、後手後手に回っているのは、認める」
「殿下のせいだけではないから、そのことはもう……。それはともかく、タイプする書類はどれです?」
無駄話を切り上げ、事務モードに入ろうとわたしが話を変えれば、殿下は腕を伸ばしてわたしを抱き寄せる。
「二人っきりの時はリジーと呼んでくれ」
「でも、これはお仕事ですから。ケジメはつけたいの」
殿下は、息を呑んで、恐る恐るわたしの顔を覗き込むようにして、言った。
「……つまり……食事や、その、ベッドの上はもう、業務じゃないと……」
わたしは目を伏せ、顔を逸らして小さな声で言った。
「……愛して、くださっているのでしょう? わたしを……」
「もちろんだ! 最初から俺は――ただその、余計なことを言ったせいで、お前にいらぬ誤解をさせてしまった。……本当にずっと、昔から愛しているのは、エルシーだけだったのに……」
殿下が感極まったようにわたしを抱き締めて、顔中にキスの雨を降らせるのを、わたしは身を捩って避ける。
「朝っぱらからやめてください。仕事があるのでしょう? 指示していただければ、タイプでも口述筆記でもしますから――」
「今はキスがしたい」
「リジーって呼ぶのやめますよ?」
わたしが少しばかり凄んでみせれば、殿下は慌てて両手を引っ込めてわたしを解放した。
「すまない。タイプして欲しい書類はこれだが、別に急がない。ビルツホルンに着くまでは、差し当たって特にすることはないんだ。現在、すでに海軍の協議の結果によっては、こちらの要求も変わってくるかもしれないし」
殿下は少し躊躇うように、視線を車窓に移し、それから意を決したようにわたしを見た。
「それより、外野から余計なことを言われる前に、俺の口からきちんと説明しておいた方がいいと思って呼んだんだ。……さっきの、ジョナサンに言ったグリージャの厄介事について――」
「わたしが聞いてもいいことなのですか?」
国の機密に関わることなら、特には聞きたくはないのだけれど。
殿下が形のよい眉を顰めて、わたしをじっと見つめた。
「お前とも関係ないわけじゃないから。……外交部の若い方、ハーケン二等書記官と言うんだが、あいつには注意しろ」
「ええ?……あの、若い方がどうかなさったの?」
「あいつは外交部でもグリージャ寄りの派閥らしい。あろうことか、俺とグリージャの王女との結婚を画策している一派の野郎だった。……レコンフィールド公爵が議会を抱き込んでまで、強引にステファニーと婚約させた理由が、やっとわかったよ」
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