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第2章
第35話 取り戻していた記憶
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俺は両親からレンの記憶を奪われた。
だが。
同時に取り戻したものがある。
それはかつて大切だと思っていた記憶、思い出。
――――――――実親との記憶。
ほんの少ししかないし、ぼやけたものもあるけれど、大切な記憶には違いなかった。
レンの記憶がボロボロと崩れるように消えていく。
それとともに、実親との記憶が一気に俺の脳内で再生された。
★★★★★★★★
俺の実親は勇者。それはものごころがついた頃から分かっていて、みんなを守るために魔王を倒す使命があることも小さいながらに理解をしていた。
下の世代の勇者がそれなり戦えるようになってからは、両親は前線から退いていた。だが、たまに援軍として向かうこともなり、そのたびに俺は家に1人残された。
――――――さびしい。パパ、ママ、家にいてよ。
と言ったところでパパたちを困らせるだけ。
自分の思いをぐっとこらえ、執事の手を握り、いつも両親を見送っていた。
帰ってくるのだから、大人しく待っておかないと。
俺の5歳の誕生日――――――の1ヶ月前。
その日もパパたちは魔王軍と戦うため、出かけることになった。
1週間以上かかるかもしれないのか…………。
現在前線では魔王軍が圧倒。下の世代の勇者たちが総出で対抗しているが対応しきれず、両親の世代の勇者全員が向かわないといけない状況になっていた。
「ネル、いい子で待っていてね」
「パパ、頑張って魔王軍をぶっ飛ばしてくるからな!
「うん! 俺も勉強して頑張って、パパみたいになるから!」
パパとママは俺にハグ、頬にキスをする。そして、ゆっくり離れ、次第に遠ざかっていく。
「じゃあ、すぐに帰ってくるからね」
こちらを振りかえり、手を振るママ。泣きなそうになりながらも、俺も振り返す。
その日が最後の――――――――パパとママと言葉を交わせた日だった。
そう言って出た2人は、いくら待っても待っても永遠に帰ってこなくなった。
★★★★★★★★
「ア゛アァァァァァ――――――――!!!!」
どうしようもない気持ち。
布団は破れ、枕の中身はむき出し、部屋中に破れた本たちが散らばっている。
全部俺がした。どうしようもない気持ちを晴らしたくて。
でも。
いくら叫んでも暴れても、晴れることはなかった。
両親が魔王軍にやられたという話を聞いてから、俺はおかしくなっていた。ショックとともに、我慢していた気持ちが爆発。
俺が2人を止めていたら、死ななかった! 死ぬことはなかった。
勇者は国民を守るのが使命?
なら、パパたちが勇者じゃなかったらよかった!!
それだったら、俺も寂しい気持ちなんかにならなかったのに!
「ア゛アァァァァァ――――――――!!!!」
「ネル様…………」
部屋の隅にいる執事のスチュワート。彼は心配そうに声を掛けてくる。
だけれど、俺にはどうでもよかった。
「ア゛アァァァァァ――――――――!!!!」
――――――――本当にパパとママが勇者じゃなかったらよかったのに。
そうして、俺は何度も自殺をしようとした。
隙あらば飛び降りようとしていたので、2階には上がらせてもらえなくなった。さらに、俺に監視が一日中つくようになった。
シャーマン家は俺1人。俺1人いなくなったって大したことないだろう。
だから、死なせてくれよ。
そして、その日も死のうと監視の目を探っていると、扉がバンっと音を立て開く。明かりを灯さず、かといってカーテンも開けないようにしていた俺の部屋に突如光が入ってくる。
「ネルくん!」「ネル!」
そこに立っていたのは、モナー家のおじさんと友達のメミ。
「おじさん……………………僕になんの用? 僕、もう死ぬんだ」
「なんでそんなことを言うんだい?」
「俺に将来があっても、パパたちを一緒に過ごせる未来はない! 俺はずっと1人なんだよ!」
「そんなことない! 私もパパもいるの!」
「メミは俺の家族じゃない!」
メミは痛いところを突かれたように顔をしかめた。
「っ…………そうだけれど!」
俺はすでに死人化している瞳を彼女に向け、冷たく「それでなに?」と呟く。
これで帰ってくれる。何も言えまい。
しかし、2人は動こうとしない。
もしかして、俺を殺してくれるの? 楽にさせてくれるの?
