2 / 89
第1章 出会い編
2 運なんてなかった
しおりを挟む
私、ルーシー・ラザフォードが8歳の時。
ようやく彼女の願いの1つが叶った。
それは第2王子に会うこと。
ずっとずっと憧れていた王子様。
特に第2王子とは自分と同い年であり、婚約の可能性も公爵家の人間である私には十分にあった。
どうしても彼に会いたかった私は公爵である父に何度もお願いし、ようやく会わしてもらうことができたのである。
可愛い娘の願いだから聞いてもらえることができたのだろう。
そして、私はお父様と一緒に王城へ。
部屋に案内されるなり、彼がやってきた。
第2王子ライアンはあまりにも美しく、誰もが一目惚れしてしまうぐらいに美形であった。
数か月後、どうのこうのあって、私は第2王子と婚約することに。
婚約で舞い上がった私は何度も何度も王子に会いに行った。
そして、ずっーと付きまとい、私は王子を拘束していた。
好きでもないやつにそんなことをされたら、嫌に決まっている。
想像力に掛ける私はそんなことは考えることはなかった。
ある日、私はいつものようにライアン王子に付きまとい、2人で散歩をしていた。
「殿下、今日はいつも以上に静かですね。お元気がないのですか――――――」
そう声を掛けると、王子はぴたりと足を止める。
私も立ち止まり、彼の顔を覗いた。
そこにあったのはいらだった王子の顔。
そして、彼と目が合った。
「あ――――――――――――」
その瞬間、私の脳内に電撃が走る。
「あ、ああ―――――」
殿下のこちらに向ける瞳。それはそれは冷たいものだった。
そして、全てを思い出した。
★★★★★★★★
その時、思い出したのは前世での記憶。
それはろくなものではなかった。
前世での名前は夜久月魅。
夜久月魅はとことん男運がなかった。
付き合う相手はダメ男ばかり。
別れる原因はいつだって彼氏の浮気だった。
別れるのが10回目になると、友人には『あんたダメ男ばっかり捕まえているじゃない』とバカにされる始末。
だけど、私は諦めなかった。
次こそはと、出会いがあれば付き合い始める。
が、結局ダメ男。
このままじゃ、まともな人との結婚が無理だと思うようになっていた。
いっそのこと一生1人身でもいいかなとも考え始めていた。
そんな時、彼が現れた。
25歳になって間もないころだったと思う。
仕事帰りに私は何を思ったのかゲーセンに1人で寄った。
その時の私はとにかく踊りたかったのだと思う。
素人ながらにダンスゲームをしていたのだけれど、そこに彼が現れた。
彼も仕事帰りだったようで、スーツ姿で踊っていた。
そして、何度も会うようになり、付き合い始めた。
彼とは何より価値観が合うし、デートしても楽しい。顔もスタイルもよく、私にとっては良物件だった。
そうして、彼と付き合い始めて半年が経つと、同棲をしようと話になった。
今まで同棲なんて話は出たことがなかった。そんな話になる前に浮気が発覚し、別れるからだ。
休みと聞いていたので、彼の家に行こうとした時。
彼が他の女といちゃついているのを見つけてしまった。
最初は後輩の子かもしれないと観察していたが、外見からどう見ても違うと判断。
あんなけばけばしい子が後輩なんて思えない。
私は背後から2人にゆっくりと近づき、声を掛ける。
「ねぇ、その子誰?」
「月魅、なんでここに………………」
突然現れた私に動揺する彼。
「ねぇ、その子誰だって聞いているの」
「このおばさんだれぇ~」
私の彼氏にくっついていた女がそう言ってきた。
は?
私がおばさん?
あんたの方がおばさんに見えるだけど。
「ねぇ、その女誰だって言ってるの」
しかし、彼は何も答えてくれず。
そして、私に背を向け。
「どこの人か知らないけれど、きっと人違いだから。だから、早くどっか行ってくれないか?」
と言ってきた。
どこの人か知らないですって?
ふざけないでよ。
昨日会ったじゃない。
「気色悪いんだよ、おばさん」
と彼は付け加え、私を睨む。
冷たい視線。
人生の中で一番鋭く刺さる視線を向けられた。
え?
同棲の話もしたよね?
