ファーストキス覚醒 ~無能だからってパーティー追放されたんだけど、再会した幼馴染にキスされ覚醒!? 今更キスをしてと言っても遅いです~

せんぽー

文字の大きさ
上 下
11 / 37
第1章 

11 銀薔薇の園

しおりを挟む
 「私のステータスが異常に上昇しているの…………」
 「え?」「はぁ?」「どういうこと?」

 シュナの言葉に、俺たちは思わず首を傾げる。
 ステータスが異常に上昇?
 俺はどこか既視感を覚えたが、冷静に考えることにした。

 「さっきのゴブリンを倒したからじゃないのか?」
 「ゴブリン数匹ごときでこんなになるわけないでしょ。大体レベルも上がってないの。ステータスだけが上がってるの」

 レベルも上がっていないのにステータスが上昇…………うーん、なんでだ?
 4人で熟考していると、ナターシャが「はっ!」と声を発する。

 「もしかして、スレイズの固有スキルのせいじゃない?」
 「え?」
 「ほら、この前教えてくれた固有スキル『信頼』だよ」

 そういや、そのスキル、ファーストキス覚醒の時にスキルアップしたんだっけ?
 あの時も、ステータスが異常に上昇していたが、あれは覚醒したから上昇したんだよな。

 「その固有スキルってどんな効果があるの?」
 「それは俺にも分からない…………」

 俺が苦笑いで答えると、「そっか」と呟くメイヴ。なんかすまん。

 物心ついたころにはあったが、スキル詳細には何も書かれておらず、固有スキルであるため、どんなものであるか誰にも分からなかった。

 ナターシャは俺の固有スキルが発動したため、シュナのステータスが上昇したではないのかという。
 でもな…………俺、使った覚えはないんだよな。
 大体意識して使えたことなんてないし。

 すると、シュナが物珍しそうな目を向けてきた。

 「あんた…………固有スキルなんて持ってたの」
 「ああ。使えない固有スキルだがな」

 ほんとに。使えたらベルベティーンたちに見捨てられることもなかったのにな。

 「『信頼』…………もしかして、スレイズが信頼した相手に発動するんじゃない?」
 「信頼した相手に?」
 「そう。シュナちゃん、さっきまでステータスは上がってなかったんでしょ?」

 シュナはコクリと頷く。

 「ええ。ゴブリン倒す前にステータスを確認したけれど、変化はなかったわ」
 「シュナちゃんがスレイズのことを認めてくれたおかげで、スレイズがシュナちゃんのことを信頼できる相手と考えたんじゃない?」

 確かに…………俺はさっきシュナを信頼できる相手と認識したな。

 「つまりスレイズの固有スキル『信頼』は信頼した相手のステータスを上昇するスキルなんだよ! ねぇ! メイヴもステータスを確認してみてよ!」

 と言われ、自分のステータスを確認するメイヴ。しかし、彼女は浮かない顔をしていた。

 「…………ちょっとずつ上昇しているけど、そんなに上がっていないわ…………スレイズ、私のこと信頼していないのね。残念」
 「え? 信頼してるけど…………なんで?」
 「私は信頼していたのに…………」
 「いや、俺もしてるけど!?」

 「お兄さんたち、今日は一旦ここで止まりますよー」

 馬車のおじさんに声をかけられ、俺たちは馬車を降り、宿へ。
 その後も宿で話し合った。
 しかし、なぜシュナのステータスが異常に上昇し、またメイヴのステータスはゆっくりと上昇するのかは結局分からず、そのまま放置。

 そうして、山を越え、谷を超え。
 1週間かけて移動し見えてきたのは、国で一番活気のある場所、王都グラスペディア。

 中央の王城を囲むように城下町が広がっていた。
 俺たちは馬車をある広場で降りると、地図を持っているナターシャに案内してもらった。
 俺は歩きながら、街を見渡す。
 
 うーん。
 王都ってやっぱり人が多いんだな。
 そこまで大きな通りを歩いているわけではなかったのだが、様々な職種の人間がいた。

 そして、歩き始めて数分後。
 ナターシャが足を止めた場所は大きな白い建物前。入り口の上には薔薇のマークが描かれた紋章があった。

 「ここが…………シルバーローズ」
 「そうだよ。私たちがこれから所属するギルド」

 建物の中に入ると、ギルドの人たちでいっぱいになっていた。
 武器や防具を装備している…………これからクエストにでも行くのか?
 俺たちはどうすればいいか分からず、入り口で止まっていると、受付嬢らしき人が近寄ってきた。

 「あなたたちは…………ナターシャのパーティー?」
 「あ、はい」

 緊張気味に答えると、彼女はニコリと笑ってくれた。

 「話は聞いているわ。私はベル、このギルドの受付をやっているの。分からないことがあったら何でも聞いて」
 「はい! よろしくお願いします」

 ナターシャに続き、俺たちも大きな声で挨拶をする。受付嬢はなぜか動揺していた。

 「げ、元気が非常にいいのね。こんな新人さん初めてだわ…………こほん、ええと、じゃあ、まずあの人の所に挨拶にいってきてもらおうと思うのだけれど…………用事とかはないわよね?」
 「ないですが…………挨拶ですか?」
 「ええ。挨拶はこのギルドの決まりなの。あ、荷物はその辺において。挨拶が終わった後、このギルドについて詳しく説明するから」

 と言われるままに、案内される。
 受付嬢は通りとは反対側の入り口へと歩いていった。
 挨拶をすると言っていたが…………一体どこに連れていかれるんだ?

 案内された場所に広がっていたのは薔薇の園。白、青、そして、銀の薔薇が咲き誇っていた。

 「すごく…………きれいだね」
 「初めてみた…………銀薔薇なんて本当にあるんだな」

 噂にしか聞いたことがなく、存在すらしないと思っていた銀薔薇。
 そんな花が目の前に可憐に咲いていた。

 周囲を見渡すと、ベルさんはいつの間にかいなくなり、俺たち4人だけが残されていた。
 え? 俺たちどうしたらいいんだ?
 薔薇に囲まれた中央には芝生が広がり、俺たちからずっと離れた所にいたのは1人の女性。

 銀薔薇と同じ色の銀髪。その長い髪は白いリボンで結われ、風になびく。
 俺たちに気が付いたのか、銀髪の女性はゆっくりと振り向く。

 綺麗な人だな…………。

 凛とした顔立ちに、透き通った青の瞳。
 すると、突然彼女は剣を構え、走り出した。
 彼女の瞳は完全に俺を捕えている。

 !?

 「スレイズ!?」

 それは一瞬だった。
 ナターシャの叫びが響き、俺の首元にはさっと風が吹く。俺の灰色の髪は大きくなびいた。
 
 …………うそだろ? 誰か、この状況を説明してくれよ。
 
 俺はゴクリと息を飲む。
 目の前の彼女の顔には優しい微笑み。そして、彼女の手には剣があった。

 「君のレベル、とんでもなく高いね」

 その鋭い剣先が俺の首元に向けられていた。少しでも動けば刃が首に切りこみそうになっている。

 「まるで、ウルフハウルにいる連中と同じだわ」

 女性の青眼には剣と同じ鋭さを感じた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

理不尽な理由で婚約者から断罪されることを知ったので、ささやかな抵抗をしてみた結果……。

水上
恋愛
バーンズ学園に通う伯爵令嬢である私、マリア・マクベインはある日、とあるトラブルに巻き込まれた。 その際、婚約者である伯爵令息スティーヴ・バークが、理不尽な理由で私のことを断罪するつもりだということを知った。 そこで、ささやかな抵抗をすることにしたのだけれど、その結果……。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

嘘つきと言われた聖女は自国に戻る

七辻ゆゆ
ファンタジー
必要とされなくなってしまったなら、仕方がありません。 民のために選ぶ道はもう、一つしかなかったのです。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?

秋月一花
恋愛
 本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。  ……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。  彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?  もう我慢の限界というものです。 「離婚してください」 「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」  白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?  あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。 ※カクヨム様にも投稿しています。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

処理中です...