はめられて強制退学をくらった俺 ~迷い込んだ(地獄の)裏世界で魔物を倒しまくったら、表世界で最強魔導士になっていました~

せんぽー

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第3章

第47話 幼女先生はおいはぎをする!

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 「先生、何のご用でしょうか?」

 呼び出された俺は職員室に来た。
 だが、担任の幼女先生――メダイ先生は違う場所で話そうということになり、現在、俺たちは職員室の隣、談話室にいる。

 談話室には2つのソファがあり、1つは先生が座った。
 その向かいに俺とリコリス、メミが座り、ラクリアは後ろで立っている。
 呼び出しがかかったのは俺だけなのに、なぜこの3人がついてきているのか。
 別に1人で来てもよかったのだが。

 『兄様が行くのでしたら、私も参ります』
 『気になるから行きたい!』
 『私もだYO!』

 と言ってきたので、一緒に来た。
 まぁ、3人とも事情は知っているし、問題はないだろう。
 後の2人はというと、研究室に残っている。

 部屋の外には俺を追っかけてきた学生が集まっているのか、少し騒がしい。
 しかし、幼く見えるメダイ先生は気にすることなく、話し始めた。

 「モナー君、今朝の新聞は見ましたか?」
 「はい」
 「なら、率直にお聞きしますね、モナー君。あなたには体のどこかに勇者の紋章はありますか?」

 ここは正直にお答えしないとな。

 「いいえ。ありません」

 うん、正直な気持ちは大切だ。
 勇者として働くなんてまっぴらだからな。

 「…………え? ほんとですか?」
 「はい、先生。ほくろとかはありますが紋章みたいなものはないですよ」
 「私も確認しましたが、可愛いお尻のほくろ以外特に気になるところはありませんでした」

 そう言ってきたのは、隣にいるメミ。
 彼女は微笑みを浮かべていた。
 
 …………俺の発言に信憑性を持たせようとしてくれるのはいいが、ほくろに関する情報は先生に教えなくてよかったと思うぞ。

 「…………」

 しかし、メダイ先生は言葉を信用していないのか、ジト目を送ってくる。

 「モナー君、嘘はいけません」
 「嘘じゃないです」

 気持ちには嘘をついていないんで。
 すると、メダイ先生は立ち上がり、俺の上着を掴んだ。
 …………先生、一体何をする気だ。

 先生は、俺の上着を脱がそうとし始めた。

 「勇者じゃないはずがないわ……さぁ、服を脱いで! 私が紋章を確認してあげる!」
 「いやー! 先生においはぎされる! 助けてぇー!」
 「そんなこと言っても、私はひるみません!」

 助けの声を外に求めたが、メダイ先生は服から手を離すことはない。
 ならばと、先生の手を振り切ろうとするが、先生は服をぎゅっと掴んだままだった。

 …………くっ、この先生強いな。
 俺が振り切ろうとしても、手を離さないとは。

 「さぁ! 脱ぎなさい!」
 「嫌です! 本当に嫌です! ちょっ、ボタンを外さないでください!」
 「先生、ダメです! 兄様の服を脱がせていいのは私だけです!」
 「先生、いけー! ネルの服を脱がしちまえー!」
 「FOOOOO!」

 逃げようとする俺、なんとしても俺の服から手を離さないメダイ先生、先生の手を掴むメミ。
 周りのリコリスやラクリアは好き放題言って、部屋はカオス、カオス、カオス。

 先生に引っ張れながらも、俺はなんとかドアのところまで行く。
 そして、ドアを開けた。

 「あ、教頭先生」
 
 開けた先にいたのは、つるっぱげのおじさん――教頭先生。
 俺の服を引っ張るメダイ先生は、ばっちり教頭先生と目が合う。
 教頭の目はメダイ先生の顔から手をなぞり、そして、俺を見る。

 「メダイ先生は一体何を……」
 「えっと、その、これは……」
 「教頭先生! 俺、おいはぎされてます!」
 「モナー君!」

 そうして、おいはぎが見つかったメダイ先生は、教頭先生からご叱責をお受けになられた。
 その時、「いくらモテないからといって、男子生徒の欲情してはならない」とか言われていた気がする。どんまい、先生。
 
