はめられて強制退学をくらった俺 ~迷い込んだ(地獄の)裏世界で魔物を倒しまくったら、表世界で最強魔導士になっていました~

せんぽー

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第4章

第62話 打診

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 ロザレス王国第2王女ティファニー・ロザレス。
 彼女は何を考えているのか知らないが、俺に突然たった2文の手紙を寄越してきた。
 そして、直接会うなり、俺が彼女にその手紙について問うと。

 「全部よ。全部知ってるの」

 とティファニーはこう答えた。
 でも、信じられなかった。

 「……えー? 全部?」
 「ええ、全部よ」

 全部ってな……。
 適当なこと言って、俺から聞き出そうとしているんじゃないのか?
 疑わしく思い、眉をひそめていると、ティファニーはフッと笑みを浮かべた。

 「大丈夫、ネル。本当に私は全部知ってるから。ゆっくり話しましょ。どうぞ、そこの席に座ってちょうだいな」

 王女様に促され、俺は正面の椅子に仕方なく座った。

 「レンちゃんが神になっていることも、ベルティアとコンコルドが天使だってことも私は知ってる」
 「……ほぉ」

 それを知っているということは、本当に全部知っているのだろう。
 だけど、どうやって知ったんだ?

 「誰かに聞いたのか」
 
 これらを知っているのはメミぐらい。
 となったら、俺の知らない所で彼女たちが関わったのか。
 しかし、ティファニーは横に首を振った。

 「誰からも聞いてないわよ。私はずっと見ていたの」
 「ふーん。なるほど……ティファニー殿下は魔眼持ちであられましたか」
 「いや、持ってないわ。魔眼なんて私には必要ないし」
 「なら、どうやって知ったんだよ」
 「どうやってって……自然とよ」
 「自然と?」
 
 それなら、尚更千里眼とかの魔眼で知ったとか、予知夢を見て知ったとかしか思いつかないんだが。
 すると、ティファニーは自分の胸に手をあて、そして。


 「だって、ほら、私は神様だもの」


 と、自信満々な表情でこう言った。

 ――――え?
 神様って……は?

 「何言ってんだ、お前……」
 「何言っているって、そのままの通りよ」
 「……」
 「私もね、こんなふうになるとは予測してなかったのよ。まーさか、この世界自ら神々を作るとは思ってなかったわ。でもね、レンたちは偽物で、私が本物の神よ」
 「うさんくせぇ……」
 「神に向かってうさくさいとは……ともかく、私は本物なのよ。この世界を管理しているのは私なの。全てを知っているし、他の神々の調整をしているのはわ・た・し」
 「と言われてもな……」
 
 俺たち、神様のことはよく分かってないし。

 「この世界が魔法が存在するようにしたのも私。魔法の神と協力して、世界設定したのよ」
 「……」
 「結構苦労したのに……信じてないわね……じゃあ、なんでもできること証明してあげる」

 ティファニーはパチンと指を鳴らす。
 すると。

 「え? 兄様?」
 「…………メミ?」

 ティファニーの隣にはメミが立っていた。

 「なんでここにメミがいるんだよ」
 「私が移動させたからに決まってるじゃない。あ、転移魔法なんて使ってないからね」
 「……」
 「む。その顔はまだ信じてないわね。もう、せっかく妹ちゃん連れてきたのに……メミさん、突然呼び出してごめんなさいね」
 「いえ……兄様、これはどうい――」

 ティファニーが再度指を鳴らすと、メミは消えた。
 そして、自称神様はすぐにパチンと指を鳴らす。
 すると、俺たちはあの綺麗な庭から別の場所へと移動。
 赤い空に、赤い土。
 なるほど、ここは裏世界か。

 俺が移動した先は、裏世界の空の上。
 足元にはあの赤い裏世界が広がっていた。
 そして、隣には「どう? 見違えた?」とでも言いたげな愉悦な顔をしたティファニー。

 「言っておくけど、魔法じゃないからね」
 「はいはい。そういうことにしておきます」
 「なんでよー、まだ信じてくれないの」
 「だって、あんたがただレベル高くて技術もあるつよつよ魔導士って可能性もありうるだろ」
 「…………ふん、確かにそうね。まぁいいわ。『ティファニー王女は女神様』ってことを頭の片隅にでもおいてくれればいいもの」

