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第1章 出会い編
18 エドガー視点:俺は推しの婚約者の弟
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俺はエドガー・ムーンセイバー。9歳。ムーンセイバー王国第3王子である。
俺には兄が2人いるが、そのうち1人の兄と剣の稽古をしていた。
その兄はかなり優秀で、俺と同じ兄弟とは思えないほど。
そして、今俺は彼に押し負け、倒れていた。
遠くには自分の木刀が転がっている。
「どうしたんだ? ぼっーとして。大丈夫か?」
「…………」
兄は座り込んだままの俺を心配したのか、そんな声を掛けてくる。
そして、こちらに手を差し伸べてきた。
「エドガー?」
俺の名前を呼ぶ兄の姿は、前世でなりたいと願った姿。
そう。
その時、俺は前世の記憶を思い出した。
今、思うともう少し思い出すのが早ければよかったのかもしれない。
――――――――――――彼女と婚約ができたのかもしれない。
そう後悔するきっかけになった俺の前世はこんなものだった。
★★★★★★★★
前世の俺はかなりの不良だった。
ケンカはするし、授業もまともに受けない。数日間学校に行かない時だってあった。
そんな高校生活を送っていた俺には1人の姉貴がいた。
姉貴の名前は幸音。
俺もそこそこケンカが強かったが、姉貴はそんな俺をボコボコにしてしまうぐらい、ケンカに強かった。
ヤンキー? レディース?
いやいや、姉貴はそんなものではない。
普通に女子大生をしていたさ……………………ヲタク女子大生を。
一度、俺はそんな姉貴の趣味について文句を言った時があった。
案の定、お怒りになった姉貴は俺をボコり始めた。
………………容赦なかった。
あの時、もし親が止めてくれなかったら、俺は死んでいたかもしれない。
そして、俺は世界で一番怖いのは姉貴だ、と考えるようになった。
また、姉貴の趣味のことを絶対にいじってはならない、バカにしてはならない。
そんな決まりも俺にはできていた。
「ねぇ、あんた。これやってみない?」
とある日姉貴がそれを渡してきた。
『Twin Flame』と書かれたボックス。そのボックスにはイケメンの男どもが描かれていた。
どこからどう見ても男の俺がするゲームではない。
「俺はしない。だいたい、それ女子向けだろ?」
「そうだけど、最近は男子もやってる子多いよ? やってみなよ」
「いや、しな――」
その瞬間、鋭い視線が刺さる。
姉貴が鷹のような目で俺を見ていた。
「俺は……」
「しなさい」
「…………はい」
そうして、俺は渋々そのゲームをすることに。
数日後。
「おもろいじゃねぇか………」
俺はそのゲームにまんまとハマっていた。
全ルートをクリア後、俺はルーシーを見たくて、ライアンルートに全力疾走。
あの強くて可憐なルーシーが好きだった。
仲間だった同じ不良のやつらに「最近お前付き合いが悪いじゃねぇーか」なんて言われたが、決して乙女ゲームをやっているなんて、それにドハマりしているなんて言えない。
そのうち、彼らとの付き合いも減った。いや、減らした。
だって、あのゲームをプレイしていたいだろ?
ルーシーと話していた方が楽しいだろ?
そして、久しぶりに学校に行ってみると、『Twin Flame』について語っている女子たちを見つけた。
それを耳にした俺はソワソワ。
正直あの女子どもの会話に入りたい。そう思った。
さらに彼女たちは2次創作も書いているようで、なおさら入りたいと思った。
だが、入ったところで煙たがれるだけ。きっと男子のやつらにも変な目で見られる。
しかし、俺はその女子の話を聞くために、毎日学校に行くようになっていた。
――――――――1週間全く学校に行かない時があった俺が、だ。
自分でも不思議に思った。
そうして、学校に毎日行くようになった、ある日のこと。
授業が終わると、俺は担任に呼び止められた。
「お前、最近ちゃんと学校来てるな」
「…………はい」
「お前は出席日数ギリギリだからな。この調子で学校に来てくれよ。それにしても、最近のお前は随分と大人しいが学校に楽しみでも見つけたのか?」
「……………………まぁ、はい」
担任は俺の楽しみを知りたいのか、目をワクワクさせていた。
……………………い、言えない。
乙ゲーにハマって、クラスメイトのヲタク女子の会話に耳を澄ませているなんて、絶対に言えない。
なんて答えたらいいのか分からず、俺は目を泳がせてしまう。
すると、担任は何を思ったのか『アハハっ、青春だな!』と言って、去っていった。
これ、きっと何かと勘違いされたな……まぁ、いっか。
そして、俺は家に真っすぐ帰り、「Twin Flame」をプレイ。
一時して姉貴が帰ってきて、俺のプレイを見始めていた。
「相変わらずこれをやってるんだねぇ。ねぇ、他の乙ゲーもしてみない?」
「……………………いつかする」
と俺が答えると、さささっと動き始めた姉貴。数秒して彼女は部屋から何かを持ってきた。
隣を見ると、そこには積み重なったボックスが。
これはやれってことだな………………まぁ、後でやってやろう。
隣でプレイを見ていた姉貴。
彼女は何を思ったのか、次のような話題を出してきた。