「…………なら、家族になるか?」
「え?」
ようやくモナーのおじさんと目を合わせる。おじさんは真っすぐな瞳を向け、本気だと分かった。
「家族って…………どうやって…………」
「よし! お前は今日から俺の息子だ!」
そうして、俺はモナー家の養子となった。
1人じゃなくなった俺。
生まれた頃から仲良くしてきたメミもいて、一時は暴走することもなく、安静にしていられた。
モナー家に引っ越して1週間後。
俺の手の甲に突如北斗七星のマークが現れた。
モナーのおじさんから聞いた話だと、このマークは勇者である者に現れるらしく、パパたちの腕にあったのを目にしたことがあった。
俺も勇者なのか…………。
勇者である俺も両親と同じ道を辿るのだろう。
なら生きている必要はあるのか?
――――――――いや、ないな。
結局、この世界に俺のパパとママがいないのは変わりない。
そうして、俺はまた自殺行為を繰り返した。
魔法を封じられた俺は物理的な方法で死のうとした。
カッター、ナイフ、訓練場に置かれいる真剣で体を切る、毒死、入水とか、ともかくなんでもいいから自殺をしようとした。
最終的には窓ガラスや花瓶をわざと割って、その破片で自分の首を切ろうとしていた。
全て止められてしまったのだけれど。
それで……………………さすがにと思ったのだろうね。
親父たちは俺の実親との記憶、他の一部の記憶を一時消去。苦渋の決断だったようだ。
それがレンと出会う前に消されていた記憶だった。
だが。
同時に取り戻したものがある。
それはかつて大切だと思っていた記憶、思い出。
――――――――実親との記憶。
ほんの少ししかないし、ぼやけたものもあるけれど、大切な記憶には違いなかった。
レンの記憶がボロボロと崩れるように消えていく。
それとともに、実親との記憶が一気に俺の脳内で再生された。
★★★★★★★★
俺の実親は勇者。それはものごころがついた頃から分かっていて、みんなを守るために魔王を倒す使命があることも小さいながらに理解をしていた。
下の世代の勇者がそれなり戦えるようになってからは、両親は前線から退いていた。だが、たまに援軍として向かうこともなり、そのたびに俺は家に1人残された。
――――――さびしい。パパ、ママ、家にいてよ。
と言ったところでパパたちを困らせるだけ。
自分の思いをぐっとこらえ、執事の手を握り、いつも両親を見送っていた。
帰ってくるのだから、大人しく待っておかないと。
俺の5歳の誕生日――――――の1ヶ月前。
その日もパパたちは魔王軍と戦うため、出かけることになった。
1週間以上かかるかもしれないのか…………。
現在前線では魔王軍が圧倒。下の世代の勇者たちが総出で対抗しているが対応しきれず、両親の世代の勇者全員が向かわないといけない状況になっていた。
「ネル、いい子で待っていてね」
「パパ、頑張って魔王軍をぶっ飛ばしてくるからな!
