3 / 5
No.3 合言葉と言えばこれですわ
しおりを挟む
「おい、国に戻るって言ってもどうするんだよ??」
私とデニスはあのいい匂いのする(デニスはひたすら臭いって呟いていたけれど)部屋から出て、家の外に出ていた。
家の裏には車、原付バイク、中型バイク、大型バイク、魔力で動く発電機など私が作った大量の機械があった。
その中のあるものに私はそっと触る。
「これで行くのよ」
「なにこれ??」
デニスは私が作った大型バイクを物珍しそうに見る。
デニスの反応は当然である。
この世界において、バイクなんてものはない。
長距離移動はなぜか馬車か転送魔法が基本。
それなりに車とか作る技術はあると思うのだけれど。
中世の西洋が舞台というゲーム設定のせいか??
こっちの世界の人間のことを考えてくれよ、公式さんよ。
公式に心の中で文句を言いつつも、私はデニスにバイクのことを説明する。
「これバイクっていう乗り物なの。バイクにはいろいろ種類があって小さなものもあるけれど、2人いるからこの大きい方に乗っていくわよ」
「なんでこれに乗らないといけないんだよ。転送魔法でいいじゃないか?? 転送できる機械はないのか??」
デニスは肩をすくめ、他にはないのかと訴えてくる。
あのね……。
「私、魔法使えないのよ」
「でも、魔法石があれば魔法機械は作れるだろ??」
「そうだけど……」
確かに魔法石という魔力が詰まった石を使えば、魔法使いじゃなくとも魔法は使用可能だ。
しかし、私はその魔法石を別の開発で大量消費してしまい……。
「移動機械に魔法石を使用できなかったのか……」
「そうです……だから、これで行くしかないんです」
「まぁ仕方ないか」
時間がないデニスは仕方なく了承した。
でも、なんだか嫌そうな顔をしていた。
さてはこのバイクが地上を走るとでも思っているな。
チッチッチッ。
想像力がないですな、王子さん。
乗っていくバイクを家の表へ動かし、セレスタイン国へ行く準備をし始めた。
必要なものを椅子の下の収納場所に入れていく。
エナが大きな袋を入れていると、「それはなんだ」とデニスは気になっていたが、「使う機会がきっとあるんで、あとで紹介します」と答えてそっと入れた。
そして、あのお気に入りの部屋からヘルメットを取ってきた。
デニスは初めてヘルメットを見たため、渡された時は『一体、何に使うんだ』とでも言いたげな顔をしていたが、私が被ったのを見て理解し被っていた。
そして、ヘルメットを間違えて先に被ってしまった私はまた外し、家の前に立つ。
一時、お別れね……
って思いたいけれど、もしかしたらもうここには帰ってこないかもしれない。
あっちに4回も行って死んでるのだからね。
でも、帰りたいわ。
だから、それまで眠っていてね。
「3分間待ってやる!!!!」
私がそう叫ぶと、目の前に石碑が現れる。
地面から生えてきたその石碑はまだキレイで少し輝いていた。
そりゃ、そうだよね。
最近作ったんだもん。
この装置。
え?
なんでこの合言葉にしているかって??
そりゃあ、この世界の人たちはこのネタが分からないからよ。
それに私はジブリファン。
これを使わずにはいられない。
エナはその文字が書いてある石碑に触れ、すっと家の方を向く。
「ちょっとだけ待っていてね」
そういうと私は深呼吸をして、さよならをする家を見つめる。
そして、合言葉を叫んだ。
「見ろ!! 人がゴミのようだ!! ハッハッハッハッハッハ…」
ゴゴオォォーーーーーー。
すると、家は地面に沈んでいった。
「なんて言葉を合言葉にしてんだ」
後ろからバイクの近くに立っていたはずのデニスの声が聞こえる。
私は振り向き、『仕方ないじゃない』とでも言いたげに肩をすくめた。
「だって、この合言葉を『バルス』にしちゃったら、家が破裂するじゃない」
「意味が分からんぞ」
最初は確かに憧れの『バルス』しようとしていた。
でも、よく考えたら『バルス』は自爆コードみたいなもんじゃない??
