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第3章 学園編
64 悪夢
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婚約破棄をしようと、動いた私。
ライアンを呼び出して、婚約解消の提案をした。
だが、彼にはあっさりと断られた。
しかもなかったことにされた。
ライアンがあんなことで同様するとは思えない。
急に切り出し過ぎたのかな?
…………いや、でも遠回りに話ったって、「君は何が言いたいの?」って言ってきそうだし。
うん。アプローチはあれでよかったんだと思うけど。
そうして、自分から婚約破棄を提案する作戦が失敗し、私はゲームのような断罪展開になることを警戒していた。
しかし、ステラをいじめてはいないため、乙ゲーのような展開は今の所ない。
このまま何事もなく、時が過ぎていくのかな。
そう思い始めていた私は、いつも通りに過ごせるようになっていた。
授業を受けて、お昼休みには図書館に行って、読書か本探し。
放課後も図書館に行って、勉強か読書。
そして、たまにカイルたちとお茶する――――平穏な生活を送っていた。
他の人からすれば退屈なのかもしれないけど、私にとっては最高の生活。
平穏こそ一番。
そんな穏やかな日々が続いていたある日。
「え? お茶ですか?」
「そーそー」
突然アースが「君とお茶がしたーい」と誘ってきた。
「なぜ私? 友達いないの?」なんて思ったが、断る理由もないため了承。
その時は私1人しかいなかったので、私とアースで彼の研究室に向かった。
彼の研究室は整理でもしたのか、以前来た時よりも物が減り、少しだけすっきり。
まぁ、大机は書類や研究道具でいっぱいになっていた。
私はアースに促され、大机の近くにあった椅子に座る。
アースの方は机の反対側に立ち、準備を始めだした。
彼は火魔法を使ってお湯を沸かし、一旦ティーポットとカップを温め、お茶を入れていく。彼の所作は性格とは相まって随分と丁寧。慣れているようだった。
この人、どちからというと研究者という認識が強いけど、れっきとした王子様なんだよね。
だから、常時近くにお手伝いさんの1人や2人いてもおかしくないと思うのだけど。
しかし、見渡してもそんな人は見当たらない。
イザベラみたいに寮の自室にいるのかな?
「はい、どーぞー」
王子アース様から出されたお茶。
そのお茶からは爽やかなマスカットの香りがしてきた。
紅茶はダージリンかな?
「じゃあ、いただきます」
「どうぞー」
一口飲む。
…………うん、美味しい。さすが王子様が仕入れる紅茶。
「どうー? 僕の紅茶美味しいー?」
「ええ、美味しいわ」
「そうだよねー。よかったらこれも食べてねー」
そう言って、アースが出してきたのはマカロン。
ピンク、黄色、緑、紫、茶色、白とカラフルなもの。
「これ、アースが作ったの?」
「いやー。違うよー」
「誰かが作ったのー?」
「僕の……そうだね、お手伝いさんに作ってもらったよー」
ピンクのマカロンを1つ取り、食べてみる。
そのマカロンはもちろん美味しかった。
が、その味は覚えがあるもの。
「これ、どこかで食べたことがあるわ」
「え? そうなのー?」
「最近食べた気がする」
あ、思い出した。カイルとデートをした時だ。
会長のお使いでこのマカロンを買ったんだ。
それで私も気になって何個か買って、食べたんだっけ?
