はめられて強制退学をくらった俺 ~迷い込んだ(地獄の)裏世界で魔物を倒しまくったら、表世界で最強魔導士になっていました~

せんぽー

文字の大きさ
上 下
58 / 62
第3章

第58話 グッバイ! 変態幹部!

しおりを挟む
 リナの姉さんを救った俺たちは戦闘を始めていた。
 リコリスは部屋の左から、そして、俺は右から走り出している。

 だが、じじい幹部は玉座から動く様子はない。逃げる様子はない。
 彼はじっと座って、杖を手にしていた。
 その杖は俺が持っている杖と似たデザインのもの。
 俺が持っているものよりも古いのか、所々に傷が入っていた。

 「なめられたものだ――――ビジョンセクエーストロ」

 その杖を振り、呪文を唱えるじじい幹部。
 それは聞いたことのない呪文だった。
 多分古代魔法なのだろう。

 じじい幹部が唱えてすぐあと、目の前が真っ暗になった。
 唱えた魔法は状態異常系……視覚を遮断する魔法か?
 耳を済ませながら、状態異常の解除魔法をかけると、視界が元に戻った。

 「うおっ」

 気づくと、目の前にじじい幹部がいた。
 が、俺は瞬時に反応し、転移魔法で移動。
 じじい幹部の背後をとって、背中を思いっきり蹴る。

 じじい幹部は勢いよく部屋の端に吹き飛んでいった。

 「状態異常系の魔法は効かないぜ、変態じじい」
 「うわっ! 何も見えないんですけど! 真っ暗! ネル! どうにかして!」
 「……」

 …………まぁ、リコリスには効くかもしれないけど。

 俺は状態異常解除魔法をリコリスにかける。
 視界が戻った悪魔女は騒がなくなった。

 その間に、じじい幹部は起き上があっていた。
 とっておきの魔法が決まらず怒っていらっしゃるのか、彼の眉間にしわが寄っている。

 「貴様ら……人間側の者は全員殺す。特にASETとかいう連中は全員殺す」
 「ふーん。じゃあ、なんでリナの姉さんは人質したんだよ」

 殺したいのなら、一番に殺す相手だろうに。
 すると、じじい幹部から意外な答えが返ってきた。

 「いい女だったからだ」
 「え?」
 「いい女だったんだ」
 「いや、聞こえているけど……それだけ?」
 「ああ、それだけだ」

 コイツ、リナを利用するだけ利用して、リナの姉さんを解放する気はなかったんじゃないだろうか。

 じじい幹部の変態発言を聞いたリコリスは露骨に嫌そうな顔をしていた。

 「うわっ、きもっー」
 「本当に変態じじいだな……」

 部屋の隅に逃げているリナも変態幹部を睨み、歯ぎしりをしている。
 ゆがみまくっているリナの顔は嫌悪感を示していた。

 「ネル、どうかあいつを殺してくれ」
 「ああ」

 こんな変態幹部は地獄に落ちてもいいだろう。いや、落ちてくれ。
 本当にきしょくわるいから。

 「貴様がこのわしを殺すだと?」
 「ああ、どうせいつかお前を倒すことになりそうだから、今のうちにな」

 レベルだけを考えれば、こちらの方が上。
 聞いた話では、幹部の中にフォーセブンのオッカム様を超えるレベルのやつは半分だけ。
 多分こいつはその半分に該当しない。
 たとえ該当しなくとも、俺の方が上になる。

 となれば、だ。
 制御なんて考えず、思う存分攻撃をかませればいい。

 「悪い、リナ。ちょっと城から出て行ってもらえるか?」
 
 だが、部屋にはリナと未だ目を覚まさないお姉さんがいる。

 リコリスは……あいつは何があっても大丈夫だろうから、いても問題はない。
 もし何かあっても、十分すぎるぐらいの回復魔法をかけてあげればいい。

 すると、リナは俺のお願いにうんと頷き、姉さんを抱えて部屋を出ていった。

 「アブソルートコルピーレスパッツィオ!」

 リナが退出した瞬間、変態幹部は聞いたことのない呪文を口にする。
 次はなんだ? 
 なんの魔法がくる?

