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第2ラウンド
第29話 乱入者
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「まさか悪役令嬢さんがうさちゃんになっているなんて~びっくりなのです~」
呑気で柔らかな声。でも、桃色髪の少女に笑顔はなく、声とは真逆の鋭い瞳で私を見下ろしていた。
「デスゲームなんか開いて~? 武器は銃で~? キャラ全員に水着着させて~? あはは~、そりゃあ、転生者に決まってるなのです~。あのゲームのアドヴィナであれば、デスゲームを開く頭はないはずです~。公爵令嬢のアドヴィナはバニー服なんて着ないです~」
………まぁ、確かに。バニー服なんて私でも好んでは着ないし、前世の記憶が蘇る前のアドヴィナならなおのこと。『は、破廉恥っ!』とセイレーンをビンタしていたはずだ。
「でも~、転生者だからって~、元の世界の住人同士だからって~、仲良くするのは毛頭ないのです~」
「そう」
「私、これからマーカスと結婚する予定だったのです~。なのに、アドヴィナさんがデスゲームなんて開くから、予定総崩れです~」
マーカスって、あのマーカスだろうか。彼って確か女騎士ちゃんの婚約者だったわよね………もしかして、寝とった?
「うわぁ………奪った男と結婚だななんんて、これはめでたいものはないわね。おめでとう、捨てられないことを祈るわ」
とんでもない女だと皮肉を込めていったのだが、彼女にそんなことが伝わることなく、ロリーナは明るい声でお礼を述べていた。
「ありがとうございます~。でも、これだと結婚する前に死ぬんです~」
「それは残念。どんまーい」
「あはは~ふざけないでくださいです~。さっさとこのデスゲームを止めてくださいです~アドヴィナさんのくだらないお遊びに付き合ってる暇なんて、私にはないのです~」
お遊びね……………。
彼女たちにとっては私が遊んでいるように見えるかもしれない。半分は事実。ちょー楽しんで遊んでるわ。でも、これでも私はちゃんと仕事はしてるのよ。
「そんなに結婚したいのなら、生き残ればいいじゃない」
「バカを言わないでくださ~い。アドヴィナさんが言うルールが本当なら、1人しか生きられないのです~」
私たちが提示したルールは確かに生き残るのは1人だけ。最終ラウンドで勝利した者が元の世界へと戻れる。でも、彼女が転生者なら、何らかのチートを使って脱出はできるはずだ。
「ロリーナさん、あなたあの神に何か願わなかったの?」
「もちろん、願ったのです~。折角の転生ですから、要望をお伝えしましたのです~」
「それ、どんなチート?」
すると、ロリーナは自分が可愛いと理解しているかのような満面の笑みで、斧を私に向ける。
「――――超絶美人な女の子に転生させてってお願いしたのです~」
ライトアップを存分に受けながら答える彼女。
ええ、ロリーナは大真面目に言ってくれたと思う。全くふざけてなかったと思う。でも――――。
「ぷっ、ハハッ!! アハハッ!! それであの女神が応じたの!? あり得ない!! アハハッ!!」
淑女なんて忘れて、私は口を開けて空を見上げて大笑い。笑い過ぎてお腹が痛かった。
あの女神なら『つまらない』って一蹴する。絶対。そして、勝手に願いを変えて、ろくでもないチートをつけて、1人大笑いして絶望した転生者を見送る。
きっとそう。絶対そう。あの女神と長い時間を過ごしたわけじゃないけど、私の予想は間違いない。
だが、ロリーナは眉をひそめて首を傾けていた。
「女神~? 女神ではなかったです~。私を転生させた神は男の方でした~」
「――――――――は?」
…………………………。
…………………………いやいやいや。
私が転生する時に現れたのは女神で。
確かに少女の形をしていて。
私が女神様って言ったら、頷いてくれて……………。
……………え。もしや、神様ってたくさんいる?
