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第3章
37 漆黒の船
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「メイヴ!」
槍で胸を射抜かれたメイヴ。
大量の血を吐きだし、倒れこむ。
マズい。このままではメイヴが死んでしまう。
「ナターシャ! 回復魔法を!」
「うん!」
ナターシャはすぐさまメイヴに回復魔法をかける。ナターシャの回復魔法は強力なのか、すぐに治っていった。
メイヴは大丈夫そうだな。
でも、なんでメイヴが槍で刺されたんだ?
近くにいたとはいえ、赤髪の女は確実にナアマを狙っていた。
メイヴに槍を刺した張本人は参ったな、と呟きながら、ナターシャとともにメイヴに回復魔法をかけていた。
「なぁ、あんた。メイヴを狙ってやったのか」
「そんなわけないでしょう。私は悪魔を狙ってやったのに。あの悪魔、突然消えて、そこのお姉さんが現れたのよ」
本当にごめん、と謝ってくる赤髪の女。
別に目標を変えたわけではない、んだな。
――――――――――――ていうか、ナアマはどこいった?
バリア魔法を破られた気配はない。つまり遠くには逃げていないということ。
ナアマの行方を尋ねると、3人とも首を横に振る。
氷上に吹く冷たい風。
その瞬間、メイヴはニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
「感謝する、そこの娘」
「え? メイヴ?」
すると、メイヴはナターシャの首を右手でガシッと掴んだ。
「おい、メイヴ!」
「メイ、ヴっ…………ど、うした、の」
「どうした? この娘がか? もうあやつは出てこぬぞ」
俺はナターシャの所へ駆け寄り、首を絞めるメイヴの手を引きはがそうとする。
しかし、メイヴは俺からナターシャを遠ざけ、空いた左手で俺に攻撃を仕掛けてきた。
クソ。
ナアマはどこに行ったかと思えば、メイヴの体にいやがったのか。
俺は一旦後ろへ下がる。
攻撃すればメイヴを殺しかねない。
「フハハ、メイヴの体、意外と使えるのぉ」
メイヴの白目が黒へ、そして、瞳孔が赤くなっていた。
このままだと、ナターシャの命が危ない。
悩んだ末、俺はナアマに瞬時に近づき、彼女の右腕をぶった切った。そして、解放されたナターシャは瞬時に後方へ下がっていく。
「ふん」
ナアマは切られた右手を見つめると、鼻を鳴らした。
その瞬間、ナアマの右手が元に戻った。
感触を確かめるように、グーパーをするナアマ。
彼女は嬉しそうに笑っていた。
――――――――――――おい。なんだよ、それ。
俺、一応白魔法を付与して切ったんだぞ?
なのに、再生させるとか…………悪魔はなんでもありってか?
すると、赤髪の女は槍を持ち直し、ナアマの方に向かって歩いていく。
俺は彼女の前に立ちふさがった。
「お前、その槍をどうするつもりだ」
「あの悪魔を殺すの」
「あれは…………悪魔じゃない。メイヴは俺たちのメンバーだ」
「あなたのメンバーは他のメンバーを殺そうとしていたけど、それでも悪魔じゃないというの?」
「…………」
確かに……………………今のメイヴは半分悪魔みたいなもの。
でも、あれはメイヴの体で、あそこにメイヴがいる。
あれを殺せば、悪魔も殺せるかもしれない。
だが、同時にメイヴを殺すことになる。
「あの様子だと、8割悪魔に乗っ取られている。放っておけば、あなたたちだけじゃない、他の人の命まで奪うの。状況分かってる?」
赤髪の女は俺に顔をぐっと近づけ、
「だから、ぶつくさ言ってないで、どけよ。ガキ」
と言ってきた。
彼女はいらだったのか、歯ぎしりをしている。
「ただの人間なら放っておくけれど、あれは悪魔の封印者。どうなっていたとしても、あれは殺すわ」
赤髪女の手には槍が握りしめられていた。
そして、彼女の手の甲には不思議な紋章があった。
「私は、全ての悪魔を殺さないといけないのよ」
赤髪女がそう言い放った瞬間。
――――――――――――パリッン!!