だから、仕方なく大佐のお言葉をお借りすることにしたの。
もっといい言葉があったはずなのだけれど、これしか思いつかなくてね。
家が地上の下に隠れ、穴が芝生の地面によって隠されると、私とデニスはバイクに乗った。
運転する私が前、彼が後ろ。
彼は初め恥ずかしいのか私に抱き着くことを拒んでいたが、
『あら、バイクに乗るために抱き着くこともできないなんて、お可愛いこと……』
と私が言ってやるとすんなり抱き着いた。
ホントガキ。
そして、私がバイクのエンジンを入れると、バイクが浮いた。
そう、このバイクはただの地上を走るバイクではなく、空中を走るバイクなのだ。
縦だったタイヤは横になっており、そのバイクの姿はまるで近未来の乗り物だった。
デニスは急に浮いたバイクに驚きキョロキョロと周囲を見渡す。
因みに私はこのバイクに乗るのはこれで200回目。
ええ、驚くことなんてないんですよ。
驚いたのは、1回目とバイクから落ちそうになった時ぐらい。
落ちたときは幸い死にはしなかったけれど。
さぁ、王子様。
まずはバイクから落ちないことが一番ですわ。
「戦場に行くのでかなりの高さの所で走ります。落ちないでくださいね」
「ああ、分かってる」
私は豪快にエンジンを鳴らすと、近くにいた鳥たちが飛んで行った。
ここからが勝負。
もうこの人生5回目なんですから、できればもう死にたくありません。
死んだとしても別の人生がいいです、神様。
ほんとループは嫌です、神様。
「さ、生きましょ」
「??」
「あ、間違えたわ。行きましょ」
待っててね。
ハンナちゃん。
あなたに絶対この王子を送り届けるわ。
エナとデニスが乗ったバイクは風のように空へと飛んで行った。
私とデニスはあのいい匂いのする(デニスはひたすら臭いって呟いていたけれど)部屋から出て、家の外に出ていた。
家の裏には車、原付バイク、中型バイク、大型バイク、魔力で動く発電機など私が作った大量の機械があった。
その中のあるものに私はそっと触る。
「これで行くのよ」
「なにこれ??」
デニスは私が作った大型バイクを物珍しそうに見る。
デニスの反応は当然である。
この世界において、バイクなんてものはない。
長距離移動はなぜか馬車か転送魔法が基本。
それなりに車とか作る技術はあると思うのだけれど。
中世の西洋が舞台というゲーム設定のせいか??
こっちの世界の人間のことを考えてくれよ、公式さんよ。
公式に心の中で文句を言いつつも、私はデニスにバイクのことを説明する。
「これバイクっていう乗り物なの。バイクにはいろいろ種類があって小さなものもあるけれど、2人いるからこの大きい方に乗っていくわよ」
「なんでこれに乗らないといけないんだよ。転送魔法でいいじゃないか?? 転送できる機械はないのか??」
デニスは肩をすくめ、他にはないのかと訴えてくる。
あのね……。
「私、魔法使えないのよ」
「でも、魔法石があれば魔法機械は作れるだろ??」
「そうだけど……」
確かに魔法石という魔力が詰まった石を使えば、魔法使いじゃなくとも魔法は使用可能だ。
しかし、私はその魔法石を別の開発で大量消費してしまい……。
「移動機械に魔法石を使用できなかったのか……」
「そうです……だから、これで行くしかないんです」
「まぁ仕方ないか」
時間がないデニスは仕方なく了承した。
でも、なんだか嫌そうな顔をしていた。
さてはこのバイクが地上を走るとでも思っているな。
チッチッチッ。
想像力がないですな、王子さん。
乗っていくバイクを家の表へ動かし、セレスタイン国へ行く準備をし始めた。
必要なものを椅子の下の収納場所に入れていく。
エナが大きな袋を入れていると、「それはなんだ」とデニスは気になっていたが、「使う機会がきっとあるんで、あとで紹介します」と答えてそっと入れた。
そして、あのお気に入りの部屋からヘルメットを取ってきた。
デニスは初めてヘルメットを見たため、渡された時は『一体、何に使うんだ』とでも言いたげな顔をしていたが、私が被ったのを見て理解し被っていた。
そして、ヘルメットを間違えて先に被ってしまった私はまた外し、家の前に立つ。
一時、お別れね……
って思いたいけれど、もしかしたらもうここには帰ってこないかもしれない。
あっちに4回も行って死んでるのだからね。
でも、帰りたいわ。
だから、それまで眠っていてね。
「3分間待ってやる!!!!」
私がそう叫ぶと、目の前に石碑が現れる。
地面から生えてきたその石碑はまだキレイで少し輝いていた。
そりゃ、そうだよね。
最近作ったんだもん。
この装置。
え?
なんでこの合言葉にしているかって??