たくさんいたとして、私を転生させた神とロリーナを転生させた神は別物。転生作品で神様が何人も登場する作品もあったし………ま、そういうこともあるか。
「ともかく~、アドヴィナさんがデスゲームなんてするから、私たち、結婚できないのです~」
「あなたが生き残れば、死体になった彼と結婚はできるわよ。頑張りなさいな」
リンク場の斧を向けられても、私は微動だにしない。逆にムカつくだろう余裕の笑みを浮かべて、鼻で笑ってあげた。
「あはは~。笑ってないで~、デスゲームを終わらせてくださいです~。私と彼だけでもいいから、元の世界に戻してくださいです~。さっさと戻さないと――――」
刹那、斧が風を切り、私の首横に刃が近づき、私は日本刀で斧を押さえる。
「――――殺すわよ」
ぶりっ子の口から出たとは思えない酷く冷たいその声。さっきの無駄に明るい声はどこに行ったのか。ロリーナは最後の忠告と言わんばかりに、眼光鋭く私を睨む。
危ない、危ない。反応できなかったら、首ちょんぱされていたわ。
「はぁ………」
どうしようもない彼女の要望に、思わず出る大きなため息。私を脅したって無駄なのに………面倒だし、さっさと殺してしまお。
手元の日本刀で大斧を押し切り、ロリーナから距離を取った。
「ッ! 分かったのです~ッ!! あなたがその気なら~、殺すのです~~ッ!!」
ロリーナが振りかざす大斧は、座っていた椅子を大破。豪快に破壊され、木々の破片が周囲に飛び散る。私は横へと転がり一時的に回避。飛んできた破片も腕で遮った。
「うふふ………男に股を開くのは一瞬だけど、動きは鈍いのね」
転生者であること、可愛い見た目をして大斧を使うこと。彼女はかなりの戦闘能力があるのかもしれないと期待したのだが……そうでもないようだ。
地を這う私は彼女を見上げて、ニヤリと口角を上げる。
「男の相手しすぎて、あなたの体、枯れ果てたんじゃない――――?」
その瞬間、ぶちっとロリーナの堪忍の尾が切れた気がした。
こんな分かりやすい挑発ができるのはあなたがビッチだったからよ。ムカつくのなら自業自得。こんなことを他人に言われるのが気に食わないのなら、バージンを捨てるべきではなかったわね?
「アドヴィナさぁ~んッ!! あなたは望み通り殺してあげるのです~ッ!!」
予想通り、挑発に乗るぶりっ子ビッチ。
――――さぁ、ビッチの本気見せてちょうだいな! 愛人のために、あなたの狂気を見せてちょうだいな!
鬼の形相で私を追ってくるロリーナ。
彼女は無我夢中で大斧を振りまくる。
「あー、遅い遅い!」
だが、ロリーナの攻撃はトロい。あまりの遅さに、私は回避の時でさえ踊っていた。客席の間を駆け、クルクルと回転舞い踊る。そんな私の余裕にムカついたのだろう。
「クソ悪役令嬢っ――――!!」
可愛いロリーナちゃんが無縁にも思えた汚い言葉を叫んでいた。
あ~あ、今まで作り上げてきた可愛さが台無しね……うふふ、いい調子だわ、ロリーナ。もっと怒り狂ってちょうだい。
無駄に席を壊しながら、後ろから追ってくるロリーナ。彼女に横目をやりながら、私は客席の間を駆けていく。ある程度距離を離すと、椅子の背もたれの上に登り、ロリーナに向かってジャンプ。
「とっ、とっ、とっ、っと!!」
そして、斧の刃の上に着地。刃の上に乗ったまましゃがみ込み、ロリーナと視線を合わせた。
「ロリーナちゃん、筋力はあるみたいだけど、でも弱いわねぇ?」
「ックソォっ――!!」
私が乗った状態で斧を持ち続けるロリーナに関心しつつ、今にも彼女が噛みつきにかかりそうだったので、斧から退散。バク宙で距離を取る。
ロリーナは私と同じ転生者。
だけど、不思議と全く親近感が湧かない。
「前世では私とは真逆の存在だったんでしょうね……」
引きこもりとかそういうのじゃなかったけど、私はオタクで陽キャグループとはかけ離れた存在。でも、陽キャグループのことを妬んだり羨んだりすることなかった。
自分のことを可愛いと思ってる――――女の子とは意外と仲良くできた。普通に可愛いと思うし、メイクのことは親切に教えてくれるし、妬みはおろか嫌悪という感情もなかった。
ただ陽キャの中でも男をとっかえひっかえする、要するに猫かぶりなビッチな女が大嫌いだった。彼氏がいるにも関わらずに浮気をする、すぐに股を開く――その行為が、吐気がした。
多分ロリーナは愛を分かっていない。にも関わらず、他の女から奪った男と結婚するなどとバカげた事を言っている。本当に結婚するってどういう意味か分かってるのかしら?
