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第2章
第23話 5人
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メミと会い、昼食を終え、午後からの授業をいつも通り受けた俺は、
「………これ、全部片付けろって?」
アスカの研究室の物置で大量の魔道具と対面していた。
その物置は研究室や地下にある実験室ほどではないが、結構広さはあり、全面に魔道具たちが放って置かれていた。
どうやらアスカは失敗した時にできた魔道具、使わなくなった魔道具を全てこの物置にポイポイしていたようだ。
物置の入り口に立つアスカは俺の問いにコクリと頷く。
「そうよ。どうせあなた、放課後はいつも暇でしょう? 暇人なのでしょう?」
「暇といえば暇だが………面と向かって言われるとなんだかイラッとくるな」
「まぁ、とにかく暇なんでしょ? そこを片付けてくれる? その中に欲しいものがあったらあげるから」
そう言って、研究室の方へ戻っていくアスカ。
俺は入り口に背を向け、捨てられた魔道具たちと再び向き合った。
今日のアスカはリコリスとラクリアに実験を手伝ってもらうらしく、俺はのけ者扱い。
こんな雑用させられるなら、図書館で本を読み漁るなり、自室でゴロゴロしておけばよかった。来てしまったからにはするけどさ。
賃金が出るのなら掃除はいくらやってあげてもいいだろう。しかし、報酬が魔道具とかは…………ちょっと気がなえる。
俺、魔道具とかあまり必要としないし。
なんて考えながら、ガラクタ魔道具を整理し段ボールに突っ込んむ作業を20分くらい続けていると、ドアの方からは女子たちの声が耳に入ってきた。
「へぇ………これってあれね、女子のアレが溜まりに溜まった時に使う魔道具ね。保健室の先生に教えてもらったわ」
………どうしよう。なんかその魔道具、ちょっと気になる。
詳しく聞きたいので、手を動かしつつもアスカたちの話に耳を澄ませた。
「でも、アスカってこんなものも作っているの?」
「ええ。まぁ、それは頼まれて作ったもの。普段はそんなものは作らない」
「それで…………ちゃんと動くか確認したいけど、自分がするのは気が引けるから、私たちに頼んだってわけね」
え。ちょっと待って。ここで確認するって言った?
保健室の先生が教える、溜まった時に女子が使うものだろ?
つまり……あれだろ?
「ちょっと待っ」
「すみません、アスカさん」
物置から出て研究室の方に向かった瞬間、やつの声が聞こえてきた。
入り口に立っていたのは生徒会のイケメン、リク。やつは相変わらずの爽やかなスマイルを浮かべている。
「あ、リク。そういや取りに来るの今日だったわね。持ってくるから、ちょっと待ってて」
「はい、もちろんです」
リクとアスカのやり取りを目にした後、そのまま左の方へ首を向けた。
リコリスが手にしていたのは体長1mはある大きな白いウサギの人形。
…………あれっ?
「……ネルどうしたのよ? そんなところで立ち止まって」
一体何なんだ。
さっきまで話していたものはもしかしてあのウサギの人形だというのか?
