はめられて強制退学をくらった俺 ~迷い込んだ(地獄の)裏世界で魔物を倒しまくったら、表世界で最強魔導士になっていました~

せんぽー

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第1章

第18話 いじめられっ子の仕返し

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 「あたしね、自分の存在に気づかれないように、昨日の夜、この運動場に魔石をいっぱい埋めて置いたの」
 
 自分が勝ったと思っているのか、アスカは俺にバズーカの銃口を向けたまま、楽しそうな笑みを浮かべ、話していた。
 アスカの存在に気づけなかったのは、そのせいか………手の込んだことをするな。

 俺も対策をしていたと言えば、していたんだがな。
 アスカは気づいていないが、彼女の背後で、ちょろちょろと動くタコのような触手を、俺は背中に隠した杖で動かしていた。
 
 「なぁ、アスカ。俺、昨日の夜何をしていたか知ってるか?」
 「そんなの知ったこっちゃないわよ。さっき言ったじゃない。運動場に魔石を埋めに来たって。
 ………そんな無駄話はいいから、早く降参しなさいよ。この私特製バズーカは、研究所で作った対魔王用だから、あんた、死ぬわよ」
 
 カチャと音を鳴らし、バズーカを構えるアスカ。対魔王用って学生がなんてものを作っているんだ。
 
 「俺な、昨日のことを反省して、練習していたんだ………触手操作の練習をなっ!」
 「んわっ!」
 
 アスカのお腹あたりにいた触手は、彼女を捕える。空高く上げられたアスカは、必死に抱きかかえていたバズーカを落とした。

 よっしゃっ! 今日は操作できたぞ! そりゃそうか! 昨日はうまく行ったしな!
 そう。俺は昨日の先輩を裸にしたことを反省し、蔓を自由自在に操れるように、人形相手に自室で練習していた。

 しかし、蔓は標的を定めることはできるものの、その後はやたらと標的である人形の服を脱がそうとしていた。
 なら、触手はどうか。

 そう考えた俺は、触手操作を試してみると、これがなんとうまくいった。人形をしっかりとらえ、かつ勝手に服を脱がすような下品なことはせず、操ることができた。

 だから、今日の俺は本当に強い。
 俺は、高く上げられたアスカを見上げる。
 
 「アスカ! 俺もな、この勝負を始める前に、触手を運動場全体に広げていたんだ! 触手の存在に気づかれないようにな! 
 でも、お前が魔石を埋めているんだったら、その必要はなかったな! どうもありがとうよ! アスカさん!」
 「う、うるさいっ! バカっ!」
 
 アスカは、触手の拘束から逃れようと暴れまわっていた。
 さてと………。
 
 「じゃあ、服を一枚一枚脱がしていくなー。あ、『今後、一切勝負もいたずらもしません』と宣言してくれたら、今すぐ下ろしてやるぞ」
 「い、いやよ! 勝負も仕掛けるし、いたずらだってやるわ! でも、下ろしてちょうだい! んわっ」
 
 俺は、触手を操り、アスカのブレザーを脱がしていく。
 おぉ………やっぱ触手の方が操りやすい。意識はいつも以上に集中させないといけないが、それでも蔓のように勝手な行動を取らないからいい。
 
 「ほら、早く言えよ。『今まで嫌がらせをしてすみません』って! 謝れよ!」
 「い、いやっ! ………ち、ちょっと! 何ボタンを外そうとしているのっ、んあ」
 
 器用にシャツのボタンを外していく。

 アスカのいたずらや嫌がらせは簡単に許せるものではない。
 アイツのせいで、小等部のやつらや中等部の後輩にからかわれたり、バカにされたりした。今でも、俺のレベルを知らないガキは、「落ちこぼれ」なんて言ってくる。

 1年前の嫌がらせを全部全部お返しだ。
 
 そう決意した俺は、触手を操り、ゆっくりスカートを脱がしていく。
 ギャラリーにいた男子どもは「おぉー」と声を上げていた。
 アスカにも嫌な気持ちを味わってもらって………。
 
 「このド変態ロリコンやろう!」
 「!」
 
 俺のことを指しているのだろう、そんな言葉が飛んできた。声の主はというと………。
 
 「お前かよ」
 
 リコリスがにっひひと笑い、口に手を当てて叫んでいた。
 そのリコリスの叫びを筆頭に、引いていた女子たちが声を上げる。
 
 「女子にあんなことをするなんて………」
 「最低!」
 「変態よ! ド変態!」

 女子はアスカに同情し、怒りの声を俺に向けてきていた。
 これ、俺、精神的ダメージを食らってるんじゃないか? 
 アイツが騒ぎ始めたせいで………。

 「リコリスっ! お前っ!」
 「ネルに変なあだ名つけれそうだったから、つけてみたの! どう!?」
 「『どう!?』じゃねーよっ! なんてことしてくれんだよ!」
 「その様子だと嬉しいのね! よかった! これで学園生活をさらに楽しめそうね!」
 
