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第1章
5 覚醒
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目をつぶりたくなるほど放たれていた光は収まり、やがていつも通りの体に戻った。
違和感があるけど…………見た感じ、外見は変わっていない。
黙っていたナターシャは心配そうにこちらを見ていた。
「スレイズ、大丈夫? どこも痛くない?」
「…………ああ、痛くはないが…………なんか体に違和感があるというか。妙に体が軽くなったというか」
「体が軽くなった?」
「ああ。あと、異常なぐらい体の魔力をものすごく感じる。一体何が起きたんだ?」
俺が身体の隅々まで確認しても、あざや傷などができた様子はなかった。
「ねぇ、スレイズ。ステータスを確認してみて」
「ステータス?」
とナターシャに言われるままに、ステータスを確認する。
そこには見たこともない数字があった。
「レベル989!? はぁっ!?」
俺のレベルは24。
しかし、今のステータスにはレベル989の文字。
本当に何があったんだ?
と他のデータにも目を通していく。
すると、その他の欄にこのような文章が。
『ファーストキス覚醒によって限界突破、スキル解放、ステータスが上昇しました』
「う、うそだろ…………」
「覚醒って…………それもファーストキス覚醒」
「俺、そんな覚醒、初めて聞いた」
「私も…………」
さらにファーストキス覚醒の詳細を見ていく。
【ファーストキス覚醒】
覚醒した本人のステータスを上昇
ファーストキスをした相手のステータスを上昇
スキル「信頼」のスキルアップ
と書かれてあった。
自分のステータスだけじゃなくて、ファーストキスした相手のまで上昇させるのか。
てか、スキルアップって…………なんで?
固有スキル「信頼」
昔からこの固有スキルは持っていた。
しかし、イマイチこのスキルの使いどころか分からず、俺は放置。
妹は「そのスキル、いつかどっかで役に立つんじゃない?」と言っていたが…………。
よく分からない固有スキルを持ってもな…………なんて思っていた。今もだけれど。
そんなスキルがスキルアップ?
俺が熟考していると、自分のステータスを確認していたナターシャが「わぁっ」と声を上げた。
「どうしたんだ?」
「わ、わ、私のステータスも上がってる…………」
「あ、それ俺の覚醒のせいかも」
「そうなの? でも、ありえないぐらい上がってる」
「マジか」
ナターシャのステータスを見せてもらうと、異常なほど数値が上がっていた。
ファーストキス覚醒って本当にすごいな。自分のだけじゃなくて、相手のもこんなに上昇させるなんて。
すると、ナターシャが頬を赤く染めながら尋ねてきた。
「スレイズのステータスには本当に『ファーストキス覚醒』って書いてあったんだよね?」
「ああ」
「ファーストキス覚醒…………ってことは…………さっきのはスレイズのファーストキス…………だった…………の?」
「そういうことに…………なるな」
「そ、そうなんだ」
そういえば、ついさっきナターシャとキスしたんだ。
そのことを意識し始めると、少し照れくさくなっていく。ナターシャもさらに頬を赤くし、耳までリンゴのように赤くなっていた。
そんな雰囲気をいたたまれなくなったのか、彼女はコホンと咳払い。
「と、ともかくスレイズは覚醒した。レベルも上がった…………それも平均以上に」
「つまり俺は冒険者をもう一度できるということか?」
このレベルなら冒険者として少数人数のパーティーでもやっていける。
1人でもクエストをクリアできるかもしれない。
だけれど、俺はパーティーを組んで冒険したいな。
空を見上げると、静かに輝く月があった。
隣をちらりと見る。横にいた少女も月を見上げていた。彼女の顔は月光に照らされ、普段よりも美しくみえた。
「ねぇ、スレイズ」
「ん?」
「スレイズはもう一度冒険者としてやっていきたい?」
せっかく作り直した畑のことが一瞬頭によぎったが、もう一度得れた冒険者の夢のチャンスは逃せなかった。
一度は諦めていた自分の夢。
冒険者になって、国中、いや世界中を回って、困っている人を助けて。
そして、いつか————————魔王を倒す。
冒険者になりたいと思う者なら、誰でも持っている夢。
その夢を叶えるチャンスが今、目の前にあるような気がした。
「————————ああ。もちろん」
俺がそう答えると、ナターシャは俺の両手を取って、ニコッと笑った。
「なら、私のパーティーに入って! 一緒に冒険しようよ!」
違和感があるけど…………見た感じ、外見は変わっていない。
黙っていたナターシャは心配そうにこちらを見ていた。
「スレイズ、大丈夫? どこも痛くない?」
「…………ああ、痛くはないが…………なんか体に違和感があるというか。妙に体が軽くなったというか」
「体が軽くなった?」
「ああ。あと、異常なぐらい体の魔力をものすごく感じる。一体何が起きたんだ?」
俺が身体の隅々まで確認しても、あざや傷などができた様子はなかった。
「ねぇ、スレイズ。ステータスを確認してみて」
「ステータス?」
とナターシャに言われるままに、ステータスを確認する。
そこには見たこともない数字があった。
「レベル989!? はぁっ!?」
俺のレベルは24。
しかし、今のステータスにはレベル989の文字。
本当に何があったんだ?