 警戒して、解除魔法の準備をする。
 リコリスも変態幹部から距離を取る。
 が、何もなかった。

 本当に何の魔法を使ったんだ?

 そうして、瞬きをした瞬間、俺は知らない世界にいた。
 そこは何もない世界。
 真っ白な世界。

 だが、誰もいないというわけではない。
 少し離れたところには変態幹部とリコリスがいた。

 ここは一体どこだ……?
 転移させられたのか?
 でも、感覚的に転移魔法ではなそう。

 魔法を使った当人――変態幹部はまるで自分が勝ったかのような、笑みを浮かべていた。

 「この空間では私の全ての攻撃が当たる。貴様が絶対防御を張ろうとおも、全て当たるのだ」

 全て当たる……なるほど古代魔法か。
 古代魔法の中には、絶対に必中する空間系の魔法があると聞いたことがある。

 その魔法は術者のレベルが4桁ないと使用ができないものだったはず。
 もちろん、敵を絶対に倒すにはいい魔法ではあるが、魔力量をかなり必要とする魔力コスパの悪い魔法だ。
 
 この魔法を使っているということは、この変態幹部はレベル1000はあるということになるが……。

 「解除セブロッコ
 
 俺は解除魔法を唱えたが、解除はできない。

 「鎖の解除アンロックスカテナーレ

 上位の解除魔法を唱えても、解除できなかった。

 「兵器に攻撃をしても意味ないだろうからな……勇者の貴様から殺してやる」

 変態幹部は闇の刃をこちらに打ってくる。
 俺は防御しようとバリアを張ったが無効。
 それでも回避しようとしたが、腕と顔に切り傷ができた。
 
 「いってぇ……」

 傷からは血が流れ、ギスギスとした痛みを感じる。
 だが、回復魔法をかけると簡単に治った。
 必中だけど、回復魔法は無効にできないのは、俺にはあんまり意味がないな。
 
 でも、このまま空間にいるのも面倒。

 「なら、この空間をぶっ壊すしかないな」

 特定の空間を壊す魔法は知らない。
 でも、この世界は無限じゃない。
 無限に世界が続いているようには見えるけど、きっとどこかに限界はある。
 俺は世界の端に向かって走る。
 100mぐらい走ると、見えない壁にぶつかった。
 
 「ここか」

 俺は詠唱せずただの魔力を拳にため込む。そして、見えない壁を思いっきり殴った。
 すると、空間はパリパリっとガラスが割れるように、崩れていく。

 「貴様!」
 「意外となんとかなるもんだな!」

 とりあえず試してみようと思ってやったけど、一発でうまくいき、俺たちは玉座のあるあの部屋に戻っていた。
 
 「なら、貴様らを虫のように潰してやる――――レストリンジャーシ」

 その変態幹部の詠唱後、突如変態幹部は巨人のように大きくなった。
 部屋も広くなっている……もしかして、これはじじい幹部が大きくなったんじゃなくて、俺たちが小さくなったのか?
 ああ、分かった。
 これ、カイ先輩が鏡をワープする時に使った魔法か。