 ………コイツ、弱体化してもバカ悪魔なところは変わらないか。
 と俺が気を抜いたとたん、触手が勝手に動き始めた。

 にゅるにゅると動く紫色の触手は、なめまわすようにアスカの体に触れる。加えて、彼女の服を破いていく。

 昨日は意識を緩めても、こんなに勝手に動くことはなかったはず。服を取ることも、破くこともなかった。

 「分かった! 分かったっ! あ、あたし、謝るから! 嫌がらせしてごめんなさい! あんたのことバカにしてごめんなさい! 許して! これ以上服を取らないで!」

 下着姿のアスカは泣きながら必死に謝るものの、暴走しだした触手を俺にはどうすることもできなかった。

 もしかして、本物の人間だと服を破き始めるのか? 
 服を脱がせて嫌がらせをした俺は触手やつのことをあまり言えないが、コイツ、とんだド変態触手じゃねーか。
 
 「んふぁっ! あんた、どこに触手を入れてんの! ちょっ………んっ!」
 
 勝手に動いている変態触手は、アスカの下着の中に滑り込んでいく。
 ギャラリーの中にいた男子生徒が、「おぉー」とさらに興奮の声を上げる。

 それはさすがにヤバいっ! アウトだ、変態触手! 
 ここまでしておいてなんだが、リコリスのせいでロリコン呼ばわりされるのは嫌だ! 俺の方が大きなダメージを食らう。
 
 「バテーン!」
 
 解除魔法を唱えると、触手は力を失くし、疲弊したアスカとともに地面に崩れ落ちた。

 
 
 ★★★★★★★★
 


 「あんたがあんなに嫌な思いをしているとは思わなかったのよ………まさかこんなことされるなんて」
 
 涙目でそう話すアスカ。
 下着姿の彼女は、俺のブレザーを羽織り、座り込んでいた。

 隣には、無力化した触手が横たわり、俺はアスカの前で立っていた。リコリスは、「明日が楽しみ」とか言って、俺の横でニコニコしている。

 明日、嫌な予感しかしない。
 
 「それで、勝負を了承したときに言っていたお願いだが………」
 「………なんでも言ってちょうだい」
 
 そう。
 この勝負を始める前の、運動場に移動する際に、約束を交わしていたのだ。

 ————負けた方は勝った方の言うことを1つ聞く。

 勝負の際にありがちな約束。
 
 「だいだい、お前が俺に命令したいことはなんだったんだよ」
 
 アスカから勝負を仕掛け、約束も向こうから提示してきた。となると、アスカが俺に何か言うことをきかせたかったとしか考えられない。
 
 「………私の実験を手伝ってほしかったのよ。でも、あんたのことだから、断るだろうと思ってたから、こうして勝負に挑んだってわけ」
 「そんなことか。それなら、普通に『実験に手伝って』って言えばいいじゃねーか」 
 「ほんと! Lv.9000越え・・・・・・・・のあんたが手伝ってくれるのっ!? 協力してくれるのっ!?」
 
 アスカは興奮気味な声で話す。
 何か忘れているけど………まぁ、いっか。

 次の日。
 廊下を歩く俺は、女子から鋭い視線を向けられ、「落ちこぼれ」から「ド変態ロリコンやろう」と呼ばれるようになった。
 仕返しとはいえ、自分のやったことなので、何も文句は言えない。
 これって、やっぱり俺の方がダメージ食らってないか?

 「『落ちこぼれ』に変わるあだ名ができてよかったわねぇ」

 隣で楽しそうに話しかけてくるリコリス。
 多分、コイツのことだから、俺の反応を楽しんでいるのだろう。

 ………クソ。この悪魔女、絶対許さねぇ。



 ★★★★★★★★


 ネルがアスカの勝負に勝った、次の日の放課後。
 金髪の美少年は、1人、廊下を歩いていた。
 上からも下からも人気を得ている彼は、すれ違う生徒と挨拶を交わしながら、ある場所に向かっていた。

 ちょっと歩くと、彼はある部屋の前で立ち止まる。
 扉の上にある金のプレートには「生徒会室」の文字。
 彼はドアノブに手を掛けると、扉を開けた。

 そこには紺色髪の少女が1人。部屋は、オレンジの光が差し込んでいるものの、全体的に暗く、少し不気味な雰囲気があった。

 「先輩、先に来ていたんですか」
 「ええ。ちょっと授業を早く終えたから。会長はザ・セブンの会議をしているわ」
 「分かりました。それでお話したいことというのは………」
 
 彼女は、会長の机に置かれていた1枚の紙を取り、少年に差し出す。
 彼は、それを受け取ると、その紙の文章に目を通した。
 
 「………ネル・モナーを、ですか?」
 「ええ。上からの命令だから、絶対やらなくてはいけない。あ、会長にはすでに話を通してるから安心して」
 「先輩のお兄さんですよね? 先輩は………」

 「いいの。私、あの人が大嫌いなの。最近調子に乗ってるし、先輩たちを裸にするなんてこともしてる」
 「………」
 「それに、大きな力を持ったからって、あんな幼い子を裸にするなんて………」

 「あの………」
 「コホン。ともかくあの人の力を奪うなり、封じるなりしてほしいの。あなたならできるでしょう?」

 少年は、丁寧にお辞儀をする。
 そして、少女を見る彼の青眼が、ギラリと光った。

 「はい、もちろんです。メミ先輩」
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