「なぁ…………さっき動くかどうか確かめたいって言ってたやつだけど…………」
「あーそれ? それはリコリスが持ってるやつよ。女子が魔法攻撃でストレス発散する時に使う人形。ネルに確かめてもらおうと思ってたんだけど、リコリスに『ネル? ネルになんか確かめさせたら、跡形もなく壊れちゃうわよ』って言われたから、確認はリコリスに頼んだの」
…………。
「お前が気が引けるというのは…………」
「あの可愛いウサギさんに攻撃するのはちょっとと思ってね…………」
「…………」
ストレスを発散するためのものだったとか…………俺はある欲求を満たすために使うものかと思ったよ、このやろう。
1人で勘違いしてしまいちょっと残念に思った俺は近くにあった椅子に腰をかけた。そして、隣に立っている悪魔女に目を向けると、彼女は巨大ウサギ人形をぎゅっと抱きしめていた。
…………何もしなかったら、コイツはかわいいかもしれないな。
何もしなかったら、だけど。
なんて考えていると、問題児のリコリスはリクに話しかけていた。
「それで美少年君、今日は何を取りに来たの?」
「今日は特注ワイヤーをいただきに参りました」
アスカはガサゴソと音をさせると、机の下の箱からグルグル巻きのワイヤーを取り出し、リクに手渡した。
「これでいいわね」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
「…………そのワイヤー、何するんだ?」
俺はリコリスとともにまじまじとワイヤーを見つめ、問う。
「週末にドラゴンを仕留めようと考えていまして。でも、僕の力ではドラゴンを倒すより先に倒されてしまう可能性があるので、ワイヤーで一旦捕まえておこうと思ったんです」
「ドラゴンを倒すの? 1人で?」
リコリスは輝かせた目をリクの方に向けていた。
おっと、この目はなんか嫌な予感がするのだが。
「はい、1人で倒すつもりでいます」
「おぉーー!!」
「といっても、下位のドラゴンですよ。3年生の方は余裕で倒せるはずです」
リコリスはウサギ人形を俺に押し付けると、リクの方に近寄っていく。
「ねぇ、リク! 私もそのドラゴン倒しに連れていってくれないかしら?」
「はい、大丈夫ですよ。モナー君たちも行きますか?」
「ネルも行きたいでしょ?」
コイツまた勝手なこと言いやがって。
リコリスはキラキラさせた瞳でこちらを見てくる。そして、俺の耳元に口を寄せてくると。
「こっちに来てから全く魔物を倒していないんだし、ちょっと試しに行ってみるのもいいんじゃない?」
「…………」
と誘ってきた。
…………。
確かに最近はまともに魔法を使わせてもらっていない。
アスカや先輩たちの勝負で魔法を使うことはあったが、使ったのは卑猥な触手。
もっと……こう…………ドカーンと一発かましたいんだよな。
そう思うと、ドラゴン倒しは悪くないのかもしれない。
ドラゴンかぁ……………………ドラゴン倒したいなぁ…………魔法をまともに使えるいい機会…………。
俺は頬をぽりぽりとかきながら、言った。
「俺もドラゴン、倒していい?」
そして、週末。
俺はリコリス、アスカ、ラクリアとともにリクの案内でまぁまぁレベルが高い魔物がうろちょろしている山奥へとやってきていた。
道中、魔物と遭遇することはあったが、俺の出番はなかった。
なんせ悪魔女が率先してひたすらに魔物を倒し、道を作っていた。たぶん、俺に魔法を使わせたくないのと、リクの魔法が見たいからやつの魔力を温存しておきたくて、自分が雑魚の相手をしているのだろう。
ともかく、悪魔女が楽しそうに雑魚モンスターを倒してくれていたので、のんきに歩いてここまでやってきていた。
「ねぇ、リク。ドラゴンはどこ? 全く姿が見えないんだけど」
「ここの辺りでドラゴンが現れるといわれています。ゆっくり探してみましょう」
「おい、あそこに洞窟があるぞ」
「あそこにいるかもしれませんね。行ってみましょう」
そして、その洞窟でドラゴンを見つけたのだが…………。
「倒しましたー!」
両手にワイヤーを握っているリクは爽やかな笑みを浮かべ、倒れたドラゴンの上で叫ぶ。
ドラゴンはバタンキュー状態。たとえ下位のドラゴンであっても、レベルがそこまで高くない人間が1人で倒すのはやはり凄いことだ。
ドラゴンを倒したことをきちんと確認すると、金髪美少年はこちらにやってきた。
「あんた、凄いな」
「こんなの凄くないですよ。モナー君の方が凄いです」
悪魔女はリクに近寄ると、やつの両手を取った。
「ねぇ、リク! 私たちのチームに入らない?」
「え? リコリスさん?」
「…………い、いいですか?」
「もちろんよ!」
リクの問いに悪魔女は元気よく答えた。
おい、ちょっ、待て。
「じゃあ、入らせていただきます!」
「やったー!」
両手を上げ万歳するリコリス。ニコニコ笑顔の美少年リク。
彼は「僕なんかが入っていいんですか」と言いたげな顔を浮かべていた。
コイツ…………本気で言ってんのか?