そんなバリア魔法が破られる音がした。
バリア魔法が破られた?
ナアマに?
周囲を見渡すが、ナアマはそこにいる。
破ったのはナアマじゃない。
一体誰が?
俺はふと見上げる。
すると、そこにあったのは空中を飛ぶ船。船体が漆黒に染まった船があった。
そこから無数の人間と魔物が降ってきた。
黒い船…………?
一体どこのやつらだ?
氷上の上は一気に黒いマントのやつらでいっぱいになる。
そいつらは着地するなり、全員俺たちの方に剣先を向けていた。
「あの女がメイヴだ。回収してくれ」
後の方に降ってきたボスのような短髪男が命令する。
すると、ナアマはそちらにちらりと目をやる。
「貴様ら、ユハンの下僕どもか?」
「下僕…………私どもはユハン様の部下です」
ボス女は話しかけられると、すぐに跪いた。
やつらはまさか魔王軍の……………………。
なんでこんなところに?
ナアマを迎えに来たっていうのか?
ボス男の返答にナアマは首を傾げる。
「部下?」
「は、はい…………部下です。あの、あなた様はナアマ様でよろしいでしょうか?」
「ああ、我はナアマだ。貴様ら、我に何用だ?」
「私どもはナアマ様を迎えにあがりました」
「迎えぇ?」
そう呟くと、ナアマは腹に手を当て、そして、大笑いし始めた。
「まさか、我がユハンの手を借りるとはのぉ! アハハ!」
「では…………」
女が船へと促そうとすると、ナアマは右手を伸ばし、
「まぁ、少し待て。この小僧をやってからだ」
と言って、俺の方を見てくる。
しかし、男は恐る恐るナアマに言った。
「それは……ご遠慮していただきたいかと、いろいろと準備がありますので」
「準備?」
再び首を傾げるナアマ。
しかし、一時すると女の考えを把握したのか、彼女はニヤリと笑みを浮かべていた。
「アハっ。まさかあやつはカルミアを占領しようとしているのか! 成長したのぉっ!」
ナアマが高らかにそう言うと、男はソワソワ。
俺たちに聞かれたく…………なかったんだろうな。
こっちにはその情報ありがたいような気がする。
でも、今カルミアを占領するって言った?
ウソだろ?
魔王占領地。
現在、そこはカルミアの反対側、つまりこの海の向こう側にある。
その魔王占領地にローレル王国から行くには南部を通って行く方法とカルミアの海を通っていく方法の2つがある。
カルミアは観光都市とはいえ、冒険者ギルドがあるし、たとえ魔王軍が占領しても海の方へ追い込まれ、撤退せざるを得なくなるだろう。
俺が魔王だったら、王都から距離があり、さらに間に山脈がある南部を先に占領する。
だが、魔王軍は先に南部を占領するのではなく、海を超えてカルミアにやってくるというのか?
愉快に笑っていたナアマだが男に向かって、そして、俺たちに向かって、
「そんなにソワソワするでない。コイツらは最初に我が消すからな。心配するな」
と言ってきた。
すると、浮かんでいた船は下へと降りてくると、ナアマたちがその船へと向かい始めた。
メイヴの体を乗っ取ったまま行くつもりか?
俺はナアマの方へ走り出す。
しかし、黒マントのやつらが行く手を塞いだ。
こいつらを相手してたら、キリがない。
俺は移動魔法使い、ナアマの元まで移動。
しかし、例のボス男が立ちふさがる。
コイツぐらいなら、俺1人でも!
男はこちらに剣を投げてくる。
俺は地面に転がり、避け、男と距離を詰める。
そして、白魔法を付与した剣を腹に刺そうとすると、男は俺の手を掴んできた。
「あ」
俺は逆に腹を蹴られ、後ろに吹き飛ばされ、氷の上を転がる。
腹を蹴られたが、そこまで痛みはなかった。
変な違和感があるが、特に目だった異常はない。
早くしないと、メイヴが連れていかれる――――――――――――。
そして、立ち上がろうとしたその時。
俺の体はぐらりと崩れ落ちる。
「は?」
なんで、なんで……………………力が入らないんだ!?
