悪役と呼ばれる推しを幸せにするために応援します!

冬月紫音

文字の大きさ
上 下
17 / 36

こんなの顔が赤くなってしまいます!!

しおりを挟む
「でもこうやって話してみたら実際お前はそんなこと考えてないし、しかも俺を倒れるまで追いかける時点でチャンとお前は自分の意見や気持ちで動いているということが分かって本当に反省した。」
「いやいやいや!ほんとにそんなことは考えてせんよ!私の親からも言われてないですし…。別に仲良くしろと誰からも言われたことありません。」
「ならなんで俺に近づこうとしたんだ?」

それはあなたが私の推しだからだとは言えない…。
でも何か理由を言わなければと頭の中で考えていると笑い声が聞こえた。
エイドリアン様はまた笑っていたのだ。

「あぁ、悪い。笑っては失礼だよな。」
「いえ、でも何も言ってないのでなぜかとは思いましたが…。」
「いや、なんて言おう?って考えているのが丸わかりでな。お前は思っていることが全て顔に出ているんだ。」
「え!?ほんとですか!?」
「あぁ。」

(うわぁ、恥ずかしいー!!顔が絶対真っ赤になってます!!)

そう感じて顔を手で抑えるとまたエイドリアン様は笑ったのだ。

「いや、笑ったのはバカにしている訳では無い。」
「ならどうして笑うんですか…?」

恥ずかしくてきっと涙目になってしまったと思う。
エイドリアン様はその表情に焦り始めた。

「いや、全然違うぞ!むしろ顔に出やすいのは普通に見ていて可愛いと思うし!全然、その、だな!」
「可愛い…?」
「いや、違う!いやいや、違わないんだが…!」

焦り始めたエイドリアン様もどんどん顔が赤くなってき出したので私も思わず笑ってしまった。
それに目を丸くしたエイドリアン様だったが私が笑った理由に気付いたのか一緒に笑い始めた。

お互い笑いが収まった時にエイドリアン様は話を続けた。

「本当に表情が分かりやすい者など貴族にはいないんだ。大人になればなるほどどんどん分からない。社交界は腹の探り合いなんだ。それが俺たちの年代でも大人ほどではないが色々派閥とかもある。お前はまだ社交界に出て色々なパーティーに出ていないし、辺境伯であるお前の父親や母親もしょっちゅう出ている訳じゃないからあんまりイメージもわかないかもしれないが…。」
「あれ?お母様は出られてると思うんですが…。」
「それはお前の母親と仲が良い所に出ていると思う。王都ではかなりの数のパーティーがほぼ毎夜行われている。その規模は大小様々だがな。だから有名な貴族のパーティーに出ていないお前の母親は社交界で神秘の華と呼ばれてるんだよ。まぁ辺境伯夫人だからこその特権だけどな。」

辺境伯という位はかなり貴族の中でもかなり高い位置なのだが、辺境と名がつくだけあって、国境と隣接している地域なのだ。
他国が攻めてくる時、1番狙われるのが辺境伯の地域なのだ。その中でもアタナシア家は1番戦が好きな国で何度もこのローズマリアに攻めてきている隣国、アルバリィと1番近い。
だからこそアタナシア家の主はどこよりも強くなければいけない。
そしていつ攻めてくるか分からないのでだいたい領地にいなければならないのだ。

「俺も色々と父様に付いてパーティーに出ているんだが、ほんとに疲れるんだ。だからこそお前のように表情が分かりやすい者というのは新鮮でつい笑ってしまったんだよ。」
「そうだったんですか…。」

そう言うとエイドリアン様は私に手を伸ばして私の髪をひと房掴み、そっとその髪を自分の顔に近づけて軽くキスをした。

「お前はそのままでいてくれ。ずっと分かりやすくいろとは言わない。でも俺の前ではそのままでいてくれ。」
「へ?え?!あの…その!」

そう言うとすぐ私の髪から手を離してイタズラが成功したように笑った。
また私の顔は真っ赤になっているのだろう。
いや、推しにこんなことされて赤くならない奴などいない!

