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第2章 対抗編
35 春に学園で
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お母様に学園入学拒否宣言をしてから数日後。
話を聞いたカイルたちが、私の元に駆けこんできた。
「ルーシー、君、正気っ!?」
「キーランに何を吹き込まれたんですかっ!?」
「………………学園に行かないってどういうつもりだ」
3人とも驚いていた。異常なぐらいに驚いていた。
まぁ、彼らの気持ちは分からなくもない。
行くと思っていた友人が突然学園に行かないというのだから。
私は「自分の意思で決めたことだから」と説明すると、彼らは「分かった」と返事。
だが、納得はしていなさそうで、不満そうだった。
————そして、なぜかみんなキーランを睨んでいた。
★★★★★★★★
そして、1週間後のこと。
突然、彼が屋敷にやってきた。
彼がラザフォード家にやってきたのはあの例のお茶会以来のこと。
本当に突然すぎる。
前日に来るって連絡くれないかしら?
暴れだしそうな苛立ちを押さえながら、準備し、彼が待っている部屋へと向かう。
しかし、彼と目を合わせた瞬間、苛立ちは消失。
私、何かやらかしたかしら?
最近は昔みたいにおかしなことはしていないはずなんだけど?
むしろ、恐怖を感じていた。
挨拶をし、彼の正面に座った。が、彼とは目を合わせられない。
だって、なんか怖いんだもん。
黙っていると、彼から話し始めた。
「ラザフォード公爵から聞いたんけど………ルーシー、君、学園に行かないって本当?」
突然訪れてきた彼————ライアン王子はそんなことを聞いてきた。
ライアンもまた、私たちの同じように成長していた。
男の子ということもあり、私よりもずっと身長は高い。
そして、昔あった幼さも消え、立派な青年に育っていた。
声とかさっきの顔から察するに、かなり不機嫌そう。
でも、なんで、こんなに不機嫌そうなの?
「はい。私と弟のキーランは学園に入学しないことにいたしました」
「別に君の弟のことは聞いてない」
強い口調で、そう言われる。
こ、こわ。
いつものライアン王子とは違い過ぎない? いつもの笑顔の仮面はどこにいったの?
「なぜ、学園に入学しないって決めたの? もしかして、他国の学園に行くつもり?」
「い、いえ。この屋敷で勉学に励もうと思っておりました。どの学園にも入学するつもりはありません」
「………………」
私の返事に、黙るライアン。
こちらから視線を外し、彼はじっと考え始めた。
なんて、言われるんだろ?
舌打ち? 怒鳴られる?
————もしかして、婚約破棄してくれる?
『こんな婚約者、もうたくさんだ!』とか言って。
彼の方をちらりと窺う。ライアンは片手で目を隠していた。
「なんで君は………………」という呟きが聞こえてくる。
あ! これはもしかして!
「なんで君は婚約者らしい立ち振る舞いができないんだ」とか思って、私に呆れて、婚約を破棄にしてくれるんじゃ?
すると、ライアンはハァーと息をつき、私の方に目を向けた。
「………………ルーシー、本当に学園に行かないつもり?」
「はい」
私は迷いなくはっきりと答える。
「そう………………」
ライアンはもう一度溜息をつき、そして、立ち上がった。
もう帰るのかな?
私の意思確認に来たってだけだったのかな?
ライアンが帰ると思い、私も立ち上がる。
しかし、立ち上がったライアンは扉の方へとは向かわず、私の方にやってきていた。
そして————。
————————パンっ!!
部屋にその音が響く。
その音とともに頬に痛みが走った。
私はライアンにビンタされていた。
「………………え?」
なんで? ビンタなんてされたの?
驚きのあまり、私は呆然。
「ねぇ、学園に行かないって冗談だよね?」
「………………え?」
「『え?』じゃないよ。君はね、僕の婚約者なんだよ? その自覚ある?」
確かにそうだけど。
でも、学園に行けば、私はきっと邪魔者扱い。
彼のルートに入れば、ヒロインちゃんと出会って、彼女と仲良くなって、そして、彼女のと婚約をする。
たとえ、ルートに入らなくても、ヒロインちゃんと仲良くしたがるライアンは私が邪魔で厄介なはず。
だから、ライアンにとって、私は学園にいない方がいい人間。
まぁ、そんな説明をしたって、ライアンは納得はしないし、理解もしてくれない。
「君がラザフォード公爵に、陛下になんて言ったのかは知らないけど、僕は学園に行かないなんて許さない」
ただ、彼に対して、1つだけ疑問がある。
「僕の婚約者である君は、僕と同じ学園に通う。いいね?」
なぜ、私のことが好きじゃないのに——むしろ嫌いだろうに——学園に来るように言うの?