「ほーんと、あなたみたいなビッチが結婚とか信じられないわね………不倫する予定でも入れてるのかしら?」
その一言にさらに苛立ったのか、ロリーナは可愛い顔で舌打ち。
ロリーナ、あなたも他の人と同じように私を見捨てたのよ。周りから冷たい扱いを受けても見て見ぬふり、自分の欲求最優先だった。
『婚約者に見捨てられるなんてぇ~~、かわいそぉ~~。公爵令嬢様ぁ、頑張ってぇ~~』
エイダンに冷たく当たられて落ち込んでいたアドヴィナを嘲笑って言ったあなたの一言忘れたりしない。あの瞬間、自分のブラックリストに『ロリーナ・プレザンス』の名前を刻んだのを覚えている。
可愛いうちに死ねるんだから、感謝して欲しいものだわ――――。
転生者であり、デスゲーム世界のどこにいても魔法が使える。そんなルール◯レイカーみたいなチートを持っていたら、彼女が双子たちに手を貸したと判断したのだけど。
だけど、彼女は一向に魔法を使ってこない。おそらくロリーナはゲーム設定崩しの犯人ではない。
「遊んでないで殺してあげ――――」
………――――ッ、ンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ!!
突如天から聞こえてきた鈍い打撃音。
その音が振動とともに繰り返し響き。
ンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ――――ピキッ。
何かが壊れる前兆の音が聞こえた。
見上げると、天井に入っていたのは小さな罅。
ドンッ、ドンッ、ドンッ!!
だが、打撃音は止まらず。
ピキッ、ピキピキッ――――。
罅が次第に大きくなり、そして、いよいよ天井が破れ。
「やっと見つけましたわァ――――!!」
天井の崩壊と同時に甲高い声が轟く。瓦礫とともに上の階から落ちてきたのは大剣持ちの金髪の女性。
「よくも私の婚約者を盗んでくれましたわねぇ――――!! ロリーナ・プレザンス!!」
金髪美女の碧眼は私ではなく、尻軽ビッチロリーナを捕えていた。
あっは、この子騎士様じゃないの――――。
立て巻きロールの黄金の髪を1つで結い、そのポニーテールを揺らすビキニ姿の巨乳美女。ムカつくほどに美貌を備えた彼女の名前はブレンダ・ヴァージ。
――――エイダン直属の女騎士だった。
――――――
第30話は明日10時頃更新いたします。
呑気で柔らかな声。でも、桃色髪の少女に笑顔はなく、声とは真逆の鋭い瞳で私を見下ろしていた。
「デスゲームなんか開いて~? 武器は銃で~? キャラ全員に水着着させて~? あはは~、そりゃあ、転生者に決まってるなのです~。あのゲームのアドヴィナであれば、デスゲームを開く頭はないはずです~。公爵令嬢のアドヴィナはバニー服なんて着ないです~」
………まぁ、確かに。バニー服なんて私でも好んでは着ないし、前世の記憶が蘇る前のアドヴィナならなおのこと。『は、破廉恥っ!』とセイレーンをビンタしていたはずだ。
「でも~、転生者だからって~、元の世界の住人同士だからって~、仲良くするのは毛頭ないのです~」
「そう」
「私、これからマーカスと結婚する予定だったのです~。なのに、アドヴィナさんがデスゲームなんて開くから、予定総崩れです~」
マーカスって、あのマーカスだろうか。彼って確か女騎士ちゃんの婚約者だったわよね………もしかして、寝とった?
