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第3章
35 悪魔の封印者 後編
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唯一水着姿のシュナ。
彼女は手にしていたサーフボードも投げ捨て、俺たちと並んで走り出す。
「何か悪い!? 朝のサーフィンは最高なのよ! ていうか、あんたたち、そんな切羽詰まった顔をしてどうし…………ってあれメイヴ? もしかして、悪魔が?」
「そうだ! 封印解除するから手伝ってくれ!」
「封印解除? ここで解除するっていうの!?」
すると、シュナは激しく首を横に振った。
「ダメよ! それは絶対にダメ!」
「なんでだよ?」
「いい? ナアマはサキュバスだけど、かなり好戦的な悪魔よ。しかも、普通の悪魔より格上の大悪魔。今はどういうことになっているか知らないけれど、ナアマはもともと魔王軍幹部よ」
「はぁ?」
サキュバスで、大悪魔で、元魔王軍幹部?
情報量が多すぎる。
てか、ナアマ、サキュバスだったのかよ!
俺たちはナアマに追いかけれながら、浜辺をかける。
普通なら楽し気に走る場所も、今は戦場のようだった。
だって、背後からひたすらに闇の玉を投げつけてくるんだからな。
俺たちはそれを避けながら、シュナの話に耳を傾ける。
「ナアマは封印されるまでに何個もの村を1人で潰してる。今、ここで封印を解けば、この街は消えるかもしれない」
「マジか」
思わず呆れ、俺は横に首を振る。
なんでそんな悪魔が地方のクエストにされていたんだ?
普通王都のギルドが出ないといけないレベルだよな。
と、俺は地方ギルドに突っ込みたくなったが、なんとか抑える。
「マジなわけよ。むしろ、メイヴの体に憑依しているナアマの方が弱い。封印解除して倒すのであれば、街からずっと離れた場所の方がいい。だから、今はメイヴの体に封印する方がいいってわけ」
「なるほどな」
となるとすべきことは――――――。
俺はシュナに杖を渡す。
「メイヴがナアマを封印する際に使ったのは、闇魔法」
「光魔法ではなく?」
「ええ。驚くでしょ?」
「ああ」
悪魔を攻撃したり、封印したりする魔法は光魔法。
ほとんどの者がそう考えるだろう。
すると、シュナはフフフと笑みをこぼす。
「メイヴから聞いた時は、私も闇魔法で悪魔を縛ることができるなんて信じられなかったけれど」
ナアマに背を向けていたシュナはくるりと回り、構えた。
俺とナターシャもそれにならう。
「ナターシャは分かるわよね! スレイズ、あんたは私が唱えたものと同じやつを、メイヴに向かって放ちなさい!」
「ああ」
弱まった封印を強化する、しかないもんな。
すると、ナアマがニヤリと笑い、
「貴様らがすることは分かっているぞ。また、こやつの体に封じ込める気だろう。同じものはもう通じんぞ」
と立ち止まって構え始めた。
「今回は1人多いのよ! しかも、強いのがいるわけ! なめないでちょうだい! バカ悪魔!」
そう叫び、シュナはナターシャとともに魔法を放つ。
「「シールインサイド!」」
ナアマはバリアだろうか、魔法を駆使して、闇魔法をガードしようとする。
じゃあ、俺は―――――。
「シールインサイド!」
シュナをまね、闇魔法を放つ。
3人がかりなら、行けるだろ!
バリアにひびが入り、そして、割れた。
よしっ! 当たれ!
「ぐっ! このぉ――――――!!」
闇魔法はナアマに当たり、彼女を包んでいく。
「そこの小僧! 我を拒んだからには、絶対に殺してやる! 殺してや゛るゥ!」
そう叫びながら、ナアマはメイヴの体から消えていった。
赤い瞳は徐々にいつもの瞳に戻り、そして、メイヴはパタリと倒れた。
「メイヴ!」
ナターシャは急いでメイヴの方へ掛ける。そして、体に異常がないか確認していた。
俺は遠くからメイヴを見つめる。シュナも動かなかった。
「これで、封印できたのか?」
「ええ。でも、仮封印ね」
「仮か…………」
俺は再度ナアマとメイヴについて、シュナの話を聞いた。
シュナ曰く、これまでメイヴ自身が闇魔法かけ、封印していたらしい。
たまに1人で対処できなくなった時は全員で闇魔法をかけていた。
「ナアマの力が戻りつつあるから、封印が解かれやすくなってた。だから、今回のことは別にメイヴのせいじゃない。でも、そのうち、メイヴ1人では封印できなくなると思う。だから――――――」
ナアマを倒さないといけない、か。
何個もの村を壊滅させたって言ってたよな。
うーん。
俺は息をつき、海の方を見る。
今日は風が強いせいか、波が荒れていた。
……………………これはバカンスどころじゃなさそうだな。
★★★★★★★★
海岸を沿うその道。
そこには1人の女性が歩いていた。
道の隣には浜辺が広がっており、女性はこれを目的に朝早い時間から外に出ていたのだ。
朝が弱いにもかかわらず、だ。
「あれは悪魔?」
女性はあるものを目に、そう呟く。
さらに浜辺の方に目を凝らし、観察。
「もしかして、悪魔の封印者?」
風がふわりとなびく。そして、彼女の赤髪が揺れ、被っていた帽子が飛びそうになる。
女性は瞬時に反応し、帽子を押さえた。
「あれれー? 東部にいると聞いていたんだけどなー」
女性が悪魔の封印者と呼ぶ者。
その者は明らかに人間を追いかけていた。そして、人間に向かって闇の玉を投げている。
まぁ、人間の方もその玉を華麗に避けているが。
「封印者とはいえ、人に害をなす悪魔は全て殺さないとね」
女性は泊まっている宿へと戻っていった。
「悪魔はこの世界にいてはいけないんだよ」
そう呟いて。
彼女は手にしていたサーフボードも投げ捨て、俺たちと並んで走り出す。
「何か悪い!? 朝のサーフィンは最高なのよ! ていうか、あんたたち、そんな切羽詰まった顔をしてどうし…………ってあれメイヴ? もしかして、悪魔が?」
「そうだ! 封印解除するから手伝ってくれ!」
「封印解除? ここで解除するっていうの!?」
すると、シュナは激しく首を横に振った。
「ダメよ! それは絶対にダメ!」
「なんでだよ?」
「いい? ナアマはサキュバスだけど、かなり好戦的な悪魔よ。しかも、普通の悪魔より格上の大悪魔。今はどういうことになっているか知らないけれど、ナアマはもともと魔王軍幹部よ」
「はぁ?」
サキュバスで、大悪魔で、元魔王軍幹部?