アスカも動揺が隠せないのか、慌ててリクの肩を掴む。
「ちょ、ちょっと待って、リク。あなた、別のチームに入ってなかったの?」
「1学期は確かに別のチームにお邪魔していましたが……2学期はモナー君たちのことを知りまして、このチームに入れたらと考えていましたので、チームにはまだ入っていませんでした」
「…………入るとか本気で言ってるのか?」
俺たちのチームは個々が突出しすぎて、入ろうとするものはいなかった。リコリスはアスカがチームに加入して以降クラスの人たちを誘っていたが、ことごとく断られている。
————俺たちのチームに入りたい?
コイツは何かを企んでいるのか、それともただの変人なのか。
「中等部時代、筆記試験に置いて未だ破られていない成績を残しているLv.9000のモナー君、氷魔法だけでなく扱える者が少ない闇魔法も軽々と扱えるリコリスさん、最年少の魔道具技師になると多くの人から期待されているアスカさん、そして…………」
「私には何にもないYO」
「そんなことは…………」
すると、ラクリアは口元に人差し指で押さえる。
リクは「分かりました」とだけ言って、話を続ける。
「モナー君のチームはどこをどう見ても非常素晴らしいです」
俺はどこをどう見ても変人チームにしか見えないんだが。
「僕なんかが入っても、足を引っ張るんじゃないかと心配です…………でも、僕はみなさんの魔法を間近で目にしたかったんです」
リクの青い瞳はきらりと輝いていた。
その目はまっすぐで、真剣そのもの。
「僕ももっと強くなりたくて、学びたくて、モナー君たちのチームに入りたかったんです」
…………。
リクは生徒会の人間だが、案外悪い人間じゃないかもしれない。
どこかのクソ会長とは違うのかもしれない。
リコリスはチームの紙とペンを持って、ニコリと笑ってくる。
「ねぇ、ネル。いいでしょ?」
はぁとため息をついた。
俺はつくづく甘いな。
「…………ああ、いいよ」
一言小さく答えると、リコリスはまた声を上げて大喜び。
そして、すぐにリクに名前を書いてもらうと、悪魔女はその紙を高くあげくるくると回っていた。
「やったぁー! 5人揃ったぁー!」
いつの間にか隣に立っていたリク。横を向くと、やつは優しい微笑みを浮かべていた。
やつのその表情にどこか…………どこか違和感があったが、俺はその後現れたドラゴンに気を取られ、すぐに忘れた。
「………これ、全部片付けろって?」
アスカの研究室の物置で大量の魔道具と対面していた。
その物置は研究室や地下にある実験室ほどではないが、結構広さはあり、全面に魔道具たちが放って置かれていた。
どうやらアスカは失敗した時にできた魔道具、使わなくなった魔道具を全てこの物置にポイポイしていたようだ。
物置の入り口に立つアスカは俺の問いにコクリと頷く。
「そうよ。どうせあなた、放課後はいつも暇でしょう? 暇人なのでしょう?」
「暇といえば暇だが………面と向かって言われるとなんだかイラッとくるな」
「まぁ、とにかく暇なんでしょ? そこを片付けてくれる? その中に欲しいものがあったらあげるから」
そう言って、研究室の方へ戻っていくアスカ。
俺は入り口に背を向け、捨てられた魔道具たちと再び向き合った。
今日のアスカはリコリスとラクリアに実験を手伝ってもらうらしく、俺はのけ者扱い。
こんな雑用させられるなら、図書館で本を読み漁るなり、自室でゴロゴロしておけばよかった。来てしまったからにはするけどさ。
賃金が出るのなら掃除はいくらやってあげてもいいだろう。しかし、報酬が魔道具とかは…………ちょっと気がなえる。
俺、魔道具とかあまり必要としないし。
なんて考えながら、ガラクタ魔道具を整理し段ボールに突っ込んむ作業を20分くらい続けていると、ドアの方からは女子たちの声が耳に入ってきた。
「へぇ………これってあれね、女子のアレが溜まりに溜まった時に使う魔道具ね。保健室の先生に教えてもらったわ」
………どうしよう。なんかその魔道具、ちょっと気になる。
詳しく聞きたいので、手を動かしつつもアスカたちの話に耳を澄ませた。
「でも、アスカってこんなものも作っているの?」
「ええ。まぁ、それは頼まれて作ったもの。普段はそんなものは作らない」
「それで…………ちゃんと動くか確認したいけど、自分がするのは気が引けるから、私たちに頼んだってわけね」
え。ちょっと待って。ここで確認するって言った?
