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10話

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「うーん、あ〇さにごう……」
「そりゃいったいなんなんだ? ヴァム」
「俺のたわいもないジョークを拾うなライ」
「あぁ冗談だったのか」

 俺の掌のソレを見て慌てて出てきたのは、エルフの男二人と、さっきどこアに隠れたはずのムムムとふ……言いづらいの、フワフワにする。が出てきた。慌ててオロオロするフワフワと、ほら見たことかといった顔をしたムムムだ。フワフワが火ダメって手をバツにしてるので、大きく頷いて消したら、なんか落ち着いてくれたようだ。あれはあれで可愛いな。

「ふぅ……火は本当やめてくれ」
「冗談でもやばいから」

 いきなり矢を撃ってきたほうは悪くないのか?と、ちと思わないもないでもないのだが、消したので安心しろと伝える。もとはといえばそちらが悪いのだけどな。

「ところでだ、お前さんたち、私とヴァムはお前さんたちの同胞である、フェリシテを助けて送り届けに来たわけだが?」
「へへ、助けてもらったんです~」

 ライとしては手洗い歓迎に嫌みの一つも言いたかったのだろう。二人はフェリシテを見て、少しため息をついた後、こちら側に直ると深く頭を下げた。

「「申し訳なかった」」
「それで? どういうわけでこんないきなりの歓迎に?」

 俺も危なくないとはいえ気になったので聞いてみる。

 なるほど、どうやらこの森の結界は相当強力らしく、そもそも近づくのもなかなか難しいらしい。ってことは森の側まで来ていたっていうオークの奴らは余程こいつに頭に来たんだろうな。そうじゃなければ結界の側まで来るのも億劫だったろうに……。横で困った顔をしている駄エルフをみる。こいつがある意味元凶だなぁ……。

「まぁいいか、どうせ当たらない矢だったし」
「だな」
「えぇ?!」
「もちろん当てる気はありませんでした」

 どう見ても当たらないだろあの矢。威嚇丸出しだし、何だったら当ててきても切るので問題なし。多分当たってもダメージ来ないだろうしなぁ……。俺たちにとっては何ということのない真実なのだが、フェリシテにとっては驚きの白さだったようだ。

「すまなかった。しかしどうしてここに長の娘である、フェリシテ様が?」

 事情を説明する。森の外でオークの集団に襲われていて必死に逃げていたこと。その原因がこいつにあること。長の娘かぁ……要は思いっきり面倒ごとってことだが。

「はぁ……それは本当に申し訳ない。助けていただいて感謝します」
「まじかぁ……お嬢……」

 片方が口調が固くて、もう片方はやや柔らかい性格なのかな? 口調もだいぶ違うな。その後お詫びと自己紹介を改めてされた。固い方がアイゼン、柔らかいほうがシュレ。主に森内の警備をやっているらしい。さすがに命の恩人(駄エルフの)である俺たちに対して口調は固いままだが、対応は軟化してくれたようだ。

「ふん、いいんです~そんなことは、はやくあの頭の固いお父様に報告して、お客様をお通ししてください~」

「「はっ(はいはい)」」

 どうやらこれでようやく、エルフの長と会えるらしい。実はエルフの森にはあとで行くつもりだったので、手間が省けて助かる。エルフにはひとつ伝説があるんだよな。それは大精霊の加護を待つエルフが居る可能性があるということ。いるんなら仲間にしとくのは損じゃない。確か初代勇者も仲間にしていたらしいからなぁ。

「すまないですねぇ……」
「いえいえ、お客人、すぐにこいつが報告行きますのでもうしばらく待って頂ければと思います」

 そういって、横にいるシュレの背中をスッと押すと、シュレはかなりの速度で、森の中へと消えていった。多分この人たちいつもこうやって苦労しているんだろうなぁ、ああ、胃が痛いんだろうな、アイゼンさん、少しお腹のあたり抑えてるもんな。
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