魔力を奪われた感覚はない。
ただ、全身の力が入らなくなっていた。
「オールアウェイク!」
状態異常解除の魔法をを唱えるも、力が戻る気配がない。
クソっ! クソっ!
あの男に向かっていったナターシャもシュナも、あの赤髪の女も同じ状態なのか、地面に倒れていた。
男は黒マントの者に撤退の指示を出し始める。
「もう相手にするな。コイツらは時期に死ぬ」
「しかし、ナアマ様は先ほど…………」
「いいんだ。このままだと、ナアマ様が動いてくれない。邪魔になる奴らはさっさと殺しておく方がいいんだ」
そう言って、ボス男たちは背を向け、船に向かって歩き出す。
アイツら、メイヴを連れて魔王占領地に帰ってしまう。
でも、何にもできない。
力を入れようとしても、全く力が入らない。
クソっ。
俺は船の方に目を向ける。
すると、船の中へ入ったと思っていたナアマが立っていた。
彼女は上からひょこっと顔を出していた。
メイヴの姿のまま、か。
人間に憑依した状態の方が弱くなるというのに、一体何をするつもりか。
俺と目が合うと、ナアマはニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
……………………メイヴの顔でそんな顔をするな、クソ悪魔。
すると、赤髪の女が力を振り絞って槍を投げる。
その槍はナアマに向かって一直線に飛んでいく。
「その槍の対処法はさっき分かったんでな。もう効かんぞ」
ドヤ顔を浮かべるナアマはハハハと笑う。
そして、簡単に槍を振り払った。
その槍は氷上に落ち、カランコロンと音を鳴らして滑っていく。
「小僧よ」
「…………」
「戦争前にでも殺してやろう」
ナアマは自分の体を指して、「この娘とともにな」と言って笑いだす。
「メイヴを返、せっ!」
「この娘は一応貰っておく。少し使えそうなんでな」
そう言うと、ナアマは船の中へと入っていった。
そして、漆黒の船はメイヴを連れて、魔王占領地の方へと向かって行った。
槍で胸を射抜かれたメイヴ。
大量の血を吐きだし、倒れこむ。
マズい。このままではメイヴが死んでしまう。
「ナターシャ! 回復魔法を!」
「うん!」
ナターシャはすぐさまメイヴに回復魔法をかける。ナターシャの回復魔法は強力なのか、すぐに治っていった。
メイヴは大丈夫そうだな。
でも、なんでメイヴが槍で刺されたんだ?
近くにいたとはいえ、赤髪の女は確実にナアマを狙っていた。
メイヴに槍を刺した張本人は参ったな、と呟きながら、ナターシャとともにメイヴに回復魔法をかけていた。
「なぁ、あんた。メイヴを狙ってやったのか」
「そんなわけないでしょう。私は悪魔を狙ってやったのに。あの悪魔、突然消えて、そこのお姉さんが現れたのよ」
本当にごめん、と謝ってくる赤髪の女。
別に目標を変えたわけではない、んだな。
――――――――――――ていうか、ナアマはどこいった?
バリア魔法を破られた気配はない。つまり遠くには逃げていないということ。
ナアマの行方を尋ねると、3人とも首を横に振る。
氷上に吹く冷たい風。
その瞬間、メイヴはニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
「感謝する、そこの娘」
「え? メイヴ?」
すると、メイヴはナターシャの首を右手でガシッと掴んだ。
「おい、メイヴ!」
「メイ、ヴっ…………ど、うした、の」
「どうした? この娘がか? もうあやつは出てこぬぞ」
俺はナターシャの所へ駆け寄り、首を絞めるメイヴの手を引きはがそうとする。
しかし、メイヴは俺からナターシャを遠ざけ、空いた左手で俺に攻撃を仕掛けてきた。
クソ。
ナアマはどこに行ったかと思えば、メイヴの体にいやがったのか。
俺は一旦後ろへ下がる。
攻撃すればメイヴを殺しかねない。
「フハハ、メイヴの体、意外と使えるのぉ」
メイヴの白目が黒へ、そして、瞳孔が赤くなっていた。
このままだと、ナターシャの命が危ない。
悩んだ末、俺はナアマに瞬時に近づき、彼女の右腕をぶった切った。そして、解放されたナターシャは瞬時に後方へ下がっていく。
「ふん」
ナアマは切られた右手を見つめると、鼻を鳴らした。
その瞬間、ナアマの右手が元に戻った。
感触を確かめるように、グーパーをするナアマ。
彼女は嬉しそうに笑っていた。
――――――――――――おい。なんだよ、それ。
俺、一応白魔法を付与して切ったんだぞ?
