ファーストキス覚醒 ~無能だからってパーティー追放されたんだけど、再会した幼馴染にキスされ覚醒!? 今更キスをしてと言っても遅いです~

せんぽー

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第3章

34 悪魔の封印者 前編

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 「はぁ? 遊ぶ?」
 「そうじゃ。大人の遊びぐらいお前にも分かるじゃろ?」
 
 そう言って、メイヴの体のナアマは口を近づけてくる。
 コイツ、急に何なんだよ。
 俺はそいつを押しのけた。ナアマの体はベッドから落ちる。
 
 「…………」
 「お前、悪魔だか何だかしならないけどな。メイヴの姿をしてうろつくんじゃねーよ」
 「メイヴこやつの姿? いや、この体はメイヴこやつの体じゃぞ」
 「何?」
 
 悪魔がメイヴの体を乗っ取ったっていうのか?
 
 「なら、尚更。お前、メイヴの体から出ていけ」
 
 俺がそう言うと、ナアマはハハハと大笑い。
 何がおかしいって言うんだ?
 
 「出ていけ? 出ていけるのなら、我もそうしたい」
 「は?」
 「だがな、我はメイヴこやつの体から出ていけぬのじゃ。困ったものだろう」

 そう言って笑みを浮かべるナアマ。
 出て行けれない? 

 「それはつまりメイヴ自身がお前を引き止めているということか?」
 「そうじゃのぉ。こやつが自身の体で我を封印していると言ってもいいな」
 「マジか……」

 メイヴ自身が自分の体に悪魔を封印。
 なんてことをしているんだ。
 ……………………俺に言えなかった話はこのことか。
 
 俺は冷静にメイヴの体を乗っ取ったナアマを観察する。
 乗っ取ったとはいえ、封印が完全に溶けたわけではないのかもしれない。
 封印が解けたのであれば、メイヴの体から出て、ナアマは自身の体をもとに戻すのではないだろうか。
 
 ナアマは完全封印解除ができない限り、メイヴの体から出ていくことはできない。
 どうしたものか。
 すると、ナアマは体を起こし、立ち上がる。
 彼女の顔には笑みが浮かんでいた。

 「それはそうと、貴様は我を拒んだな?」 
 「…………それがなんだよ」
 「はっはっは。我を拒んだからには消えてもらおう、スレイズ」
 
 ナアマは俺の方に人差し指を伸ばす。
 
 「さらば」
 
 その瞬間、その指から黒い光線が放たれる。
 俺の体は吹き飛ばされ、壁を貫き、通りへと落ちる。
 
 「くっ」
 
 急に攻撃しやがった!
 光線を受けたものの、道に無事着地。
 まだ夜が明けていないのか、外は若干暗い。

 宿の壁の方を見ると、開けられた大きな穴からナアマの姿が見えた。
 
 ――――――――――――こっちに来る。
 
 俺はそう察し、とりあえずその場から逃げる。
 逃げた瞬間、俺が立っていた場所に闇の玉が投げられていた。
 
 クソっ。
 悪魔はおろか、大悪魔なんて相手にしたことないし、しかも悪魔がメンバーの体を乗っ取っている状況。
 
 ナアマを殺すことはメイヴを殺すことになってしまう。
 どうすればいい?
 光魔法で対処すればいいのか?

 「スレイズ、白魔法を使って!」

 そんな声が上の階から聞こえてくる。そこの窓にはナターシャがいた。
 
 「白魔法!? 俺、白魔法なんて知らないんだけど!」
 「なら、対悪魔用の光魔法!」

 と言って、上の階から、降りてくる。

 「ナターシャガキが来たか」
 
 ナアマはナターシャが邪魔そうに見つめた。
 ナターシャはナアマの攻撃をかわしつつ、俺の隣にやってくる。
 そして、俺は走りながら、ナターシャに尋ねた。

 「今まで、メイヴがこんな風になったことはあったのか?」
 「まぁ何度かあるけど、その時はなんだかんだ対処できた」
 
 しかし、隣のナターシャは「けど」と話を続ける。

 「昔、弱体化していたナアマは、今は力を取り戻しつつあって。封印が弱まれば、メイヴは封印をかけ直して、なんとかナアマの封印を保持していたの。でも、今回はどうか分からない。最悪、封印を解いて、ナアマを倒すしかないと思う」

 でも、できればここでは倒したくない、というナターシャ。
 俺は少し考え、こう答えた。

 「それでいいじゃないか?」
 「え?」

 よく考えたら、なぜメイヴは自分の体にナアマを封印した?
 ナアマを利用したかったから?
 自分の体を乗っ取られるリスクがあるのにも関わらず?
 
 そう考えると、倒す方が一番いいと思う。
 俺がそう答えると、ナターシャは驚きの声を上げた。
 
 「ナアマを倒すのっ!?」
 「そうだが…………何か問題があるか?」
 「いや、ナアマってめちゃくちゃ強いからね。倒せないと判断したから、メイヴはせめての思いで自分の体に封印したんだよ」
 「そうなのか?」

 利用するつもりはなかったのか。

 「そうだよ。一回ナアマを倒そうとしたけれど、私たち3人でも倒せなかったんだよ?」
 「マジ?」
 「マジ」

 メイヴは1人はともかく、ナターシャたち3人掛かりで倒せなかったってよほどだな。
 倒せる…………か?
 徐々に自信がなくなっていく。

 「それに、スレイズ。ナアマの誘いを断ったでしょう?」
 「ああ」
 
 当たり前だ。
 そう答えると、ナターシャは苦笑いを浮かべた。いや、困惑の顔か?

 「ナアマの誘いを断ったらね…………彼女はその男を殺すまで追いかけてくるの。ほら――」
 「小僧よ、待たんか。殺してやる」
 
 こっちに向かって全力疾走で来るナアマ。
 誰が待つかよ。殺されるのに。

 俺とナターシャは相手の攻撃を避けながら、逃げた。
 一方、ナアマやつはなりふり構わず、闇の玉を投げてくる。俺は様々な魔法を駆使し、ガード。
 そして、とりあえず光魔法を放つ。

 道には人が少しいたので、ジャンプをし、屋根へ移動。
 ナターシャは俺の右を走っていた。
 しかし、ナアマやつは難なくついて来ている。いら立ちの含まれた笑みを浮かべていた。
 アイツ、俺を本気で殺すつもりだ。

 「ナアマの封印はどう解くんだ!?」
 「解除系の光魔法を使って解くの!」
 
 光魔法なのか。
 てっきり、黒魔法とか古代魔法を使うのかと思った。
 俺が光魔法を放とうと構えると、ナターシャが声を上げる。
 
 「……………………え? もしかして、スレイズ、本当に封印解除して、ナアマを倒すつもりなの!?」
 「それしかないだろ!」
 「でも!」
 
 きっと大丈夫。
 俺は覚醒状態。ナターシャもスキルでステータスも上がっている。
 シュナはいないが、俺たちなら倒せるだろう。

 ――――――――――――まったく、シュナのやつはどこ行ったのか。

 俺たちは、街から浜辺の方へ走り、移動する。
 朝早いおかげか分からないが、幸いそこには人が見当たらなかった。
 ここなら、ナアマの封印を解いてもいいだろう。

 と再度光魔法を放つ構えをしていると。

 「あんたたち、何してるの?」
 
 背後からそんな声がした。
 ちらりと背後を見ると、そこにいたのは水着姿のシュナさん。
 彼女の片手にはサーフボードがあった。

 「シュナ! お前、サーフィンなんてしてたのかよ!」

 こんな時に!
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