 だが、結局、俺も事情を知った教頭先生の命令で、男の先生に別室へ連行。
 上半身の服を脱がされ、秒で腕にあった紋章を発見された。
 ああ……嫌だったのに……。

 紋章を見つけられた俺は、メダイ先生がいる部屋に戻る。
 すると、先生は半泣きで俺を待っていた。
 よほどかわいそうに思ったのかあの悪魔女リコリスが隣に座って、「先生、大丈夫。かわいいわよ、男に見る目がないだけよ」と慰めている。

 「モテない」ことを指摘されてショックを受けたみたいだな……どんまい。

 俺はソファに座り、メダイ先生と向き合う。
 俺の隣にはメミとラクリア、先生の隣にはリコリスが座った。
 悪魔女は先生の背中をずっとさすっている。

 涙目のメダイ先生は、静かにこう聞いてきた。

 「モナー君、君は勇者として働きたいですか?」

 うん……もうここは率直に言うべきだろう。

 「先生、俺は勇者として働くのは嫌です」

 他の6人の勇者がいるし、そいつらめっちゃ強いと聞く。
 俺がいなくとも、魔王なんて余裕で倒せるはずだ。
 すると、先生は残念そうな表情を浮かべ、静かに頷いた。

 「モナー君がそういうのならば……ええ、わかりました。勇者としての活動は強制しません……ですが、勇者には世間の目がつくことを覚悟してください」
 「分かってます」
 「……モナー君も知っているとは思いますが、勇者の方の中には勇者業を行いながら、好きなことをなさっている方もいらっしゃいますよ」
 
 確かに、フェグタの勇者はアイドルをしていると聞くし、メグレズの勇者は作家だということも知っている。
 そんな兼業勇者を知っているけども、俺としては勇者自体をしたくない。
 したいやつがしたらいいんだ。

 ――――そう思いながら、勇者として活動しないことには違和感があった。

 心のどこかでは「すべきだろう」と言ってくる自分がいる。
 勇者に使命があるのは分かっている……分かっているけども……。

 考えこんでいると、遠くからドゴンッという音が聞こえてきた。
 今のは校門の方からしたが、研究の実験か何かだろうか?

 「先生、今日何かイベントでもあるんですか?」
 「いえ、今日は何も予定されていませんが……」

 爆発音に訝し気に思っていると、一時して、バッと入り口の扉が開いた。
 そこには息を切らす見知らぬ生徒がいた。

 「あの! アルカイドの勇者さんはいらっしゃいますか!?」



 ★★★★★★★★



 『アルカイドの勇者に会いに来られた方が暴れています!』

 そんな報告を受け、俺はすぐに校門の方へ向かった。
 人だかりができてはいたが、注目を浴びている彼らの近くには人がいない。
 みんな、怖くて離れているようだった。

 「だーかーらー! 俺らは! アルカイドの勇者に会いに来たんや! 邪魔すんなや!」

 注目されている2人の男――1人はオレンジ色の髪で、もう1人は青色の髪。
 そんなド派手な髪色の男子生徒は、警備員の胸倉をつかみ、怒号を放っていた。

 2人が好き放題暴れたのか、道はバキバキに割れ、門はぐにゃぐにゃで原型をとどめていなかった。 
 
 随分と狂暴なやつらだな……怖っ……。

 「なぁ、お前ら何してるんだ」

 そう声をかけると、2人がバッとこちらを見る。
 顔がめちゃくちゃそっくりだな……。

 襲ってくると思って身構えたが、なぜか2人の動きは止まった。

 「あ! あれや! あれ! 探してたやつやんけ!」
 「そうだね。彼は新聞で見た顔だ」

 そう言って、2人は真っすぐ走ってきて、俺に詰め寄ってきた。

 「なぁ! なぁ! あんた、アルカイドの勇者やろ?」
 「絶対そうだ。そうだろ」

 いや、そうだけどさ……。

 「おたくら、誰だよ」

 そう問うと、2人はニヤリと笑みを浮かべ、手の甲を見せてきた。
 そこにあったのは勇者の紋章。
 だが、俺のとは少し異なるデザインものだった。

 「俺らはミザールの勇者や! よろしくな、新人勇者!」
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