情報量が多すぎる。
てか、ナアマ、サキュバスだったのかよ!
俺たちはナアマに追いかけれながら、浜辺をかける。
普通なら楽し気に走る場所も、今は戦場のようだった。
だって、背後からひたすらに闇の玉を投げつけてくるんだからな。
俺たちはそれを避けながら、シュナの話に耳を傾ける。
「ナアマは封印されるまでに何個もの村を1人で潰してる。今、ここで封印を解けば、この街は消えるかもしれない」
「マジか」
思わず呆れ、俺は横に首を振る。
なんでそんな悪魔が地方のクエストにされていたんだ?
普通王都のギルドが出ないといけないレベルだよな。
と、俺は地方ギルドに突っ込みたくなったが、なんとか抑える。
「マジなわけよ。むしろ、メイヴの体に憑依しているナアマの方が弱い。封印解除して倒すのであれば、街からずっと離れた場所の方がいい。だから、今はメイヴの体に封印する方がいいってわけ」
「なるほどな」
となるとすべきことは――――――。
俺はシュナに杖を渡す。
「メイヴがナアマを封印する際に使ったのは、闇魔法」
「光魔法ではなく?」
「ええ。驚くでしょ?」
「ああ」
悪魔を攻撃したり、封印したりする魔法は光魔法。
ほとんどの者がそう考えるだろう。
すると、シュナはフフフと笑みをこぼす。
「メイヴから聞いた時は、私も闇魔法で悪魔を縛ることができるなんて信じられなかったけれど」
ナアマに背を向けていたシュナはくるりと回り、構えた。
俺とナターシャもそれにならう。
「ナターシャは分かるわよね! スレイズ、あんたは私が唱えたものと同じやつを、メイヴに向かって放ちなさい!」
「ああ」
弱まった封印を強化する、しかないもんな。
すると、ナアマがニヤリと笑い、
「貴様らがすることは分かっているぞ。また、こやつの体に封じ込める気だろう。同じものはもう通じんぞ」
と立ち止まって構え始めた。
「今回は1人多いのよ! しかも、強いのがいるわけ! なめないでちょうだい! バカ悪魔!」
そう叫び、シュナはナターシャとともに魔法を放つ。
「「シールインサイド!」」
ナアマはバリアだろうか、魔法を駆使して、闇魔法をガードしようとする。
じゃあ、俺は―――――。
「シールインサイド!」
シュナをまね、闇魔法を放つ。
3人がかりなら、行けるだろ!
バリアにひびが入り、そして、割れた。
よしっ! 当たれ!
「ぐっ! このぉ――――――!!」
闇魔法はナアマに当たり、彼女を包んでいく。
「そこの小僧! 我を拒んだからには、絶対に殺してやる! 殺してや゛るゥ!」
そう叫びながら、ナアマはメイヴの体から消えていった。
赤い瞳は徐々にいつもの瞳に戻り、そして、メイヴはパタリと倒れた。
「メイヴ!」
ナターシャは急いでメイヴの方へ掛ける。そして、体に異常がないか確認していた。
俺は遠くからメイヴを見つめる。シュナも動かなかった。
「これで、封印できたのか?」
「ええ。でも、仮封印ね」
「仮か…………」
俺は再度ナアマとメイヴについて、シュナの話を聞いた。
シュナ曰く、これまでメイヴ自身が闇魔法かけ、封印していたらしい。
たまに1人で対処できなくなった時は全員で闇魔法をかけていた。
「ナアマの力が戻りつつあるから、封印が解かれやすくなってた。だから、今回のことは別にメイヴのせいじゃない。でも、そのうち、メイヴ1人では封印できなくなると思う。だから――――――」
ナアマを倒さないといけない、か。
何個もの村を壊滅させたって言ってたよな。
うーん。
俺は息をつき、海の方を見る。
今日は風が強いせいか、波が荒れていた。
……………………これはバカンスどころじゃなさそうだな。
★★★★★★★★
海岸を沿うその道。
そこには1人の女性が歩いていた。
道の隣には浜辺が広がっており、女性はこれを目的に朝早い時間から外に出ていたのだ。
朝が弱いにもかかわらず、だ。
「あれは悪魔?」
女性はあるものを目に、そう呟く。
さらに浜辺の方に目を凝らし、観察。
「もしかして、悪魔の封印者?」
風がふわりとなびく。そして、彼女の赤髪が揺れ、被っていた帽子が飛びそうになる。
女性は瞬時に反応し、帽子を押さえた。
「あれれー? 東部にいると聞いていたんだけどなー」
女性が悪魔の封印者と呼ぶ者。
その者は明らかに人間を追いかけていた。そして、人間に向かって闇の玉を投げている。
まぁ、人間の方もその玉を華麗に避けているが。
「封印者とはいえ、人に害をなす悪魔は全て殺さないとね」
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