「最近転生もの流行っているじゃん?」
「そう……らしいな」
「もしさ、本当にゲームのキャラクターに転生できたら、あんたは誰に転生したい?」
「ライアン王子」
当然、俺は即答。
転生するのなら、大好きなルーシーの近くにいれる人間がいいに決まってる。
姉貴も分かっていたのか、うんうんと大きく頷く。
「そうよねぇ。あんた、あの悪役令嬢が好きなんだものねぇ。珍しいわぁ」
「珍しい? そうなのか?」
「そうよ。まぁ、あんたは男子だし、女子キャラが好きになるっているのも分かるけど、だからといってあの悪役令嬢を好きになるやつなんてそういないわ」
そうなのか……そういや、クラスの女子もルーシーは嫌いって言っていたな。
フフ……ルーシーの良さが分かってねぇな。バカなやつめ。
「でも、悪役令嬢推しなら、あれには転生したくないわね」
「あれ?」
すると、姉貴はふっと笑う。
「ほら、アイツだよ。ライアン王子の弟の――――」
★★★★★★★★
「………………エドガー・ムーンセイバー」
俺はエドガー。転生したかったやつの弟。
そして、目の前にいるのが。
「………………ライアン」
彼は前世の俺が転生したいと思った人だった。
「……どうしたんだ? 自分のと俺の名前なんて呟いて……体の調子でも悪いのか?」
心配そうな顔を向けてくるライアン。
彼は8歳の頃にルーシーと婚約している。
そして、今、俺たちは9歳。
しかし、ゲームではルーシーとライアンが婚約するのが10歳。
なのに、婚約している………………なぜ?
それに、俺は一番転生したくないやつになってしまった。
ルーシーとライアンの婚約と同じくらい最悪のことだった。
俺の胸には絶望しかなかった。
ルーシーを諦める? 婚約破棄まで待つ?
――――――――――――いや、違うよなぁ。
そんなのじゃ、ルーシーは幸せになんかならないよな。
推しは絶対追いかけるんだよな。
推しは絶対に俺たちが幸せにするんだよな?
――――――――――――なぁ、姉貴?
「体調が悪い? 何言ってやがる、ライアン。さぁ、稽古の続き始めるぞ」
「………………え? え?」
俺はライアンの手を取らず、1人で立ち上がり、木刀を取りに行く。
ライアンはというと、態度が急変した俺に動揺。
絶対に兄貴からルーシーを奪ってやる。
そう決意したエドガー。
彼がその日以来大きく変わっていくことは誰も予測していなかった。
俺には兄が2人いるが、そのうち1人の兄と剣の稽古をしていた。
その兄はかなり優秀で、俺と同じ兄弟とは思えないほど。
そして、今俺は彼に押し負け、倒れていた。
遠くには自分の木刀が転がっている。
「どうしたんだ? ぼっーとして。大丈夫か?」
「…………」
兄は座り込んだままの俺を心配したのか、そんな声を掛けてくる。
そして、こちらに手を差し伸べてきた。
「エドガー?」
俺の名前を呼ぶ兄の姿は、前世でなりたいと願った姿。
そう。
その時、俺は前世の記憶を思い出した。
今、思うともう少し思い出すのが早ければよかったのかもしれない。
――――――――――――彼女と婚約ができたのかもしれない。
そう後悔するきっかけになった俺の前世はこんなものだった。
★★★★★★★★
前世の俺はかなりの不良だった。
ケンカはするし、授業もまともに受けない。数日間学校に行かない時だってあった。
そんな高校生活を送っていた俺には1人の姉貴がいた。
姉貴の名前は幸音。
俺もそこそこケンカが強かったが、姉貴はそんな俺をボコボコにしてしまうぐらい、ケンカに強かった。
ヤンキー? レディース?
いやいや、姉貴はそんなものではない。
普通に女子大生をしていたさ……………………ヲタク女子大生を。
一度、俺はそんな姉貴の趣味について文句を言った時があった。
案の定、お怒りになった姉貴は俺をボコり始めた。
………………容赦なかった。
あの時、もし親が止めてくれなかったら、俺は死んでいたかもしれない。
そして、俺は世界で一番怖いのは姉貴だ、と考えるようになった。
また、姉貴の趣味のことを絶対にいじってはならない、バカにしてはならない。
そんな決まりも俺にはできていた。
「ねぇ、あんた。これやってみない?」
とある日姉貴がそれを渡してきた。
『Twin Flame』と書かれたボックス。そのボックスにはイケメンの男どもが描かれていた。
どこからどう見ても男の俺がするゲームではない。
「俺はしない。だいたい、それ女子向けだろ?」
「そうだけど、最近は男子もやってる子多いよ? やってみなよ」
「いや、しな――」
その瞬間、鋭い視線が刺さる。
姉貴が鷹のような目で俺を見ていた。
「俺は……」
「しなさい」
「…………はい」
そうして、俺は渋々そのゲームをすることに。
数日後。
「おもろいじゃねぇか………」
俺はそのゲームにまんまとハマっていた。
全ルートをクリア後、俺はルーシーを見たくて、ライアンルートに全力疾走。
あの強くて可憐なルーシーが好きだった。
仲間だった同じ不良のやつらに「最近お前付き合いが悪いじゃねぇーか」なんて言われたが、決して乙女ゲームをやっているなんて、それにドハマりしているなんて言えない。
そのうち、彼らとの付き合いも減った。いや、減らした。
だって、あのゲームをプレイしていたいだろ?