 いや、別に神様だってこと信じてないんだけどな……。

 心の中で文句を言いつつ、足元に広がる世界に目を向ける。
 今、見える裏世界の地上には大きな街が広がっていた。
 30mは余裕でありそうなガラス張りの四角い建物がたくさん建っている。

 まさか裏世界にこんな街があったとは、知らなかった。
 思えば、俺はリコリスの家周辺から移動したことがなかったな……。

 「なぁ、王女様。あの高い建物はなんだ? 誰が所有しているんだ?」

 もしかして、裏世界いるに人間か?
 と思ったが、ティファニーは横に首を振った。

 「多分、魔王の手下たちの建物ね。といっても、人間たちが作っていた建物を改造しているだけだけど」
 「……裏世界には人間がいるのか?」
 「ええ、いたわよ。今はほとんど滅びちゃったけどね」
 「生き残りはいるのか」
 「いるわ。でも、生き残りは二桁もいない」
 「その生き残りは?」
 「レンちゃんが表世界に移動させた」
 「レンが?」
 「ええ、そうよ。あ、そういえば、その生き残りの1人があなたのチームにいるわね」
 「は?」

 俺のチームって、あの4人ってことだよな?
 アスカ、ラクリア、リナ、リコリス……あ、もしかしてリコリスか?
 いや、あいつは元々裏世界にいたし、悪魔だし、人間じゃないな。

 なら、他の3人?

 「おい、生き残りの人間って誰なんだ? 教えてくれ」
 「えー、私が女神様ってこと信じてくれないから、教えてあげなーい」
 「……分かった。信じる」
 「ハッ、嘘ね」
 「いや、信じるって」
 「ふん、嘘だわ」

 それから、俺は何度も尋ねたが、自称神様は教えてくれなかった。
 うーん。誰なんだか、めちゃくちゃ気になるんですけど。
 チームにいるってことは教えてくれたんだから、最後まで教えてほしいものだ。

 「それにしても、彼女ってあなたに夢中よね」
 「……彼女って、メミのことか?」
 「いいえ、レンちゃんよ」
 「レン? ……なら、そこは“彼”じゃないのか」
 「ええ、彼女に決まってるじゃない」

 決まってるのか?

 「そうか? ……あ、もしかして、神様には性別がないのか?」
 「あるわよ。いや、ない人もいるみたいだけど……少なくとも私は女の子だし、レンちゃんもきっと女の子」
 「…………は?」

 レンが女?

 「男の子ではなく?」
 「女の子よ」
 「へ?」

 いやいやいや……あれはどう見たって男だろ。
 確かに端麗な顔をしているから、中性的ではあるけども、あいつは男の子。
 確かについていたしな。

 「まぁ、今の外見は確かに男の子よね。一体何をされたのかは知らないけど、彼女が生まれた時は確かに女の子だったはずよ」
 「はぁ?」
 「あ、ほんとだからね。私が適当なことを言っているわけじゃないから。今度、本人に確かめたらいいわ」
 
 第2王女が神様で、レンが女の子。
 そして、俺のチームには裏世界で生まれた数少ない生き残りがいる。

 うわ……情報量多い。
 頭、パンクしそ……。

 「それで、王女様はこんな無駄話をするために、手紙を送ってきたのか」
 「えー……無駄話じゃないと思うけど、帰る前に、ちょっとお話しておきたいことがあるの」
 
 すると、ティファニーはまたパチンと指を鳴らす。
 移動した先は先ほどの王城の庭。最初の場所に戻っていた。
 
 「話?」
 「ええ、あなたに打診しておきたいことがあって」

 打診?
 なんのことだ?

 見当がつかず首を傾げていると、ティファニーはテーブルの上で腕を組み、俺に顔を近づけてきた。
 俺を真っすぐ見つめてくる彼女の水色の瞳は、キラキラと輝いており、思わず吸い込まれそうになる。

 「ねぇ、ネル」
 「……お、おう、なんだ」

 すると、ティファニーはニヤリと笑って、こう言った。

 「死んだ後、あなた、神になってみない?」
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