保健室の先生が教える、溜まった時に女子が使うものだろ?
つまり……あれだろ?
「ちょっと待っ」
「すみません、アスカさん」
物置から出て研究室の方に向かった瞬間、やつの声が聞こえてきた。
入り口に立っていたのは生徒会のイケメン、リク。やつは相変わらずの爽やかなスマイルを浮かべている。
「あ、リク。そういや取りに来るの今日だったわね。持ってくるから、ちょっと待ってて」
「はい、もちろんです」
リクとアスカのやり取りを目にした後、そのまま左の方へ首を向けた。
リコリスが手にしていたのは体長1mはある大きな白いウサギの人形。
…………あれっ?
「……ネルどうしたのよ? そんなところで立ち止まって」
一体何なんだ。
さっきまで話していたものはもしかしてあのウサギの人形だというのか?
「なぁ…………さっき動くかどうか確かめたいって言ってたやつだけど…………」
「あーそれ? それはリコリスが持ってるやつよ。女子が魔法攻撃でストレス発散する時に使う人形。ネルに確かめてもらおうと思ってたんだけど、リコリスに『ネル? ネルになんか確かめさせたら、跡形もなく壊れちゃうわよ』って言われたから、確認はリコリスに頼んだの」
…………。
「お前が気が引けるというのは…………」
「あの可愛いウサギさんに攻撃するのはちょっとと思ってね…………」
「…………」
ストレスを発散するためのものだったとか…………俺はある欲求を満たすために使うものかと思ったよ、このやろう。
1人で勘違いしてしまいちょっと残念に思った俺は近くにあった椅子に腰をかけた。そして、隣に立っている悪魔女に目を向けると、彼女は巨大ウサギ人形をぎゅっと抱きしめていた。
…………何もしなかったら、コイツはかわいいかもしれないな。
何もしなかったら、だけど。
なんて考えていると、問題児のリコリスはリクに話しかけていた。
「それで美少年君、今日は何を取りに来たの?」
「今日は特注ワイヤーをいただきに参りました」
アスカはガサゴソと音をさせると、机の下の箱からグルグル巻きのワイヤーを取り出し、リクに手渡した。
「これでいいわね」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
「…………そのワイヤー、何するんだ?」
俺はリコリスとともにまじまじとワイヤーを見つめ、問う。
「週末にドラゴンを仕留めようと考えていまして。でも、僕の力ではドラゴンを倒すより先に倒されてしまう可能性があるので、ワイヤーで一旦捕まえておこうと思ったんです」
「ドラゴンを倒すの? 1人で?」
リコリスは輝かせた目をリクの方に向けていた。
おっと、この目はなんか嫌な予感がするのだが。
「はい、1人で倒すつもりでいます」
「おぉーー!!」
「といっても、下位のドラゴンですよ。3年生の方は余裕で倒せるはずです」
リコリスはウサギ人形を俺に押し付けると、リクの方に近寄っていく。
「ねぇ、リク! 私もそのドラゴン倒しに連れていってくれないかしら?」
「はい、大丈夫ですよ。モナー君たちも行きますか?」
「ネルも行きたいでしょ?」
コイツまた勝手なこと言いやがって。
リコリスはキラキラさせた瞳でこちらを見てくる。そして、俺の耳元に口を寄せてくると。
「こっちに来てから全く魔物を倒していないんだし、ちょっと試しに行ってみるのもいいんじゃない?」
「…………」
と誘ってきた。
…………。
確かに最近はまともに魔法を使わせてもらっていない。
アスカや先輩たちの勝負で魔法を使うことはあったが、使ったのは卑猥な触手。
もっと……こう…………ドカーンと一発かましたいんだよな。
そう思うと、ドラゴン倒しは悪くないのかもしれない。
ドラゴンかぁ……………………ドラゴン倒したいなぁ…………魔法をまともに使えるいい機会…………。
俺は頬をぽりぽりとかきながら、言った。
「俺もドラゴン、倒していい?」
そして、週末。
俺はリコリス、アスカ、ラクリアとともにリクの案内でまぁまぁレベルが高い魔物がうろちょろしている山奥へとやってきていた。
道中、魔物と遭遇することはあったが、俺の出番はなかった。