ルーシーと話していた方が楽しいだろ?
そして、久しぶりに学校に行ってみると、『Twin Flame』について語っている女子たちを見つけた。
それを耳にした俺はソワソワ。
正直あの女子どもの会話に入りたい。そう思った。
さらに彼女たちは2次創作も書いているようで、なおさら入りたいと思った。
だが、入ったところで煙たがれるだけ。きっと男子のやつらにも変な目で見られる。
しかし、俺はその女子の話を聞くために、毎日学校に行くようになっていた。
――――――――1週間全く学校に行かない時があった俺が、だ。
自分でも不思議に思った。
そうして、学校に毎日行くようになった、ある日のこと。
授業が終わると、俺は担任に呼び止められた。
「お前、最近ちゃんと学校来てるな」
「…………はい」
「お前は出席日数ギリギリだからな。この調子で学校に来てくれよ。それにしても、最近のお前は随分と大人しいが学校に楽しみでも見つけたのか?」
「……………………まぁ、はい」
担任は俺の楽しみを知りたいのか、目をワクワクさせていた。
……………………い、言えない。
乙ゲーにハマって、クラスメイトのヲタク女子の会話に耳を澄ませているなんて、絶対に言えない。
なんて答えたらいいのか分からず、俺は目を泳がせてしまう。
すると、担任は何を思ったのか『アハハっ、青春だな!』と言って、去っていった。
これ、きっと何かと勘違いされたな……まぁ、いっか。
そして、俺は家に真っすぐ帰り、「Twin Flame」をプレイ。
一時して姉貴が帰ってきて、俺のプレイを見始めていた。
「相変わらずこれをやってるんだねぇ。ねぇ、他の乙ゲーもしてみない?」
「……………………いつかする」
と俺が答えると、さささっと動き始めた姉貴。数秒して彼女は部屋から何かを持ってきた。
隣を見ると、そこには積み重なったボックスが。
これはやれってことだな………………まぁ、後でやってやろう。
隣でプレイを見ていた姉貴。
彼女は何を思ったのか、次のような話題を出してきた。
「最近転生もの流行っているじゃん?」
「そう……らしいな」
「もしさ、本当にゲームのキャラクターに転生できたら、あんたは誰に転生したい?」
「ライアン王子」
当然、俺は即答。
転生するのなら、大好きなルーシーの近くにいれる人間がいいに決まってる。
姉貴も分かっていたのか、うんうんと大きく頷く。
「そうよねぇ。あんた、あの悪役令嬢が好きなんだものねぇ。珍しいわぁ」
「珍しい? そうなのか?」
「そうよ。まぁ、あんたは男子だし、女子キャラが好きになるっているのも分かるけど、だからといってあの悪役令嬢を好きになるやつなんてそういないわ」
そうなのか……そういや、クラスの女子もルーシーは嫌いって言っていたな。
フフ……ルーシーの良さが分かってねぇな。バカなやつめ。
「でも、悪役令嬢推しなら、あれには転生したくないわね」
「あれ?」
すると、姉貴はふっと笑う。
「ほら、アイツだよ。ライアン王子の弟の――――」
★★★★★★★★
「………………エドガー・ムーンセイバー」
俺はエドガー。転生したかったやつの弟。
そして、目の前にいるのが。
「………………ライアン」
彼は前世の俺が転生したいと思った人だった。
「……どうしたんだ? 自分のと俺の名前なんて呟いて……体の調子でも悪いのか?」
心配そうな顔を向けてくるライアン。
彼は8歳の頃にルーシーと婚約している。
そして、今、俺たちは9歳。
しかし、ゲームではルーシーとライアンが婚約するのが10歳。
なのに、婚約している………………なぜ?
それに、俺は一番転生したくないやつになってしまった。
ルーシーとライアンの婚約と同じくらい最悪のことだった。
俺の胸には絶望しかなかった。
ルーシーを諦める? 婚約破棄まで待つ?
――――――――――――いや、違うよなぁ。
そんなのじゃ、ルーシーは幸せになんかならないよな。
推しは絶対追いかけるんだよな。
推しは絶対に俺たちが幸せにするんだよな?
――――――――――――なぁ、姉貴?
「体調が悪い? 何言ってやがる、ライアン。さぁ、稽古の続き始めるぞ」
「………………え? え?」
俺はライアンの手を取らず、1人で立ち上がり、木刀を取りに行く。
ライアンはというと、態度が急変した俺に動揺。
絶対に兄貴からルーシーを奪ってやる。
そう決意したエドガー。
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