 魔法を把握した俺は解除を試みたが、元の大きさには戻らなかった。
 解除ができないのはたぶん古代魔法をミックスしているせいだな。

 でも、解決方法がないわけでもなさそうだ。

 俺は試しに小さくなる魔法とは逆の体を大きくする魔法を、自分とリコリスにかけた。
 しかし、制御はしなかったため、通常よりもずっと大きくなっていって――――。

 「誰が虫だって?」
 「今のあんたの方が虫ね!」

 俺とリコリスは城よりも大きい巨人となっていた。

 「ネル見て! あの変態、こんなにちっさいわよ!」
 「アリみたいだな」

 さっきまで巨人に見えていた変態幹部はもはや塵のように小さくなっていた。
 よぉーし。いいこと思いついた。

 「リナ! どこにいる!」

 俺はリナを呼び叫ぶ。

 「ここだ!」

 すると、城の外から彼女の声が聞こえてきた。
 リナはお姉さんを抱えて、城の外へ脱出していた。

 「リコリス、手にリナたち乗せて守っていてくれ」
 「いいわよ!」

 リコリスはリナの方に手を差し出し、リナはお姉さんとともに彼女の手に乗った。

 「よし。これで準備は整ったな……待たせたな、変態幹部」

 俺はそう言って、ニヤリと笑いかける。
 変態幹部はさっきから魔法を打ってきてはいたが、痒い程度のものだった。

 「き、貴様ら何をする気だ……」
 「そりゃあ、決まってるだろ」

 城下町を踏んで城から距離を取り、俺は右足を大きく後ろに下げる。

 「世界の果てまでぶっ飛べっ――!!」

 そして、変態幹部を蹴飛ばした。
 ついでに城も蹴ったので、黒のお城も壊れた。
 体の大きい俺たちにはおもちゃが壊れたようにしか見えない。

 蹴り飛ばした変態幹部は、ものすごい速さで飛んでいき、姿が見えなくなった。

 「グッバイ! 変態幹部!」
 「じゃあね! 変態ライナス! 二度と顔を見せるんじゃないわよ!」

 俺とリコリスは飛んでいった変態幹部に別れの言葉を叫んだ。
 よぉーし。これで死んでいることだろう。

 元の状態に戻るため魔法をかけようとしていると、ボトッと鈍い音が後ろから聞こえてきた。

 「ん?」

 背中に何かが当たったか?
 もしかして、鳥かな?

 気になった俺は背中に当たったものを掴む。
 可愛そうに……すまないな。
 俺がこんな所にいたから。

 「え?」

 俺が掴んだもの。
 それは鳥ではなく、変態幹部じじいでした……って、なんで変態がここに?

 もしかして、一周してきたのか?
 
 変態は白目をむいて、奇絶していた。
 こいつ、まだ死んでいないのかよ。
 ほんと強靭な体してるな……。

 元の姿に戻った俺たちは、壊れた城で気絶した変態じじいを見ていた。
 コイツを殺してもいいんだが……。

 「ねぇ、ネル」
 「なんだ」
 「ネルはまだこの変態を殴ってないじゃない」
 「ああ、そうだな」

 戦う前は殴る気満々だった。
 だが、魔法を使いなれているせいか、さっきのキック以外は魔法で攻撃していた。

 「じゃあ、殴りましょ。私、この変態を持っておいてあげるから」

 そう言って、リコリスは変態幹部の体を背後から支え、貼り付けのような状態で立たせた。

 「歯を食いしばれよ、じじい」

 俺は拳を作り、ぐっと構える。
 そして、大きく振りかぶって、拳を変態幹部の顔に打ち込んだ。
 
 「これはリナの姉さんの分っ!」
 「うっ!」
 「これはリナを苦しめた分っ!」
 「あっ!」
 「最後は俺たちを生贄しようとした分だっ!」
 「う゛ぁっ!」

 締めに、俺は変態幹部の股間に蹴りを入れた。
 
 よぉーし、殴った、殴った!
 これで有言実行だな。

 そこでようやく変態幹部は目を覚ました。
 リコリスは変態から手を放し解放、変態じじいはその場に倒れ込んだ。

 だが、また近くに転がった俺の杖に手を伸ばしていたので、さっと杖を奪う。
 そのまま、俺は杖先を変態幹部に向けた。

 「なぁ、変態じいさんよ。あんた、魔王軍止めるとか考えはない?」

 この変態幹部じじいは古代魔法とかいろいろ魔法を使えるが、戦闘能力はそれほど高くない。物理攻撃で攻めれば、すぐにやられるだろう。
 が、勇者以外からしたら、厄介な敵になりうる可能性がある。

 それなら、味方にして利用するだけ利用する。
 リナを利用したんだ。これくらいやってもいいだろう。

 こいつを仲間にできれば、勇者側の戦闘能力を向上させるだけでなく、魔王軍の情報を得れて、コイツを有効活用できる気がする。
 裏切る可能性もあるため、裏切ったと分かった瞬間爆発とかする首輪をつけておこう。