そりゃあ、この世界の人たちはこのネタが分からないからよ。
それに私はジブリファン。
これを使わずにはいられない。
エナはその文字が書いてある石碑に触れ、すっと家の方を向く。
「ちょっとだけ待っていてね」
そういうと私は深呼吸をして、さよならをする家を見つめる。
そして、合言葉を叫んだ。
「見ろ!! 人がゴミのようだ!! ハッハッハッハッハッハ…」
ゴゴオォォーーーーーー。
すると、家は地面に沈んでいった。
「なんて言葉を合言葉にしてんだ」
後ろからバイクの近くに立っていたはずのデニスの声が聞こえる。
私は振り向き、『仕方ないじゃない』とでも言いたげに肩をすくめた。
「だって、この合言葉を『バルス』にしちゃったら、家が破裂するじゃない」
「意味が分からんぞ」
最初は確かに憧れの『バルス』しようとしていた。
でも、よく考えたら『バルス』は自爆コードみたいなもんじゃない??
だから、仕方なく大佐のお言葉をお借りすることにしたの。
もっといい言葉があったはずなのだけれど、これしか思いつかなくてね。
家が地上の下に隠れ、穴が芝生の地面によって隠されると、私とデニスはバイクに乗った。
運転する私が前、彼が後ろ。
彼は初め恥ずかしいのか私に抱き着くことを拒んでいたが、
『あら、バイクに乗るために抱き着くこともできないなんて、お可愛いこと……』
と私が言ってやるとすんなり抱き着いた。
ホントガキ。
そして、私がバイクのエンジンを入れると、バイクが浮いた。
そう、このバイクはただの地上を走るバイクではなく、空中を走るバイクなのだ。
縦だったタイヤは横になっており、そのバイクの姿はまるで近未来の乗り物だった。
デニスは急に浮いたバイクに驚きキョロキョロと周囲を見渡す。
因みに私はこのバイクに乗るのはこれで200回目。
ええ、驚くことなんてないんですよ。
驚いたのは、1回目とバイクから落ちそうになった時ぐらい。
落ちたときは幸い死にはしなかったけれど。
さぁ、王子様。
まずはバイクから落ちないことが一番ですわ。
「戦場に行くのでかなりの高さの所で走ります。落ちないでくださいね」
「ああ、分かってる」
私は豪快にエンジンを鳴らすと、近くにいた鳥たちが飛んで行った。
ここからが勝負。
もうこの人生5回目なんですから、できればもう死にたくありません。
死んだとしても別の人生がいいです、神様。
ほんとループは嫌です、神様。
「さ、生きましょ」
「??」
「あ、間違えたわ。行きましょ」
待っててね。
ハンナちゃん。
あなたに絶対この王子を送り届けるわ。
エナとデニスが乗ったバイクは風のように空へと飛んで行った。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
婚約破棄された悪役令嬢は王子様に溺愛される
白雪みなと
恋愛
「彼女ができたから婚約破棄させてくれ」正式な結婚まであと二年というある日、婚約破棄から告げられたのは婚約破棄だった。だけど、なぜか数時間後に王子から溺愛されて!?
【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢に転生したはずなのに!?
もふきゅな
恋愛
現代日本の普通一般人だった主人公は、突然異世界の豪華なベッドで目を覚ます。鏡に映るのは見たこともない美しい少女、アリシア・フォン・ルーベンス。悪役令嬢として知られるアリシアは、王子レオンハルトとの婚約破棄寸前にあるという。彼女は、王子の恋人に嫌がらせをしたとされていた。
王子との初対面で冷たく婚約破棄を告げられるが、美咲はアリシアとして無実を訴える。彼女の誠実な態度に次第に心を開くレオンハルト
悪役令嬢としてのレッテルを払拭し、彼と共に幸せな日々を歩もうと試みるアリシア。
【完結】乙ゲー世界でもう一度愛を見つけます
瀬川香夜子
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したリシャーナ・ハルゼラインは、原作の学園を卒業し研究者としての生活が始まった。
ゲームの攻略対象の一人であるマラヤンと付き合っていたが、なぜか彼から突然別れを告げられる。
落ち込むリシャーナを励ますため、同じ研究者であるヘルサの紹介で、リシャーナの研究で助けられたという人に会うことに。しかしやってきたのは、二年前に破談となった婚約相手──ユーリス・ザインロイツだった!
以前とは変わってしまった彼の姿に驚くリシャーナ。彼の身に一体何があったのか……!?
※こちらは他投稿サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる