ファーストキス覚醒 ~無能だからってパーティー追放されたんだけど、再会した幼馴染にキスされ覚醒!? 今更キスをしてと言っても遅いです~

せんぽー

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第2章

20 婚約破棄の真実

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 殿下の話、別に聞いてもいいよな? 気になるし。
 俺は確認のため、一応メンバーにアイコンタクトを取る。3人も同じ考えなのか、コクリと頷いた。

 「マスター」
 「はい、どうしました?」
 「今のどういうことですか…………殿下って聞こえたんですけれど」
 
 そう尋ねると、エステルはアハハとから笑い。
 あ、やっぱり答えてくれない? 
 俺はエステルの言葉を待っていると、オリバーおじさんが先に彼女に話しかけた。

 「エステル様、今一度お考え直しを…………」
 「ごめんなさい。いくら付き合いの長いオリバーが来ても、考え直すつもりはないわ」
 「それでも…………」
 「あのね、シルバーローズだけがお断りする理由じゃないの」

 すると、エステルは俺の腕を取り、ぎゅっと体を寄せる。
 え?

 「もう1つの理由は私、この方とお付き合いしているからなの」
 「なっ」

 は!?
 この人、何言ってるんだ?
 
 「へ!? マスターっ!?」
 
 声を上げるナターシャ。シュナは驚きのあまり、手に取っていたクッキーを落とす。
 俺はエステルの手を振りほどくも、何度も何度も俺の腕を掴んでくる。

 この人、しつこくないか?

 「スレイズ、ど、ど、どういうこと!?」
 「ナターシャ、これは違うんだ!」
 「あんた…………マスターに手を出したの」
 「手を出す!? 断じて違う!? 手を出すも、俺には好きな人が別に…………」

 「まぁ、スレイズったら。照れ屋さんなんだから」
 
 マスターは微笑みながら、俺の肩をポンと叩く。
 マスタァー!? 本気で何を考えているんだ!?
 メイヴに助けを求めようと視線を送るも、彼女は優雅に紅茶を飲むだけ。

 アイツ、この状況を楽しんでやがるな…………ニヤニヤあんな顔しやがって。

 「…………エステル様」
 「どうしたの? オリバー」
 「僭越ながら、私にはお相手の方驚いているように見えるのですが」
 「オリバーさん、その通りです。俺とマスターが付き合ってるだなん――――ん゛っ」

 なっ!
 俺が話そうとしたとたん、マスターに口を塞がれた。
 ちょっ。この人!!

 すぐに手をどけたが、エステルが先に話し始めていた。

 「この人ね、とんでもないぐらい照れ屋さんなの。今日初めて他の人に話すもんだから、動揺したみたいで」
 「そうですか…………」
 「ちょっ! オリバーさん! その人の言ってること信じないで!」

 ちょっとした趣味で、新しいメンバーに剣先を向ける人ですよ! 

 「だから、オリバー。さっき言ったように殿下に伝えてくださる?」
 「…………はい、承知いたしました」

 エステルの言うことを素直に聞くオリバーじいさん。彼は一礼すると、帰っていった。去るじいさんの背中をどこか重そうだった。
 じいさんの姿が見えなくなると、エステルはやっと俺の腕を解放。

 「マスター、どういうことか一から説明してもらえますか?」
 「…………えへへ、そうねぇ」
 


 ★★★★★★★★

 

 「え!? 殿下から婚約しないか言われている!?」

 エステルからの説明を受け、俺は思わず立ち上がり、声を上げていた。
 
 「スレイズ、そんな大声で言わないで」
 「…………すみません」

 俺は謝り、席に座りなおす。
 なるほど。さっきの手紙はそのことが書かれていたのか。

 「でも、マスターと殿下は婚約破棄されたんだよな。それも破棄を提案したのは殿下から。どういうことですか、マスター」

 破棄を提案した相手が婚約を迫ってくるなど、おかしな話。
 4人でエステルに目で訴えると、彼女は降参したかのように息をついた。

 「そうね。そのことも途中まで聞いたあなたたちには、話した方がいいわよね」

 エステルは手にしていたティーカップを置くと、落ち着いた表情へと変わった。

 「世間的には殿下から婚約破棄の話を持ち出したことになってる」
 「ええ、そうですね」

 かつて見た新聞にもそう書かれてあった。ほとんどの国民が知っていることだろう。

 「それは実際は違うの――――――――――――本当には私から婚約破棄を申し出たの」
 「え?」

 思わず俺の口から素っ頓狂な声が出る。

 「それってつまり、マスターが本当は婚約破棄を提案したけれど、殿下の立場を考えて、世間的には異なることが公表されたってことですか?」

 「ええ。その時も殿下は婚約破棄をしたくなさそうだったけれど、私はおじいさまが残してくれたこのギルドにいたかったから、粘ったの。そしたら、殿下は渋々破棄の話を受け入れてくれたわ」
 
 粘ったのって。それで聞く殿下も殿下だな。

 「殿下はアメストリス公爵家とのことしか考えていなかったと思うし、意中の人は他にいたと思うわ。それに、私は殿下に一切の好意は抱いていなかったの。両方の幸せを考えたら、婚約破棄は正解よねって私は思ってた」

 その時、エステルの顔にふと影が現れる。

 「でも…………」
 「マスタァ――――! 大変です――――!」

 ん? これはベルさんの声?
 入り口の方を見ると、全力でかけてくるベルさんが見えた。

 「ベルさん、どうしたんすか? 息を切らして走ってくるなんて」

 普段はおしとやかに行動する人だ。何かあったのか?

 「それが…………ギルドにたくさんの人が押し寄せてきていて」
 「ウルフハウルの人? それなら、王城もしくは騎士団に報告するわよと脅しといて。きっと帰って下さると思うから」

 エステルは冷静に答えた。さすがマスター。
 それにしても、ウルフハウルのやつら、たまにここに来ているのかよ。嫌なやつらだな。
 しかし、ベルは全力で横に首を振った。

 「違うんです。押し寄せてのはウルフハウルの連中じゃなくて、全員一般人の方なんです」
 「え?」
 
 一般人の人がこのギルドに?
 どういうことだ?
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