なのに、再生させるとか…………悪魔はなんでもありってか?
すると、赤髪の女は槍を持ち直し、ナアマの方に向かって歩いていく。
俺は彼女の前に立ちふさがった。
「お前、その槍をどうするつもりだ」
「あの悪魔を殺すの」
「あれは…………悪魔じゃない。メイヴは俺たちのメンバーだ」
「あなたのメンバーは他のメンバーを殺そうとしていたけど、それでも悪魔じゃないというの?」
「…………」
確かに……………………今のメイヴは半分悪魔みたいなもの。
でも、あれはメイヴの体で、あそこにメイヴがいる。
あれを殺せば、悪魔も殺せるかもしれない。
だが、同時にメイヴを殺すことになる。
「あの様子だと、8割悪魔に乗っ取られている。放っておけば、あなたたちだけじゃない、他の人の命まで奪うの。状況分かってる?」
赤髪の女は俺に顔をぐっと近づけ、
「だから、ぶつくさ言ってないで、どけよ。ガキ」
と言ってきた。
彼女はいらだったのか、歯ぎしりをしている。
「ただの人間なら放っておくけれど、あれは悪魔の封印者。どうなっていたとしても、あれは殺すわ」
赤髪女の手には槍が握りしめられていた。
そして、彼女の手の甲には不思議な紋章があった。
「私は、全ての悪魔を殺さないといけないのよ」
赤髪女がそう言い放った瞬間。
――――――――――――パリッン!!
そんなバリア魔法が破られる音がした。
バリア魔法が破られた?
ナアマに?
周囲を見渡すが、ナアマはそこにいる。
破ったのはナアマじゃない。
一体誰が?
俺はふと見上げる。
すると、そこにあったのは空中を飛ぶ船。船体が漆黒に染まった船があった。
そこから無数の人間と魔物が降ってきた。
黒い船…………?
一体どこのやつらだ?
氷上の上は一気に黒いマントのやつらでいっぱいになる。
そいつらは着地するなり、全員俺たちの方に剣先を向けていた。
「あの女がメイヴだ。回収してくれ」
後の方に降ってきたボスのような短髪男が命令する。
すると、ナアマはそちらにちらりと目をやる。
「貴様ら、ユハンの下僕どもか?」
「下僕…………私どもはユハン様の部下です」
ボス女は話しかけられると、すぐに跪いた。
やつらはまさか魔王軍の……………………。
なんでこんなところに?
ナアマを迎えに来たっていうのか?
ボス男の返答にナアマは首を傾げる。
「部下?」
「は、はい…………部下です。あの、あなた様はナアマ様でよろしいでしょうか?」
「ああ、我はナアマだ。貴様ら、我に何用だ?」
「私どもはナアマ様を迎えにあがりました」
「迎えぇ?」
そう呟くと、ナアマは腹に手を当て、そして、大笑いし始めた。
「まさか、我がユハンの手を借りるとはのぉ! アハハ!」
「では…………」
女が船へと促そうとすると、ナアマは右手を伸ばし、
「まぁ、少し待て。この小僧をやってからだ」
と言って、俺の方を見てくる。
しかし、男は恐る恐るナアマに言った。
「それは……ご遠慮していただきたいかと、いろいろと準備がありますので」
「準備?」
再び首を傾げるナアマ。
しかし、一時すると女の考えを把握したのか、彼女はニヤリと笑みを浮かべていた。
「アハっ。まさかあやつはカルミアを占領しようとしているのか! 成長したのぉっ!」
ナアマが高らかにそう言うと、男はソワソワ。
俺たちに聞かれたく…………なかったんだろうな。
こっちにはその情報ありがたいような気がする。
でも、今カルミアを占領するって言った?