と他のデータにも目を通していく。
すると、その他の欄にこのような文章が。
『ファーストキス覚醒によって限界突破、スキル解放、ステータスが上昇しました』
「う、うそだろ…………」
「覚醒って…………それもファーストキス覚醒」
「俺、そんな覚醒、初めて聞いた」
「私も…………」
さらにファーストキス覚醒の詳細を見ていく。
【ファーストキス覚醒】
覚醒した本人のステータスを上昇
ファーストキスをした相手のステータスを上昇
スキル「信頼」のスキルアップ
と書かれてあった。
自分のステータスだけじゃなくて、ファーストキスした相手のまで上昇させるのか。
てか、スキルアップって…………なんで?
固有スキル「信頼」
昔からこの固有スキルは持っていた。
しかし、イマイチこのスキルの使いどころか分からず、俺は放置。
妹は「そのスキル、いつかどっかで役に立つんじゃない?」と言っていたが…………。
よく分からない固有スキルを持ってもな…………なんて思っていた。今もだけれど。
そんなスキルがスキルアップ?
俺が熟考していると、自分のステータスを確認していたナターシャが「わぁっ」と声を上げた。
「どうしたんだ?」
「わ、わ、私のステータスも上がってる…………」
「あ、それ俺の覚醒のせいかも」
「そうなの? でも、ありえないぐらい上がってる」
「マジか」
ナターシャのステータスを見せてもらうと、異常なほど数値が上がっていた。
ファーストキス覚醒って本当にすごいな。自分のだけじゃなくて、相手のもこんなに上昇させるなんて。
すると、ナターシャが頬を赤く染めながら尋ねてきた。
「スレイズのステータスには本当に『ファーストキス覚醒』って書いてあったんだよね?」
「ああ」
「ファーストキス覚醒…………ってことは…………さっきのはスレイズのファーストキス…………だった…………の?」
「そういうことに…………なるな」
「そ、そうなんだ」
そういえば、ついさっきナターシャとキスしたんだ。
そのことを意識し始めると、少し照れくさくなっていく。ナターシャもさらに頬を赤くし、耳までリンゴのように赤くなっていた。
そんな雰囲気をいたたまれなくなったのか、彼女はコホンと咳払い。
「と、ともかくスレイズは覚醒した。レベルも上がった…………それも平均以上に」
「つまり俺は冒険者をもう一度できるということか?」
このレベルなら冒険者として少数人数のパーティーでもやっていける。
1人でもクエストをクリアできるかもしれない。
だけれど、俺はパーティーを組んで冒険したいな。
空を見上げると、静かに輝く月があった。
隣をちらりと見る。横にいた少女も月を見上げていた。彼女の顔は月光に照らされ、普段よりも美しくみえた。
「ねぇ、スレイズ」
「ん?」
「スレイズはもう一度冒険者としてやっていきたい?」
せっかく作り直した畑のことが一瞬頭によぎったが、もう一度得れた冒険者の夢のチャンスは逃せなかった。
一度は諦めていた自分の夢。
冒険者になって、国中、いや世界中を回って、困っている人を助けて。
そして、いつか————————魔王を倒す。
冒険者になりたいと思う者なら、誰でも持っている夢。
その夢を叶えるチャンスが今、目の前にあるような気がした。
「————————ああ。もちろん」
俺がそう答えると、ナターシャは俺の両手を取って、ニコッと笑った。
「なら、私のパーティーに入って! 一緒に冒険しようよ!」
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