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魔法陣男

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 世界にはバカな人間と頭のいい人間がいる。頭のいいやつは世界のトップになるやつもいれば、誰かを助けてるために全力を尽くすやつだっている。
 では、バカな人間は??

 それは俺である。俺以外にこの世界にバカな人間はいるのだろうかっていうぐらいバカである。どんなに勉強したって、テストでは常に0点。ノートもまともに取れた・・・ことがない。
 毎度、毎度授業やテストが終わるたびに、俺は絶望の底に落とされるのだ。

 しかし。
 高校受験は幸運なことに受かった。先生にダメ押しで勧められたAOだったからかなと思う。
 面接の時、「英語はどのくらい話せますか」って言われたから、全力の英語で身の上話をした。すると、先生は涙を浮かべて、「あなたは合格でいいわ」と言ってくれた。就職覚悟してたのに。

 まぁ、なんだかんだあって高校1年生になれたからよかったと思っている。ホント運のいいやつだよ、俺は。
 といっても高校でのテストが0点なのは変わりないがな。
 でも、なぜここまで俺のテストが0点なのか。0点にも関わらず評定はもらえているのか。

 そして、勉強時間は0分ではないにも関わらず、テストではなぜ1点も取れないのか。
 答えは1つ。
 文字を書こうとすると、俺、仁科にしな隼人はやとは魔法陣を書いてしまうからである。
 そんな俺は今何をしているのかと言うと……………………

 「んなぁ、聞いてねえぇぇーーーーーー!!!!」

 と全力で叫んでいた。学校一の美少女に腕を掴まれて。
 暗い部屋の中、緑色の光を放つ魔法陣。
 俺はその魔法陣によって異世界へと飛ばされた。



★★★★★★★★
 
 
 
 いつも通り学校に登校し、教室に入るなり静かに自分の席に座る。そして、ペンを使っての勉強はできないので、英語の単語帳を開くと、決して・・・いらないことはしないようにしていたのだけれど。
 
 「なぁなぁ、隼人さんよー。このペンを使って魔法陣書いてみてくれよー」
 
 気楽そうな声が聞こえてきた。顔を上げると、そこには茶髪のメガネ男。何か企んでいるような顔をしているこの男はいずみ浩一郎こういちろうという俺の長年の友人である。本人曰く茶色の髪は地毛のことだが、真相は知らない。泉は前の席に座り、企み顔でこちらにペンを向けてくる。
 
 「バカか。ペンで書いたら、俺らはどこに行くか分からないんだぞ」
 「いいじゃーん。ロシアンルーレットみたいでさー。運が良ければ、素敵な未来に。運がこれっぽっちもなければ最悪な未来に行けるんだからさ」
 「転送場所は未来だけじゃねーんだよ」

 俺が書く魔法陣はさまざま。意識をすれば、自分の思う通りに書ける。転送魔法陣、召喚魔法陣、攻撃系の魔法陣など多種多様。でも、無意識というか日本語など他の文字を書こうとすると大体転送魔法陣になってしまう。俺の魔法陣による被害者は一緒にマンモスを狩っていた人間がいる原始時代に行ったり、サイボーグ化した人間が戦争している未来に行ったりとよさそうで嫌な目に合っている。

 泉もその被害者なんだが……………………。
 どうも本人は嫌じゃなかったらしい。
 彼とは未来に行ったのだが、その時はヤッホーと叫んで、走り去っていった。泉をやっと見つけたと思えば、風俗店の中。お金のことがふいに浮かんできた俺は泉がかなり抵抗するので、引っ張り出して、この世界ここに帰ってきた。
 その体験をして以来、美女に会うためか俺の魔法陣を求めてくる。本人は素敵な未来を見たいからと言っているが。

 「でも、隼人が意識して魔法陣を書けば問題ないだろ?? だから、書いてくれよ、な??」
 「これから授業が始まるってのにか??」
 「だからだよ。お前が『先生~、間違えて書いてしまいましたぁ~。僕、勉強しようとしてただけなんですぅ~』と言えば、怒られずにサボることができるだろ??」
 「お前な……………………」

 俺は勉強しようとして何回もそんな目に合ってるのに、10年目でそんなことするわけねーだろ。
 と訴えると、

 「テストの時は名前を書く度、どっかに消えてるのに??」
 「つっう……………………」

 何にもいえねぇ。
 確かに俺はテストの時は毎度毎度机の上で光を放ってどっかに消えている。名前を書こうとするだけなのに、なぜか紙に書かれるのは複雑な魔法陣。でも、それは先生にもしっかり許可を取ってからの行動。
 俺も文字を書いてみたいんだよ。いつ書けれるようになるかわかんねーし。そんな淡い期待を俺と先生は抱いていつもテストを受けている。

 「ともかく、魔法陣はダメだ。ほら、前を向け」
 「ちぇー。隼人ケチだぜー」
 「ケチで結構だよ」

 泉が大人しく前を向いたのを確認した俺は黒カバンから教科書を取り出した。
 すっと、温かい春風が教室に入り込む。
 1時間目のチャイムが鳴った時、俺の机には教科書以外何もなかった。
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