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第3章
第45話 バーチャル世界
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鬼畜パリス先生の補習を避けるため、俺たちはチーム戦に向けて練習することにした。
1階の研究室にいた俺、メミ、ラクリア、アスカは、リナとリコリスが向かったであろう実験室へと移動。
案の定、2人はあの無機質な部屋で魔法戦を繰り広げていた。
意外にもリナは悪魔女を拘束しておらず、2人で魔法を打ちあっている。
本当に遊んでやがる……どっちがおもちゃになっているのやら。
そんな2人を止め、練習の話をした。
「ええ! いいわよ!」
予想通り、悪魔女は目をキラキラさせる。
どうやら俺をボコボコにしたいらしい。
一方、リナはどちらでもという感じだった。
だが、リナが「……リコリスがいるから、練習は仕方ないな」とかぼやいたので、またケンカが始まりそうになった。
リナ、リコリスをおちょくるのにはまっているのか、それともレベルのことを言われてイラッときたのか。
どちらでもいいが、いちいちリコリスをおちょくらないでほしい。
めんどくさいから。
そうして、2人にも説明が終わると、練習を始めることに。
無抵抗な状態で良く分からないビームを受けたあの実験室は、嫌な思い出が残っている場所。
しかし、他に場所もなく、訓練場でやれば、朝のように騒ぎになることもあるため、実験室で練習をしようとした。
だが。
「ネルはレベルがバグってるから、練習にならないと思うの!」
と悪魔女が言い出したので、急遽ヴァーチャル世界での練習に変更。
精神だけが移動するヴァーチャル世界――アスカが以前からヴァーチャル世界で対魔王戦ができる魔導士育成のために開発していたらしく、そこでならレベル調整をしてのバトルが可能ならしい。
小学生のように小さいとはいえ、さすが才女。
1人で実験室を作り、ヴァーチャル世界まで作り上げてしまうとは……。
そうして、悪魔女のわがままで、俺のレベルを調整してもらい、そこで練習することになった。
管理室で大丈夫かと思ったが、「実験室にいて」と言われたので、そのまま待機。
一時して、ウィーンという機械音が聞こえてきた。
見ると、床に穴が開き、俺たちの前に5つのソファが出現。
「兄様! 見てください! 床から椅子が出てきました!」
こういうのが珍しいのか、メミが楽しそうに話してきた。
俺には実験室にある椅子って嫌な思い出しかないんだよな…………。
正直、バズーカ砲を持ったアスカが現れないか不安になる。
だが、以前のような拘束椅子ではなく、フカフカのソファチェア。快適そうに見えた。
また、ソファの頭部あたりにはヘルメットのようなものがあった。
そんな快適そうだが奇妙なソファをじっと観察していると。
『そこに座って、ヘルメットをしてくれる?』
というアスカの指示が聞こえてきた。
管理室から言っているみたいだな。
俺は指示通り、ソファに座ろうとする。
だが、あることが気になり、足を止めた。
1、2、3、4、5……1つ足りない。
今日の練習にはメミも参加する。
いつもの5人ならこの数で足りるが、今回はソファが6つ分いるはずだ。
見上げると、せかせかと動くアスカが見えた。
「なぁ、アスカ」
『何? なんか不備でもあった?』
「お前はどこに座るんだ? 1つ椅子足りねーんだけど」
『ああ……あたしは管理者だから、別の椅子に座るわ。大丈夫、後で行くから』
まぁ、それならいっか。
見ると、他の4人はすでに座っており、俺もならってヘルメットを着用。
そして、フカフカのソファに腰を掛けた。
「こういうの初めてなので、緊張します……」
じっと待っていると、隣からメミの不安そうな声が聞こえてきた。
…………俺もだ。
「大丈夫よ、メミ。私はこの前やって死ななかったから大丈夫! 不安なことなんてないわ!」
そう自慢げに言ってきたのは悪魔女リコリス。
お前、体験済みだったのかよ……。
『リコリスとラクリアは一度してるから大丈夫だと思ったけど、ネルとメミには説明してなかったわね』
そうして、俺たちはアスカから以下の説明を受けた。
認証が初めにあること。
アカウントはアスカがすでに作っており、こちらでアカウント等は作る必要ないこと。
認証が終わると、アスカが指定した世界に勝手に移動すること。
服はちゃんと着て居るように設定しているため、安心すること。
もし失敗したら、脳が吹っ飛ぶ可能性があること。
「え? 脳が吹っ飛ぶ?」
『じゃあ、目を閉じてちょうだい』
「え、つぶれません! つぶれません!」
無理無理。脳が吹っ飛ぶとか怖すぎるだろ。
『いいからつぶる!』
「え……でも……」
『つぶんなさい!』
「ネルのチキンね! さっさとつぶんなさいよ!」
迷いに迷ったが、リコリスにチキンと言われてムカついたので、俺は仕方なく指示通り目を閉じた。
『つぶったわね! いくわよ!』
アスカの掛け声とともに、キュイーンと機械音が聞こえてくる。
えっ……この音、こわ。
本当に大丈夫か?