店の名前を出して買ったのかとアースに尋ねた。
が、彼は首を横に振った。
「いや、違うよ。買ってはないよー。さっきも言ったように、お手伝いさんに作ってもらったのさー」
「そうだったわね……でも、あの店のマカロンと味が似てる」
「そのマカロンはお手伝いさんに再現してもらったからねー。似てるには当然かもー」
「え?」
「最近ねーというか昨日ねー、僕も『お店のマカロンをお手伝いさんと一緒に食べてんだー。それで気に入ったものだから、お手伝いさんに再現してもらったんだよー」
「昨日って…………生徒会にきたお偉いさんってアースだったのね」
すると、アースはてへっとか言ってウィンク。
てへっじゃないわよ。
「それで、生徒会には何しに行ってたの?」
「ちょっと会長とお話をしていたよー」
「ふーん。そうなの」
まぁ、会長もまだ婚約していない公爵家の人だし、隣国の王子と話をするのはおかしくないかー。
もう1つマカロンをいただく。
次に食べたのは黄色のマカロン。味はレモンだった。
味はあのお店のものみたい。
本当にお手伝いさんが凄いわ。
的確に再現するだなんて。
きっといい舌を持ってるんでしょうね。
そうして、紅茶とマカロンをいただきながら、他愛のない話をしていた。
アースは今何の研究をしているのか、とかね。
なんだかんだ知らなかったから、ざっくりと教えてもらった。
魔法石関連の研究をしているらしい。
そう聞くと、アースの研究室にはいろんなものがおかれているが、魔法石が一番多くあるかもしれないと思った。
会って間もない頃、魔法石でどこかに吹っ飛ばされたことも、彼の研究の1つだったのかもしれない。
迷惑極まりないけど。
そうして、研究室を見渡していると、私はあるものが目に入った。
それは黒い大鎌。死神が持っていそうな、あの鎌。
この前まで見かけなかったものだ。
「その鎌、随分と大きいわね。一体何に使うの?」
「うーん……護身用?」
「随分と物騒ね」
「僕は有名人だから、命が狙われることもあるのさー」
まぁ、王子様だから、大切な預言者様だから、アースが命を狙われるのは分かる。
分かるけども。
でも、この人の場合はなぁ……。
四方八方にケンカを売ってそうだから、たくさんの人の恨みを買ってそう。
そのせいで、余計に命を狙われるんじゃないかって思うのだけど。
「命が狙われるって言ってたけど、アースはこれで人を殺したことがあるの?」
「ないと思うよー。大体、そういったことは護衛に任せてるしー」
「護衛さんにやってもらうのね……なら、ないって言い切ればいいのに」
すると、アースは肩をすくめ、答えた。
「えー、いやー。『もしかして僕、人を殺しちゃった?』って場合があるかもしれないじゃーん」
「ないわよ。人を殺したら、殺したって分かるでしょう」
「じゃあ、殺したことあるかもー」
「…………なぜ濁すのよ」
すると、アースはちょっと苦しそうに笑う。
「さぁー、どうしてなんだろうね?」
と、いつになく小さな声で言った。
「たまにね、夢を見るんだ」
「夢?」
「うん、変な夢をね」
「それは具体的には……どんな夢なの?」
アースはこっちを真っすぐ見る。
頑張って笑ってはいた。でも、苦しそうに見えた。
「君を殺す夢」
「え?」
…………この人、何を言ってるの?
予想外の回答に、驚きを隠せない。
…………ま、まぁ?
夢の中の話だし、ありないこともあるようにできるし?
なんだったら、アースは出会った時も、私を殺そうとしていたし?
気にすることなんて、何一つないと思うし?
――――いや、待て私。
夢の中で殺そうとしているってことは、潜在的にアースは私を恨んでる?
え?
は?
恨まれるようなことしたおぼえないよ?
むしろ、こっちがこの人の態度で恨みたくなる時があるよ?
ってことを考えていたが、アースは気にすることなくそのまま話を続けていく。
「君だけじゃない。ライアンを殺す夢、エドガーを殺す夢、アッシュバーナム君やリリー嬢、キーランを殺す夢、国民全員を殺す夢、そして…………自殺する夢」
「悪夢ね」
「ほんとにね。寝起きは最悪な気分になるよ」
アースはくるりと翻し、背を向ける。
「またね、その夢がさ。妙にリアルなんだ……殺す直前、みんな僕を怪物みたいな目で見るんだよ」
「まさか前世の記憶?」
「あはは。そうだったら、まぁ、僕も受け入れられるけど……でもきっと違う。君たちみたいに、前に生きてた記憶なんてない」
アースならありそうなものだけど。
「夢で人を殺す時、いつもこの鎌なんだ。だから、この鎌を見るたびに僕は人を殺したんじゃないのかって思っているわけさ」
だから、人殺しの質問の回答を濁してしまう、と。
その夢の話を聞いた私は疑問を口にする。
「じゃあ、なんでこんなところに置いてるの? この鎌のせいで夢を見るんじゃないの? 呪いでも掛けられているんじゃない?」
「そうだと思いたいけど、呪いはなかった。すでにチェック済みさ」
「一回手放したりした? 捨ててみた?」
「したよ」
アースは静かににこりと笑う。
「でも、なぜかすぐに僕の元に返ってきた」
あら?
