はめられて強制退学をくらった俺 ~迷い込んだ(地獄の)裏世界で魔物を倒しまくったら、表世界で最強魔導士になっていました~

せんぽー

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第3章

第46話 リアルからの呼び出し

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 俺とリコリスはさっそく戦い始めた。
 開始早々、リコリスはありったけの魔法攻撃をしてくる。
 だが、1分もしないうちに、俺はリコリスの動きを封じた。

 「レベル調整したネルなら勝てると思ったのに!」

 拘束した開放すると、リコリスはよほど悔しいかったのか「あーあー!」と泣き始める。
 そして、なぜか俺の服を引っ張り始めた。

 うぉ――!
 服が伸びる、伸びる!
 リアルじゃないとしても、服は伸ばしたくないんだ。
 放せ……って俺の服で鼻をかむなっ!

 そうして、服を汚されて一時すると、リコリスは泣き止んだ。
 だが、次の悪魔女はこんなことをおっしゃってきた。

 「なら、次はチーム戦! チーム戦で勝負しましょ!」

 というわけで、タイマンではなく、俺たちはチーム戦をすることに。
 バーチャル世界ではアスカが作った敵があるらしいのだが、まだ調整はできていないので、今日はなし。
 なので、6人で2チームに分かれて戦うことになった。
 …………なったのだが。

 「これはどういうことだ」

 俺の正面にいるのは4人の女子。
 一人は赤メッシュ入り黒髪の悪魔女、一人は小学生みたいに小さいツインテール女、一人はグラサンかけた赤髪チェケラ女、一人はASETの水色髪女。
 
 「1対4ってどういうことだよ。普通3対3だろ?」
 「なんかネルをボコボコにしたい気分なのよ」

 ボコボコにしたいって……ああ、さっき負けて悔しかったからか。

 「ご安心を、兄様。私は兄様のチームですよ」

 そう言ってきたのはメミ。
 いつの間にか俺の隣に立っていた。
 なんか幸せそうな顔を浮かべるけど、まぁ味方になってくれるのならいっか。
 
 「なっ――!! メミがそっちにつくなんてずるい!」

 いや、ずるくないだろ。
 そっちは4人で、こっちは1人だったんだぞ。
 1人ぐらい増えたって誤差みたいなものだろ。
 
 「うぅー! そっちにメミがつくというのなら、こっちも!」

 そう言って、リコリスは『召喚!』と叫ぶ。

 …………お? 
 ついに悪魔女が中二病をこじらせたか?

 しかし、何も起こらないということはなく、近くに紋章が浮かび上がり、光を放つ。

 「来なさい! 出番よ!」

 悪魔女の掛け声、光とともに、現れたのは1人の金髪男。

 「了解しやした! ボス!」
 
 いつか俺をいじめてきたメミの同級生ハンスだった。

 「おい、本当にハンスじゃねーか」

 もしかしてハンスもここに呼んだのか?
 椅子は人数分しかなかったが、遠距離からでもこの仮想世界に入れるようになっているのか? 
 と思っていると、アスカが横に首を振った。

 「違うわ。あれはあたしが作ったバーチャルハンスよ」
 「そう! 訳してバチャハン!」

 悪魔女は自分で作ったわけでもないのに、得意げに言う。
 そして、バチャハンに四つ這いにさせて、悪魔女は彼の上に座った。

 …………それにしてもよくできてるな。
 外見だけ見れば、俺の大嫌いなハンスだ。
 さらに動くとなったら、本物と変わりないぞ。

 「いい子ね! バチャハン!」
 「ワン!」
 「今回の敵は、あそこにいるいやらしい目で見てくるネルと、憎たらしいぐらい可愛いメミよ! 分かった!?」
 「ワンっ!」
 
 まぁリアルなハンスさんは「ワン!」なんて言わないだろう。
 あ……でも、リコリスが命じれば鳴くか?
 ――――いや、そんなことよりも。

 「アスカ。お前、俺の心読んだな」

 そう言うと、アスカの口角が少し上に上がった。

 「だって、あたし管理者だもの。みんなが何考えてるか、嫌でも分かるわ」

 全部心を読まれるじゃねーか。
 おい。練習にならないぞ。

 「そんなことはないわよ。あたしはラクリアが婚約者問題で困っていることも分かるし……」
 「えっ」
 「リコリスがお兄さんにちょっと会いたくなってたり、少しホームシックになっていたりするのも分かるし……」
 「ちょっと!」
 「メミは……ああ……えっと……いろいろ分かるけど……」
 「…………」
 「でも、安心してちょーだい。練習の時にはシャットアウトするから」
 