どこに住みたいか話し合ったじゃない。
なんで、なんで、なんで――――――――――――。
「な゛んでよ!?」
私は2人に飛びかかる。
そこから始まったのは取っ組み合い。
女の髪をひっぱり、彼を平手打ち。
痛みのあまり女は奇声を放つ。
そのせいかは知らない。
周囲の人たちが騒ぎ始めたが、そんなの気にしていられなかった。
私と一緒になってくれるって言ったじゃない!
「放してくれっ!」
彼はそう言って、私を突き飛ばす。
私は橋の手すりに寄りかかろうとするも、その手すりはガタッと音を鳴らし、そして、壊れた。
――――――――――――手すりが壊れた? あれ?
私の体は川の方へ投げ出される。
男運だけじゃない。
そもそも私には運なんてなかったのだ。
そして、私は川に頭から落ちて死んだ。
★★★★★★★★
――――――――――――というのが前の人生の終わり。
そう。
途中退場みたいな終わり方、最悪な最期だった。
前世の私、なんてみじめなの。
口をポカーンと開けたまま、私はフリーズ。驚きのあまりにいつの間にか座り込んでいた。
王子はまだこちらにあの鋭い瞳を向けていた。
私、死ぬ前にこんな瞳を向けられたんだ。
「あぁ……………………」
弱々しい声が自分の口から漏れ、硬直してしまう。
私は、私は、転生したのね。
このルーシー・ラザフォードという少女に。
ルーシー・ラザフォードって…………名前を聞いたことがあると思ったら、あの乙女ゲームの悪役令嬢じゃない。
国外追放か、死ぬかの2択しかない悪役令嬢じゃない。
いつかプレイした乙女ゲーム「Twin Flame」
一番と言っていいほど、ドハマりしたゲームだった。
私はゆっくりと立ち上がる。そして、両手を広げた。
もはや、私の頭はパンク。キャパオーバーだった。
「アハハ!」
そして、狂ったように笑い始めていた。
王子は目を見開き、私を鎮めようと何か話しかけていた。
悪役令嬢の私は死ぬんだわ!
また、私は死ぬんだわ!
「アハハ!」
そうして、興奮のあまりハイになった私は意識を失い、パタリと倒れた。
ようやく彼女の願いの1つが叶った。
それは第2王子に会うこと。
ずっとずっと憧れていた王子様。
特に第2王子とは自分と同い年であり、婚約の可能性も公爵家の人間である私には十分にあった。
どうしても彼に会いたかった私は公爵である父に何度もお願いし、ようやく会わしてもらうことができたのである。
可愛い娘の願いだから聞いてもらえることができたのだろう。
そして、私はお父様と一緒に王城へ。
部屋に案内されるなり、彼がやってきた。
第2王子ライアンはあまりにも美しく、誰もが一目惚れしてしまうぐらいに美形であった。
数か月後、どうのこうのあって、私は第2王子と婚約することに。
婚約で舞い上がった私は何度も何度も王子に会いに行った。
そして、ずっーと付きまとい、私は王子を拘束していた。
好きでもないやつにそんなことをされたら、嫌に決まっている。
想像力に掛ける私はそんなことは考えることはなかった。
ある日、私はいつものようにライアン王子に付きまとい、2人で散歩をしていた。
「殿下、今日はいつも以上に静かですね。お元気がないのですか――――――」
そう声を掛けると、王子はぴたりと足を止める。
私も立ち止まり、彼の顔を覗いた。
そこにあったのはいらだった王子の顔。
そして、彼と目が合った。
「あ――――――――――――」
その瞬間、私の脳内に電撃が走る。
「あ、ああ―――――」
殿下のこちらに向ける瞳。それはそれは冷たいものだった。
そして、全てを思い出した。
★★★★★★★★
その時、思い出したのは前世での記憶。
それはろくなものではなかった。
前世での名前は夜久月魅。
夜久月魅はとことん男運がなかった。
付き合う相手はダメ男ばかり。
別れる原因はいつだって彼氏の浮気だった。
別れるのが10回目になると、友人には『あんたダメ男ばっかり捕まえているじゃない』とバカにされる始末。
だけど、私は諦めなかった。
次こそはと、出会いがあれば付き合い始める。
が、結局ダメ男。
このままじゃ、まともな人との結婚が無理だと思うようになっていた。
