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0章 転生
012 覚悟
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暫く話を続け、今日は一旦お開きになり、父と共に帰宅した。
「今日はご苦労だった」
「いえ…」
「どうした?」
暗い表情をしていた俺に気付き、父は声を掛けた。
「国王陛下には言っておりませんでしたが、5ルート目で神魔戦争後、私は敗北しますが、それは神に負けた訳ではありません。
…私は神々を殺した後、この世界の生存者である…父上に、殺されます」
「なっ…ど、どういうことだ!?」
今まで何を話しても冷静に対応してきた父上に、戸惑いの感情が溢れた。
「闇堕ち後、たしかに人間世界は滅びましたが、ですがそれは、大陸に放った広範囲殲滅魔法によっての大虐殺によるものです。しかし、唯一私はその世界の中で、家族を殺すことが出来なかった。
そして、最終場面、嘆き苦しむ俺を、父上は慈愛により、殺してくれた。そして、俺と共に父上もその場で死ぬ…」
自分のことではない。稀人の記憶を継承したとは言ったが、俺自身は稀人だ。稀人の記憶を継承したのではなく、この肉体に稀人として転生したからだ。
だが…無数の中にある未来の中で、たしかにその未来が起こる可能性もある。
そう思うと俺は自然と、涙が零れた。
「…父上、私は決してその結末にならないよう、抗います。
しかし、本当にどうしようもない時、私はこの身を犠牲に大罪の力を受け入れ、家族を護ります。その際、父上は私を犠牲に、家族を守ってください」
「お前も大切な私の息子だ!」
「…父上、私は家族が大切だ。だからこそ、私一人の犠牲で済むのならば、喜んで死神にも命を捧げる。
父上は、この国に必要な存在だ。頼む、もしその未来が来たとき、私を殺してくれ」
「…わかった。必ず、この手で殺すと誓う」
その手は震えていた。家族を失えというのだから、当然のことだろうが、彼にとって息子の覚悟を無碍にする訳にはいかないのだろう。
その震えは、哀愁と…不甲斐なさから来ていた。
「今日はご苦労だった」
「いえ…」
「どうした?」
暗い表情をしていた俺に気付き、父は声を掛けた。
「国王陛下には言っておりませんでしたが、5ルート目で神魔戦争後、私は敗北しますが、それは神に負けた訳ではありません。
…私は神々を殺した後、この世界の生存者である…父上に、殺されます」
「なっ…ど、どういうことだ!?」
今まで何を話しても冷静に対応してきた父上に、戸惑いの感情が溢れた。
「闇堕ち後、たしかに人間世界は滅びましたが、ですがそれは、大陸に放った広範囲殲滅魔法によっての大虐殺によるものです。しかし、唯一私はその世界の中で、家族を殺すことが出来なかった。
そして、最終場面、嘆き苦しむ俺を、父上は慈愛により、殺してくれた。そして、俺と共に父上もその場で死ぬ…」
自分のことではない。稀人の記憶を継承したとは言ったが、俺自身は稀人だ。稀人の記憶を継承したのではなく、この肉体に稀人として転生したからだ。
だが…無数の中にある未来の中で、たしかにその未来が起こる可能性もある。
そう思うと俺は自然と、涙が零れた。
「…父上、私は決してその結末にならないよう、抗います。
しかし、本当にどうしようもない時、私はこの身を犠牲に大罪の力を受け入れ、家族を護ります。その際、父上は私を犠牲に、家族を守ってください」
「お前も大切な私の息子だ!」
「…父上、私は家族が大切だ。だからこそ、私一人の犠牲で済むのならば、喜んで死神にも命を捧げる。
父上は、この国に必要な存在だ。頼む、もしその未来が来たとき、私を殺してくれ」
「…わかった。必ず、この手で殺すと誓う」
その手は震えていた。家族を失えというのだから、当然のことだろうが、彼にとって息子の覚悟を無碍にする訳にはいかないのだろう。
その震えは、哀愁と…不甲斐なさから来ていた。
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