「うわぁ………奪った男と結婚だななんんて、これはめでたいものはないわね。おめでとう、捨てられないことを祈るわ」
とんでもない女だと皮肉を込めていったのだが、彼女にそんなことが伝わることなく、ロリーナは明るい声でお礼を述べていた。
「ありがとうございます~。でも、これだと結婚する前に死ぬんです~」
「それは残念。どんまーい」
「あはは~ふざけないでくださいです~。さっさとこのデスゲームを止めてくださいです~アドヴィナさんのくだらないお遊びに付き合ってる暇なんて、私にはないのです~」
お遊びね……………。
彼女たちにとっては私が遊んでいるように見えるかもしれない。半分は事実。ちょー楽しんで遊んでるわ。でも、これでも私はちゃんと仕事はしてるのよ。
「そんなに結婚したいのなら、生き残ればいいじゃない」
「バカを言わないでくださ~い。アドヴィナさんが言うルールが本当なら、1人しか生きられないのです~」
私たちが提示したルールは確かに生き残るのは1人だけ。最終ラウンドで勝利した者が元の世界へと戻れる。でも、彼女が転生者なら、何らかのチートを使って脱出はできるはずだ。
「ロリーナさん、あなたあの神に何か願わなかったの?」
「もちろん、願ったのです~。折角の転生ですから、要望をお伝えしましたのです~」
「それ、どんなチート?」
すると、ロリーナは自分が可愛いと理解しているかのような満面の笑みで、斧を私に向ける。
「――――超絶美人な女の子に転生させてってお願いしたのです~」
ライトアップを存分に受けながら答える彼女。
ええ、ロリーナは大真面目に言ってくれたと思う。全くふざけてなかったと思う。でも――――。
「ぷっ、ハハッ!! アハハッ!! それであの女神が応じたの!? あり得ない!! アハハッ!!」
淑女なんて忘れて、私は口を開けて空を見上げて大笑い。笑い過ぎてお腹が痛かった。
あの女神なら『つまらない』って一蹴する。絶対。そして、勝手に願いを変えて、ろくでもないチートをつけて、1人大笑いして絶望した転生者を見送る。
きっとそう。絶対そう。あの女神と長い時間を過ごしたわけじゃないけど、私の予想は間違いない。
だが、ロリーナは眉をひそめて首を傾けていた。
「女神~? 女神ではなかったです~。私を転生させた神は男の方でした~」
「――――――――は?」
…………………………。
…………………………いやいやいや。
私が転生する時に現れたのは女神で。
確かに少女の形をしていて。
私が女神様って言ったら、頷いてくれて……………。
……………え。もしや、神様ってたくさんいる?
たくさんいたとして、私を転生させた神とロリーナを転生させた神は別物。転生作品で神様が何人も登場する作品もあったし………ま、そういうこともあるか。
「ともかく~、アドヴィナさんがデスゲームなんてするから、私たち、結婚できないのです~」
「あなたが生き残れば、死体になった彼と結婚はできるわよ。頑張りなさいな」
リンク場の斧を向けられても、私は微動だにしない。逆にムカつくだろう余裕の笑みを浮かべて、鼻で笑ってあげた。
「あはは~。笑ってないで~、デスゲームを終わらせてくださいです~。私と彼だけでもいいから、元の世界に戻してくださいです~。さっさと戻さないと――――」
刹那、斧が風を切り、私の首横に刃が近づき、私は日本刀で斧を押さえる。
「――――殺すわよ」
ぶりっ子の口から出たとは思えない酷く冷たいその声。さっきの無駄に明るい声はどこに行ったのか。ロリーナは最後の忠告と言わんばかりに、眼光鋭く私を睨む。
危ない、危ない。反応できなかったら、首ちょんぱされていたわ。
「はぁ………」
どうしようもない彼女の要望に、思わず出る大きなため息。私を脅したって無駄なのに………面倒だし、さっさと殺してしまお。
手元の日本刀で大斧を押し切り、ロリーナから距離を取った。
「ッ! 分かったのです~ッ!! あなたがその気なら~、殺すのです~~ッ!!」
ロリーナが振りかざす大斧は、座っていた椅子を大破。豪快に破壊され、木々の破片が周囲に飛び散る。私は横へと転がり一時的に回避。飛んできた破片も腕で遮った。
「うふふ………男に股を開くのは一瞬だけど、動きは鈍いのね」
転生者であること、可愛い見た目をして大斧を使うこと。彼女はかなりの戦闘能力があるのかもしれないと期待したのだが……そうでもないようだ。
地を這う私は彼女を見上げて、ニヤリと口角を上げる。
「男の相手しすぎて、あなたの体、枯れ果てたんじゃない――――?」
その瞬間、ぶちっとロリーナの堪忍の尾が切れた気がした。
こんな分かりやすい挑発ができるのはあなたがビッチだったからよ。ムカつくのなら自業自得。こんなことを他人に言われるのが気に食わないのなら、バージンを捨てるべきではなかったわね?
「アドヴィナさぁ~んッ!! あなたは望み通り殺してあげるのです~ッ!!」
予想通り、挑発に乗るぶりっ子ビッチ。
――――さぁ、ビッチの本気見せてちょうだいな! 愛人のために、あなたの狂気を見せてちょうだいな!
