上 下
5 / 16

5話

しおりを挟む
 
「正直うざい……」

 それが感想。

 城に来てからというものここしばらく、俺より強い奴に会いに行く奴らからの対戦申し込みが多すぎる。
 ここはあれか? 渋谷や中野の格闘ゲーム対戦好きの集まるゲーセンか? 俺はなるべくなら一人プレイで楽しみたいんだよ。

「っと、考えると……対戦台に座っている俺が悪いか?」

 まぁそう考えれば合点も行くよな。そりゃ対戦台座ってりゃ次から次へと、かむひあーうぃずにゅーちゃれんじゃーするわな。そこで一つの結論にたどり着く。

「出よう……早急に!」

 決心した俺は城からの脱出をすることにする。城からの脱出はそんなに難しいことじゃない。別に拘束されているわけでもないし、
 直ぐに出ることは可能。まぁ強いてあげれば、世話になったお姫様や王様にはちょっと心苦しく感じないこともないことくらいだ。そこは致し方ない、お手紙でも書いておけば良かろう。うん。

 何度目かのお茶会のあたりで俺はさりげなく姫様に、そろそろ、ここを出ないといけませんねと伝える。 魔王はいつまでも待っているわけでもないだろうから……とね。色々察してくれたお姫様は残念そうな顔をしている。

 そういや、俺にコテンパンにやられた貴族の坊ちゃまは、俺への復讐を考えていたようだ。
 更に俺のことを快く思っていない、大臣の一部が加担し、俺を偽物の扱いにしようとしている……らしい。つまらぬことを考えるなぁ……。あ、これはお茶会で仲良くなった貴族のお嬢様がそっと教えてくれた。

「はぁ……器の小さきことで……」
「お気をつけくださいね勇者様」

 彼女の名前は何だったかなぁ……なんとかかんとか、カトリーヌさんだったっけかな。
 貴族のどの位置の方とか、正直もう覚えられないんだよなぁ、多すぎちゃってさ。

「ありがとうございます。とても助かりますよ」
「いえ……そんな(ぽっ)」

 勇者パワーで歯を光らせて、目もキラーンとしとく。なんだろうねぇ……場末の役者みたいだ。
 だがどういうわけか効果は覿面だ。カトリーヌさんの目にはハートが映り、勇者を密かに助けた貴族の女性としてだろうかいい感じで悦に入ってくれている。あれか? この力ヒュプノス効果でもあるのか?

 さて、そんなこともあり、面倒ごとは減らしてからの良いだろうと、そこから数日の間に、お馬鹿な坊ちゃま騎士と悪大臣の企みと過去の悪事を調べ上げる。だいぶ色々とお話をしてくれていたので、録音魔法で録音、そして録画もして、貴族のご令嬢とお姫様にプレゼントに忍ばせてさしあげることにする。

「姫様、これは私からの細やかな贈り物です。中にはとても楽しいものが入っています。これの解放は今から3日後、是非国王様と一緒にお楽しみください」
「まぁ……何かしら。今すぐに見てはいけないのかしら?」
「これには高度な時空魔法がかけてありまして、3日後に王様も含め皆さまでご覧になると最高の状態になるようになっているのです」
「まぁ……それは楽しみですわ……」

 では、これにてとお茶会を抜け、同じようなものを世話になったからと言って、カトリーヌ他にも渡しておく。姫様のまぁ……には、貴族の娘が知っていることくらいは、存じてますのよ? といった意味でも含まれていたのかもしれないな。

「さて、迎撃態勢良しと、ではおさらばしますか……」

 その日の昼頃、俺は普通に城を出て、街に行き。そのまま姿を変えて王都を抜けて出た。

「あばよ~~ってなもんだなww」

 そして、第一話に戻るわけだわな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

18禁の乙女ゲームの悪役令嬢~恋愛フラグより抱かれるフラグが上ってどう言うことなの?

KUMA
恋愛
※最初王子とのHAPPY ENDの予定でしたが義兄弟達との快楽ENDに変更しました。※ ある日前世の記憶があるローズマリアはここが異世界ではない姉の中毒症とも言える2次元乙女ゲームの世界だと気付く。 しかも18禁のかなり高い確率で、エッチなフラグがたつと姉から嫌って程聞かされていた。 でもローズマリアは安心していた、攻略キャラクターは皆ヒロインのマリアンヌと肉体関係になると。 ローズマリアは婚約解消しようと…だが前世のローズマリアは天然タラシ(本人知らない) 攻略キャラは婚約者の王子 宰相の息子(執事に変装) 義兄(再婚)二人の騎士 実の弟(新ルートキャラ) 姉は乙女ゲーム(18禁)そしてローズマリアはBL(18禁)が好き過ぎる腐女子の処女男の子と恋愛よりBLのエッチを見るのが好きだから。 正直あんまり覚えていない、ローズマリアは婚約者意外の攻略キャラは知らずそこまで警戒しずに接した所新ルートを発掘!(婚約の顔はかろうじて) 悪役令嬢淫乱ルートになるとは知らない…

【R18】幼馴染の男3人にノリで乳首当てゲームされて思わず感じてしまい、次々と告白されて予想外の展開に…【短縮版】

うすい
恋愛
【ストーリー】 幼馴染の男3人と久しぶりに飲みに集まったななか。自分だけ異性であることを意識しないくらい仲がよく、久しぶりに4人で集まれたことを嬉しく思っていた。 そんな中、幼馴染のうちの1人が乳首当てゲームにハマっていると言い出し、ななか以外の3人が実際にゲームをして盛り上がる。 3人のやり取りを微笑ましく眺めるななかだったが、自分も参加させられ、思わず感じてしまい―――。 さらにその後、幼馴染たちから次々と衝撃の事実を伝えられ、事態は思わぬ方向に発展していく。 【登場人物】 ・ななか 広告マーケターとして働く新社会人。純粋で素直だが流されやすい。大学時代に一度だけ彼氏がいたが、身体の相性が微妙で別れた。 ・かつや 不動産の営業マンとして働く新社会人。社交的な性格で男女問わず友達が多い。ななかと同じ大学出身。 ・よしひこ 飲食店経営者。クールで口数が少ない。頭も顔も要領もいいため学生時代はモテた。短期留学経験者。 ・しんじ 工場勤務の社会人。控えめな性格だがしっかり者。みんなよりも社会人歴が長い。最近同棲中の彼女と別れた。 【注意】 ※一度全作品を削除されてしまったため、本番シーンはカットしての投稿となります。 そのため読みにくい点や把握しにくい点が多いかと思いますがご了承ください。 フルバージョンはpixivやFantiaで配信させていただいております。 ※男数人で女を取り合うなど、くっさい乙女ゲーム感満載です。 ※フィクションとしてお楽しみいただきますようお願い申し上げます。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

処理中です...