脳、吹っ飛ばないか?
心配していたが、一時して。
『目を開けてください』
どこかアスカの声にも似ている機械的な声が聞こえてきた。
どうしたらいいのか分からないので、とりあえず俺は目を開ける。
「おぉ……」
すると、見えたのは白、白、白。
どこを見ても白ばかり。俺がいたのは白の世界だった。
おぉ……これがバーチャル世界か。
不思議なことに、自分の体は無重力状態のように浮いている。
服もいつものゼルコバ学園の制服を着ていた。
アスカは仮想空間だと話していたが、身体の感覚はいつも同じだ。すげー。
と、初めての世界に感動していると、目の前に文字が出現。
『あなたのお名前をおっしゃってください』
見たところキーボードらしいものも書き込むようなものもない。
話すだけでいいみたいだな。
「ネル・モナーです」
『現在ネルモナーデスさんは登録されていません、もう一度お名前をおっしゃってください』
ああ……そういうこと。
うーん。名前ぐらい普通に打ちたい。
「えっとネル・モナーです……あ、間違えた」
『エットネルモナーデスアマチガエタさんは登録されていません。もう一度お名前をおっしゃってください』
あー! めんどくさ!
「ネル・モナー!」
『確認します。ネル・モナーさんですね?』
「はい! そうです!」
『認証が完了いたしました。「世界08」に移動します』
これで認証が終わったのか?
すると、世界が光り始め、俺は思わず目をつぶった。
そして、一時すると。
「あ! ネルもきた!」
「兄様!」
リコリスやメミの声が聞こえてきた。
もうみんな、着いているみたいだな。
俺はゆっくりと目を開ける。
すると、そこには。
「おおぉ……」
目の前には草原が広がっていた。
遠くには海が見え、上には快晴の空が広がっている。
…………綺麗な場所だな。
「ネル、ログインで手こずってたわね」
景色に見とれていると、いつの間にか隣にアスカがいた。
彼女は認証中の俺がよほど面白かったのか、ふふふと笑みをこぼしていた。
「…………見てたのか」
「まぁね。あたし、管理者だから」
へぇー。
管理者様ならなんでもありですか……まぁあのぐらい見られてもいいけどさ。
見上げると、雲一つない空。
風も吹いているのか、俺の前髪が揺れる。
それにしても、本当にリアルのようだ。
太陽のぬくもりを感じるし、風も感じる。
このまま寝っ転がって日向ぼっこでもしたいところだが……。
すると、近くの岩の上に座っていたリコリスがふんっと立ち上がる。そして、仁王立ちをして。
「さぁ! ネル、勝負よ!」
と言ってきた。
「どうせバトルは私が勝つでしょうけど、あんたの魔法制御をどうにかしないから、ちょっとだけ手加減してあげるわ!」
…………悪魔女、勝つ気満々だけど、レベル調整しても、多分俺が勝つぞ。
自分がお荷物ってことを自覚してほしいものだが。
「さぁ! かかってきなさい!」
…………よし、このポンコツのために練習するか。
あのパリスの補習は受けたくないしな。
そうして、俺たちは2学期チーム戦に向けて練習を開始した。
1階の研究室にいた俺、メミ、ラクリア、アスカは、リナとリコリスが向かったであろう実験室へと移動。
案の定、2人はあの無機質な部屋で魔法戦を繰り広げていた。
意外にもリナは悪魔女を拘束しておらず、2人で魔法を打ちあっている。
本当に遊んでやがる……どっちがおもちゃになっているのやら。
そんな2人を止め、練習の話をした。
「ええ! いいわよ!」
予想通り、悪魔女は目をキラキラさせる。
どうやら俺をボコボコにしたいらしい。
一方、リナはどちらでもという感じだった。
だが、リナが「……リコリスがいるから、練習は仕方ないな」とかぼやいたので、またケンカが始まりそうになった。
リナ、リコリスをおちょくるのにはまっているのか、それともレベルのことを言われてイラッときたのか。
どちらでもいいが、いちいちリコリスをおちょくらないでほしい。