鬼の形相で私を追ってくるロリーナ。
彼女は無我夢中で大斧を振りまくる。
「あー、遅い遅い!」
だが、ロリーナの攻撃はトロい。あまりの遅さに、私は回避の時でさえ踊っていた。客席の間を駆け、クルクルと回転舞い踊る。そんな私の余裕にムカついたのだろう。
「クソ悪役令嬢っ――――!!」
可愛いロリーナちゃんが無縁にも思えた汚い言葉を叫んでいた。
あ~あ、今まで作り上げてきた可愛さが台無しね……うふふ、いい調子だわ、ロリーナ。もっと怒り狂ってちょうだい。
無駄に席を壊しながら、後ろから追ってくるロリーナ。彼女に横目をやりながら、私は客席の間を駆けていく。ある程度距離を離すと、椅子の背もたれの上に登り、ロリーナに向かってジャンプ。
「とっ、とっ、とっ、っと!!」
そして、斧の刃の上に着地。刃の上に乗ったまましゃがみ込み、ロリーナと視線を合わせた。
「ロリーナちゃん、筋力はあるみたいだけど、でも弱いわねぇ?」
「ックソォっ――!!」
私が乗った状態で斧を持ち続けるロリーナに関心しつつ、今にも彼女が噛みつきにかかりそうだったので、斧から退散。バク宙で距離を取る。
ロリーナは私と同じ転生者。
だけど、不思議と全く親近感が湧かない。
「前世では私とは真逆の存在だったんでしょうね……」
引きこもりとかそういうのじゃなかったけど、私はオタクで陽キャグループとはかけ離れた存在。でも、陽キャグループのことを妬んだり羨んだりすることなかった。
自分のことを可愛いと思ってる――――女の子とは意外と仲良くできた。普通に可愛いと思うし、メイクのことは親切に教えてくれるし、妬みはおろか嫌悪という感情もなかった。
ただ陽キャの中でも男をとっかえひっかえする、要するに猫かぶりなビッチな女が大嫌いだった。彼氏がいるにも関わらずに浮気をする、すぐに股を開く――その行為が、吐気がした。
多分ロリーナは愛を分かっていない。にも関わらず、他の女から奪った男と結婚するなどとバカげた事を言っている。本当に結婚するってどういう意味か分かってるのかしら?
「ほーんと、あなたみたいなビッチが結婚とか信じられないわね………不倫する予定でも入れてるのかしら?」
その一言にさらに苛立ったのか、ロリーナは可愛い顔で舌打ち。
ロリーナ、あなたも他の人と同じように私を見捨てたのよ。周りから冷たい扱いを受けても見て見ぬふり、自分の欲求最優先だった。
『婚約者に見捨てられるなんてぇ~~、かわいそぉ~~。公爵令嬢様ぁ、頑張ってぇ~~』
エイダンに冷たく当たられて落ち込んでいたアドヴィナを嘲笑って言ったあなたの一言忘れたりしない。あの瞬間、自分のブラックリストに『ロリーナ・プレザンス』の名前を刻んだのを覚えている。
可愛いうちに死ねるんだから、感謝して欲しいものだわ――――。
転生者であり、デスゲーム世界のどこにいても魔法が使える。そんなルール◯レイカーみたいなチートを持っていたら、彼女が双子たちに手を貸したと判断したのだけど。
だけど、彼女は一向に魔法を使ってこない。おそらくロリーナはゲーム設定崩しの犯人ではない。
「遊んでないで殺してあげ――――」
………――――ッ、ンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ!!
突如天から聞こえてきた鈍い打撃音。
その音が振動とともに繰り返し響き。
ンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ――――ピキッ。
何かが壊れる前兆の音が聞こえた。
見上げると、天井に入っていたのは小さな罅。
ドンッ、ドンッ、ドンッ!!
だが、打撃音は止まらず。
ピキッ、ピキピキッ――――。
罅が次第に大きくなり、そして、いよいよ天井が破れ。
「やっと見つけましたわァ――――!!」
天井の崩壊と同時に甲高い声が轟く。瓦礫とともに上の階から落ちてきたのは大剣持ちの金髪の女性。
「よくも私の婚約者を盗んでくれましたわねぇ――――!! ロリーナ・プレザンス!!」
金髪美女の碧眼は私ではなく、尻軽ビッチロリーナを捕えていた。
あっは、この子騎士様じゃないの――――。
立て巻きロールの黄金の髪を1つで結い、そのポニーテールを揺らすビキニ姿の巨乳美女。ムカつくほどに美貌を備えた彼女の名前はブレンダ・ヴァージ。
――――エイダン直属の女騎士だった。
――――――
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