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一章 ゲーム開始
040 獣の本能﹣※ヴァル視点※
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水に深く沈んだような感覚に陥る。意識が朦朧としていて、自分が誰で、何をしているのかが分からない。
ふと、自分の体を見てみると今まで記憶にあった人間としての肉体はそこにはなく、虎の、それも獣としての虎の手足となっている。
俺は虎なのだと自覚し、意識は更に沈んでいく。
しかし、そのことに対してまだ違和感を覚えている。
「俺は…誰だ」
確かに肉体は虎だ。しかし、記憶にある人間の姿が正しいと、理性が呼び掛けている。だが、今俺にあるのは虎としての本能だ。
目の前にいる人間を獲物として捕食とする、理性のない獣だ。
だがならばなぜ、その者に対し虎の俺は涙を流し、自身に怒りと焦りを覚えているのだろう。
時間が経てば経つほど、段々とその感情は強くなる。
そして気づく。俺は、人間だ。
「俺の名はヴァルムンド・フェイト!我が主に仕える誇り高き虎王族の末裔だ!」
気が付くといつの間にか、先程まで水の底に居たはずなのに、今は水面に二足で人間の姿で立っている。
そして、先程まで居たであろう下を、水中を覗き込む。すると、巨大な虎の瞳が、中からこちらを睨みつけていた。
その虎は少しばかり唸り声を上げると、直ぐに口を開いた。
『お前は虎だ。目の前にいる人間を喰らい、完全なる虎となるべき存在だ』
その虎の言葉は深く心に刺さるような感覚になり、段々と足が水に沈んでいく。
しかし、俺はヴァルムンドだ。我が主である、リーフェル・レオンハルト…いや、藤原 彰人様の、忠実なる下僕だ。
「俺に従え、虎王」
『戻ってこい、お前は虎だ』
「ああ、俺はお前の言う通り虎だろう。だが、我が主に一生を仕える、忠実な虎だ」
『違う!お前こそが王となる存在なのだ!』
「なにをそこまで焦燥感に溢れている。
俺こそが人間の理性として、そして獣の本能して王と認めた者だ。虎王よ、俺に従え!」
その瞬間、先程まで水に思えた足場は、段々とその正体を現した。
「水ではなく、鏡だったか。お前は」
そう。先程まで見えていたのは、理性と本能の意志を与える俺が映し出した、本能の意志を見せた鏡だったのだ。鏡の中にいる本能も、鏡を見つめる理性も、そのどちらもが俺自身だ。
「俺は、ヴァルムンド・フェイトだ」
そう、確固たる意志で宣言をした。
その瞬間、鏡は割れ、肉体は獣人の姿へと変貌した。
本物の肉体を手に入れた…いや、借りている。そのような意思を感じたその瞬間、理性と本能の鏡は、闘力を受け入れる第一段階なのだと、改めて実感した。
先程手に入れた、本能の俺が、そう感じたのだ。
ふと、自分の体を見てみると今まで記憶にあった人間としての肉体はそこにはなく、虎の、それも獣としての虎の手足となっている。
俺は虎なのだと自覚し、意識は更に沈んでいく。
しかし、そのことに対してまだ違和感を覚えている。
「俺は…誰だ」
確かに肉体は虎だ。しかし、記憶にある人間の姿が正しいと、理性が呼び掛けている。だが、今俺にあるのは虎としての本能だ。
目の前にいる人間を獲物として捕食とする、理性のない獣だ。
だがならばなぜ、その者に対し虎の俺は涙を流し、自身に怒りと焦りを覚えているのだろう。
時間が経てば経つほど、段々とその感情は強くなる。
そして気づく。俺は、人間だ。
「俺の名はヴァルムンド・フェイト!我が主に仕える誇り高き虎王族の末裔だ!」
気が付くといつの間にか、先程まで水の底に居たはずなのに、今は水面に二足で人間の姿で立っている。
そして、先程まで居たであろう下を、水中を覗き込む。すると、巨大な虎の瞳が、中からこちらを睨みつけていた。
その虎は少しばかり唸り声を上げると、直ぐに口を開いた。
『お前は虎だ。目の前にいる人間を喰らい、完全なる虎となるべき存在だ』
その虎の言葉は深く心に刺さるような感覚になり、段々と足が水に沈んでいく。
しかし、俺はヴァルムンドだ。我が主である、リーフェル・レオンハルト…いや、藤原 彰人様の、忠実なる下僕だ。
「俺に従え、虎王」
『戻ってこい、お前は虎だ』
「ああ、俺はお前の言う通り虎だろう。だが、我が主に一生を仕える、忠実な虎だ」
『違う!お前こそが王となる存在なのだ!』
「なにをそこまで焦燥感に溢れている。
俺こそが人間の理性として、そして獣の本能して王と認めた者だ。虎王よ、俺に従え!」
その瞬間、先程まで水に思えた足場は、段々とその正体を現した。
「水ではなく、鏡だったか。お前は」
そう。先程まで見えていたのは、理性と本能の意志を与える俺が映し出した、本能の意志を見せた鏡だったのだ。鏡の中にいる本能も、鏡を見つめる理性も、そのどちらもが俺自身だ。
「俺は、ヴァルムンド・フェイトだ」
そう、確固たる意志で宣言をした。
その瞬間、鏡は割れ、肉体は獣人の姿へと変貌した。
本物の肉体を手に入れた…いや、借りている。そのような意思を感じたその瞬間、理性と本能の鏡は、闘力を受け入れる第一段階なのだと、改めて実感した。
先程手に入れた、本能の俺が、そう感じたのだ。
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