なんせ悪魔女が率先してひたすらに魔物を倒し、道を作っていた。たぶん、俺に魔法を使わせたくないのと、リクの魔法が見たいからやつの魔力を温存しておきたくて、自分が雑魚の相手をしているのだろう。
ともかく、悪魔女が楽しそうに雑魚モンスターを倒してくれていたので、のんきに歩いてここまでやってきていた。
「ねぇ、リク。ドラゴンはどこ? 全く姿が見えないんだけど」
「ここの辺りでドラゴンが現れるといわれています。ゆっくり探してみましょう」
「おい、あそこに洞窟があるぞ」
「あそこにいるかもしれませんね。行ってみましょう」
そして、その洞窟でドラゴンを見つけたのだが…………。
「倒しましたー!」
両手にワイヤーを握っているリクは爽やかな笑みを浮かべ、倒れたドラゴンの上で叫ぶ。
ドラゴンはバタンキュー状態。たとえ下位のドラゴンであっても、レベルがそこまで高くない人間が1人で倒すのはやはり凄いことだ。
ドラゴンを倒したことをきちんと確認すると、金髪美少年はこちらにやってきた。
「あんた、凄いな」
「こんなの凄くないですよ。モナー君の方が凄いです」
悪魔女はリクに近寄ると、やつの両手を取った。
「ねぇ、リク! 私たちのチームに入らない?」
「え? リコリスさん?」
「…………い、いいですか?」
「もちろんよ!」
リクの問いに悪魔女は元気よく答えた。
おい、ちょっ、待て。
「じゃあ、入らせていただきます!」
「やったー!」
両手を上げ万歳するリコリス。ニコニコ笑顔の美少年リク。
彼は「僕なんかが入っていいんですか」と言いたげな顔を浮かべていた。
コイツ…………本気で言ってんのか?
アスカも動揺が隠せないのか、慌ててリクの肩を掴む。
「ちょ、ちょっと待って、リク。あなた、別のチームに入ってなかったの?」
「1学期は確かに別のチームにお邪魔していましたが……2学期はモナー君たちのことを知りまして、このチームに入れたらと考えていましたので、チームにはまだ入っていませんでした」
「…………入るとか本気で言ってるのか?」
俺たちのチームは個々が突出しすぎて、入ろうとするものはいなかった。リコリスはアスカがチームに加入して以降クラスの人たちを誘っていたが、ことごとく断られている。
————俺たちのチームに入りたい?
コイツは何かを企んでいるのか、それともただの変人なのか。
「中等部時代、筆記試験に置いて未だ破られていない成績を残しているLv.9000のモナー君、氷魔法だけでなく扱える者が少ない闇魔法も軽々と扱えるリコリスさん、最年少の魔道具技師になると多くの人から期待されているアスカさん、そして…………」
「私には何にもないYO」
「そんなことは…………」
すると、ラクリアは口元に人差し指で押さえる。
リクは「分かりました」とだけ言って、話を続ける。
「モナー君のチームはどこをどう見ても非常素晴らしいです」
俺はどこをどう見ても変人チームにしか見えないんだが。
「僕なんかが入っても、足を引っ張るんじゃないかと心配です…………でも、僕はみなさんの魔法を間近で目にしたかったんです」
リクの青い瞳はきらりと輝いていた。
その目はまっすぐで、真剣そのもの。
「僕ももっと強くなりたくて、学びたくて、モナー君たちのチームに入りたかったんです」
…………。
リクは生徒会の人間だが、案外悪い人間じゃないかもしれない。
どこかのクソ会長とは違うのかもしれない。
リコリスはチームの紙とペンを持って、ニコリと笑ってくる。
「ねぇ、ネル。いいでしょ?」
はぁとため息をついた。
俺はつくづく甘いな。
「…………ああ、いいよ」
一言小さく答えると、リコリスはまた声を上げて大喜び。
そして、すぐにリクに名前を書いてもらうと、悪魔女はその紙を高くあげくるくると回っていた。
「やったぁー! 5人揃ったぁー!」
いつの間にか隣に立っていたリク。横を向くと、やつは優しい微笑みを浮かべていた。
やつのその表情にどこか…………どこか違和感があったが、俺はその後現れたドラゴンに気を取られ、すぐに忘れた。
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