「うん! 俺も勉強して頑張って、パパみたいになるから!」
パパとママは俺にハグ、頬にキスをする。そして、ゆっくり離れ、次第に遠ざかっていく。
「じゃあ、すぐに帰ってくるからね」
こちらを振りかえり、手を振るママ。泣きなそうになりながらも、俺も振り返す。
その日が最後の――――――――パパとママと言葉を交わせた日だった。
そう言って出た2人は、いくら待っても待っても永遠に帰ってこなくなった。
★★★★★★★★
「ア゛アァァァァァ――――――――!!!!」
どうしようもない気持ち。
布団は破れ、枕の中身はむき出し、部屋中に破れた本たちが散らばっている。
全部俺がした。どうしようもない気持ちを晴らしたくて。
でも。
いくら叫んでも暴れても、晴れることはなかった。
両親が魔王軍にやられたという話を聞いてから、俺はおかしくなっていた。ショックとともに、我慢していた気持ちが爆発。
俺が2人を止めていたら、死ななかった! 死ぬことはなかった。
勇者は国民を守るのが使命?
なら、パパたちが勇者じゃなかったらよかった!!
それだったら、俺も寂しい気持ちなんかにならなかったのに!
「ア゛アァァァァァ――――――――!!!!」
「ネル様…………」
部屋の隅にいる執事のスチュワート。彼は心配そうに声を掛けてくる。
だけれど、俺にはどうでもよかった。
「ア゛アァァァァァ――――――――!!!!」
――――――――本当にパパとママが勇者じゃなかったらよかったのに。
そうして、俺は何度も自殺をしようとした。
隙あらば飛び降りようとしていたので、2階には上がらせてもらえなくなった。さらに、俺に監視が一日中つくようになった。
シャーマン家は俺1人。俺1人いなくなったって大したことないだろう。
だから、死なせてくれよ。
そして、その日も死のうと監視の目を探っていると、扉がバンっと音を立て開く。明かりを灯さず、かといってカーテンも開けないようにしていた俺の部屋に突如光が入ってくる。
「ネルくん!」「ネル!」
そこに立っていたのは、モナー家のおじさんと友達のメミ。
「おじさん……………………僕になんの用? 僕、もう死ぬんだ」
「なんでそんなことを言うんだい?」
「俺に将来があっても、パパたちを一緒に過ごせる未来はない! 俺はずっと1人なんだよ!」
「そんなことない! 私もパパもいるの!」
「メミは俺の家族じゃない!」
メミは痛いところを突かれたように顔をしかめた。
「っ…………そうだけれど!」
俺はすでに死人化している瞳を彼女に向け、冷たく「それでなに?」と呟く。
これで帰ってくれる。何も言えまい。
しかし、2人は動こうとしない。
もしかして、俺を殺してくれるの? 楽にさせてくれるの?
「…………なら、家族になるか?」
「え?」
ようやくモナーのおじさんと目を合わせる。おじさんは真っすぐな瞳を向け、本気だと分かった。
「家族って…………どうやって…………」
「よし! お前は今日から俺の息子だ!」
そうして、俺はモナー家の養子となった。
1人じゃなくなった俺。
生まれた頃から仲良くしてきたメミもいて、一時は暴走することもなく、安静にしていられた。
モナー家に引っ越して1週間後。
俺の手の甲に突如北斗七星のマークが現れた。
モナーのおじさんから聞いた話だと、このマークは勇者である者に現れるらしく、パパたちの腕にあったのを目にしたことがあった。
俺も勇者なのか…………。
勇者である俺も両親と同じ道を辿るのだろう。
なら生きている必要はあるのか?
――――――――いや、ないな。
結局、この世界に俺のパパとママがいないのは変わりない。
そうして、俺はまた自殺行為を繰り返した。
魔法を封じられた俺は物理的な方法で死のうとした。
カッター、ナイフ、訓練場に置かれいる真剣で体を切る、毒死、入水とか、ともかくなんでもいいから自殺をしようとした。
最終的には窓ガラスや花瓶をわざと割って、その破片で自分の首を切ろうとしていた。
全て止められてしまったのだけれど。
それで……………………さすがにと思ったのだろうね。
親父たちは俺の実親との記憶、他の一部の記憶を一時消去。苦渋の決断だったようだ。
それがレンと出会う前に消されていた記憶だった。
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