はめられて強制退学をくらった俺 ~迷い込んだ(地獄の)裏世界で魔物を倒しまくったら、表世界で最強魔導士になっていました~

せんぽー

文字の大きさ
上 下
15 / 62
第1章

第15話 VS先輩

しおりを挟む
 授業を終えた、放課後。
 俺は1人、校庭を歩いていた。
 悪魔女リコリスはというと、ハンスを追いかけ、どこかに走っていった。折れも追いかけるべきだったのだろうが、めんどくさくなった。まぁ、問題が起こらないことを祈ろう。

 教室でリコリスを待つのものありだった。だが、クラスのやつはおろか、他のクラスの生徒までもが俺を見てくるので、いてもたってもいられなくなり、人が少ない校庭を歩いている。

 今日は特にすることもないし、寮にでも帰ろうか。
 そう思いながら、赤レンガの道を進んでいると、背後から俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。

 「おーい。そこにいるのは、学園一の落ちこぼれのネルくんかーい」

 振り向くといたのは、ハンスと同じく俺をずっとバカにしてきた先輩たち。
 最悪だ………嫌な予感しかしない。

 「お前、帰る場所、間違えたか? 送ってやろうか?」
 「間違えてないです。俺は、ここの生徒です」

 そう答えると、先輩たちは、腹を抱え大笑い。
 どうもウソだと思われているようだ。
 
 「落ちこぼれで1回強制退学を食らったお前が、ここの生徒? ハハハ、冗談はよせよ」
 「俺は、自力・・で編入してきたんです」
 「Lv.12だったお前が、Lv.9000になったという噂もあるらしいが、どうせウソだろ? 編入だってウソなんだろう? 優秀な妹に負けているからって、変な見栄をはんなよ」
 
 そう言いながら、先輩たちは、俺に詰め寄ってくる。
 目は逸らさない。逸らせば、また1年前のような生活に戻ってしまう気がした。

 「よせ」

 すると、一番後ろにいた茶髪男が、こちらへ近づいてくる。その人を知っていた。
 
 「お前、なんか変わったな」
 「………マナト先輩、お久ぶりです」

 マナト先輩。
 彼は、1年前の俺が「落ちこぼれ」であることを学園に広めた張本人。
 「この学園にお前みたいな落ちこぼれなど、いらない」と何度も何度も言われた。
 
 「俺は、コイツらの言う通り、落ちこぼれだったお前が編入試験に受かったとは思えないんだ」
 「でも、僕は確かに編入試験を受けました」
 
 その試験中、学園長を殺しかけたが。
 嫌な笑みを浮かべるマナト先輩は、俺の返答に、「ほぉ」と声を漏らす。
 
 「………それだけ言うんだ。じゃあ、お前の実力を見せてもらおうじゃないか。ワンオンワンで、俺と勝負しよう」

 俺としては、平穏な学園生活を送りたいのだが………。
 でも、ここで勝っていたら、勝負かけてくる人間はいなくなるんじゃないか?

 マナト先輩は、3年生の中でも上位。
 そんな人に勝った俺は、いじめられることもバカにされることもなく、穏やかな学園生活を送れるのではないか?

 Lv.9000の能力を最大限に生かして、「制御できないから、勝負をかけないでください」アピールをしておくのも悪くない。
 
 「分かりました。その勝負、受けてたちましょう」
 
 そして、校庭は狭いため、第2運動場に移動した。ここは、第1運動場よりも広く、職員室から離れている。勝負するには絶好の場所である。因みに第1運動場は、学園長と勝負をした所だ。

 向かいには、杖を持つマナト先輩。そして、運動場の周りには、勝負のことを聞きつけた生徒たちが集まっていた。
 
 「ルールは単純。相手の動きを封じた方が勝ちだ。方法はどんなものでもOK。相手を気絶させても、腕を切ってもいい。あ、でも、殺しはなしな。サーニャの回復魔法ではどうにもならないからな」
 
 マナト先輩は、親指を指す。その先には、1人の女子が手を振っていた。
 
 「分かりました。俺、制御できないので、死んでも自己責任で………よろしくです」

 俺たちの中間当たり立つ先輩たちの1人が、手を上げる。そして、掛け声とともに振り下ろした。

 「ファイツっ!」
 「クランスカテーナ!」

 開始の合図とともに唱えると、自分の地面から太い蔓が生えてきた。杖を振り、その蔓を先輩に向かって伸ばしていく。
 
 「草? ハッ、お前はバカなのか? 1年前のお前はペーパーでパスしてきていたらしいのに、草を使うとは! お望み通り炎でやってやるよ! ブレイズフォレスタ!」
 
 マナト先輩は、炎の魔法を唱え、地面を火の海にする。しかし、蔓はひるむことなく、弱ることもなく、真っすぐ先輩の方へ伸びていく。
 
 「なんだと!?」

 伸びに伸びたつるは、素早くマナト先輩に巻き付いていく。
 困惑気味の先輩は炎を使い、蔓を燃やそうとするが、無駄。蔓は弱まることなく、先輩を縛り、空高く上げていく。
 魔法で外すことと予測し、蔓には、事前にバリアを張っていた。

 蔓を外せない先輩は、必死にもがいている。
 ………なんだろう。この景色、なんか気持ちいいんだけど。
 思わずニヤリとしてしまう俺は、宙に浮いている先輩に声を掛ける。