めんどくさいから。
そうして、2人にも説明が終わると、練習を始めることに。
無抵抗な状態で良く分からないビームを受けたあの実験室は、嫌な思い出が残っている場所。
しかし、他に場所もなく、訓練場でやれば、朝のように騒ぎになることもあるため、実験室で練習をしようとした。
だが。
「ネルはレベルがバグってるから、練習にならないと思うの!」
と悪魔女が言い出したので、急遽ヴァーチャル世界での練習に変更。
精神だけが移動するヴァーチャル世界――アスカが以前からヴァーチャル世界で対魔王戦ができる魔導士育成のために開発していたらしく、そこでならレベル調整をしてのバトルが可能ならしい。
小学生のように小さいとはいえ、さすが才女。
1人で実験室を作り、ヴァーチャル世界まで作り上げてしまうとは……。
そうして、悪魔女のわがままで、俺のレベルを調整してもらい、そこで練習することになった。
管理室で大丈夫かと思ったが、「実験室にいて」と言われたので、そのまま待機。
一時して、ウィーンという機械音が聞こえてきた。
見ると、床に穴が開き、俺たちの前に5つのソファが出現。
「兄様! 見てください! 床から椅子が出てきました!」
こういうのが珍しいのか、メミが楽しそうに話してきた。
俺には実験室にある椅子って嫌な思い出しかないんだよな…………。
正直、バズーカ砲を持ったアスカが現れないか不安になる。
だが、以前のような拘束椅子ではなく、フカフカのソファチェア。快適そうに見えた。
また、ソファの頭部あたりにはヘルメットのようなものがあった。
そんな快適そうだが奇妙なソファをじっと観察していると。
『そこに座って、ヘルメットをしてくれる?』
というアスカの指示が聞こえてきた。
管理室から言っているみたいだな。
俺は指示通り、ソファに座ろうとする。
だが、あることが気になり、足を止めた。
1、2、3、4、5……1つ足りない。
今日の練習にはメミも参加する。
いつもの5人ならこの数で足りるが、今回はソファが6つ分いるはずだ。
見上げると、せかせかと動くアスカが見えた。
「なぁ、アスカ」
『何? なんか不備でもあった?』
「お前はどこに座るんだ? 1つ椅子足りねーんだけど」
『ああ……あたしは管理者だから、別の椅子に座るわ。大丈夫、後で行くから』
まぁ、それならいっか。
見ると、他の4人はすでに座っており、俺もならってヘルメットを着用。
そして、フカフカのソファに腰を掛けた。
「こういうの初めてなので、緊張します……」
じっと待っていると、隣からメミの不安そうな声が聞こえてきた。
…………俺もだ。
「大丈夫よ、メミ。私はこの前やって死ななかったから大丈夫! 不安なことなんてないわ!」
そう自慢げに言ってきたのは悪魔女リコリス。
お前、体験済みだったのかよ……。
『リコリスとラクリアは一度してるから大丈夫だと思ったけど、ネルとメミには説明してなかったわね』
そうして、俺たちはアスカから以下の説明を受けた。
認証が初めにあること。
アカウントはアスカがすでに作っており、こちらでアカウント等は作る必要ないこと。
認証が終わると、アスカが指定した世界に勝手に移動すること。
服はちゃんと着て居るように設定しているため、安心すること。
もし失敗したら、脳が吹っ飛ぶ可能性があること。
「え? 脳が吹っ飛ぶ?」
『じゃあ、目を閉じてちょうだい』
「え、つぶれません! つぶれません!」
無理無理。脳が吹っ飛ぶとか怖すぎるだろ。
『いいからつぶる!』
「え……でも……」
『つぶんなさい!』
「ネルのチキンね! さっさとつぶんなさいよ!」
迷いに迷ったが、リコリスにチキンと言われてムカついたので、俺は仕方なく指示通り目を閉じた。
『つぶったわね! いくわよ!』
アスカの掛け声とともに、キュイーンと機械音が聞こえてくる。
えっ……この音、こわ。
本当に大丈夫か?
