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2月
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「もうすぐバレンタインだね~」
「・・・そだね」
「蜂飼君は買う派?作る派?」
「・・・わかんねー」
お前と違って俺はあげたことももらったこともねーよ。
2月に入っても相変わらず俺は蓮に纏わりつかれてる。芹の奴どこ行った?!俺に子守りおしつけてんじゃねーぞ!!
蓮は1月の始業式の時からすでにチョコチョコとうるさかった。いや、大晦日からずっと言ってる気がする。
蓮は俺の迷惑なんてお構いなしで帰り道ずっとデパートのブランド名から手作りのレシピまでチョコに関するあらゆる知識を披露し感想を求めた。立田はあいにく部活でいない。
「じゃあまた明日ね!」
「お、おう」
この儀式の様な蓮との下校はもう何日も続いている。最初はチンプンカンプンだったブランド名もすっかり暗記した。今朝はチョコの夢まで見た。マジで数式の1つでも覚えた方がマシなんだけど!!
何度蓮の話を遮ろうと思ったか分からない。なんで遮らなかったかと言うと話してる蓮の顔がそりゃーもう嬉しそうだったからだ。彼氏が出来ない事俺に出来るわけねーよ。翌日俺はたまりかねて芹に突撃した。
「おい!お前いつまで俺に押し付けてんだよ?!」
「えーだってアイツ俺といると話したいのと内緒にしたいのとでソワソワしすぎてなんか可哀想で」
「この期に及んで惚気る?!」
「たまにはお前も俺達の役に立て」
芹はそう言うとさっさと姿をくらました。くそっ。あいつおぼえてろ!!
「蜂飼君~かえろ~!!」
結局俺は蓮の講義を受けながら帰宅した。蓮がいつもの駅で手を振って降りた瞬間俺は芹と立田に連絡した。
その日は2月3日、夜雪の降り積もる中、俺と立田は鬼のコスプレをして蓮の家の近くでスタンバイしている。ちなみに俺が赤鬼で立田は青鬼の衣装だ。芹には節分サプライズしようと持ちかけて先に蓮の家に行くよう伝えた。俺達が訪ねて行ったら2人で仲良く豆まきしろと伝えてある。
インターホンを押したら2人が紙でできたちゃちい升を持ってノコノコ現れた。
「鬼は~そとっ!」
「おりゃああ!!」
飛んでくる豆を無視して2人の顔面目掛けて雪玉を投げつける。思いっきりヒットして2人がむせた。
「何がバレンタインだー!!」
最近俺と蓮が一緒にいる時間の方が長いと不平タラタラだった立田が雄叫びとともに雪玉を投げ芹にヒットした。
「毎日チョコチョコうるせー!!」
「大人しく恵方巻き齧ってろ!!」
相手が豆を撒くのも待たずにどんどん投げる。
豆と雪玉とじゃ当然こっちの圧勝だ。
「雪玉は反則だろ!」
「こっちは豆しかもってないんだよ!」
「こっちだってうっすい着ぐるみに虎のパンツしか履いてねーよ!!」
綿入りだけどダウンとは違い寒さがダイレクトに伝わってくる。
「指全部シモヤケ確定なんだよ!!」
叫びながらも追撃の手を緩めずにひたすら投げる。足は指どころか足の裏全体がシモヤケになってるはずだ。芹が升ごと立田に投げつけた。
「立田だってチョコ貰うだろ!」
「それって俺からだけだよね?他は断るよね?」
俺が立田に確認する一瞬の隙をついてこちらの陣地に踏み込まれる。雪玉を奪われ壮絶な雪合戦が始まった。
散々雪を投げ合って体力が尽き、立田とよろけながら帰宅した。着替えはウチにあるのでとりあえず一緒に家の中に入る。指先がうまく動かせず服が脱げそうにない。服のまま2人で浴槽に飛び込んだ。
「あつあつあつあつ!!」
体温が低すぎてお湯が異常に熱く感じる。しばらく耐えていたら身体があったまりお湯が気持ちよくなった。
「あ~生き返る~」
まともに動かせなかった指も体もやっと自由に動かせるようになった。脱力した俺に立田の手が伸びてきた。
「おじーちゃん服着たまんまお風呂入っちゃダメでしょ」
イヤイヤイヤイヤ。
服を脱がせようとしたり触ろうとしてくる立田とそれをガードする俺との激しい攻防戦が始まった。
「こらーーー!!お風呂でプロレスしない!!」
「すいません!!」
脱衣室から母親にど叱られた。
お風呂から上がって一緒に夕飯を食べたら猛烈に眠くなった。2人仲良く俺の部屋のベッドに倒れ込む。狭いな~とは思ったが床に布団を敷く体力もなく一瞬で寝落ちした。結局立田はうちに泊まり翌日一緒に登校した。
放課後、蓮がいつものようにやって来た。
「蜂飼君、かえろ~」
「お、おう」
帰りの道すがら前日と全く変わりなくいつもの講義を受ける。
「じゃあまた明日~」
駅に降りて手を振る蓮に手を振りかえした。いや、昨日鬼の仮装した意味は?!
