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第1章
第11話 義妹
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メミ・C・モナー。
俺の義妹であり、モナー伯爵家次期当主。
そして、俺を強制退学に追いやった張本人。
そんな彼女が俺たちの目の前にいた。彼女の紺色の髪がふわりと揺れている。
確か、今の時期はちょうど夏休み。全寮制のゼルコバ学園は、長期休暇になると、実家に帰ることができるようになる。
だから、メミは実家にいるのだろうが……。
表世界でメミと会うのは、久しぶりなせいか、変に緊張してしまう。
裏世界で会った時は、メミはへばっていたし、突然のことだったから、何も思わなかった。
しかし、いざこうして、メミと対面すると、思うように声をかけることができない。
俺が唾を飲みこんでいると、メミはおっさんリコリスの方へ足を進めていた。
「お父様から、お兄様が美しい女性を連れて帰ってきたと聞いたのですが………」
メミは、おっさん化したリコリスを見上げ、顔をクシャりとしかめる。
「この人がお兄様にとっての美しい女性ですか………なるほど、お兄様にはそのようなご趣味があったのですね」
冷酷な声で話すメミ。
今のリコリスの服は、元々ファンクではあったが、女装姿には変わりない。
か、完全に誤解されている。おっさんを女装させるとか、俺にはそんな趣味はない! 男を好きになる趣味もない! 俺は健全男子! 美女が好きだ!
俺がそう弁明しようとした時、リコリスが先に口を開けていた。
「あんたさ、私のこと覚えてないの? 私、あんたのほっぺたつついて遊んでたんだけど?」
「一体何の話をなされているのですか? ………あなたのような変態さんに会ったことはございませんが?」
「へ、変態だって?」
リコリスはムカついたのか、「この人間め」とぶっきらぼうに言い放つ。
一方、メミも、汚らわしいものを見るかのような目を、リコリスに向けていた。
「おっさんのくせに女の服着て、何が楽しいんですか? 見苦しいだけですよ?」
「おっさんでもこういう趣味がある人もいるでしょ! い、いいじゃない! 自分の趣味ぐらい勝手にさせてよ!」
リコリスは、メミの意見に対して必死に反論する。
………今話すべきことは、そこじゃないと思うのだが。
大体リコリスはおっさんじゃないんだし、そんな必死にならなくても。
妹は、ハァと息をつくと、俺の方に瞳を向けてきた。
「まぁ、どうせお兄様がさせたことなのでしょう。お兄様が欲深いことは、重々承知しておりましたが………まさかこれほどとは」
「これは俺が望んでしたわけでは………」
確かに魔法をかけたのは俺だが、決して望んでやったわけじゃない。
こんなおっさん、俺は求めていないから。ていうか、誰が求めるんだ、こんなおっさん。
メミは、リコリスの横を通りすぎると、俺の正面で足を止めた。
「そういえば、お父様から聞きましたよ。学園の通い直しをなさるようですね」
「あ、ああ………」
俺はぎこちなく返事をする。
その瞬間、メミの黄色い目が鋭く光った。
「人から奪った能力でせいぜい頑張ってください」
「………?」
そう言い捨てると、メミは俺の横を通り過ぎていった。
人から奪った能力って………別に誰からも奪ったわけではないんだが。裏世界に行ったら、なぜかLv.8000あったんだよ。
そう言っても信じてはくれないのだろうけどさ。
俺は何も答えることができず、自分の部屋へと向かうメミを目で追いかける。
………それにしても、なんであんなに俺に当たってくるのだろう。一体に俺の何に怒っているのだろうか。
メミのせいで、強制退学を食らった。
もちろん、俺はメミに腹が立っている。しかし、「なぜ?」という感情の方が強かった。
今まで多少ケンカすることはあったが、基本仲良くやってきていた。辛いことがあれば、2人で乗り越えた。俺は、妹との間に何もなかったはずだ。
………問題はないと思っていたのは俺だけだったのか?