脳、吹っ飛ばないか?
心配していたが、一時して。
『目を開けてください』
どこかアスカの声にも似ている機械的な声が聞こえてきた。
どうしたらいいのか分からないので、とりあえず俺は目を開ける。
「おぉ……」
すると、見えたのは白、白、白。
どこを見ても白ばかり。俺がいたのは白の世界だった。
おぉ……これがバーチャル世界か。
不思議なことに、自分の体は無重力状態のように浮いている。
服もいつものゼルコバ学園の制服を着ていた。
アスカは仮想空間だと話していたが、身体の感覚はいつも同じだ。すげー。
と、初めての世界に感動していると、目の前に文字が出現。
『あなたのお名前をおっしゃってください』
見たところキーボードらしいものも書き込むようなものもない。
話すだけでいいみたいだな。
「ネル・モナーです」
『現在ネルモナーデスさんは登録されていません、もう一度お名前をおっしゃってください』
ああ……そういうこと。
うーん。名前ぐらい普通に打ちたい。
「えっとネル・モナーです……あ、間違えた」
『エットネルモナーデスアマチガエタさんは登録されていません。もう一度お名前をおっしゃってください』
あー! めんどくさ!
「ネル・モナー!」
『確認します。ネル・モナーさんですね?』
「はい! そうです!」
『認証が完了いたしました。「世界08」に移動します』
これで認証が終わったのか?
すると、世界が光り始め、俺は思わず目をつぶった。
そして、一時すると。
「あ! ネルもきた!」
「兄様!」
リコリスやメミの声が聞こえてきた。
もうみんな、着いているみたいだな。
俺はゆっくりと目を開ける。
すると、そこには。
「おおぉ……」
目の前には草原が広がっていた。
遠くには海が見え、上には快晴の空が広がっている。
…………綺麗な場所だな。
「ネル、ログインで手こずってたわね」
景色に見とれていると、いつの間にか隣にアスカがいた。
彼女は認証中の俺がよほど面白かったのか、ふふふと笑みをこぼしていた。
「…………見てたのか」
「まぁね。あたし、管理者だから」
へぇー。
管理者様ならなんでもありですか……まぁあのぐらい見られてもいいけどさ。
見上げると、雲一つない空。
風も吹いているのか、俺の前髪が揺れる。
それにしても、本当にリアルのようだ。
太陽のぬくもりを感じるし、風も感じる。
このまま寝っ転がって日向ぼっこでもしたいところだが……。
すると、近くの岩の上に座っていたリコリスがふんっと立ち上がる。そして、仁王立ちをして。
「さぁ! ネル、勝負よ!」
と言ってきた。
「どうせバトルは私が勝つでしょうけど、あんたの魔法制御をどうにかしないから、ちょっとだけ手加減してあげるわ!」
…………悪魔女、勝つ気満々だけど、レベル調整しても、多分俺が勝つぞ。
自分がお荷物ってことを自覚してほしいものだが。
「さぁ! かかってきなさい!」
…………よし、このポンコツのために練習するか。
あのパリスの補習は受けたくないしな。
そうして、俺たちは2学期チーム戦に向けて練習を開始した。
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*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
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