そこからバレンタインはすぐだった。手作りは早々に無理だと判断し市販のサッカーボールのチョコを渡した。立田からはコインのチョコだ。分かっていてもソワソワする。ニヤけながら教室でお互いチョコのアルミを剥がして齧ってたら廊下に蓮と芹がいた。蓮はどうしたかな~とみると外側が薄いピンクで中が白い薔薇の花束を渡している。芹からのお返しは真っ赤な薔薇の花束だ。すげ~。
蓮が嬉しそうに花を受け取って芹に笑顔で何か話しかけてるのを遠くからボケ~ッと眺めてたら浮葉に声をかけられた。
「蜂飼君間抜けヅラ晒してどうかしたか?」
「それって親しみこもってるよね?!」
振り向くとなんと浮葉も真っ赤な薔薇の花束を持っている。驚きつつその隣を見ると白い薔薇の花束を持った遠藤がいた。
「え?バレンタインってチョコじゃないの?!」
「愛があればなんでもいいんじゃないかな」
そうなんですけど~!!
ちょうど窓から先輩達がグランドを横切るのが見えた。ハルさんも真っ赤な薔薇の花束を持っている。先輩はピンクの薔薇だ。
「な、な、なんで?!なんでみんな花なの?!」
「何をそんなに慌ててるんだ?」
俺がこの一カ月ほどの蓮の講義について説明すると浮葉が頷いた。
「ああ、なんか蓮から連絡が急に来てな。今年のバレンタインは花にしようと誘われたんだ。節分の恨みがどうとか言ってたな」
廊下を見たら満面の笑みの2人に手を振られた。
「・・・そだね」
「蜂飼君は買う派?作る派?」
「・・・わかんねー」
お前と違って俺はあげたことももらったこともねーよ。
2月に入っても相変わらず俺は蓮に纏わりつかれてる。芹の奴どこ行った?!俺に子守りおしつけてんじゃねーぞ!!
蓮は1月の始業式の時からすでにチョコチョコとうるさかった。いや、大晦日からずっと言ってる気がする。
蓮は俺の迷惑なんてお構いなしで帰り道ずっとデパートのブランド名から手作りのレシピまでチョコに関するあらゆる知識を披露し感想を求めた。立田はあいにく部活でいない。
「じゃあまた明日ね!」
「お、おう」
この儀式の様な蓮との下校はもう何日も続いている。最初はチンプンカンプンだったブランド名もすっかり暗記した。今朝はチョコの夢まで見た。マジで数式の1つでも覚えた方がマシなんだけど!!
何度蓮の話を遮ろうと思ったか分からない。なんで遮らなかったかと言うと話してる蓮の顔がそりゃーもう嬉しそうだったからだ。彼氏が出来ない事俺に出来るわけねーよ。翌日俺はたまりかねて芹に突撃した。
「おい!お前いつまで俺に押し付けてんだよ?!」
「えーだってアイツ俺といると話したいのと内緒にしたいのとでソワソワしすぎてなんか可哀想で」
「この期に及んで惚気る?!」
「たまにはお前も俺達の役に立て」
芹はそう言うとさっさと姿をくらました。くそっ。あいつおぼえてろ!!
