はめられて強制退学をくらった俺 ~迷い込んだ(地獄の)裏世界で魔物を倒しまくったら、表世界で最強魔導士になっていました~

せんぽー

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第4章

第61話 全部知ってるの

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 「アハハ! ライナスのじじい死んじゃったの!?」

 少女は笑っていた。
 いつも不機嫌そうにしている彼女が愉快そうに笑っていた。

 「まぁ、いつかは死ぬと思っていたんだけどね! でも、こんなあっさり死んじゃうなんて! アハハ!」

 楽しそうに笑う少女が座っているのは金の玉座。
 それは死んだ変態幹部ライナス・ブレゼットのよりも大きく、そして豪勢な装飾が施されていた。
 その玉座に座る金髪ツインテールの少女もまた魔族であった。
 彼女の手と足には鋭い爪、頭に竜の角を生やし、背中には蝙蝠のような大きな翼。
 口元からは長く鋭い八重歯が見えている。

 そんな姿の少女だが、顔は正直言って童顔。
 童顔かつ身長は小さいため、少女にはロリっ子と言われるような小悪魔的なかわいさがあった。
 
 「殿下がお笑いになるとは珍しいですね」
 「当たり前じゃない! あの老害じじいがやっといなくなったのよ! 笑うに決まってるじゃない!」

 玉座に座るツインテールの少女の正面には1人の男。
 彼もまた頭に竜のような角を生やしていた。

 「はぁ~ぁ……笑い過ぎて涙がでちゃった。それで、他には? 何かいい情報あった?」
 「はい。どうやらこちらに“悪魔の兵器”が来ているようでして」
 「は?」

 男がそう報告すると、少女は眉をひそめた。

 「“悪魔の兵器”って……リコリスぅ? はぁ? なんであんな化け物がこっちに来てるの?」
 「さぁ、分かりません」

 男が笑顔でバッサリ答えると、少女は「う゛――!!」と奇声を発し、頭を抱えた。

 「えぇ~、アイツがこっちに来てるとか、めんどーなんですけど~」
 「まぁ、厄介ではありますね」
 「そうでしょー? だってだってさー、ただえさえさー、アタシたちさー、人間と殺り合ってるっていうのに、あっちの魔王とやるってなったら、ちょーめんどーじゃなーい。しかも、あのリコリスを……あんなの寄越されたら、アタシら勝ち目ないじゃーん」

 「でも、“兵器”はこちらの世界にいると、レベルは下がってしまうようですよ」
 「え、そうなの?」
 「はい」
 「え、じゃあ、今のうちに潰しておいた方がいいじゃーん。あ、でもアイツのレベルが落ちたところで、アタシたちが倒せる保証はなくない? もしかして、あるのぉ?」
 「いえ、私には分かりません」
 「むぅー」
 「ですが、物は試しですよ」
 「そうだけど……失敗したら、嫌だぁ」

 「それはそうですね。そこは作戦を練った方がよさそうです。あと、王国では七星祭が行われるようでして、リコリス・ラジアータも参加するようです」
 「七星祭?」
 「学生のお祭りみたいなものです。学生同士で戦うらしいですよ」
 「へぇ、お祭りか……人間も面白そうなことしてるじゃーん」

 すると、少女は黙り込んで、一時してぱぁと目を輝かせた。
 そして、勢いよく立ち上がった。

 「リンデン!」
 「はい、なんでしょう」
 「アタシ、いいこと思いついたっ!」
 「いいことですか?」
 「ええ!」

 腕を組み仁王立ちする少女。
 ニヤリと笑みを浮かべる彼女は男に向かって、大声で言った。

 「アタシたちもお祭りに遊びにいこっ!」



 ★★★★★★★★



 リナの家でパーティーをした数日後。
 俺、ネル・モナーはロザレス王国の王都にある王城に来ていた。

 七星祭があるため、王都にはもう少し後で来る予定だったが、俺は転移魔法を使って、1人王城に足を運んでいた。
 
 先日、俺はいつも保健室にいる王国の第1王女ステファニーから、ある手紙を受け取った。
 その手紙に書いてあったのは2文だけ。
 それでも、俺は動揺した。

 なぜ、あいつがこんなことを言ってきたのか。
 あのことはかなり前の話なのに、今になってなぜ連絡してきたのか。
 疑問が尽きなかった。
 
 彼女と直接話したくて、俺は王城に向かった。
 手紙を持っていたため、手続きに手こずることはなく、すんなりと王城に入れた。
 そして、俺が案内されたのは、薔薇の花が咲き誇る庭園。
 そこの椅子で静かに座っていたのは、1人の少女。

 金の長い髪に、雪のように白い肌。快晴の空のように透き通った水色の瞳。
 白のワンピースをまとう少女は、まるでお人形のよう。
 
 でも、やっぱりステファニーにどことなく似ているな。
 そうだよな。血が繋がっているもんな。

 端麗な少女は静かにお茶を飲んでいた。

 「あら、もう来たのね。勇者様は随分と足が早いわね」
 
 少女の名前はティファニー・ロザレス。
 ロザレス王国の第2王女で、ステファニーの妹。
 年は俺より5歳ほど下だが、ティファニーには丁寧な口調や王族ならではのオーラもあり、幼さを感じさせない。
 
 そんな彼女と俺だが、何度か会ったことがあった。
 と言っても、昔のパーティーとかで少し話をしたことがある程度。
 ステファニーのように、裏で交流すると言ったことはなかった。

 まぁ、俺とステファニーとの交流もあるため、彼女が俺のことを一方的に知っていてもおかしくはない。

 だとしても、なぜ彼女があんなことを言ってきたのか分からない。

 「久しぶりだな、王女様」
 「ええ。随分久しぶりだけど、元気にしてたかしら?」
 「まぁな。新聞で報じられた通り、幹部を1人倒してきたから、元気はあるんだろうな」
 「そういえば、そうだったわね。幹部退治お疲れ様。ネルはようやく勇者として働くことしたのね」

 別にそういうつもりじゃないんだけどな。

 「……本題に入ろう。この手紙はどういうことだ」

 俺はステファニーから受け取った手紙を見せる。
 その紙にはこんなことが書いてあった。

 『私はレン・アベルモスコの正体を知っている。ついでに、ベルティアとコンコルドのことも』

 「知っているってどこまで知っているんだ」

 そう問うと、ティファニーにはニヤリと口角を上げる。
 そして、こう答えた。

 「全部よ。全部知ってるの」
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