そう思いながら、俺は、去っていくメミの背中をじっと見つめていた。
俺の義妹であり、モナー伯爵家次期当主。
そして、俺を強制退学に追いやった張本人。
そんな彼女が俺たちの目の前にいた。彼女の紺色の髪がふわりと揺れている。
確か、今の時期はちょうど夏休み。全寮制のゼルコバ学園は、長期休暇になると、実家に帰ることができるようになる。
だから、メミは実家にいるのだろうが……。
表世界でメミと会うのは、久しぶりなせいか、変に緊張してしまう。
裏世界で会った時は、メミはへばっていたし、突然のことだったから、何も思わなかった。
しかし、いざこうして、メミと対面すると、思うように声をかけることができない。
俺が唾を飲みこんでいると、メミはおっさんリコリスの方へ足を進めていた。
「お父様から、お兄様が美しい女性を連れて帰ってきたと聞いたのですが………」
メミは、おっさん化したリコリスを見上げ、顔をクシャりとしかめる。
「この人がお兄様にとっての美しい女性ですか………なるほど、お兄様にはそのようなご趣味があったのですね」
冷酷な声で話すメミ。
今のリコリスの服は、元々ファンクではあったが、女装姿には変わりない。
か、完全に誤解されている。おっさんを女装させるとか、俺にはそんな趣味はない! 男を好きになる趣味もない! 俺は健全男子! 美女が好きだ!
俺がそう弁明しようとした時、リコリスが先に口を開けていた。
「あんたさ、私のこと覚えてないの? 私、あんたのほっぺたつついて遊んでたんだけど?」
「一体何の話をなされているのですか? ………あなたのような変態さんに会ったことはございませんが?」
「へ、変態だって?」
リコリスはムカついたのか、「この人間め」とぶっきらぼうに言い放つ。
一方、メミも、汚らわしいものを見るかのような目を、リコリスに向けていた。
「おっさんのくせに女の服着て、何が楽しいんですか? 見苦しいだけですよ?」
「おっさんでもこういう趣味がある人もいるでしょ! い、いいじゃない! 自分の趣味ぐらい勝手にさせてよ!」
リコリスは、メミの意見に対して必死に反論する。
………今話すべきことは、そこじゃないと思うのだが。
大体リコリスはおっさんじゃないんだし、そんな必死にならなくても。
妹は、ハァと息をつくと、俺の方に瞳を向けてきた。
「まぁ、どうせお兄様がさせたことなのでしょう。お兄様が欲深いことは、重々承知しておりましたが………まさかこれほどとは」
「これは俺が望んでしたわけでは………」
確かに魔法をかけたのは俺だが、決して望んでやったわけじゃない。
こんなおっさん、俺は求めていないから。ていうか、誰が求めるんだ、こんなおっさん。
メミは、リコリスの横を通りすぎると、俺の正面で足を止めた。
「そういえば、お父様から聞きましたよ。学園の通い直しをなさるようですね」
「あ、ああ………」
俺はぎこちなく返事をする。
その瞬間、メミの黄色い目が鋭く光った。
「人から奪った能力でせいぜい頑張ってください」
「………?」
そう言い捨てると、メミは俺の横を通り過ぎていった。
人から奪った能力って………別に誰からも奪ったわけではないんだが。裏世界に行ったら、なぜかLv.8000あったんだよ。
そう言っても信じてはくれないのだろうけどさ。
俺は何も答えることができず、自分の部屋へと向かうメミを目で追いかける。
………それにしても、なんであんなに俺に当たってくるのだろう。一体に俺の何に怒っているのだろうか。
メミのせいで、強制退学を食らった。
もちろん、俺はメミに腹が立っている。しかし、「なぜ?」という感情の方が強かった。
今まで多少ケンカすることはあったが、基本仲良くやってきていた。辛いことがあれば、2人で乗り越えた。俺は、妹との間に何もなかったはずだ。
………問題はないと思っていたのは俺だけだったのか?
そう思いながら、俺は、去っていくメミの背中をじっと見つめていた。
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