ウソだろ?
魔王占領地。
現在、そこはカルミアの反対側、つまりこの海の向こう側にある。
その魔王占領地にローレル王国から行くには南部を通って行く方法とカルミアの海を通っていく方法の2つがある。
カルミアは観光都市とはいえ、冒険者ギルドがあるし、たとえ魔王軍が占領しても海の方へ追い込まれ、撤退せざるを得なくなるだろう。
俺が魔王だったら、王都から距離があり、さらに間に山脈がある南部を先に占領する。
だが、魔王軍は先に南部を占領するのではなく、海を超えてカルミアにやってくるというのか?
愉快に笑っていたナアマだが男に向かって、そして、俺たちに向かって、
「そんなにソワソワするでない。コイツらは最初に我が消すからな。心配するな」
と言ってきた。
すると、浮かんでいた船は下へと降りてくると、ナアマたちがその船へと向かい始めた。
メイヴの体を乗っ取ったまま行くつもりか?
俺はナアマの方へ走り出す。
しかし、黒マントのやつらが行く手を塞いだ。
こいつらを相手してたら、キリがない。
俺は移動魔法使い、ナアマの元まで移動。
しかし、例のボス男が立ちふさがる。
コイツぐらいなら、俺1人でも!
男はこちらに剣を投げてくる。
俺は地面に転がり、避け、男と距離を詰める。
そして、白魔法を付与した剣を腹に刺そうとすると、男は俺の手を掴んできた。
「あ」
俺は逆に腹を蹴られ、後ろに吹き飛ばされ、氷の上を転がる。
腹を蹴られたが、そこまで痛みはなかった。
変な違和感があるが、特に目だった異常はない。
早くしないと、メイヴが連れていかれる――――――――――――。
そして、立ち上がろうとしたその時。
俺の体はぐらりと崩れ落ちる。
「は?」
なんで、なんで……………………力が入らないんだ!?
魔力を奪われた感覚はない。
ただ、全身の力が入らなくなっていた。
「オールアウェイク!」
状態異常解除の魔法をを唱えるも、力が戻る気配がない。
クソっ! クソっ!
あの男に向かっていったナターシャもシュナも、あの赤髪の女も同じ状態なのか、地面に倒れていた。
男は黒マントの者に撤退の指示を出し始める。
「もう相手にするな。コイツらは時期に死ぬ」
「しかし、ナアマ様は先ほど…………」
「いいんだ。このままだと、ナアマ様が動いてくれない。邪魔になる奴らはさっさと殺しておく方がいいんだ」
そう言って、ボス男たちは背を向け、船に向かって歩き出す。
アイツら、メイヴを連れて魔王占領地に帰ってしまう。
でも、何にもできない。
力を入れようとしても、全く力が入らない。
クソっ。
俺は船の方に目を向ける。
すると、船の中へ入ったと思っていたナアマが立っていた。
彼女は上からひょこっと顔を出していた。
メイヴの姿のまま、か。
人間に憑依した状態の方が弱くなるというのに、一体何をするつもりか。
俺と目が合うと、ナアマはニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
……………………メイヴの顔でそんな顔をするな、クソ悪魔。
すると、赤髪の女が力を振り絞って槍を投げる。
その槍はナアマに向かって一直線に飛んでいく。
「その槍の対処法はさっき分かったんでな。もう効かんぞ」
ドヤ顔を浮かべるナアマはハハハと笑う。
そして、簡単に槍を振り払った。
その槍は氷上に落ち、カランコロンと音を鳴らして滑っていく。
「小僧よ」
「…………」
「戦争前にでも殺してやろう」
ナアマは自分の体を指して、「この娘とともにな」と言って笑いだす。
「メイヴを返、せっ!」
「この娘は一応貰っておく。少し使えそうなんでな」
そう言うと、ナアマは船の中へと入っていった。
そして、漆黒の船はメイヴを連れて、魔王占領地の方へと向かって行った。
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