いっそのこと一生1人身でもいいかなとも考え始めていた。
そんな時、彼が現れた。
25歳になって間もないころだったと思う。
仕事帰りに私は何を思ったのかゲーセンに1人で寄った。
その時の私はとにかく踊りたかったのだと思う。
素人ながらにダンスゲームをしていたのだけれど、そこに彼が現れた。
彼も仕事帰りだったようで、スーツ姿で踊っていた。
そして、何度も会うようになり、付き合い始めた。
彼とは何より価値観が合うし、デートしても楽しい。顔もスタイルもよく、私にとっては良物件だった。
そうして、彼と付き合い始めて半年が経つと、同棲をしようと話になった。
今まで同棲なんて話は出たことがなかった。そんな話になる前に浮気が発覚し、別れるからだ。
休みと聞いていたので、彼の家に行こうとした時。
彼が他の女といちゃついているのを見つけてしまった。
最初は後輩の子かもしれないと観察していたが、外見からどう見ても違うと判断。
あんなけばけばしい子が後輩なんて思えない。
私は背後から2人にゆっくりと近づき、声を掛ける。
「ねぇ、その子誰?」
「月魅、なんでここに………………」
突然現れた私に動揺する彼。
「ねぇ、その子誰だって聞いているの」
「このおばさんだれぇ~」
私の彼氏にくっついていた女がそう言ってきた。
は?
私がおばさん?
あんたの方がおばさんに見えるだけど。
「ねぇ、その女誰だって言ってるの」
しかし、彼は何も答えてくれず。
そして、私に背を向け。
「どこの人か知らないけれど、きっと人違いだから。だから、早くどっか行ってくれないか?」
と言ってきた。
どこの人か知らないですって?
ふざけないでよ。
昨日会ったじゃない。
「気色悪いんだよ、おばさん」
と彼は付け加え、私を睨む。
冷たい視線。
人生の中で一番鋭く刺さる視線を向けられた。
え?
同棲の話もしたよね?
どこに住みたいか話し合ったじゃない。
なんで、なんで、なんで――――――――――――。
「な゛んでよ!?」
私は2人に飛びかかる。
そこから始まったのは取っ組み合い。
女の髪をひっぱり、彼を平手打ち。
痛みのあまり女は奇声を放つ。
そのせいかは知らない。
周囲の人たちが騒ぎ始めたが、そんなの気にしていられなかった。
私と一緒になってくれるって言ったじゃない!
「放してくれっ!」
彼はそう言って、私を突き飛ばす。
私は橋の手すりに寄りかかろうとするも、その手すりはガタッと音を鳴らし、そして、壊れた。
――――――――――――手すりが壊れた? あれ?
私の体は川の方へ投げ出される。
男運だけじゃない。
そもそも私には運なんてなかったのだ。
そして、私は川に頭から落ちて死んだ。
★★★★★★★★
――――――――――――というのが前の人生の終わり。
そう。
途中退場みたいな終わり方、最悪な最期だった。
前世の私、なんてみじめなの。
口をポカーンと開けたまま、私はフリーズ。驚きのあまりにいつの間にか座り込んでいた。
王子はまだこちらにあの鋭い瞳を向けていた。
私、死ぬ前にこんな瞳を向けられたんだ。
「あぁ……………………」
弱々しい声が自分の口から漏れ、硬直してしまう。
私は、私は、転生したのね。
このルーシー・ラザフォードという少女に。
ルーシー・ラザフォードって…………名前を聞いたことがあると思ったら、あの乙女ゲームの悪役令嬢じゃない。
国外追放か、死ぬかの2択しかない悪役令嬢じゃない。
いつかプレイした乙女ゲーム「Twin Flame」
一番と言っていいほど、ドハマりしたゲームだった。
私はゆっくりと立ち上がる。そして、両手を広げた。
もはや、私の頭はパンク。キャパオーバーだった。
「アハハ!」
そして、狂ったように笑い始めていた。
王子は目を見開き、私を鎮めようと何か話しかけていた。
悪役令嬢の私は死ぬんだわ!
また、私は死ぬんだわ!
「アハハ!」
そうして、興奮のあまりハイになった私は意識を失い、パタリと倒れた。
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。

村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる