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第1章
6 私は認めない
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次の日。
覚醒した俺は荷物を持って、ナターシャとともに馬車乗り場に来ていた。
乗り場は朝早いにも関わらず、王都に行く人たちでごった返していた。
隣を歩くナターシャは王都がかなり楽しみなのか、ずっと笑みをこぼしている。
一方の俺はというと…………不安で仕方がなかった。
「なぁ、ナターシャ。俺、本当にお前のパーティーに入っていいのか? ていうか、お前、パーティー作ってたのか?」
「うん。たった3人のパーティーだけれどね。でも、メンバーは本当に強いの。1人は私に魔法を教えてくれた子で、もう1人は色々あって…………パーティーに入った子なの」
「いろいろって…………何があったんだよ」
俺がいない間に。
「いろいろはいろいろ。そのことは後でちゃんと話すよ! 2人とも本当に強いし、優しいから安心して」
「分かった」
まぁ、国で最強とされる王都の冒険者ギルドからスカウトされるぐらいだ。
そりゃあ、強いのだろう。
でも、覚醒したての俺がそんなパーティーに入っていいのだろうか?
と考えているうちに、待ち合わせの場所へ。
噴水の近くに2人の人が立っていた。
1人は黒髪ショートの背の高い妖艶なお姉さん。もう1人は…………。
「え? 子ども?」
「子どもじゃない! 私は立派な大人だ!」
と反論してきた淡い紫髪を持つツインテール少女。
その少女は身長がずっと低く、童顔で、大人には決して見えなかった。
しかも、この子、つま先立ちして俺のこと見上げているし…………めちゃくちゃ頑張ってる。
ツインテール少女はふんと言って、俺から顔を背ける。そして、説明しなさいよ、と言わんばかりにナターシャを見つめた。
「彼は私の幼馴染のスレイズ。スレイズ、この黒髪の人がメイヴ。私に魔法を教えてくれた人なの」
「ほぉ」
「それで、こっちが…………」
「自己紹介ぐらいできるわ。私はシュナ・スカーサハ。いい? 私があんたより年上なんだからね。次、私のことを子どもなんて言ったら、いくらリーダーの幼馴染でもぶっ飛ばすわよ」
シュナは睨みをきかせてくる。
年上には全く見えないが…………本人がそういうのならそうなのだろう。きっと。
俺にはどう見たって、10歳ぐらいの子どもにしか見えないが。
「シュナちゃんは誤解されがちだけど、これでも20歳を最近超えた立派な大人の女性だよ。だから、スレイズ、シュナちゃんを子どもって呼んだらいけないよ」
「分かった…………」
「んなっ! ナターシャ! 『これでも』とはなんだ! 説明しろぉ!」
気に障ったのか、シュナは怒り出す。しかし、その怒る姿も子どものようだった。
本当に20歳超えているのか…………?
すると、黙っていた黒髪の少女メイヴが口を開いた。
「それで…………なんでナターシャの幼馴染さんがここにいるの? 見送り?」
ナターシャはフフフと笑い始める。そして、ピンと伸ばした人差し指を左右に振り、
「ノンノン、メイヴ。スレイズにはね、このパーティーに入ってもらうことにしたの! いいでしょ!?」
「「え?」」
とナターシャが高らかに宣言すると、2人はすっとぼけたような声をした。驚きのあまりか、目が見開いている。
…………急に言われれば驚くよな。
「ナターシャ、それは一体どういうつもりで言っているの? このヒョロヒョロがこれから王都のギルドに入ろうとしているパーティーに入る? ふざけているの?」
「え、俺、ヒョロヒョロに見えるの?」
俺の質問にメイヴはコクリと頷く。
「ええ。少なくとも外見ではね。さぁ、ナターシャ。ちゃんと説明してくれるかしら?」
「もちろんよ」
ナターシャは自信あり気に、腰に手を当て仁王立ち。そして、彼女は言った。
「 なぜ私たちのパーティーに入ってもらうかと言うと…………スレイズが強いから! だよ!」
声高らかに言ったナターシャに対し、メイヴは呆れ顔。シュナは肩をすくめ、顔を横に振っていた。
「まぁ、何とも簡単な理由ね。でも、強いと言ってもどのくらい強いの?」
「えーと、レベルが989あるくらい強い?」
「え? スレイズに989のレベルがあるの?」
メイヴは信じられないとでも言いたいような顔を浮かべていた。
そりゃあ、そうだ。989なんてレベルのやつなんてそうそういない。1000超えたやつなんて国に数人しかいないぐらいだしな。
自分で言うのもなんだが、驚くのは当然だろう。
すると、シュナがキリッ睨みつけてきた。
「コイツにレベル989もあるわけないじゃない! こんな…………ヒョロヒョロで覇気もないようなやつに…………私はコイツがパーティーに入るのを認めないわ!」
「え? 認めてくれないの?」
「ええ。こんな弱っちいやつが入っても、すぐ殺されるだけよ。足手まといよ、足手まとい!」
「シュナは認めないのか…………私は認めるつもりでいたけれどなぁ」
とメイヴは答える。
「え? お前は認めてくれるのか?」
「うん。確かにあなたから魔力をあまり感じないけれど、ナターシャがウソをつくとは思えない。弱いのにウソついたって、ナターシャにはいいことないしね。それにメンバーの加入の最終決定権はリーダーにあるべきだと思うしね、私はね」
一方シュナはプクーと頬を膨らませ、そして、ビシッと人差し指を俺の方に向けた。
「わ、私は認めないからな!」
と言い放って。
パーティー加入はリーダーのナターシャにあるとはいえ、メンバー全員に認められないのはよくないだろう。
でも、あの様子だと認められないような…………。
すると、ナターシャがニコリと微笑みかけてきた。
「スレイズ、大丈夫だよ。シュナちゃんはきっと認めてくれる」
「本当に一緒に王都に行ってもいいのか?」
「うん! さぁ、行こう! 馬車が出発しちゃうよ!」
と陽気なナターシャに手を引かれ、歩き出す。
年下の子に認められていないようで、変な気分になるが、ナターシャがそう言うのなら、きっとシュナも認めてくれるのだろう。
うん。
そうして、俺はナターシャのパーティーに(仮)加入し、王都行きの馬車に乗り込んだ。
覚醒した俺は荷物を持って、ナターシャとともに馬車乗り場に来ていた。
乗り場は朝早いにも関わらず、王都に行く人たちでごった返していた。
隣を歩くナターシャは王都がかなり楽しみなのか、ずっと笑みをこぼしている。
一方の俺はというと…………不安で仕方がなかった。
「なぁ、ナターシャ。俺、本当にお前のパーティーに入っていいのか? ていうか、お前、パーティー作ってたのか?」
「うん。たった3人のパーティーだけれどね。でも、メンバーは本当に強いの。1人は私に魔法を教えてくれた子で、もう1人は色々あって…………パーティーに入った子なの」
「いろいろって…………何があったんだよ」
俺がいない間に。
「いろいろはいろいろ。そのことは後でちゃんと話すよ! 2人とも本当に強いし、優しいから安心して」
「分かった」
まぁ、国で最強とされる王都の冒険者ギルドからスカウトされるぐらいだ。
そりゃあ、強いのだろう。
でも、覚醒したての俺がそんなパーティーに入っていいのだろうか?
と考えているうちに、待ち合わせの場所へ。
噴水の近くに2人の人が立っていた。
1人は黒髪ショートの背の高い妖艶なお姉さん。もう1人は…………。
「え? 子ども?」
「子どもじゃない! 私は立派な大人だ!」
と反論してきた淡い紫髪を持つツインテール少女。
その少女は身長がずっと低く、童顔で、大人には決して見えなかった。
しかも、この子、つま先立ちして俺のこと見上げているし…………めちゃくちゃ頑張ってる。
ツインテール少女はふんと言って、俺から顔を背ける。そして、説明しなさいよ、と言わんばかりにナターシャを見つめた。
「彼は私の幼馴染のスレイズ。スレイズ、この黒髪の人がメイヴ。私に魔法を教えてくれた人なの」
「ほぉ」
「それで、こっちが…………」
「自己紹介ぐらいできるわ。私はシュナ・スカーサハ。いい? 私があんたより年上なんだからね。次、私のことを子どもなんて言ったら、いくらリーダーの幼馴染でもぶっ飛ばすわよ」
シュナは睨みをきかせてくる。
年上には全く見えないが…………本人がそういうのならそうなのだろう。きっと。
俺にはどう見たって、10歳ぐらいの子どもにしか見えないが。
「シュナちゃんは誤解されがちだけど、これでも20歳を最近超えた立派な大人の女性だよ。だから、スレイズ、シュナちゃんを子どもって呼んだらいけないよ」
「分かった…………」
「んなっ! ナターシャ! 『これでも』とはなんだ! 説明しろぉ!」
気に障ったのか、シュナは怒り出す。しかし、その怒る姿も子どものようだった。
本当に20歳超えているのか…………?
すると、黙っていた黒髪の少女メイヴが口を開いた。
「それで…………なんでナターシャの幼馴染さんがここにいるの? 見送り?」
ナターシャはフフフと笑い始める。そして、ピンと伸ばした人差し指を左右に振り、
「ノンノン、メイヴ。スレイズにはね、このパーティーに入ってもらうことにしたの! いいでしょ!?」
「「え?」」
とナターシャが高らかに宣言すると、2人はすっとぼけたような声をした。驚きのあまりか、目が見開いている。
…………急に言われれば驚くよな。
「ナターシャ、それは一体どういうつもりで言っているの? このヒョロヒョロがこれから王都のギルドに入ろうとしているパーティーに入る? ふざけているの?」
「え、俺、ヒョロヒョロに見えるの?」
俺の質問にメイヴはコクリと頷く。
「ええ。少なくとも外見ではね。さぁ、ナターシャ。ちゃんと説明してくれるかしら?」
「もちろんよ」
ナターシャは自信あり気に、腰に手を当て仁王立ち。そして、彼女は言った。
「 なぜ私たちのパーティーに入ってもらうかと言うと…………スレイズが強いから! だよ!」
声高らかに言ったナターシャに対し、メイヴは呆れ顔。シュナは肩をすくめ、顔を横に振っていた。
「まぁ、何とも簡単な理由ね。でも、強いと言ってもどのくらい強いの?」
「えーと、レベルが989あるくらい強い?」
「え? スレイズに989のレベルがあるの?」
メイヴは信じられないとでも言いたいような顔を浮かべていた。
そりゃあ、そうだ。989なんてレベルのやつなんてそうそういない。1000超えたやつなんて国に数人しかいないぐらいだしな。
自分で言うのもなんだが、驚くのは当然だろう。
すると、シュナがキリッ睨みつけてきた。
「コイツにレベル989もあるわけないじゃない! こんな…………ヒョロヒョロで覇気もないようなやつに…………私はコイツがパーティーに入るのを認めないわ!」
「え? 認めてくれないの?」
「ええ。こんな弱っちいやつが入っても、すぐ殺されるだけよ。足手まといよ、足手まとい!」
「シュナは認めないのか…………私は認めるつもりでいたけれどなぁ」
とメイヴは答える。
「え? お前は認めてくれるのか?」
「うん。確かにあなたから魔力をあまり感じないけれど、ナターシャがウソをつくとは思えない。弱いのにウソついたって、ナターシャにはいいことないしね。それにメンバーの加入の最終決定権はリーダーにあるべきだと思うしね、私はね」
一方シュナはプクーと頬を膨らませ、そして、ビシッと人差し指を俺の方に向けた。
「わ、私は認めないからな!」
と言い放って。
パーティー加入はリーダーのナターシャにあるとはいえ、メンバー全員に認められないのはよくないだろう。
でも、あの様子だと認められないような…………。
すると、ナターシャがニコリと微笑みかけてきた。
「スレイズ、大丈夫だよ。シュナちゃんはきっと認めてくれる」
「本当に一緒に王都に行ってもいいのか?」
「うん! さぁ、行こう! 馬車が出発しちゃうよ!」
と陽気なナターシャに手を引かれ、歩き出す。
年下の子に認められていないようで、変な気分になるが、ナターシャがそう言うのなら、きっとシュナも認めてくれるのだろう。
うん。
そうして、俺はナターシャのパーティーに(仮)加入し、王都行きの馬車に乗り込んだ。
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