いつかの指輪みたいなことが起きてるじゃない。
「まぁ、ある人にさその鎌を捨てられてからは、突然返ってこなくなったんだよねー。面白い話だよねー」
「え? それって誰なの?」
「捨ててからは必死に探して、全然見つからなかった時は本当に焦ったよー」
「ねぇ、それは誰なのよ」
「なぜ僕がリアルな悪夢を見るのか、その謎を解明するために、鎌を置いているってわけさー!」
アースはそう言って、アッハッハッ!と愉快そうに笑った。
また、私の質問をスルーするんですか。
呆れた私は椅子に座り、少し冷めた紅茶を飲む。
「それで本題は?」
「ほんだーい?」
「そうよ。私を紅茶に誘った本題」
思い出したかのように、彼は「あー」と呟く。
「君、街に行くといいよ」
「街? なに、突然」
「街に行けば、君が求めているものに出会えると思うから」
「私が求めているもの……?」
求めているものって『長生き』なんだけど、それに繋がるものが街にあるのだろうか。
「ああ、街に出る時は1人で行った方がいいと思う」
「なぜ1人?」
「その方が確実に出会えると思うから」
「また、黒月の魔女が出たらどうするの?」
「それは大丈夫でしょー」
「…………」
アースの気軽に言うことは、信用できないんだよなぁ。
まぁ、黒月の魔女の件が大丈夫というのなら。
「ともかく街に行ってみるといいよ」
ちょっと出るくらいなら、いっか。
そうして、私はアースに言われたとおり、街に行くことにした。
ライアンを呼び出して、婚約解消の提案をした。
だが、彼にはあっさりと断られた。
しかもなかったことにされた。
ライアンがあんなことで同様するとは思えない。
急に切り出し過ぎたのかな?
…………いや、でも遠回りに話ったって、「君は何が言いたいの?」って言ってきそうだし。
うん。アプローチはあれでよかったんだと思うけど。
そうして、自分から婚約破棄を提案する作戦が失敗し、私はゲームのような断罪展開になることを警戒していた。
しかし、ステラをいじめてはいないため、乙ゲーのような展開は今の所ない。
このまま何事もなく、時が過ぎていくのかな。
そう思い始めていた私は、いつも通りに過ごせるようになっていた。
授業を受けて、お昼休みには図書館に行って、読書か本探し。
放課後も図書館に行って、勉強か読書。
そして、たまにカイルたちとお茶する――――平穏な生活を送っていた。
他の人からすれば退屈なのかもしれないけど、私にとっては最高の生活。
平穏こそ一番。
そんな穏やかな日々が続いていたある日。
「え? お茶ですか?」
「そーそー」
突然アースが「君とお茶がしたーい」と誘ってきた。
「なぜ私? 友達いないの?」なんて思ったが、断る理由もないため了承。
その時は私1人しかいなかったので、私とアースで彼の研究室に向かった。
彼の研究室は整理でもしたのか、以前来た時よりも物が減り、少しだけすっきり。
まぁ、大机は書類や研究道具でいっぱいになっていた。
私はアースに促され、大机の近くにあった椅子に座る。
アースの方は机の反対側に立ち、準備を始めだした。
彼は火魔法を使ってお湯を沸かし、一旦ティーポットとカップを温め、お茶を入れていく。彼の所作は性格とは相まって随分と丁寧。慣れているようだった。
この人、どちからというと研究者という認識が強いけど、れっきとした王子様なんだよね。
だから、常時近くにお手伝いさんの1人や2人いてもおかしくないと思うのだけど。
しかし、見渡してもそんな人は見当たらない。
イザベラみたいに寮の自室にいるのかな?