「蜂飼君~かえろ~!!」
結局俺は蓮の講義を受けながら帰宅した。蓮がいつもの駅で手を振って降りた瞬間俺は芹と立田に連絡した。
その日は2月3日、夜雪の降り積もる中、俺と立田は鬼のコスプレをして蓮の家の近くでスタンバイしている。ちなみに俺が赤鬼で立田は青鬼の衣装だ。芹には節分サプライズしようと持ちかけて先に蓮の家に行くよう伝えた。俺達が訪ねて行ったら2人で仲良く豆まきしろと伝えてある。
インターホンを押したら2人が紙でできたちゃちい升を持ってノコノコ現れた。
「鬼は~そとっ!」
「おりゃああ!!」
飛んでくる豆を無視して2人の顔面目掛けて雪玉を投げつける。思いっきりヒットして2人がむせた。
「何がバレンタインだー!!」
最近俺と蓮が一緒にいる時間の方が長いと不平タラタラだった立田が雄叫びとともに雪玉を投げ芹にヒットした。
「毎日チョコチョコうるせー!!」
「大人しく恵方巻き齧ってろ!!」
相手が豆を撒くのも待たずにどんどん投げる。
豆と雪玉とじゃ当然こっちの圧勝だ。
「雪玉は反則だろ!」
「こっちは豆しかもってないんだよ!」
「こっちだってうっすい着ぐるみに虎のパンツしか履いてねーよ!!」
綿入りだけどダウンとは違い寒さがダイレクトに伝わってくる。
「指全部シモヤケ確定なんだよ!!」
叫びながらも追撃の手を緩めずにひたすら投げる。足は指どころか足の裏全体がシモヤケになってるはずだ。芹が升ごと立田に投げつけた。
「立田だってチョコ貰うだろ!」
「それって俺からだけだよね?他は断るよね?」
俺が立田に確認する一瞬の隙をついてこちらの陣地に踏み込まれる。雪玉を奪われ壮絶な雪合戦が始まった。
散々雪を投げ合って体力が尽き、立田とよろけながら帰宅した。着替えはウチにあるのでとりあえず一緒に家の中に入る。指先がうまく動かせず服が脱げそうにない。服のまま2人で浴槽に飛び込んだ。
「あつあつあつあつ!!」
体温が低すぎてお湯が異常に熱く感じる。しばらく耐えていたら身体があったまりお湯が気持ちよくなった。
「あ~生き返る~」
まともに動かせなかった指も体もやっと自由に動かせるようになった。脱力した俺に立田の手が伸びてきた。
「おじーちゃん服着たまんまお風呂入っちゃダメでしょ」
イヤイヤイヤイヤ。
服を脱がせようとしたり触ろうとしてくる立田とそれをガードする俺との激しい攻防戦が始まった。
「こらーーー!!お風呂でプロレスしない!!」
「すいません!!」
脱衣室から母親にど叱られた。
お風呂から上がって一緒に夕飯を食べたら猛烈に眠くなった。2人仲良く俺の部屋のベッドに倒れ込む。狭いな~とは思ったが床に布団を敷く体力もなく一瞬で寝落ちした。結局立田はうちに泊まり翌日一緒に登校した。
放課後、蓮がいつものようにやって来た。
「蜂飼君、かえろ~」
「お、おう」
帰りの道すがら前日と全く変わりなくいつもの講義を受ける。
「じゃあまた明日~」
駅に降りて手を振る蓮に手を振りかえした。いや、昨日鬼の仮装した意味は?!
そこからバレンタインはすぐだった。手作りは早々に無理だと判断し市販のサッカーボールのチョコを渡した。立田からはコインのチョコだ。分かっていてもソワソワする。ニヤけながら教室でお互いチョコのアルミを剥がして齧ってたら廊下に蓮と芹がいた。蓮はどうしたかな~とみると外側が薄いピンクで中が白い薔薇の花束を渡している。芹からのお返しは真っ赤な薔薇の花束だ。すげ~。
蓮が嬉しそうに花を受け取って芹に笑顔で何か話しかけてるのを遠くからボケ~ッと眺めてたら浮葉に声をかけられた。
「蜂飼君間抜けヅラ晒してどうかしたか?」
「それって親しみこもってるよね?!」
振り向くとなんと浮葉も真っ赤な薔薇の花束を持っている。驚きつつその隣を見ると白い薔薇の花束を持った遠藤がいた。
「え?バレンタインってチョコじゃないの?!」
「愛があればなんでもいいんじゃないかな」
そうなんですけど~!!
ちょうど窓から先輩達がグランドを横切るのが見えた。ハルさんも真っ赤な薔薇の花束を持っている。先輩はピンクの薔薇だ。
「な、な、なんで?!なんでみんな花なの?!」
「何をそんなに慌ててるんだ?」
俺がこの一カ月ほどの蓮の講義について説明すると浮葉が頷いた。
「ああ、なんか蓮から連絡が急に来てな。今年のバレンタインは花にしようと誘われたんだ。節分の恨みがどうとか言ってたな」
廊下を見たら満面の笑みの2人に手を振られた。
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