 そう言って、アスカは満面の笑みを見せる。
 その笑みが逆に不安だが……不公平なことをすれば、練習にもならなくなるし、大丈夫か。

 …………てか、一体メミは何を考えてるんだ。
 アスカが言わないって逆に怖いんですけど。
 あと、リコリスはホームシックになってんのかよ。最近裏世界に返ったばっかりじゃねーか。

 「じゃあ、準備もできたところだし、バトルを始めましょうか」
 「そうだな」

 そうして、準備ができると、俺たちはルールを再確認した。

 バトルフィールドはこの世界「世界08」全て。
 スタート地点はだだっ広い草原だったが、離れたところには街もあるため、そこで戦うのもあり。
 魔法は何を使用しても可。もちろん、魔法同時展開も可。

 そして、バトル終了は相手が戦闘不能になるまで。
 判定はアスカが事前に設定しているバーチャル先生がしてくれる。
 ここら辺は本番のチーム戦と変わらないな。

 ルールをおさらいした後、リコリスたちがいる赤チーム、俺とメミの青チームに分かれ、それぞれ離れた場所に移動。

 『試合開始』

 アナウンスが聞こえると、それぞれ動き始めた。



 ★★★★★★★★

 

 『バトル終了。青チームの勝利』
 「う゛へ……」

 うめき声を上げながら、横たわる悪魔女。
 こいつを最後のターゲットしていたけど、あっという間だったな。

 「さすがです、兄様」

 へばっている悪魔女を見下ろしていると、隣に来たメミは隣で拍手をしてくれた。
 レベルが調整していることを忘れて、危うく負けそうになったこともあった。
 だが、メミさんがなんだかんだ上手いことフォローしてくれたから、なんとかなった。

 マジでメミが味方でよかったぜ……。

 一時待っていると、街でダウンさせたアスカとリナ、海で戦ったラクリアが草原に戻ってきた。
 先ほどまで制服がボロボロになっていたが、アスカの設定ですぐに元通り。
 便利な機能だ。

 そのままチームを組みなおして、2回戦に入ろうとした。
 が、わがまま悪魔女が次は違う世界で戦いたいというので、世界チェンジをすることに。

 俺は草原や海を眺めてアスカさんの次の調整を待っていると、ラクリアが俺の所に寄ってきた。

 「ネルくーん、ネルくーん」
 「ん? どうした?」
 「今回、私たちと戦ってみてどうだったYO?」
 「んあー……そうだな。やっぱり敵するとヤバいと思ったのは、お前とリナだな」

 アスカは基本後方支援を得意しているから、防御は強い。
 だが、攻撃が弱く、一番早く狩れる。

 ASETの人間、リナは基本に忠実で動きは読みやすいが、隙がなく完璧。
 逆に、ラクリアの動きは荒々しいが、その分先の行動が読みずらい。さらに、チェケラ族お得意の複数魔法同時展開も容赦なくしてくる。
 いつものようにレベル優位状態ではないため、この2人にはかなり苦戦した。

 あとはリコリスだが……あいつの動きは読めるし、隙だらけだから、やりやすかった。
 戦い慣れていない連中は、ちょっとだけ苦戦しそうな相手というところ。
 
 「だから……これからは悪魔女には頑張ってもらわねーとな」
 「なるほどー」
 「お前はどうだったんだ? もっとこうしたらいいと思うことあったか?」
 「そうだねー。ネルくんは――」

 そうして、ラクリアと反省会をしていると、「ピンポンパンポーン」とチャイムが聞こえてきた。
 その後、聞こえてきたのは。

 『ネル・モナーさん、至急職員室に来てください』

 という担任のメダイ先生の声。
 メダイ先生の声は少しだけ焦りと戸惑いがあった。

 「バーチャル世界なのに、リアルの校内放送も聞こえてくるんだな」

 そう呟くと、親切にもアスカが答えてくれた。

 「そういう風に設定しているのよ」
 「なるほど」

 先生の呼び出しとは……レベルの件かな……。
 嫌だな……めんどくさいから行きたくないな……。

 俺の呼び出しの連絡の後、先生は「あと、ずる休みしている4人はちゃんと教室に戻ってください」とも言ってきた。
 横を見ると、メミは「兄様と一緒じゃないと戻りません」と首を振っていた。
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