上 下
14 / 16

14話

しおりを挟む
 フェリシテの気配はそのまま森の奥の滝の方へと向かっていた。
 この森、本当不思議なもので、どう考えても辻褄の合わない大きさの滝がある。

ライと二人で滝の側に行くと、滝の側で座っているフェリシテを見つけた。
ライには少し離れたところに居てもらい、俺はわざとらしく足音を立てて近づいていく。

フェリシテは近づいてくる俺を振り返って近づいているのが俺だと確認するとまた滝の方を見る。

「よっこらせっと」

 俺はどこぞのじーさんみたいなことを口にしながらフェリシテの横に座る。

「連れ戻しに来たんですか?」
「ん?違うよ。俺的にはどっちでもいいかな。どちらかというと何とも気にかかるし乗り掛かった舟だし?」

 しかしそれにしても気にかかるな。本当はマナー違反でもあるんだが……。疑問を晴らしたいのもあって俺は、フェリシテのステータスを覗き見る。

 おや?妙だな、見放されているのであればスキルの精霊術師は消えるよな。それにこの称号って……こいつ称号持ちなのか驚いたな。

「あのさ、フェリシテって昔、小さい頃にでも、大精霊に会ったことってないか?」
「え?小さい頃に?」

 なんで俺がそんなことを聞くのか、それはこいつの称号に理由があった。

「なんか心当たりはないのか?」
「いえ……たしか小さい頃はよくここに遊びに来ていて……あ、そうだここであの子に会ったのだわ」

 おや?何だこの回想シーン突入の気配は。


 回想

 ~フェリシテ~

 そうあの子はいつもここにいて、私がここに来るたびに声をかけてきた。私は精霊とは仲よくできたけど、森の仲間とはあまり仲が良くなるのは得意ではなかった。

 精霊の乙女の再来とか言われてしまい、嫉妬だの妬みだの、大人たちからは畏怖の念で視られたりと、少し居心地が悪かったのは確かだった。

 そんな中ここに来るといつも白い歯を見せて楽しそうに笑う、同じ年くらいの女の子と出会った。

 彼女の名前は……なんだったっけ……思い出せない。なんでだろうすごく大事なことのはずなのに。

 それでその子と、あの日約束をしたのよ。なんの何の約束だった?

『あのさ、僕と……』
『え?変なのだって私とア……はもうトモダ……じゃない』

 そう、そうだわ、私はあの日、彼女と約束を……そう。友達でいるという約束を。

 脳裏に浮かぶのはあの日の事。二人で散々遊んで、日も暮れ始めたので、もう帰ろうとしたとき。また遊ぼう、友達でいようと指切りをした。

 指切りは勇者が広めた約束の印。指を絡め合いお互いの名前を言った後、約束をした後指を離す。

 あぁ……なんでこんな大事なことを私は忘れていたのだろう。そう……あの子の名前は……。

 回想終わり


 急に何かを呟き始めたかと思うと、フェリシテはまるでトリップでもしてるかのように目が虚ろになったまま宙を見ている。

 なんかやべえな……。ん?今なんて言った??

『〇△$』

 あ、これ人間の言葉じゃないな。しかもエルフ語でもない。オイ頑張れ俺の脳と知識! あぁこれはあれだ、古代精霊語だ。確かその意味は。

「そうあなたの名前はアルマ……アルマだわ!」
『やれやれ、やっと思い出してくれたんだね』

 滝つぼが急に光りその光は俺たちの居るところまで一気に伸びてくる。気が付けば光の中には、見ようによっては何色にも見える髪をした、少女が立っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

男女貞操逆転世界で、自己肯定感低めのお人好し男が、自分も周りも幸せにするお話

カムラ
ファンタジー
※下の方に感想を送る際の注意事項などがございます! お気に入り登録は積極的にしていただけると嬉しいです! ーーーーーーーーーーーーーーーーーー あらすじ    学生時代、冤罪によってセクハラの罪を着せられ、肩身の狭い人生を送ってきた30歳の男、大野真人(おおのまさと)。  ある日仕事を終え、1人暮らしのアパートに戻り眠りについた。  そこで不思議な夢を見たと思ったら、目を覚ますと全く知らない場所だった。  混乱していると部屋の扉が開き、そこには目を見張るほどの美女がいて…!?  これは自己肯定感が低いお人好し男が、転生した男女貞操逆転世界で幸せになるお話。 ※本番はまぁまぁ先ですが、#6くらいから結構Hな描写が増えます。 割とガッツリ性描写は書いてますので、苦手な方は気をつけて! ♡つきの話は性描写ありです! ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 誤字報告、明らかな矛盾点、良かったよ!、続きが気になる! みたいな感想は大歓迎です! どんどん送ってください! 逆に、否定的な感想は書かないようにお願いします。 受け取り手によって変わりそうな箇所などは報告しなくて大丈夫です!(言い回しとか、言葉の意味の違いとか) 作者のモチベを上げてくれるような感想お待ちしております!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

俺、貞操逆転世界へイケメン転生

やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。 勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。 ――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。 ――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。 これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。 ######## この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

貞操逆転世界の男教師

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が世界初の男性教師として働く話。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

処理中です...