はめられて強制退学をくらった俺 ~迷い込んだ(地獄の)裏世界で魔物を倒しまくったら、表世界で最強魔導士になっていました~

せんぽー

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第3章

第43話 アルカイドの勇者

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 2年ぶりの更新です。ゆっくり更新していこうかなと思います。よろしくお願いいたします。

 ★★★★★★★★



 レンの1件があって、メミと仲直りをした俺ネル・モナー。
 あれから、メミと一緒に過ごす時間がグッと増えた。
 昼休みは一緒に食べたり、休日にはお茶をしたり、ショッピングに行ったり。
 メミはとても楽しそうで、リコリスには「あんたたち、やっぱり兄妹ね」と言われた。
 本当に仲直りができてよかったと思う。

 そんなメミと俺は違うクラスだが、一緒に学園に通うようになった。
 そして、今日も彼女と約束をしていた。
 でも、ちょっと遅れてしまったな。
 メミはもう寮前で待っているかもな……。

 部屋を出ると、廊下にはいつもより人がいて、全員が俺を見ているような気がした。
 変な感じだな……。
 メミを待たせているため、急いで寮を出ると、男子寮の前には多くの人が集まっていた。

 一体どうしたんだ? 
 もしや誰かが公開告白でもしているのか?

 その集団の端には、いたのはアゼリアの髪飾りをした紺色髪の少女。
 彼女は俺の姿が見つけると、ぱぁと顔を明るくさせる。
 そして、紺色髪を揺らしながら、カバン片手にこっちに走ってきた。

 「お兄様! おはようございます!」
 「おはよう、メミ」

 メミと挨拶を交わした瞬間、バッと周囲の視線が俺に集まった。
 え? 何事?
 なんで俺、注目浴びてるんだ? 
 何かしたか?

 メミの一件は1ヶ月ほど前の話だ。
 学園のほとんどが俺たちが仲直りしていることは知っているはず。
 今更注目浴びるようなことでもないのだが。

 すると、集団の中にいた茶髪ボブの女の子が俺の所に駆け寄ってきた。
 メミが立ちふさがるように俺の前に立ち、

 「お兄様に何か用ですか?」

 と強い口調で言った。
 メミ、警戒してるな…………。
 俺には過去にしたことがあるためいい噂はなく、学生の中には俺に直接
 そのたびにメミが怒って、相手をボコボコにしているんだけども。
 
 だが、近づいてきた女の子は武器などはもちろん持ってはいない。悪意なさそうな感じがした。

 「メミ、大丈夫だぞ」
 「すみません……お兄様に害をなす輩かと思いまして……」

 メミはぺこりと頭を下げると、俺の隣に下がった。
 一方、女の子は目を輝かせて、さらに近づいてくる。

 「あのネル・モナーさん。あのよければ……サインください!」

 そう言って、女の子は俺に一枚の色紙とサインペンを差し出した。
 え? サインだと……?
 
 「サインって、俺のがほしいの?」
 「はい! ネル・モナーさんのが欲しいです!」

 元気よく答える女の子。
 その子の眼差しは嘘偽りが一切ないように思えた。
 彼女は本気で俺のサインが欲しいのか……。
 別に有名人とかじゃないけど、今までろくな友人がいなかった俺からすれば嬉しいこと。

 「俺のサインでいいのなら……」

 と色紙を受け取り、書こうとした瞬間。

 「ネル様! 私にも!」
 「俺にもください!」
 「ネル様ぁ~! 愛してますわ! サインくださいませ~!」

 と一斉に人が詰め寄ってきた。
 その全員が色紙やTシャツとかを片手に、もう一方の手にサインペンを持っていた。

 本当になんだなんだ?
 これ全員、俺のサインが欲しいのか?
 うそだろ? いつの間に俺にファンが!?

 サインを書こうとしたが、もみくちゃにされて、それどころではなく。

 「お兄様、こちらへ!」

 メミに手首を掴まれ、人込みを抜け出す。
 そして、人目の少ない場所に移動した。

 「あれは何事なんだ? 急にサインなんか求めらたけど……俺、何かした?」
 「さぁ……私にも分かりません……ですが、このままだと遅刻してしまいます」

 その瞬間、「ネル様~!」という複数の声が響く。
 1人ではなく、多くの人間が俺を探してるようだった。

 「気配を消していくか」
 「そうしましょう」

 隠密系魔法を使い、俺とメミは静かに教室に向かう。
 何人かの生徒とすれ違ったが、幸い見つからず、そのまま教室に向かえると思った。
 だが。
 
 「へい! いらっしゃっい! いらっしゃっい!」

 校舎に向かう途中、とっても聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 「ブロマイドは1枚1000円! こっちのタペストリーは7000円! さあさあ買った買った!」

 声がした方を見ると、赤メッシュが入った黒髪ロングの女がいた。
 赤い法被を着た彼女は道にブルーシートを広げて、その上で写真やらTシャツやらを売っている。
 そして、その商品すべてに俺の写真が載っていた。

 「あとこの場限定品! ネルの寝顔写真を販売しまーす!」
 「ちょっと待ったぁ――!!」

 俺はツッコミを抑えきれず、ダッシュで彼女の持っていた写真を奪い取る。
 赤い法被姿の悪魔女リコリス。
 彼女は俺から写真を奪おうとするが、さっさっと避けた。

 「ネル! 何するの! 返して!」
 「『返して』じゃない! お前は何勝手に俺のグッズを売ってるんだよ!」

 昨日まで『暇だし、リナとダンジョンに行こうかなー』とか言っていたやつが、いつの間にこんなグッズ作って、販売してんだよ?
 すると、リコリスは肩をすくめた。

 「いやぁ~、あんた有名人になったじゃない? 今のうちにグッズ売り始めて、儲けようと思って……あ、このTシャツにサインくれる? 価値が上がると思うから」

 彼女はサインペンとともに、Tシャツを手渡してきた。
 ……この悪魔女、許可なしにちゃっかり俺で稼ごうとしてるぞ。

 「兄様? 早くいかないとまた追っ手が来ます……って、リコリスさん」
 「おはよー、メミ。どう? メミも何か1つ買っていかない? これとかどう? ネルの等身大抱き枕。結構売れてるわよ」
 「1つと言わず、全部ください。払いますんで」
 「おい、メミ」
 「……やっぱり止めておきます」

 メミはリコリスの所に寄って、「リコリスさん、あとでそれくださいますか。2倍のお値段で買いますので」って話してるのが聞こえたが……今のは聞かなかったことにしよう……。

 「ていうか、俺が有名人って何のことだ?」

 そう問うと、リコリスは目をぱちぱちさせ、きょとんとしていた。

 「え? あんた、知らないの?」
 「ああ、何も知らない。寮出たら、急にサインを求められた」
 「へぇ~そうなの。サインを求められるなんて、人気者じゃない。でも、あんたが知らないなんて意外。メミから聞いてそうだと思ったのに」

 リコリスはメミの方を見る。しかし、メミは横に首を振った。

 「私は何も知りません。やはり新聞に兄様のことが載せられたんですか?」
 「まぁ、見れば分かるわ。はい」

 そうして、リコリスが渡してきた新聞。
 片手で持てるサイズに小さく折りたたまれたそれは、一見普通のものに見えた。
 俺は恐る恐る新聞を開く。

 嘘だろ…………。

 その新聞の表紙には『ゼルコバ学園にフォーセブン越えレベルの生徒現る! アルカイドの勇者か!?』という文字とともに、俺の写真が大きく載せられていた。
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