「それじゃあ、ルーシー。春に学園で」
そう言って、私の婚約者は去っていった。
★★★★★★★★
時は過ぎて春。
ルーシーたちが通うことになる、王立シエルノクターン学園。
その門前には大きなバッグを持った少女が1人。
彼女は正門を前にし、立っていた。
「ここがシエルノクターン学園………」
風が吹き、彼女の金髪の髪をふわりと揺れる。
「ついに、ついにここに来たのね、私」
嬉しそうに呟く少女。
そんな彼女の瞳には決意に満ちたハイライト。
「よしっ、行こう!」
気合いを入れた彼女は力強く一歩を踏み出した。
話を聞いたカイルたちが、私の元に駆けこんできた。
「ルーシー、君、正気っ!?」
「キーランに何を吹き込まれたんですかっ!?」
「………………学園に行かないってどういうつもりだ」
3人とも驚いていた。異常なぐらいに驚いていた。
まぁ、彼らの気持ちは分からなくもない。
行くと思っていた友人が突然学園に行かないというのだから。
私は「自分の意思で決めたことだから」と説明すると、彼らは「分かった」と返事。
だが、納得はしていなさそうで、不満そうだった。
————そして、なぜかみんなキーランを睨んでいた。
★★★★★★★★
そして、1週間後のこと。
突然、彼が屋敷にやってきた。
彼がラザフォード家にやってきたのはあの例のお茶会以来のこと。
本当に突然すぎる。
前日に来るって連絡くれないかしら?
暴れだしそうな苛立ちを押さえながら、準備し、彼が待っている部屋へと向かう。
しかし、彼と目を合わせた瞬間、苛立ちは消失。
私、何かやらかしたかしら?
最近は昔みたいにおかしなことはしていないはずなんだけど?
むしろ、恐怖を感じていた。
挨拶をし、彼の正面に座った。が、彼とは目を合わせられない。
だって、なんか怖いんだもん。
黙っていると、彼から話し始めた。
「ラザフォード公爵から聞いたんけど………ルーシー、君、学園に行かないって本当?」
突然訪れてきた彼————ライアン王子はそんなことを聞いてきた。
ライアンもまた、私たちの同じように成長していた。
男の子ということもあり、私よりもずっと身長は高い。
そして、昔あった幼さも消え、立派な青年に育っていた。
声とかさっきの顔から察するに、かなり不機嫌そう。
でも、なんで、こんなに不機嫌そうなの?
「はい。私と弟のキーランは学園に入学しないことにいたしました」
「別に君の弟のことは聞いてない」
強い口調で、そう言われる。
こ、こわ。
いつものライアン王子とは違い過ぎない? いつもの笑顔の仮面はどこにいったの?
「なぜ、学園に入学しないって決めたの? もしかして、他国の学園に行くつもり?」
「い、いえ。この屋敷で勉学に励もうと思っておりました。どの学園にも入学するつもりはありません」
「………………」
私の返事に、黙るライアン。
こちらから視線を外し、彼はじっと考え始めた。
なんて、言われるんだろ?
舌打ち? 怒鳴られる?
————もしかして、婚約破棄してくれる?
『こんな婚約者、もうたくさんだ!』とか言って。
彼の方をちらりと窺う。ライアンは片手で目を隠していた。
「なんで君は………………」という呟きが聞こえてくる。
あ! これはもしかして!
「なんで君は婚約者らしい立ち振る舞いができないんだ」とか思って、私に呆れて、婚約を破棄にしてくれるんじゃ?
すると、ライアンはハァーと息をつき、私の方に目を向けた。
「………………ルーシー、本当に学園に行かないつもり?」
「はい」
私は迷いなくはっきりと答える。
「そう………………」
ライアンはもう一度溜息をつき、そして、立ち上がった。
もう帰るのかな?
私の意思確認に来たってだけだったのかな?
ライアンが帰ると思い、私も立ち上がる。
しかし、立ち上がったライアンは扉の方へとは向かわず、私の方にやってきていた。
そして————。
————————パンっ!!
部屋にその音が響く。
その音とともに頬に痛みが走った。
私はライアンにビンタされていた。
「………………え?」
なんで? ビンタなんてされたの?
驚きのあまり、私は呆然。
「ねぇ、学園に行かないって冗談だよね?」
「………………え?」
「『え?』じゃないよ。君はね、僕の婚約者なんだよ? その自覚ある?」
確かにそうだけど。
でも、学園に行けば、私はきっと邪魔者扱い。
彼のルートに入れば、ヒロインちゃんと出会って、彼女と仲良くなって、そして、彼女のと婚約をする。
たとえ、ルートに入らなくても、ヒロインちゃんと仲良くしたがるライアンは私が邪魔で厄介なはず。
だから、ライアンにとって、私は学園にいない方がいい人間。
まぁ、そんな説明をしたって、ライアンは納得はしないし、理解もしてくれない。
「君がラザフォード公爵に、陛下になんて言ったのかは知らないけど、僕は学園に行かないなんて許さない」
ただ、彼に対して、1つだけ疑問がある。
「僕の婚約者である君は、僕と同じ学園に通う。いいね?」
なぜ、私のことが好きじゃないのに——むしろ嫌いだろうに——学園に来るように言うの?
「それじゃあ、ルーシー。春に学園で」
そう言って、私の婚約者は去っていった。
★★★★★★★★
時は過ぎて春。
ルーシーたちが通うことになる、王立シエルノクターン学園。
その門前には大きなバッグを持った少女が1人。
彼女は正門を前にし、立っていた。
「ここがシエルノクターン学園………」
風が吹き、彼女の金髪の髪をふわりと揺れる。
「ついに、ついにここに来たのね、私」
嬉しそうに呟く少女。
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