「はい、どーぞー」
王子アース様から出されたお茶。
そのお茶からは爽やかなマスカットの香りがしてきた。
紅茶はダージリンかな?
「じゃあ、いただきます」
「どうぞー」
一口飲む。
…………うん、美味しい。さすが王子様が仕入れる紅茶。
「どうー? 僕の紅茶美味しいー?」
「ええ、美味しいわ」
「そうだよねー。よかったらこれも食べてねー」
そう言って、アースが出してきたのはマカロン。
ピンク、黄色、緑、紫、茶色、白とカラフルなもの。
「これ、アースが作ったの?」
「いやー。違うよー」
「誰かが作ったのー?」
「僕の……そうだね、お手伝いさんに作ってもらったよー」
ピンクのマカロンを1つ取り、食べてみる。
そのマカロンはもちろん美味しかった。
が、その味は覚えがあるもの。
「これ、どこかで食べたことがあるわ」
「え? そうなのー?」
「最近食べた気がする」
あ、思い出した。カイルとデートをした時だ。
会長のお使いでこのマカロンを買ったんだ。
それで私も気になって何個か買って、食べたんだっけ?
店の名前を出して買ったのかとアースに尋ねた。
が、彼は首を横に振った。
「いや、違うよ。買ってはないよー。さっきも言ったように、お手伝いさんに作ってもらったのさー」
「そうだったわね……でも、あの店のマカロンと味が似てる」
「そのマカロンはお手伝いさんに再現してもらったからねー。似てるには当然かもー」
「え?」
「最近ねーというか昨日ねー、僕も『お店のマカロンをお手伝いさんと一緒に食べてんだー。それで気に入ったものだから、お手伝いさんに再現してもらったんだよー」
「昨日って…………生徒会にきたお偉いさんってアースだったのね」
すると、アースはてへっとか言ってウィンク。
てへっじゃないわよ。
「それで、生徒会には何しに行ってたの?」
「ちょっと会長とお話をしていたよー」
「ふーん。そうなの」
まぁ、会長もまだ婚約していない公爵家の人だし、隣国の王子と話をするのはおかしくないかー。
もう1つマカロンをいただく。
次に食べたのは黄色のマカロン。味はレモンだった。
味はあのお店のものみたい。
本当にお手伝いさんが凄いわ。
的確に再現するだなんて。
きっといい舌を持ってるんでしょうね。
そうして、紅茶とマカロンをいただきながら、他愛のない話をしていた。
アースは今何の研究をしているのか、とかね。
なんだかんだ知らなかったから、ざっくりと教えてもらった。
魔法石関連の研究をしているらしい。
そう聞くと、アースの研究室にはいろんなものがおかれているが、魔法石が一番多くあるかもしれないと思った。
会って間もない頃、魔法石でどこかに吹っ飛ばされたことも、彼の研究の1つだったのかもしれない。
迷惑極まりないけど。
そうして、研究室を見渡していると、私はあるものが目に入った。
それは黒い大鎌。死神が持っていそうな、あの鎌。
この前まで見かけなかったものだ。
「その鎌、随分と大きいわね。一体何に使うの?」
「うーん……護身用?」
「随分と物騒ね」
「僕は有名人だから、命が狙われることもあるのさー」
まぁ、王子様だから、大切な預言者様だから、アースが命を狙われるのは分かる。
分かるけども。
でも、この人の場合はなぁ……。
四方八方にケンカを売ってそうだから、たくさんの人の恨みを買ってそう。
そのせいで、余計に命を狙われるんじゃないかって思うのだけど。
「命が狙われるって言ってたけど、アースはこれで人を殺したことがあるの?」
「ないと思うよー。大体、そういったことは護衛に任せてるしー」
「護衛さんにやってもらうのね……なら、ないって言い切ればいいのに」
すると、アースは肩をすくめ、答えた。
「えー、いやー。『もしかして僕、人を殺しちゃった?』って場合があるかもしれないじゃーん」
「ないわよ。人を殺したら、殺したって分かるでしょう」
「じゃあ、殺したことあるかもー」
「…………なぜ濁すのよ」
すると、アースはちょっと苦しそうに笑う。
「さぁー、どうしてなんだろうね?」
と、いつになく小さな声で言った。
「たまにね、夢を見るんだ」
「夢?」
「うん、変な夢をね」
「それは具体的には……どんな夢なの?」
アースはこっちを真っすぐ見る。
頑張って笑ってはいた。でも、苦しそうに見えた。
「君を殺す夢」
「え?」
…………この人、何を言ってるの?