 「先輩、どうですかぁ? 蔓に巻かれる気分はどうですかぁ?」
 「っつ! お、お前!」

 苦しみながらも、睨んでくるマナト先輩。なんか最高な気分!
 動きを封じ込めたし、これで勝ったも同然だな! 
 と、マナト先輩に背を向けた時、

 「お、おい! 何すんだよっ! ふぁぁん!」
 
 という情けない声が聞こえてきた。
 マナト先輩が妙に騒いでいるな。演技か?
 振り返ると、捕えている蔓がくねくねと奇妙な動きをしていた。

 別に意識して動かしているわけではない。勝手に動いている。
 やがてその蔓は、先輩の服をビリビリとはがし始めた。
 自分の魔法だから言うのもなんだけどさ………変態な蔓だな。

 俺は、勝手な動きをする蔓を操ろうと、杖を振る。しかし、蔓の動きは止まることなく、先輩の服をどんどんとっていき、遂にパンツまでも取りあがった。
 
 「キャアァァ————!」
 
 マナト先輩の裸を目にし、運動場に響く女子たちの奇声。
 ああ………制御はやっぱりうまくいかないか。
 
 「てめぇ! マナトに何してんだっ!」
 
 さすがに怒ったのか、他の4人も、こちらに向かって走ってくる。
 めんどくさいし、マナト先輩と同じ目に合ってもらおう。
 俺は、4人に杖先を向け、同じ呪文を唱える。
 
 「クランスカテーナ! クランスカテーナ! クランスカテーナ! クランスカテーナ!」
 
 蔓はその4人を捕まえるなり、服を破き始めた。
 パニック状態の4人は、3年上位の人間と思えないぐらい叫ぶ。
 
 「あそこに好きな子がいるんだ! こんな姿は見られたくねぇんだっ!」
 「俺の青春、オワタ………」
 「か、母ちゃん! 母ちゃん! 助けてくれっ! 蔓に襲われてる!」
 「お前をバカにして悪かった! 服を返してくれ!」
 
 そう言われても、どうしようもないんだが。正直言って、自業自得。
 勝負をする前に、忠告したんだ。制御はできないって。

 俺は悪くない。絶対に悪くないぞ。
 空を見上げると、蔓によって浮く先輩たち。

 「………プグっ」
 「ネル! 笑うなっ!」

 笑いこらえろというのも無理な話だ。
 先輩たちみんな、蔓に服を脱がされ、全裸になっていた。
 
 「お前の魔法、変態化け物じゃねーか!」

 マナト先輩は、柄にもなく、裸姿でそう叫んでいた。
 
 
 
 ★★★★★★★★

 

 先輩たちが「ギブ! ギブだから! 許して!」と叫ぶので、仕方なく魔法を解除してやった。
 まぁ、先輩たちが素っ裸であるのには変わりないが。
 マナト先輩たちは、大事なところを手で隠し、立っていた。
  
 「なぁ、服を直してくれよ。お前ぐらいの術者なら、そのくらいなんともないだろ?」
 「いいですよ」
 
 弱りに弱った先輩に大満足した俺は、服を元通りにする。
 
 「ナットインディア―トロ!」
 
 バラバラになった服が集まり、光輝く。
 光が収まると、そこには、そこには………………。

 「あれー?」
 「………『あれー?』じゃねーわ! 誰がこんな服を変えろって言ったぁ!」
 
 地面に合ったのは、元通りになった服、ではなく、その元の服によって作り直された服だった。
 その服は、なんと言うか………………非常にダサい服だった。

 黒と赤ワインを基調とした制服だったものは、赤と緑の色の布に変わり、非常に露出の多い服となっていた。
 裸で動くこともできないので、仕方なくその服を着る先輩。
 
 「先輩、その服お似合いだと思いますよ………プグっ」
 「笑うなっ! この服、お前のせいんだんぞ! 次見てろよ! お前も同じ格好、いやもっとダサい格好にしてやる!」
 「次の勝負待ってますよ」
 
 その時はもう1回、変態蔓を出してやるよ、先輩。



 ★★★★★★★★



 ネルたちの勝負を見ていたギャラリーの中、1人の少女がいた。彼女は、他の生徒よりも身長は低く、また髪型がツインテールであるせいか、幼稚な姿に見える。
 彼女は1人、誰も聞こえないような小さな声で呟いた。
 
 「へぇ………アイツ、結構持ってそうだな」
 
 彼女の手には、銃型の魔道具があった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚

ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。 原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。 気が付けば異世界。10歳の少年に! 女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。 お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。 寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる! 勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう! 六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる! カクヨムでも公開しました。

大国に囲まれた小国の「魔素無し第四王子」戦記(最強部隊を率いて新王国樹立へ)

たぬころまんじゅう
ファンタジー
 小国の第四王子アルス。魔素による身体強化が当たり前の時代に、王族で唯一魔素が無い王子として生まれた彼は、蔑まれる毎日だった。  しかしある日、ひょんなことから無限に湧き出る魔素を身体に取り込んでしまった。その日を境に彼の人生は劇的に変わっていく。  士官学校に入り「戦略」「戦術」「武術」を学び、仲間を集めたアルスは隊を結成。アルス隊が功績を挙げ、軍の中で大きな存在になっていくと様々なことに巻き込まれていく。  領地経営、隣国との戦争、反乱、策略、ガーネット教や3大ギルドによる陰謀にちらつく大国の影。様々な経験を経て「最強部隊」と呼ばれたアルス隊は遂に新王国樹立へ。 異能バトル×神算鬼謀の戦略・戦術バトル! ☆史実に基づいた戦史、宗教史、過去から現代の政治や思想、経済を取り入れて書いた大河ドラマをお楽しみください☆

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

処理中です...