「エイドリアン様がこんなにいじわるな方だとは思いませんでした!」
「ダメか…?」

やめてくれ、その上目遣い。

「ダ、ダメでは…。」
「アハハ!!ほんとに面白いな!!」
「あ、またからかいましたね!?」
「アハハハ!!」
「もう、エイドリアン様ったらー!」
「悪い、悪い。からかいすぎたな。」
「まぁもう良いですけど…。」
「ところでそのエイドリアン様っていうのやめろ。」
「え?」
「長い。よそよそしい。」
「えぇ?!でも…一応エイドリアン様は公爵家の方ですし…。」
「敬語もやめろ。」
「えぇー!」
「んーじゃぁ俺もお前っていうのやめる。」
「それとこれとは話が違います。」
「いや、違わない。」
「そんな無茶苦茶です…。それに敬語は癖のようなものなんです…。」

(そうしないと自分の素が隠せない気がするし、普通に推しがー!とか言いそうなのだ。)

「まぁ敬語はおいおいで構わないけど、俺のことはエイドって呼べ。」
「う、そう呼んでも、良いの、ですか…?」
「俺が良いって言ってるだろ?はい、じゃぁ練習!」
「へ?」
「はい、呼んでみろ。」
「エ、エイド、様…。」
「様はいらない。」
「そんなこと言っても身分が…。」
「気にするな。はい、もう一度。」
「エ、エイド…。」
「はい、よく出来ました、ルゥ。」

満面の笑みで私の頭を撫でた。
その後、熱が出てまた倒れたことは言うまでもない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】彼女は2回目の令嬢を辞めたい。

恋愛
公爵令嬢シーナは、前世が社長令嬢だったことを18歳の誕生パーティーで思い出す。 「そんな…また令嬢なんて、無理!」 社長令嬢としての煩わしさから解放されたと思ったら今度は公爵令嬢…シーナは絶望した。 シーナはなんとか令嬢から脱却したい。 目指すのはモブ!!平民として穏やかに暮らすの!! そんなある日、平民の青年ジェーンと出会い、シーナは一目惚れをする。 ※設定ゆるいです ※三話で完結です ※色々すっ飛ばして終わります

【完結】あなたに叶えて欲しい、願いごと

白雨 音
恋愛
熱病から目覚めたシャーリーは、忘れていた十歳の頃の記憶を思い出した。 妖精の女王と契約を交わした事で、自分の命は二十歳で尽きる…と。 残り二年も無い中、シャーリーが望むのは、婚約者との一日も早い結婚だったが、 婚約者は見舞いにも来てくれない… そんなシャーリーの支えは、家族、親友、妖精の友、話相手になってくれる医師、 そして、誰からか分からないが、送られてくる花だった___ 異世界恋愛:前日譚(ラウル)、本編(シャーリー)、後日譚 《完結しました》

もしもゲーム通りになってたら?

クラッベ
恋愛
よくある転生もので悪役令嬢はいい子に、ヒロインが逆ハーレム狙いの悪女だったりしますが もし、転生者がヒロインだけで、悪役令嬢がゲーム通りの悪人だったなら? 全てがゲーム通りに進んだとしたら? 果たしてヒロインは幸せになれるのか ※3/15 思いついたのが出来たので、おまけとして追加しました。 ※9/28 また新しく思いつきましたので掲載します。今後も何か思いつきましたら更新しますが、基本的には「完結」とさせていただいてます。9/29も一話更新する予定です。 ※2/8 「パターンその6・おまけ」を更新しました。

史上最悪の王妃は2度目の人生を与えられました

oro
恋愛
「リリス・ベネット!これまでの数々の非道な行い、その身をもって償って貰う。」 数々の非道な行いを繰り返した結果、国が誇る3大魔術師であり国母でもあったリリス・ベネットは処刑された。 しかし彼女が目を覚ますと、そこは11歳の頃の記憶にそっくりの場所で──。 ※非常に更新が遅いです。ご了承ください。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

悪役令嬢ってこれでよかったかしら?

砂山一座
恋愛
第二王子の婚約者、テレジアは、悪役令嬢役を任されたようだ。 場に合わせるのが得意な令嬢は、婚約者の王子に、場の流れに、ヒロインの要求に、流されまくっていく。 全11部 完結しました。 サクッと読める悪役令嬢(役)。

婚約破棄で命拾いした令嬢のお話 ~本当に助かりましたわ~

華音 楓
恋愛
シャルロット・フォン・ヴァーチュレストは婚約披露宴当日、謂れのない咎により結婚破棄を通達された。 突如襲い来る隣国からの8万の侵略軍。 襲撃を受ける元婚約者の領地。 ヴァーチュレスト家もまた存亡の危機に!! そんな数奇な運命をたどる女性の物語。 いざ開幕!!

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...