予想外の回答に、驚きを隠せない。
…………ま、まぁ?
夢の中の話だし、ありないこともあるようにできるし?
なんだったら、アースは出会った時も、私を殺そうとしていたし?
気にすることなんて、何一つないと思うし?
――――いや、待て私。
夢の中で殺そうとしているってことは、潜在的にアースは私を恨んでる?
え?
は?
恨まれるようなことしたおぼえないよ?
むしろ、こっちがこの人の態度で恨みたくなる時があるよ?
ってことを考えていたが、アースは気にすることなくそのまま話を続けていく。
「君だけじゃない。ライアンを殺す夢、エドガーを殺す夢、アッシュバーナム君やリリー嬢、キーランを殺す夢、国民全員を殺す夢、そして…………自殺する夢」
「悪夢ね」
「ほんとにね。寝起きは最悪な気分になるよ」
アースはくるりと翻し、背を向ける。
「またね、その夢がさ。妙にリアルなんだ……殺す直前、みんな僕を怪物みたいな目で見るんだよ」
「まさか前世の記憶?」
「あはは。そうだったら、まぁ、僕も受け入れられるけど……でもきっと違う。君たちみたいに、前に生きてた記憶なんてない」
アースならありそうなものだけど。
「夢で人を殺す時、いつもこの鎌なんだ。だから、この鎌を見るたびに僕は人を殺したんじゃないのかって思っているわけさ」
だから、人殺しの質問の回答を濁してしまう、と。
その夢の話を聞いた私は疑問を口にする。
「じゃあ、なんでこんなところに置いてるの? この鎌のせいで夢を見るんじゃないの? 呪いでも掛けられているんじゃない?」
「そうだと思いたいけど、呪いはなかった。すでにチェック済みさ」
「一回手放したりした? 捨ててみた?」
「したよ」
アースは静かににこりと笑う。
「でも、なぜかすぐに僕の元に返ってきた」
あら?
いつかの指輪みたいなことが起きてるじゃない。
「まぁ、ある人にさその鎌を捨てられてからは、突然返ってこなくなったんだよねー。面白い話だよねー」
「え? それって誰なの?」
「捨ててからは必死に探して、全然見つからなかった時は本当に焦ったよー」
「ねぇ、それは誰なのよ」
「なぜ僕がリアルな悪夢を見るのか、その謎を解明するために、鎌を置いているってわけさー!」
アースはそう言って、アッハッハッ!と愉快そうに笑った。
また、私の質問をスルーするんですか。
呆れた私は椅子に座り、少し冷めた紅茶を飲む。
「それで本題は?」
「ほんだーい?」
「そうよ。私を紅茶に誘った本題」
思い出したかのように、彼は「あー」と呟く。
「君、街に行くといいよ」
「街? なに、突然」
「街に行けば、君が求めているものに出会えると思うから」
「私が求めているもの……?」
求めているものって『長生き』なんだけど、それに繋がるものが街にあるのだろうか。
「ああ、街に出る時は1人で行った方がいいと思う」
「なぜ1人?」
「その方が確実に出会えると思うから」
「また、黒月の魔女が出たらどうするの?」
「それは大丈夫でしょー」
「…………」
アースの気軽に言うことは、信用できないんだよなぁ。
まぁ、黒月の魔女の件が大丈夫というのなら。
「ともかく街に行ってみるといいよ」
ちょっと出るくらいなら、いっか。
そうして、私はアースに言われたとおり、街に行くことにした。
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