 だが、変態じいさんは呆れたのか、フッと笑みを漏らした。

 「甘いガキだな」
 「俺はそんな甘くないぞ……あんたが勇者かなにかこっち側の者になってくれればいいなって考えただけだから」
 「そうか」
 「それで、魔王軍止める気あるのか? ないのか?」
 「ない」
 「そうか。じゃあ、さようなら」

 変態幹部の首を氷の刃で切る。
 頭はコロコロと転がった。

 「私を殺せば、決して陛下や幹部たちは黙っていない。そのうち貴様を倒すことになるだろう……」
 
 とだけ言って、変態は目を閉じ、息をしなくなった。
 そして、幹部の体は黒の塵となって消えていった。
 
 魔王とか幹部が黙っていないか……これは目をつけられることになりそうだな。
 えー、それは普通に嫌だな。面倒そうだ。
 まぁ、でも、とりあえず目的は終わった。

 俺は少し離れたところで見守っていたリナの所へと向かう。
 彼女はずっとお姉さんを抱え、見守っていた。
 目覚めは今か今かと待っているようだった。

 「じゃあ、リナさん。帰りますか」
 「ああ、帰ろう」

 そうして、仕返しをして魔王幹部を倒した俺は戦利品の大杖を持って、リコリスたちとともに転移魔法で国へ戻った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚

ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。 原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。 気が付けば異世界。10歳の少年に! 女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。 お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。 寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる! 勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう! 六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる! カクヨムでも公開しました。

大国に囲まれた小国の「魔素無し第四王子」戦記(最強部隊を率いて新王国樹立へ)

たぬころまんじゅう
ファンタジー
 小国の第四王子アルス。魔素による身体強化が当たり前の時代に、王族で唯一魔素が無い王子として生まれた彼は、蔑まれる毎日だった。  しかしある日、ひょんなことから無限に湧き出る魔素を身体に取り込んでしまった。その日を境に彼の人生は劇的に変わっていく。  士官学校に入り「戦略」「戦術」「武術」を学び、仲間を集めたアルスは隊を結成。アルス隊が功績を挙げ、軍の中で大きな存在になっていくと様々なことに巻き込まれていく。  領地経営、隣国との戦争、反乱、策略、ガーネット教や3大ギルドによる陰謀にちらつく大国の影。様々な経験を経て「最強部隊」と呼ばれたアルス隊は遂に新王国樹立へ。 異能バトル×神算鬼謀の戦略・戦術バトル! ☆史実に基づいた戦史、宗教史、過去から現代の政治や思想、経済を取り入れて書いた大河ドラマをお楽しみください☆

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~

岡本剛也
ファンタジー
駆け出しの冒険者であるシルヴァ・ベルハイスは、ダンジョン都市フェルミでダンジョン攻略を生業としていた。 順風満帆とはいかないものの、着実に力をつけてシルバーランク昇格。 そしてついに一つの壁とも言われる十階層の突破を成し遂げた。 仲間との絆も深まり、ここから冒険者としての明るい未来が待っていると確信した矢先——とある依頼が舞い込んできた。 その依頼とは勇者パーティの荷物持ちの依頼。 勇者の戦闘を近くで見られることができ、高い報酬ということもあって引き受けたのだが、この一回の依頼がシルヴァを地獄の底に叩き落されることとなった。 ダンジョン内で勇者達からゴミのような扱いを受け、信頼していた仲間にからも見放され……ダンジョンの奥地に放置されたシルヴァは、匂いに釣られてやってきた魔物に襲われた。 魔物に食われながら、シルヴァが心の底から願ったのは勇者への復讐。 そんな願いが叶ったのか、それとも叶わなかったのか。 事実のほどは神のみぞ知るが、シルヴァは記憶を持ったままとある魔物に転生した。 その魔物とは、最弱と名高いゴブリン。 追い打ちをかけるような最悪な状況に常人なら心が折れてもおかしくない中、シルヴァは折れることなく勇者への復讐を掲げた。 これは最弱のゴブリンに転生したシルヴァが、最強である勇者への復讐を果たす物語。

処理中です...